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ルーちゃんと私
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戦いに身を置いているモノであれば一つくらいは異名があったりするものなのだろうが、今回入隊希望試験を受けるルーちゃんはクリーピーガールと呼ばれているそうだ。こんなに可憐で清楚な印象のあるルーちゃんがそのように呼ばれているのか、直接戦えばわかるという事らしい。
一度戦った相手とは二度と戦うことがない。そんな経歴も異名に関係しているのかもしれない。だが、そんなことをいちいち気にするようなイザーちゃんではないのだ。どんな相手であっても戦って決着をつける。それだけの話なのだ。
「本当はもっとイザーさんの事を知ってから戦いたいなって思ってたんですよ。思ってたんですけど、今までイザーさんと戦ってきた人ってみんな弱かったじゃないですか。これからもずっとそんな感じで弱い人とばっかり戦うことになっちゃうのかなって思うと、私がイザーさんに挑まなきゃいけないんじゃないかって思ったんです。だって、イザーさんって試験が終わった後にいつも物足りなさそうな顔してますもんね。マーちゃんと戦った後は満足そうな顔してますけど、この試験ってつまんないって思ってますよね?」
実際にそう思っているのかもしれないが、イザー二等兵は今まで戦ってきた相手にも一応敬意を払ってそんなことはないと否定していた。否定はしているのだが、ルーちゃんが言ったことが的を射ていることを誰もがわかっていた。
「やっぱりイザーさんって優しいですよね。優しいって言うか、自分より弱い相手に対して気を使っているんですかね。そんな感じがするんですけど、そんなところって私と似てると思うんですよ。イザーさんと私って似てると思いませんか?」
「ごめん、ちょっとそれはわからないかも。私はあなたの事を何も知らないから」
「そうですよね。イザーさんは私の事なんて何も知らないですよね。でも、私もイザーさんの事はほとんど知らないようなものだから大丈夫です。お互いに少しずつ知っていけばいいだけの話ですからね。まずは、お互いに好きな物とか教えあいましょうよ」
「私の事を気に入ってくれてるってのは嬉しいんだけどさ、あなたはマーちゃん部隊に入隊したくて試験を受けに来たんじゃないのかな。そんな事をしている暇があるんだったら、少しでも私に対してあなたの強さを見せた方が良いと思うんだけど」
少しだけ感情を出したイザー二等兵ではあったが、そんな様子を見てもルーちゃんは動じることもなく自分の考えを一方的にまくしたてていた。
「マーちゃん部隊の試験を受けに来たのはイザーさんと一緒に過ごせるって思ったからなんです。私はイザーさんと同じ時間を過ごすことが出来ればそれでいいんですよ。イザーさんは覚えてないと思いますけど、二年前にうまなさんがやっていた『うまな式魔法術』の説明会を受けに行ったときに私たちは出会ってるんですよ。その時には遠くにいたんでお話とかできなかったんですけど、今はこうして二人っきりでお話も出来るようになって嬉しいです。『うまな式魔法術』は私にはちょっと難しいところもあるんですけど、イザーさんと一緒だったら苦手でも頑張れると思うんです。ねえ、私も『うまな式魔法術』を覚えた方が良いと思うかな。その方がイザーちゃんにとっても嬉しかったりするのかな?」
試験の開始はすでに告げられているのだが、いつまで経っても話をやめようとしないルーちゃんに付き合っているイザー二等兵も少しイラ立っているように見えていた。
「ねえ、戦うつもりがないんだったらもう試験をやめてもいいんだけど、戦わずに終わりにしてもいいのかな?」
「ごめんなさい。憧れのイザーちゃんと戦えるって思ったら嬉しくなってきちゃって余計なことばかり言っちゃったね。でも、戦う前にお話をしておかないとイザーちゃんと話す機会無くなっちゃうと思ったから許してほしいな。だって、イザーちゃんも私と一度戦ったらもう戦いたくないって言っちゃうと思うんだ」
「私はあなたと戦いたくないとは思わないけど。どんな相手でも別に気にしないし」
「やっぱりイザーちゃんは優しいんだね。でも、私と戦う前はみんなそう言ってくれるんだ。だから、イザーちゃんが私に負けた後にもう二度と戦いたくないって思っても仕方ないとは思うよ。私に負けた人って、みんな私と戦いたくないって言うんだもん。イザーちゃんだってそう言うと思うんだよね」
先ほどよりもイザー二等兵は怒っているように見えていた。口調も柔らかく笑顔も浮かべて入るのにもかかわらず、イザー二等兵が背後に滲み出ている魔力が非常にとげとげしいものになっていたのだ。おそらく、無意識のうちに放出されているものだとは思うのだが、それはイザー二等兵の心のありようを示しているようにも見えていた。
それに対してルーちゃんの影も少し大きくなっているように見えるのだが、太陽がほぼ真上にあるにもかかわらず影が伸びているのはイザー二等兵の魔力が何らかの影響を与えているからなのかもしれない。
「あのさ、馴れ馴れしく話してくるのは別に気にしてないからいいんだけど、私が負ける前提なのはどうしてなのかな。私がなんであなたごときに負けるって本気で思ってるのか理由を知りたいんだけど。どんなに凄い魔法を使えるんだとしても、私は絶対にあなたになんて負けるはずがないんだよ。私とマーちゃんの戦いを見た後でもその自信があるってのは驚きなんだけど、あれを見てもまだ私に勝てるって思ってるのって、ちょっと自惚れすぎなんじゃないかな?」
イザー二等兵が入隊希望者に対して感情をあらわにしたのはとても珍しい出来事だった。これ以降もほとんど見ることが出来ないイザー二等兵の姿を見る貴重な瞬間であったのだ。特に、泣き叫ぶイザー二等兵の姿は今日の観客以外に目撃したものはいないのである。
一度戦った相手とは二度と戦うことがない。そんな経歴も異名に関係しているのかもしれない。だが、そんなことをいちいち気にするようなイザーちゃんではないのだ。どんな相手であっても戦って決着をつける。それだけの話なのだ。
「本当はもっとイザーさんの事を知ってから戦いたいなって思ってたんですよ。思ってたんですけど、今までイザーさんと戦ってきた人ってみんな弱かったじゃないですか。これからもずっとそんな感じで弱い人とばっかり戦うことになっちゃうのかなって思うと、私がイザーさんに挑まなきゃいけないんじゃないかって思ったんです。だって、イザーさんって試験が終わった後にいつも物足りなさそうな顔してますもんね。マーちゃんと戦った後は満足そうな顔してますけど、この試験ってつまんないって思ってますよね?」
実際にそう思っているのかもしれないが、イザー二等兵は今まで戦ってきた相手にも一応敬意を払ってそんなことはないと否定していた。否定はしているのだが、ルーちゃんが言ったことが的を射ていることを誰もがわかっていた。
「やっぱりイザーさんって優しいですよね。優しいって言うか、自分より弱い相手に対して気を使っているんですかね。そんな感じがするんですけど、そんなところって私と似てると思うんですよ。イザーさんと私って似てると思いませんか?」
「ごめん、ちょっとそれはわからないかも。私はあなたの事を何も知らないから」
「そうですよね。イザーさんは私の事なんて何も知らないですよね。でも、私もイザーさんの事はほとんど知らないようなものだから大丈夫です。お互いに少しずつ知っていけばいいだけの話ですからね。まずは、お互いに好きな物とか教えあいましょうよ」
「私の事を気に入ってくれてるってのは嬉しいんだけどさ、あなたはマーちゃん部隊に入隊したくて試験を受けに来たんじゃないのかな。そんな事をしている暇があるんだったら、少しでも私に対してあなたの強さを見せた方が良いと思うんだけど」
少しだけ感情を出したイザー二等兵ではあったが、そんな様子を見てもルーちゃんは動じることもなく自分の考えを一方的にまくしたてていた。
「マーちゃん部隊の試験を受けに来たのはイザーさんと一緒に過ごせるって思ったからなんです。私はイザーさんと同じ時間を過ごすことが出来ればそれでいいんですよ。イザーさんは覚えてないと思いますけど、二年前にうまなさんがやっていた『うまな式魔法術』の説明会を受けに行ったときに私たちは出会ってるんですよ。その時には遠くにいたんでお話とかできなかったんですけど、今はこうして二人っきりでお話も出来るようになって嬉しいです。『うまな式魔法術』は私にはちょっと難しいところもあるんですけど、イザーさんと一緒だったら苦手でも頑張れると思うんです。ねえ、私も『うまな式魔法術』を覚えた方が良いと思うかな。その方がイザーちゃんにとっても嬉しかったりするのかな?」
試験の開始はすでに告げられているのだが、いつまで経っても話をやめようとしないルーちゃんに付き合っているイザー二等兵も少しイラ立っているように見えていた。
「ねえ、戦うつもりがないんだったらもう試験をやめてもいいんだけど、戦わずに終わりにしてもいいのかな?」
「ごめんなさい。憧れのイザーちゃんと戦えるって思ったら嬉しくなってきちゃって余計なことばかり言っちゃったね。でも、戦う前にお話をしておかないとイザーちゃんと話す機会無くなっちゃうと思ったから許してほしいな。だって、イザーちゃんも私と一度戦ったらもう戦いたくないって言っちゃうと思うんだ」
「私はあなたと戦いたくないとは思わないけど。どんな相手でも別に気にしないし」
「やっぱりイザーちゃんは優しいんだね。でも、私と戦う前はみんなそう言ってくれるんだ。だから、イザーちゃんが私に負けた後にもう二度と戦いたくないって思っても仕方ないとは思うよ。私に負けた人って、みんな私と戦いたくないって言うんだもん。イザーちゃんだってそう言うと思うんだよね」
先ほどよりもイザー二等兵は怒っているように見えていた。口調も柔らかく笑顔も浮かべて入るのにもかかわらず、イザー二等兵が背後に滲み出ている魔力が非常にとげとげしいものになっていたのだ。おそらく、無意識のうちに放出されているものだとは思うのだが、それはイザー二等兵の心のありようを示しているようにも見えていた。
それに対してルーちゃんの影も少し大きくなっているように見えるのだが、太陽がほぼ真上にあるにもかかわらず影が伸びているのはイザー二等兵の魔力が何らかの影響を与えているからなのかもしれない。
「あのさ、馴れ馴れしく話してくるのは別に気にしてないからいいんだけど、私が負ける前提なのはどうしてなのかな。私がなんであなたごときに負けるって本気で思ってるのか理由を知りたいんだけど。どんなに凄い魔法を使えるんだとしても、私は絶対にあなたになんて負けるはずがないんだよ。私とマーちゃんの戦いを見た後でもその自信があるってのは驚きなんだけど、あれを見てもまだ私に勝てるって思ってるのって、ちょっと自惚れすぎなんじゃないかな?」
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