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ピーチ中尉とマーちゃん中尉
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いよいよ全敗の目が見えてきたマーちゃん中尉だったが、今回の相手であるピーチ中尉はマーちゃん中尉以上に戦う気が無いように見えた。
お互いに『うまな式魔法術』を習得していることもあって魔法攻撃は一切効かないと思われるのだが、そうなると近接攻撃か直接何かダメージを与えることが出来る方法をとるのがセオリーとなるはずなのにピーチ中尉はマーちゃん中尉の攻撃が当たらないように空を飛んで本を読んでいるのだ。
今回の七番勝負に参加している隊員の中で唯一マーちゃん中尉と同じ階級であるピーチ中尉との試合を楽しみに待っていた観客たちはみんな肩透かしを食らったような気分になっていた。実況の水城アナウンサーも解説の宇藤さんもゲスト解説の妖精マリモ子も栗鳥院松之助も何を話せばいいのかわからないくらいに時間も経過していた。
本を読み終えたピーチ中尉が目にも止まらぬ速さでマーちゃん中尉の眼前に降り立ったのだが、それに対してマーちゃん中尉は何の反応も出来ずにただ立っているだけだった。
その状況を静かに見守っていた人たちはいつものようにマーちゃん中尉が一発でやられてしまうと考えていた。しかし、ピーチ中尉は攻撃をすることもなく静かにマーちゃん中尉を見つめていた。
「今まで空中を漂いながら本を読んでいたピーチ中尉でしたが、突然マーちゃん中尉の目の前まで降りてきました。そのまま攻撃をするのかと思われましたが、何もせずにただ黙ってマーちゃん中尉の事を見つめています。いったいどういう事でしょうか」
「どういう事なんでしょうね。そのあたりは松之助さんが詳しいかと思うのですが?」
「いや、俺にもさっぱりわからないです。試合前に俺がピーチ中尉にマーちゃん中尉を完膚なきまでに叩きのめせとは言ったんですけど、その指示を無視して好き勝手やってるんですよ。ピーチ中尉も一番隊の副隊長補佐なんで俺の命令を聞く義務なんてないんだけど、それでも俺の言うことを聞いてくれたっていいとは思うんだけどな」
「馬鹿じゃないの。そんな命令してまでマーちゃんを恐れるなんて頭おかしいよね。そんなことしなくても普通にしてたらマーちゃんの事なんて簡単に倒せると思うよ。『うまな式魔法術』を習得している相手に対してマーちゃんは有効的な攻撃手段がないんだからわざわざ気を削ぐような命令しても意味ないのにね。ほら、ピーチ中尉は何かマーちゃんに話しかけてるみたいだよ。松之助が期待しているようなことにはならなそうだけど、それで松之助はどうするのかな?」
マーちゃん中尉の味方であるはずの妖精マリモ子の方がマーちゃん中尉の力のなさを感じており、栗鳥院松之助の方がマーちゃん中尉の底知れぬ力に恐怖を感じているという状況であった。どちらも間違えてはいないという事になるのだが、現時点では妖精マリモ子の分析の方が正しいと言えるだろう。
ただし、それも今だけの話であって、これから行われるピーチ中尉の戦闘講座によってマーちゃん中尉の戦闘能力が劇的に高くなってしまうのは誰も止めることが出来ないのである。
「俺はさ、初めてあんたを見たときからもったいないなって思ってたんだよ。だってさ、全系統の魔法を使えるようにするって普通は考えないし、考えたとしても出来るはずがないんだよ。どの系統でも覚えることは出来るけど、順番を間違えると覚えていた魔法を使えなくなることになるだろ。反対属性の魔法なんて普通は覚えられないんだよ。普通はな。中にはあんたのところのイザー二等兵みたいに強力な魔力を使って無理やり使用する例なんかもあるけどさ、普通に考えたら反対属性の魔法を同時に習得することだって避けるんだぜ。お互いに悪い意味で作用しあって消費魔力量が上がって威力が下がっちまうんだもんな。普通の神経してたらそんな魔法を覚えようとなんてしないで得意な魔法を伸ばそうって思うはずなんだよ」
今までも何人か実戦レベルで使用することが出来る範囲で魔法を全種類覚えようとしたものはいた。だが、どう頑張っても全種類を使うことは出来なかったし、実戦レベルで使用するにはマイナス作用が強すぎたのだ。『うまな式魔法術』を使うことが出来る現代においてはそのマイナス面も影響がないくらい威力を底上げすることが出来るようにはなっているけれど、『うまな式魔法術』に頼ったところで『うまな式高等魔法術』を使うことが出来なければ戦闘で何も結果を生み出すことは出来そうもなかったのだった。
「俺が何を言いたいかというと、あんたは全種類の魔法を使うことが出来るんだからもっと強くいてほしいって事なんだよ。今の現状じゃ『うまな式魔法術』を習得している相手に対して何の攻め手もないわけだが、それじゃダメだと思う。それはあんたが一番よく知っていると思うけど、それをどうにかする方法は見つかってないんだろ。その方法なんだけど、俺があんたに教えてやるよ。こんなことを言ってたら松之助に怒られるかもしれないけど、俺は別にあんたにも栗宮院うまな中将にも何の恨みもないからな。むしろ、栗宮院うまな中将には感謝してるだぜ。彼女のおかげで俺は空を飛ぶことが出来るようになったし、この国も昔の伝承みたいに夜中でも一人で出歩けるようになったんだからな。その恩返しってわけじゃないけど、俺が見つけた魔法の正しい使い方ってのを教えてやるよ」
ピーチ中尉の言葉を聞いた栗鳥院松之助は狂ったように暴れだしてしまったのだが、そんなことは知らぬピーチ中尉がマーちゃん中尉に魔法の正しい使い方を教えていた。
暴れている栗鳥院松之助を抑えたのは誰でもない、解説の宇藤さんだった。
ほぼ名誉職と言っていいほど実戦経験もなく戦闘能力も高くない栗鳥院松之助とはいえ、現役の副隊長補佐なのだ。そんな彼をやすやすと取り押さえることが出来た宇藤さんは映像を見ていた多くの視聴者に驚きを与えていたのだ。
「それじゃ、講義はこれくらいにして、その身でしっかりと体験してくれよ。俺の本気はちょっとばかし痛いかもしれないけど、あんたなら十分に耐えられるはずだからな」
ピーチ中尉は再び空に上がっていったのだが、先ほどとは違ってその手に何も持ってはいなかった。
しばらくとんでいたピーチ中尉が見えなくなったと思っていると、何かが物凄い勢いで落下してきた。
誰もがピーチ中尉が下りてきたのだと思っていたのだけれど、その姿はカメラに映ることはなく何かを破裂させたかのような音が一定の感覚で鳴り響いていた。
そして、強烈な爆発音とともに固定カメラの画角からマーちゃん中尉が一瞬で消えてしまった。カメラがとらえきれないスピードでマーちゃん中尉の体は吹っ飛んでいったのだが、その姿を捉えたカメラは一台も存在しなかった。
結果的にはマーちゃん中尉はまた一撃で沈んでしまったのだけれど、その事にみんなが気付いたのは決着がついてから数分経った後の話であった。
お互いに『うまな式魔法術』を習得していることもあって魔法攻撃は一切効かないと思われるのだが、そうなると近接攻撃か直接何かダメージを与えることが出来る方法をとるのがセオリーとなるはずなのにピーチ中尉はマーちゃん中尉の攻撃が当たらないように空を飛んで本を読んでいるのだ。
今回の七番勝負に参加している隊員の中で唯一マーちゃん中尉と同じ階級であるピーチ中尉との試合を楽しみに待っていた観客たちはみんな肩透かしを食らったような気分になっていた。実況の水城アナウンサーも解説の宇藤さんもゲスト解説の妖精マリモ子も栗鳥院松之助も何を話せばいいのかわからないくらいに時間も経過していた。
本を読み終えたピーチ中尉が目にも止まらぬ速さでマーちゃん中尉の眼前に降り立ったのだが、それに対してマーちゃん中尉は何の反応も出来ずにただ立っているだけだった。
その状況を静かに見守っていた人たちはいつものようにマーちゃん中尉が一発でやられてしまうと考えていた。しかし、ピーチ中尉は攻撃をすることもなく静かにマーちゃん中尉を見つめていた。
「今まで空中を漂いながら本を読んでいたピーチ中尉でしたが、突然マーちゃん中尉の目の前まで降りてきました。そのまま攻撃をするのかと思われましたが、何もせずにただ黙ってマーちゃん中尉の事を見つめています。いったいどういう事でしょうか」
「どういう事なんでしょうね。そのあたりは松之助さんが詳しいかと思うのですが?」
「いや、俺にもさっぱりわからないです。試合前に俺がピーチ中尉にマーちゃん中尉を完膚なきまでに叩きのめせとは言ったんですけど、その指示を無視して好き勝手やってるんですよ。ピーチ中尉も一番隊の副隊長補佐なんで俺の命令を聞く義務なんてないんだけど、それでも俺の言うことを聞いてくれたっていいとは思うんだけどな」
「馬鹿じゃないの。そんな命令してまでマーちゃんを恐れるなんて頭おかしいよね。そんなことしなくても普通にしてたらマーちゃんの事なんて簡単に倒せると思うよ。『うまな式魔法術』を習得している相手に対してマーちゃんは有効的な攻撃手段がないんだからわざわざ気を削ぐような命令しても意味ないのにね。ほら、ピーチ中尉は何かマーちゃんに話しかけてるみたいだよ。松之助が期待しているようなことにはならなそうだけど、それで松之助はどうするのかな?」
マーちゃん中尉の味方であるはずの妖精マリモ子の方がマーちゃん中尉の力のなさを感じており、栗鳥院松之助の方がマーちゃん中尉の底知れぬ力に恐怖を感じているという状況であった。どちらも間違えてはいないという事になるのだが、現時点では妖精マリモ子の分析の方が正しいと言えるだろう。
ただし、それも今だけの話であって、これから行われるピーチ中尉の戦闘講座によってマーちゃん中尉の戦闘能力が劇的に高くなってしまうのは誰も止めることが出来ないのである。
「俺はさ、初めてあんたを見たときからもったいないなって思ってたんだよ。だってさ、全系統の魔法を使えるようにするって普通は考えないし、考えたとしても出来るはずがないんだよ。どの系統でも覚えることは出来るけど、順番を間違えると覚えていた魔法を使えなくなることになるだろ。反対属性の魔法なんて普通は覚えられないんだよ。普通はな。中にはあんたのところのイザー二等兵みたいに強力な魔力を使って無理やり使用する例なんかもあるけどさ、普通に考えたら反対属性の魔法を同時に習得することだって避けるんだぜ。お互いに悪い意味で作用しあって消費魔力量が上がって威力が下がっちまうんだもんな。普通の神経してたらそんな魔法を覚えようとなんてしないで得意な魔法を伸ばそうって思うはずなんだよ」
今までも何人か実戦レベルで使用することが出来る範囲で魔法を全種類覚えようとしたものはいた。だが、どう頑張っても全種類を使うことは出来なかったし、実戦レベルで使用するにはマイナス作用が強すぎたのだ。『うまな式魔法術』を使うことが出来る現代においてはそのマイナス面も影響がないくらい威力を底上げすることが出来るようにはなっているけれど、『うまな式魔法術』に頼ったところで『うまな式高等魔法術』を使うことが出来なければ戦闘で何も結果を生み出すことは出来そうもなかったのだった。
「俺が何を言いたいかというと、あんたは全種類の魔法を使うことが出来るんだからもっと強くいてほしいって事なんだよ。今の現状じゃ『うまな式魔法術』を習得している相手に対して何の攻め手もないわけだが、それじゃダメだと思う。それはあんたが一番よく知っていると思うけど、それをどうにかする方法は見つかってないんだろ。その方法なんだけど、俺があんたに教えてやるよ。こんなことを言ってたら松之助に怒られるかもしれないけど、俺は別にあんたにも栗宮院うまな中将にも何の恨みもないからな。むしろ、栗宮院うまな中将には感謝してるだぜ。彼女のおかげで俺は空を飛ぶことが出来るようになったし、この国も昔の伝承みたいに夜中でも一人で出歩けるようになったんだからな。その恩返しってわけじゃないけど、俺が見つけた魔法の正しい使い方ってのを教えてやるよ」
ピーチ中尉の言葉を聞いた栗鳥院松之助は狂ったように暴れだしてしまったのだが、そんなことは知らぬピーチ中尉がマーちゃん中尉に魔法の正しい使い方を教えていた。
暴れている栗鳥院松之助を抑えたのは誰でもない、解説の宇藤さんだった。
ほぼ名誉職と言っていいほど実戦経験もなく戦闘能力も高くない栗鳥院松之助とはいえ、現役の副隊長補佐なのだ。そんな彼をやすやすと取り押さえることが出来た宇藤さんは映像を見ていた多くの視聴者に驚きを与えていたのだ。
「それじゃ、講義はこれくらいにして、その身でしっかりと体験してくれよ。俺の本気はちょっとばかし痛いかもしれないけど、あんたなら十分に耐えられるはずだからな」
ピーチ中尉は再び空に上がっていったのだが、先ほどとは違ってその手に何も持ってはいなかった。
しばらくとんでいたピーチ中尉が見えなくなったと思っていると、何かが物凄い勢いで落下してきた。
誰もがピーチ中尉が下りてきたのだと思っていたのだけれど、その姿はカメラに映ることはなく何かを破裂させたかのような音が一定の感覚で鳴り響いていた。
そして、強烈な爆発音とともに固定カメラの画角からマーちゃん中尉が一瞬で消えてしまった。カメラがとらえきれないスピードでマーちゃん中尉の体は吹っ飛んでいったのだが、その姿を捉えたカメラは一台も存在しなかった。
結果的にはマーちゃん中尉はまた一撃で沈んでしまったのだけれど、その事にみんなが気付いたのは決着がついてから数分経った後の話であった。
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