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マッス曹長とマーちゃん中尉
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まさかまさかの二連敗を喫したマーちゃん中尉に対する世間の評価は急降下していた。もっとも、入隊試験が始まる前からマーちゃん中尉の事を知っている人たちはマーちゃん中尉が対人戦では何の役にも立たないという事を知っていたので評価なんて何も変わることはなかったのだ。それよりも、マーちゃん中尉が逃げずに格上の相手と戦ったことに対して最大限の賛辞を贈る者すらいたほどなのだ。
「二連敗して褒められるなんてさすがですね。マーちゃんの事をちゃんと理解していない人たちが多いのは気になりますけどね」
イザー二等兵は寄せられてきたコメントを一つ一つ確認しているのだが、マーちゃん中尉の戦いに失望している人たちが全員自分との闘いを引き合いに出しているのが少し気にかかっていた。あの戦いはエンターテインメントとして楽しんでもらうのが目的だったので本気なんて出していないのだけれど、この七番勝負が終わったら大人気もなく本気で戦ってみてもいいかもしれないと思うイザー二等兵であった。
「あの、なんか怖い顔で俺の事を見てる気がするんだけど、何かあった?」
「別に。何にもないけど」
身に覚えのないことでなるべく気にしないようにとしていたマーちゃん中尉であったのだが、視線をイザー二等兵から外して横を見ると妖精マリモ子が苦笑いを浮かべていた。
「まあまあ、そんなに二人とも難しい顔してないでさ、次にマーちゃんが戦う相手の事を考えようよ。ね、もしかしたら次の相手は勝てるかもしれないよ」
妖精マリモ子だって本当はマーちゃん中尉に勝てる見込みなんて無いという事はわかっていた。マーちゃん中尉もそれは重々承知なのだが、イザー二等兵だけは本当にマーちゃん中尉が勝てるのではないかと考えていたのだ。
「もしかしたらだけど、マーちゃんがあの女に勝てる方法があるかもしれないよ」
「え?」
思いもよらぬ発言を聞いて二人同時に驚いてしまったマーちゃん中尉と妖精マリモ子ではあった。そんな二人の様子を見て、息がぴったり合っていることに不快感を覚えたイザー二等兵ではあったが、マーちゃん中尉がどうしたら次の対戦相手であるマッス曹長に勝てるのかというプランを説明していた。
「つまり、マーちゃんがイザーちゃんと戦った時みたいに、効果が有ろうが無かろうがむやみやたらに魔法を使いまくるって事なんだよね?」
「そうそう、それが大事なの。ダメージが全くなくて何の意味もない行動にしか思えないけど、それを行うことによって一般観衆もマーちゃんが強いんじゃないかって錯覚するし、攻撃されている方は意味が無い攻撃だったとしてもいろんな種類の攻撃をむやみやたらに繰り返されるのってストレスに感じるんだよね。効果が無いって言ってもちゃんと対処してないと反撃にうつることも出来ないし、一方的にやられるってことになるからね。反撃のいとまを与えないくらい連続して攻撃を繰り返すことでマーちゃんの勝機が見えてくるって話だよ」
その話を聞いて少しだけそうかもしれないと思った妖精マリモ子とそんなことが起こるはずがないと思っているマーちゃん中尉では明らかに表情に差があり過ぎた。自分の事を信じてくれている妖精マリモ子の事を少しだけ好きになったイザー二等兵であった。
「マーちゃんはもう少し自分の事を信じてみた方が良いと思うんだ。ほら、私を追い詰めることが出来たあのバカみたいな連続攻撃をもう一度思い出してみてよ。そうすればあの乳デカ女にぎゃふんと言わせることが出来ると思うからね」
「お、おう」
あまり深く追及しない方が良いと感じたマーちゃん中尉とそこが理由だったのかとわかってしまった妖精マリモ子はお互いにひきつった笑顔で何かを確認するかのように小さく頷いていたのだった。
「マーちゃん中尉はマッス曹長に対して何か秘策があると伺っているのですが、それはこの場で教えてもらうことが可能でしょうか?」
水城アナウンサーはゲスト解説の妖精マリモ子に話を振っていたのだが、それを遮るように栗鳥院松之助がいつもの調子で思っていることを素直に口に出していた。
「マッス曹長がマーちゃん中尉に負けるはずがないので秘策なんてあるわけないでしょ。そんなモノがあるんだったら、シュガー軍曹もミルク伍長もやられてたんじゃないですかね。そんなモノがないからこそ、マーちゃん中尉は我々に手も足も出なかったという事なんじゃないですかね」
「そんなことないもん。マーちゃんはあんな女に負けないってイザーちゃんも言ってたもん。イザーちゃんが考えた秘策があるからマーちゃんは負けないって私は思ってるもん」
「言ったな。その言葉に責任持てよ。マーちゃんが負けたら罰ゲームをしてもらうからな。それでもいいってことだよな?」
「マーちゃんはお前らなんかに負けないもん。今まで二回負けてたのは何の対策も立てないで適当に戦ってたからだし。今回はちゃんとした作戦があるからお前の方が負ける番だからな」
「このように各陣営が気合十分と言ったようですが、そろそろエキシビジョンマッチが始まりそうです。お二人の意見を聞いて宇藤さんはどうお考えになりますか?」
「そうですね。マーちゃん中尉の作戦も気になりますが、遠距離狙撃を得意とするマッス曹長がどのような戦い方をするのか気になりますね」
試合開始の合図と同時にマーちゃん中尉は渾身の魔法を叩き込むところであったが、その隙間を付くように一筋の光がマーちゃん中尉の脳天を貫いていた。
マーちゃんはそのまま膝から崩れ落ちると前のめりに倒れてしまった。攻撃が始まる直前の無防備な状態で頭を貫かれたマーちゃん中尉は秘策を行う前に敗れてしまったのだった。
何が起こったのかわからず解説も実況も出来ない四人ではあったが、沈黙を打ち破ったのは栗鳥院松之助であった。
「なんだかよくわかんないけどマッス曹長が勝ったってことだよな。マーちゃん中尉の秘策が何なのかわからなかったけど、勝負がついた以上はそんなのなんてどうでもいいってことだよな。よし、マリモ子ちゃんには罰ゲームをしてもらうからな」
この発言を聞いてドン引きしていた三人ではあった。それと同時に多くの視聴者も引いていたとは思うのだが、一部存在していると言われている妖精マリモ子のファンは喜んでいたという噂が立っていたのだった。
「二連敗して褒められるなんてさすがですね。マーちゃんの事をちゃんと理解していない人たちが多いのは気になりますけどね」
イザー二等兵は寄せられてきたコメントを一つ一つ確認しているのだが、マーちゃん中尉の戦いに失望している人たちが全員自分との闘いを引き合いに出しているのが少し気にかかっていた。あの戦いはエンターテインメントとして楽しんでもらうのが目的だったので本気なんて出していないのだけれど、この七番勝負が終わったら大人気もなく本気で戦ってみてもいいかもしれないと思うイザー二等兵であった。
「あの、なんか怖い顔で俺の事を見てる気がするんだけど、何かあった?」
「別に。何にもないけど」
身に覚えのないことでなるべく気にしないようにとしていたマーちゃん中尉であったのだが、視線をイザー二等兵から外して横を見ると妖精マリモ子が苦笑いを浮かべていた。
「まあまあ、そんなに二人とも難しい顔してないでさ、次にマーちゃんが戦う相手の事を考えようよ。ね、もしかしたら次の相手は勝てるかもしれないよ」
妖精マリモ子だって本当はマーちゃん中尉に勝てる見込みなんて無いという事はわかっていた。マーちゃん中尉もそれは重々承知なのだが、イザー二等兵だけは本当にマーちゃん中尉が勝てるのではないかと考えていたのだ。
「もしかしたらだけど、マーちゃんがあの女に勝てる方法があるかもしれないよ」
「え?」
思いもよらぬ発言を聞いて二人同時に驚いてしまったマーちゃん中尉と妖精マリモ子ではあった。そんな二人の様子を見て、息がぴったり合っていることに不快感を覚えたイザー二等兵ではあったが、マーちゃん中尉がどうしたら次の対戦相手であるマッス曹長に勝てるのかというプランを説明していた。
「つまり、マーちゃんがイザーちゃんと戦った時みたいに、効果が有ろうが無かろうがむやみやたらに魔法を使いまくるって事なんだよね?」
「そうそう、それが大事なの。ダメージが全くなくて何の意味もない行動にしか思えないけど、それを行うことによって一般観衆もマーちゃんが強いんじゃないかって錯覚するし、攻撃されている方は意味が無い攻撃だったとしてもいろんな種類の攻撃をむやみやたらに繰り返されるのってストレスに感じるんだよね。効果が無いって言ってもちゃんと対処してないと反撃にうつることも出来ないし、一方的にやられるってことになるからね。反撃のいとまを与えないくらい連続して攻撃を繰り返すことでマーちゃんの勝機が見えてくるって話だよ」
その話を聞いて少しだけそうかもしれないと思った妖精マリモ子とそんなことが起こるはずがないと思っているマーちゃん中尉では明らかに表情に差があり過ぎた。自分の事を信じてくれている妖精マリモ子の事を少しだけ好きになったイザー二等兵であった。
「マーちゃんはもう少し自分の事を信じてみた方が良いと思うんだ。ほら、私を追い詰めることが出来たあのバカみたいな連続攻撃をもう一度思い出してみてよ。そうすればあの乳デカ女にぎゃふんと言わせることが出来ると思うからね」
「お、おう」
あまり深く追及しない方が良いと感じたマーちゃん中尉とそこが理由だったのかとわかってしまった妖精マリモ子はお互いにひきつった笑顔で何かを確認するかのように小さく頷いていたのだった。
「マーちゃん中尉はマッス曹長に対して何か秘策があると伺っているのですが、それはこの場で教えてもらうことが可能でしょうか?」
水城アナウンサーはゲスト解説の妖精マリモ子に話を振っていたのだが、それを遮るように栗鳥院松之助がいつもの調子で思っていることを素直に口に出していた。
「マッス曹長がマーちゃん中尉に負けるはずがないので秘策なんてあるわけないでしょ。そんなモノがあるんだったら、シュガー軍曹もミルク伍長もやられてたんじゃないですかね。そんなモノがないからこそ、マーちゃん中尉は我々に手も足も出なかったという事なんじゃないですかね」
「そんなことないもん。マーちゃんはあんな女に負けないってイザーちゃんも言ってたもん。イザーちゃんが考えた秘策があるからマーちゃんは負けないって私は思ってるもん」
「言ったな。その言葉に責任持てよ。マーちゃんが負けたら罰ゲームをしてもらうからな。それでもいいってことだよな?」
「マーちゃんはお前らなんかに負けないもん。今まで二回負けてたのは何の対策も立てないで適当に戦ってたからだし。今回はちゃんとした作戦があるからお前の方が負ける番だからな」
「このように各陣営が気合十分と言ったようですが、そろそろエキシビジョンマッチが始まりそうです。お二人の意見を聞いて宇藤さんはどうお考えになりますか?」
「そうですね。マーちゃん中尉の作戦も気になりますが、遠距離狙撃を得意とするマッス曹長がどのような戦い方をするのか気になりますね」
試合開始の合図と同時にマーちゃん中尉は渾身の魔法を叩き込むところであったが、その隙間を付くように一筋の光がマーちゃん中尉の脳天を貫いていた。
マーちゃんはそのまま膝から崩れ落ちると前のめりに倒れてしまった。攻撃が始まる直前の無防備な状態で頭を貫かれたマーちゃん中尉は秘策を行う前に敗れてしまったのだった。
何が起こったのかわからず解説も実況も出来ない四人ではあったが、沈黙を打ち破ったのは栗鳥院松之助であった。
「なんだかよくわかんないけどマッス曹長が勝ったってことだよな。マーちゃん中尉の秘策が何なのかわからなかったけど、勝負がついた以上はそんなのなんてどうでもいいってことだよな。よし、マリモ子ちゃんには罰ゲームをしてもらうからな」
この発言を聞いてドン引きしていた三人ではあった。それと同時に多くの視聴者も引いていたとは思うのだが、一部存在していると言われている妖精マリモ子のファンは喜んでいたという噂が立っていたのだった。
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