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年下だけど後輩のお姉さん
第六話
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一人だけで待っていると何をしていいのかわからなくて無意味に本棚に並んでいるのはどんな感じの本なのか眺めていた。漫画も少しはあるのだけれど、並んでいる本はどれも難しそうな本ばかりで勉強も大変そうだなと思っていた。俺も今こうして勉強を習っているわけなので大変なことには変わりないと思うのだけれど、大学の授業というのは受験勉強とは違った難しさもあるのだと思う。
「お待たせ。この前作ったクッキーがあったから持ってきたよ。静香ちゃん達にも渡してくるんでちょっと行ってくるけど、先に食べててもいいからね」
平野さんは僕の前にクッキーを出してくれたのだ。お店で売っているような綺麗な形のクッキーは家でも見たことがあるような皿に乗っていた。先に食べてても良いと言われたけれど、待っていた方がいいんじゃないかとも思って眺めていたところ、平野さんは何やら慌てた様子で戻ってきたのだ。
「あれ、食べてて良かったのに。もしかして、クッキーってあんまり好きじゃない感じかな?」
「いや、なんとな食べるのがもったいないなって思ってました。それにしても、そんなに慌ててどうしたんですか?」
「一応ノックして返事を待ってから入ったんだけどさ、二人の顔が凄く近くにあったんだよ。メイクをしているんだってわかってはいるんだけど、そんなに近くで見る必要があるのかなってくらい近付いていたの。本当に唇が触れるんじゃないかなってくらいの距離にいたんだけどさ、それを見たら何となく恥ずかしくなってクッキーを置いて出て来ちゃった」
「俺もそんな場面見たら慌てて逃げ出しちゃうかもしれないです。でも、メイクってそんなに近くで確認するもんなんですか?」
「普通はそんなに近くによって確認なんてしないと思うよ。目元とか気になったら鏡に近付くことはあるけどね。でも、静香ちゃんは何も持ってなかったと思うんだよね」
「まあ、そういう事もあるんでしょうね。俺は化粧とかしたことないからよくわからないですけど、気になるところを見てたとかじゃないですかね」
「そういう事にしておくかな。私は静香ちゃんと幸子ちゃんが仲良くなってくれるんだったらそれでいいしね。吉野君はお姉ちゃんが女性と付き合うとかって嫌な気持ちになるかな?」
「どうですかね。今まで考えたことは無いですけど、姉ちゃんも最近は楽しそうにしてるしいいんじゃないですかね。変な男に引っかかるよりはいいと思いますよ。でも、そういうのとも違うような気がするんですよね」
「そうなんだ。何か最近変わった事とかあったりするかな?」
家での姉ちゃんは普段とあまり変わっている様子は見られない。スマホも部屋に置きっぱなしにしている事が多いし、どこかへ遊びに行くこともめっきり減っていた。こうして俺と一緒に平野さんの家に来ること以外は何もしていないんじゃないかと思うくらいに家にいるようになっている。たまにコンビニに何かを買いに行くこともあるみたいだけれど、それだって三十分もしないで帰ってくるのだ。
「最近の姉ちゃんはずっと家にいるような気がするんですよ。俺がバイトから帰った時は家にいるようになってるんですけど、前までは俺よりも遅く返ってくることも多かったんで変わったと言えばそれくらいですかね」
「そうなんだね。静香ちゃんも前までは課題だ提出物だって言って遅くまで帰ってこないことも多かったんだけどさ、最近は私よりも先に帰って来てることが多くなってるんだ。晩御飯も用意してくれたりするし、掃除とかもしてくれてるんだよね。時間にゆとりが出来たのかなって思って聞いてみても、学校自体は前と何も変わってないみたいなんだって。学校に慣れてきて自分のペースが見つかったのかなとも思うんだけど、幸子ちゃんと仲良くなってから心にもゆとりが出来たのかもしれないね。それは良いことだと思うんだけど、ずっと一緒にいる私ではそうならなかったんだって思うと少し寂しいかも」
平野さんは少しだけ寂しそうな顔をしていた。僕はそれにかける言葉を見付けることは出来なかったのでクッキーを褒めることにした。実際に食べてみるとお店で買うものと同じくらい美味しかったし、見た目も綺麗だったのだ。家で見たことがあるような皿ではあったけれど、一枚紙が敷いてあるという事も褒めてみた。少ない語彙力ではあったけれど、俺は落ち込んでいるように見える平野さんを元気にさせようと一生懸命に言葉を選んでいたのだ。
「ありがとう。吉野君は優しいね。でも、大丈夫だよ。私は静香ちゃんの事は好きだけど、それは友達としてだからね。お互いに恋人が出来てもこの家の事はちゃんとしようって約束もしてるからさ。あれ、恋人が出来ても家の事をちゃんとしようって、急に家事をやるようになったのってそういう事なのかな。もしもそうだとしたら、急に料理とか掃除とかするようになったのって」
「それって、直接聞いたりしないんですか?」
「聞けば早いんだと思うけど、何となく聞けないんだよね。付き合ってるとしたらそれはそれでいいんだけど、付き合ってないってなったら私が嫉妬してるみたいで変に思われそうだし」
「じゃあ、俺が後で姉ちゃんに聞いてみますよ。本当のことを言ってくれるかわからないですけど」
「大丈夫だよ。気を遣ってくれてありがとうね。私は二人が付き合ってても付き合ってなくてもいいと思ってるんだ。静香ちゃんにはイイ人見つかって欲しいなってずっと思ってたからね。幸子ちゃんなら大丈夫だって思うんだよ。だって、吉野君のお姉さんだからね」
「お待たせ。この前作ったクッキーがあったから持ってきたよ。静香ちゃん達にも渡してくるんでちょっと行ってくるけど、先に食べててもいいからね」
平野さんは僕の前にクッキーを出してくれたのだ。お店で売っているような綺麗な形のクッキーは家でも見たことがあるような皿に乗っていた。先に食べてても良いと言われたけれど、待っていた方がいいんじゃないかとも思って眺めていたところ、平野さんは何やら慌てた様子で戻ってきたのだ。
「あれ、食べてて良かったのに。もしかして、クッキーってあんまり好きじゃない感じかな?」
「いや、なんとな食べるのがもったいないなって思ってました。それにしても、そんなに慌ててどうしたんですか?」
「一応ノックして返事を待ってから入ったんだけどさ、二人の顔が凄く近くにあったんだよ。メイクをしているんだってわかってはいるんだけど、そんなに近くで見る必要があるのかなってくらい近付いていたの。本当に唇が触れるんじゃないかなってくらいの距離にいたんだけどさ、それを見たら何となく恥ずかしくなってクッキーを置いて出て来ちゃった」
「俺もそんな場面見たら慌てて逃げ出しちゃうかもしれないです。でも、メイクってそんなに近くで確認するもんなんですか?」
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「まあ、そういう事もあるんでしょうね。俺は化粧とかしたことないからよくわからないですけど、気になるところを見てたとかじゃないですかね」
「そういう事にしておくかな。私は静香ちゃんと幸子ちゃんが仲良くなってくれるんだったらそれでいいしね。吉野君はお姉ちゃんが女性と付き合うとかって嫌な気持ちになるかな?」
「どうですかね。今まで考えたことは無いですけど、姉ちゃんも最近は楽しそうにしてるしいいんじゃないですかね。変な男に引っかかるよりはいいと思いますよ。でも、そういうのとも違うような気がするんですよね」
「そうなんだ。何か最近変わった事とかあったりするかな?」
家での姉ちゃんは普段とあまり変わっている様子は見られない。スマホも部屋に置きっぱなしにしている事が多いし、どこかへ遊びに行くこともめっきり減っていた。こうして俺と一緒に平野さんの家に来ること以外は何もしていないんじゃないかと思うくらいに家にいるようになっている。たまにコンビニに何かを買いに行くこともあるみたいだけれど、それだって三十分もしないで帰ってくるのだ。
「最近の姉ちゃんはずっと家にいるような気がするんですよ。俺がバイトから帰った時は家にいるようになってるんですけど、前までは俺よりも遅く返ってくることも多かったんで変わったと言えばそれくらいですかね」
「そうなんだね。静香ちゃんも前までは課題だ提出物だって言って遅くまで帰ってこないことも多かったんだけどさ、最近は私よりも先に帰って来てることが多くなってるんだ。晩御飯も用意してくれたりするし、掃除とかもしてくれてるんだよね。時間にゆとりが出来たのかなって思って聞いてみても、学校自体は前と何も変わってないみたいなんだって。学校に慣れてきて自分のペースが見つかったのかなとも思うんだけど、幸子ちゃんと仲良くなってから心にもゆとりが出来たのかもしれないね。それは良いことだと思うんだけど、ずっと一緒にいる私ではそうならなかったんだって思うと少し寂しいかも」
平野さんは少しだけ寂しそうな顔をしていた。僕はそれにかける言葉を見付けることは出来なかったのでクッキーを褒めることにした。実際に食べてみるとお店で買うものと同じくらい美味しかったし、見た目も綺麗だったのだ。家で見たことがあるような皿ではあったけれど、一枚紙が敷いてあるという事も褒めてみた。少ない語彙力ではあったけれど、俺は落ち込んでいるように見える平野さんを元気にさせようと一生懸命に言葉を選んでいたのだ。
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