6 / 49
刑事編
刑事 その一
しおりを挟む
「あれだけ人を殺しちゃってるんだから、被疑者は死刑になるんですかね?」
「被疑者が家族を惨殺したのはほぼ間違いないだろうよ。でもな、普通の精神状態であんな惨いことを出来ると思うか?」
「いや、普通に暮らしてたら無理ですよ。私だって過去にこいつを殺したいなって思ったことはありますけど、普通の人だったら殺す前に思いとどまりますよね?」
「そう言うもんなのか。俺は誰かを殺したいって思ったことは無いからわからないけど、やっぱり体育会系だとそういうイジメとかもあるんだろうな」
「どちらかと言えば、体育会系よりも文化系の方が陰湿な気がしますけどね」
「そいつは偏見ってもんだぞ。山猿はそうやってすぐムキになるからいじめられてたんじゃないか。お前も刑事なんだから感情的になりすぎるなよ」
「そうやって警部補が私をからかうからじゃないですか。他の人にもそんな感じだとハラスメントで訴えられちゃいますよ」
「いつの間にかそんな世の中になっちまったんだな。俺が若いころに経験してきたことはやり方が古いって言われちまうしな」
「いやいやいや、警部補は他のベテランの人と違って時代の波にしっかり乗ってるじゃないですか。私が言うのもなんですけど、もう少し刑事らしく足で情報を稼いだ方がいいと思いますよ」
「それはわかるんだけどな、そういうのは他の班のやつらが大体やっちまうだろ。俺はもっと多角的に別の視点から事件の裏を探ってるんだよ」
「ネットの噂なんてあてにならないじゃないですよ。他の人には言ってない事を私達が聞いたタイミングで思い出すことだってあるかもしれないじゃないですか」
「確かにな、そんな時もあるだろうよ。でもな、今回の事件は容疑者不明じゃなくて、ほぼほぼ確実とされている被疑者が逮捕されているんだよ。近所の人や職場の人に聞き込みをしたってテンプレートの回答しか得られないって思うよ。それもそれで役には立つんだけどな」
「でも、私達も聞き込みしに行きましょうよ。警部補って新人の時からそうだったんですか?」
「俺が新人の時はお前みたいな感じだったよ。でもな、今は高度な情報社会だ。こんな惨い殺人事件なんか起きてみろ、世の中の傍観者たちはみんな探偵気取りで好きなように物語を作っていくんだよ。もしかしたら、その中の一つが真実にたどり着いているかもしれないだろ。俺はそれを探しているんだよ」
「いや、それって勤務中に小説を読んでサボってるってことじゃないですか。もっと真面目に捜査をしましょうよ。もうすぐお昼になっちゃいますよ」
「もうそんな時間か。お前に構っているうちにだいぶ時間を浪費してしまったな。よし、今日は俺が見つけたレストランでランチでもどうだ?」
「ありがとうございます。ごちそうになります」
「馬鹿野郎。毎回毎回俺にたかりやがって。たまには女らしく弁当でも作って持って来いよ」
「警部補。それはセクハラになりますよ。黙っててあげるのでランチはお願いしますね」
「お前だって俺を恐喝してるじゃないかよ」
天野警部補はベテランなのにITにとても強い。もしかしたら、私よりもスマホを使い来ないしているかもしれない。
頭脳派の天野警部補と行動派の山吹ダリアはちょうどよいバランスの取れた名コンビだ。とは、まだ誰も言っていないけれど、何でも先走ってしまう私と一歩引いて物事を見つめることのできる警部補の相性は悪くないはずだ。
そんな警部補の連れて行ってくれるランチは定食屋や中華が多いので、今回のレストランという言葉にも騙さらないようにしよう。
私の誕生日を祝ってくれた時もどこにでもあるようなカレー屋だったことがあるのだし、過度な期待は禁物だ。
「被疑者が家族を惨殺したのはほぼ間違いないだろうよ。でもな、普通の精神状態であんな惨いことを出来ると思うか?」
「いや、普通に暮らしてたら無理ですよ。私だって過去にこいつを殺したいなって思ったことはありますけど、普通の人だったら殺す前に思いとどまりますよね?」
「そう言うもんなのか。俺は誰かを殺したいって思ったことは無いからわからないけど、やっぱり体育会系だとそういうイジメとかもあるんだろうな」
「どちらかと言えば、体育会系よりも文化系の方が陰湿な気がしますけどね」
「そいつは偏見ってもんだぞ。山猿はそうやってすぐムキになるからいじめられてたんじゃないか。お前も刑事なんだから感情的になりすぎるなよ」
「そうやって警部補が私をからかうからじゃないですか。他の人にもそんな感じだとハラスメントで訴えられちゃいますよ」
「いつの間にかそんな世の中になっちまったんだな。俺が若いころに経験してきたことはやり方が古いって言われちまうしな」
「いやいやいや、警部補は他のベテランの人と違って時代の波にしっかり乗ってるじゃないですか。私が言うのもなんですけど、もう少し刑事らしく足で情報を稼いだ方がいいと思いますよ」
「それはわかるんだけどな、そういうのは他の班のやつらが大体やっちまうだろ。俺はもっと多角的に別の視点から事件の裏を探ってるんだよ」
「ネットの噂なんてあてにならないじゃないですよ。他の人には言ってない事を私達が聞いたタイミングで思い出すことだってあるかもしれないじゃないですか」
「確かにな、そんな時もあるだろうよ。でもな、今回の事件は容疑者不明じゃなくて、ほぼほぼ確実とされている被疑者が逮捕されているんだよ。近所の人や職場の人に聞き込みをしたってテンプレートの回答しか得られないって思うよ。それもそれで役には立つんだけどな」
「でも、私達も聞き込みしに行きましょうよ。警部補って新人の時からそうだったんですか?」
「俺が新人の時はお前みたいな感じだったよ。でもな、今は高度な情報社会だ。こんな惨い殺人事件なんか起きてみろ、世の中の傍観者たちはみんな探偵気取りで好きなように物語を作っていくんだよ。もしかしたら、その中の一つが真実にたどり着いているかもしれないだろ。俺はそれを探しているんだよ」
「いや、それって勤務中に小説を読んでサボってるってことじゃないですか。もっと真面目に捜査をしましょうよ。もうすぐお昼になっちゃいますよ」
「もうそんな時間か。お前に構っているうちにだいぶ時間を浪費してしまったな。よし、今日は俺が見つけたレストランでランチでもどうだ?」
「ありがとうございます。ごちそうになります」
「馬鹿野郎。毎回毎回俺にたかりやがって。たまには女らしく弁当でも作って持って来いよ」
「警部補。それはセクハラになりますよ。黙っててあげるのでランチはお願いしますね」
「お前だって俺を恐喝してるじゃないかよ」
天野警部補はベテランなのにITにとても強い。もしかしたら、私よりもスマホを使い来ないしているかもしれない。
頭脳派の天野警部補と行動派の山吹ダリアはちょうどよいバランスの取れた名コンビだ。とは、まだ誰も言っていないけれど、何でも先走ってしまう私と一歩引いて物事を見つめることのできる警部補の相性は悪くないはずだ。
そんな警部補の連れて行ってくれるランチは定食屋や中華が多いので、今回のレストランという言葉にも騙さらないようにしよう。
私の誕生日を祝ってくれた時もどこにでもあるようなカレー屋だったことがあるのだし、過度な期待は禁物だ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
妹の妊娠と未来への絆
アソビのココロ
恋愛
「私のお腹の中にはフレディ様の赤ちゃんがいるんです!」
オードリー・グリーンスパン侯爵令嬢は、美貌の貴公子として知られる侯爵令息フレディ・ヴァンデグリフトと婚約寸前だった。しかしオードリーの妹ビヴァリーがフレディと一夜をともにし、妊娠してしまう。よくできた令嬢と評価されているオードリーの下した裁定とは?
舞姫【中編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
そこには、三人を繋ぐ思いもかけない縁(えにし)が隠れていた。
剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われた。ストリップダンサーとしてのデビューを控える。
桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
亀岡
みちるの両親が亡くなった事故の事を調べている刑事。
津田(郡司)武
星児と保が追う謎多き男。
切り札にするつもりで拾った少女は、彼らにとっての急所となる。
大人になった少女の背中には、羽根が生える。
与り知らないところで生まれた禍根の渦に三人は巻き込まれていく。
彼らの行く手に待つものは。
交換殺人って難しい
流々(るる)
ミステリー
【第4回ホラー・ミステリー小説大賞 奨励賞】
ブラック上司、パワハラ、闇サイト。『犯人』は誰だ。
積もり積もったストレスのはけ口として訪れていた闇サイト。
そこで甘美な禁断の言葉を投げかけられる。
「交換殺人」
その四文字の魔的な魅力に抗えず、やがて……。
そして、届いた一通の封筒。そこから疑心の渦が巻き起こっていく。
最後に笑うのは?
(全三十六話+序章・終章)
※言葉の暴力が表現されています。ご注意ください。
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる