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何故か後輩に健康器具をプレゼントすることになった

第一話

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 休みの日に買い物に出かけようと思い立ったのだが、普段とは違う駅で降りてしまったのが全ての不幸の始まりであった。
「あ、先輩。こんなところで何してるんですか?」
「何って、ちょっと買い物に来ただけなんだけど、お前こそ何してるの?」
「何してるのって、私はこれから彼氏とデートするんですよ。先輩の彼女さんはどこにいるんですか?」
「お前、俺に彼女がいないこと知っててわざと言ってるよな?」
「あれ、先輩って独り身でしたか。カッコいいから彼女いるのかと思ってました。あ、私も彼氏いないっての忘れてました。こんなに可愛いのに彼氏いないなんて信じられないですよね」
「ああそうだな。じゃあ、俺はこれから買い物行くんでまた月曜に」
「ちょっと待ってくださいよ。私の事を置いて行こうとするなんて人でなしですよ。ろくでなしですよ。人さらいですよ」
「さすがにそれは言いすぎだろ。ってか、お前だって用事があるからここに居たんだろ。俺にかまってないで自分の用事を済ませちゃえよ」
「それなら大丈夫です。私は特にやることも無いんで映画でも見ようと思ってここに来ただけですから。映画見るよりも先輩を見てた方が楽しそうだしお金も使わなそうだからついて行きます。ね、先輩も私みたいな可愛い女の子を連れていた方がいいですって。男一人で寂しい時間を過ごすよりも私みたいな可愛い女の子と一緒にいた方が絶対に良いですって。ね、先輩」
 俺は本来人から避けられるような見た目をしているのだ。目つきだって悪いと思うし体格も人並み以上に立派なので威圧的だと自分でも理解している。そのお陰なのか学生の頃から不良に絡まれることも多かったのでそれなりに喧嘩なんかもやってきたのだ。後輩だけじゃなく同期や先輩にまで気を遣われている俺に対してなぜかこの女は馴れ馴れしく話しかけてくるのだ。
「先輩、ここは会社じゃないんですからお前なんて呼ばないでくださいよ。休みの日だけで良いんで私の事はちゃんと名前で呼んでくださいね。そうしたら、私も先輩の事を名前で呼んであげますからね」
「わかったよ鈴木くん。君が付いてくることは拒否しないが、俺は君に合わせて行動したりしないからな」
「もう、そんな他人行儀な言い方はしないでくださいよ。私の事はみんなみたいに愛ちゃんって呼んでいいですから。それとも、呼び捨てで呼んじゃいますか?」
「わかったよ。名前で呼べばいいんだろ。はいはい、Aちゃん」
「ちょっと待ってくださいよ。それはイニシャルですよね。名前じゃないですよね。そんなんだからずっと彼女いないんですよ。女の子にはもっと優しくしてあげなくちゃダメですからね。それに、女の子は好きな人に名前で呼んでもらいたいもんなんですよ」
「え?」
 こいつは今なんて言ったんだ。女の子は好きな人に名前で呼んでもらいたいって言ったのか。好きな人に名前で呼んでもらいたいって、こいつは俺の事が好きなのか?
「まあいいですよ。今日はAちゃんでもBちゃんでも何でもいいです。ちなみに、Bは美人のBですからね」
「うん、悪かったな。皆みたいに愛ちゃんって呼ぶことにするよ」
「ん、それはそれでいいんですけど。どうかしたんですか。顔赤いですよ?」
 なぜかわからないが、こいつと一緒にいるとペースを握られることが多いような気がする。他のやつは俺に何か言ってくることはあまりないという事もあるのだろうが、俺は案外こういう風に何でも言ってくるような奴には弱いのかもしれない。いや、俺が面接試験を受けている時もこんな気持ちになっていたような気がするぞ。そうなると、こいつは俺にとって面接官と同じような存在という事になるのだろうか。その割にはこいつからは変なプレッシャーなんかは感じないような気がするな。
「じゃあ、何か軽く食べちゃいますか。これからお昼になるとどの店も混んじゃうと思いますし、少し何かお腹に入れてから買い物しましょうね。それで、ちょっと遅めにお昼ご飯をとればいいと思いますよ。とりあえず、今はやりの熊さんパンケーキを食べに行きましょうか」
「ちょっと待て、俺はそんなもの食べないって」
「いいからいいから。先輩みたいな見た目の怖い人でも熊さんパンケーキは逃げたりしないですから。あ、先輩ってちょっと見た目が怖いところもあるし、店員さんは逃げるかもしれないですけどね」
「店員は逃げたらダメだろ」
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