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離島編

第二十六話 映像を見返してみたところ

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 鳥島で撮影した映像を見返していたのですが、途中に何か所か音声が途切れ居ている場所があった以外はおかしなところも無いのでした。誰かが映っているとか鳥居が変化するという事も無く、音声が途切れてしまっているところが何か所かあるという事以外はいたって普通の映像だと思いました。
「なんでここだけ音が途切れているんだろう。ヒナミには何か変わったモノとか見えてたりしないかな?」
『特に変わったモノは無いと思いますよ。でも、なんで忍ちゃんが喋ってる時だけ音が途切れたりしてるんですかね。私の声が入らないのはわかりますけど、真白先生の声って普通に聞こえてますもんね』
「俺が話している時は何もおかしくないのにな。なんで忍ちゃんの時だけヒナミが喋ってるみたいになってるんだろう」
『ちょっと待ってくださいよ。私の声ってこの映像みたいに聞き取りにくいって言いたいんですか?』
「そう言う意味じゃないって。ヒナミって幽霊だから基本的に映像に声はのらないだろ。でもさ、時々何かのタイミングでヒナミの声が映像に入っちゃうこともあるんだけどさ、その時も今の忍ちゃんみたいな感じでとぎれとぎれでハッキリとは聞き取れない感じになるじゃない」
『ああ、そう言う意味ですか。また私の事を馬鹿にしているのかと思っちゃいましたよ。でも、なんで一緒に話してた真白先生の声は聞き取れるのに忍ちゃんの声は聞き取りにくくなっちゃってるんでしょうね』
「どうしてなんだろうな。次に鳥島に行った時は音声が変になっている場所を調べてみる必要があるかもな」
 真白先生はその映像を繰り返し見れるようにしてくれたので私は一晩中映像を見て過ごしていたのです。時々真白先生の寝顔を見たりもしていたのですが、私の目にはいつもと変わらない真白先生の姿がそこにはありました。
 朝までずっと同じ映像を繰り返し見ていても変わったところは見つけられませんでした。忍ちゃんが真白先生を起こしに来た時に一緒に見たのですが、忍ちゃんも声が変になっているという事以外はおかしなところを見付けることが出来なかったようです。何か変わったモノでも映っていればよかったのにと思ったりもしたのですけど、そう都合よく何かが見つかるなんてことは無いんですよね。

「今日はいつもより風が強いんで鳥島に行くのはやめた方が良いと思うんですけど、鵜崎先生はどうしても行きたいって思いますか?」
 午前中は風も無く穏やかな天候だったのに伝八さん達が戻ってくる頃になると風もだんだんと強くなってきて海も少し荒れ模様になっていた。鳥島にいく分には問題も無いと思うのだけれど、このまま天気が荒れていくと戻ってくる時間にはボートを出すことが出来なくなってしまっているかもしれないとのことだ。
 天気予報では昼過ぎから深夜にかけて暴風に警戒するようにと注意喚起がされているので船を出してもらうことはやめた方が良いと思うのだけれど、なぜか真白先生も忍ちゃんもいつも以上に鳥島に行きたそうにしているのだった。
『天気予報では夜にかけて風も強くなるって言ってますけど、どうしてそんなに行きたいんですか?』
「何となくだけどさ、天気が荒れる日はあの島で何かが起こってるような気がするんだよね」
「僕も鵜崎先生と同じような気がしてます。ばあちゃんに天気が悪い日は鳥島の方を見ちゃダメだよって言われてたんですけど、それって天気の悪い日には何かあるって事ですよね。もしも、ばあちゃんが言ってた事に意味があるんだとしたら、今日は鳥島に行くべきだと思うんですよ」
『そうは言いますけど、天気が悪くなったら帰ってこれなくなっちゃいますよ。あの島って寝る場所も無いですから野宿になっちゃうと思いますけど』
「それは大丈夫だと思いますよ。天気予報を見た限りでは雨は降らなそうですし、雨が降ったとしてもお社の中に入っちゃえば大丈夫だと思います。ちょっと狭いかもしれないですけど、一晩くらいだったら問題ないと思いますからね。それに、お弁当も用意しちゃいましたから」
 私は危険だと思うんですが、真白先生も忍ちゃんもこんな風の強い日に鳥島に行くことに対して前向きなんですよね。お弁当も用意してあるという事は行く気満々なんだと思いますけど、さすがにコレだけ風が強ければ伝八さんも船を出してくれることなんてないと思うんですよ。漁船では多少の波は大丈夫かもしれないですけど、これから風が強くなって海が荒れてしまうと小さなボートでは転覆してしまう可能性が高いですからね。
 真白先生も忍ちゃんもいつもよりも多くの荷物を持って漁港で伝八さんの帰りを待つことにしたのですが、伝八さんは真白先生と忍ちゃんが荷物をいっぱい持って待っているのを見てあきれたような顔を見せていました。
「こんな天気の時にまで鳥島に行きたいって言うのか?」
「うん、今日みたいな天気の日じゃないとわからないこともあると思うんだよ。僕も真白先生も島に行けさえすれば大丈夫だからさ、船を出してもらってもいいかな?」
「晩御飯の用意はしてあるのか?」
「それは大丈夫。温めれば食べられるようにしてあるから」
「それなら早く乗れ。早くしないとボート出せなくなるからな」
「じいちゃんありがとう」
「まったく。今日の宴会は中止にしないといけないな」
 いつもより荒れている海ではあったけれど、船はそこまで大きく揺れることは無かった。何とかボートに乗って鳥島に上陸する事は出来たのだけれど、いつもは私たちが上陸してもしばらくは見守ってくれていた伝八さんもすぐに船を出して亀島へと戻っていったのだった。
 私は幽霊なので天候の変化なんて気にしないのだけれど、真白先生も忍ちゃんも風が強くて少し歩きにくそうにしている。私が風除けになることが出来ればいいんだけど、そんな事は出来ないので二人には我慢してもらうしかないのだ。
 こんな風の強い日に何が起こるというのかわからないけれど、二人の顔に後悔の色は見られないのであった。
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