44 / 64
離島編
第十六話 忍さんの女性らしい服
しおりを挟む
大きな窓にかかっているカーテンが時折風で揺らめているのだけれど、そこまで強い風は吹いていないので外の様子がわかることは無かった。
天気も良くて外で何かして遊ぶには絶好の機会だとは思うのだけれど、忍さんの部屋はカーテンが閉められており外の様子をうかがう事も出来ないのであった。それは外から中をのぞくことが出来ないという事と同義であるのだ。
鵜崎先生はそんな忍さんの部屋で一人待っているのだ。忍さんは準備をしてくると言って出て行ってすでに十分は経っているように思えていた。虫の鳴き声も風の音も聞こえないこの島でただ黙って待っているという事は永遠にも近い時間に感じてしまうのだけれど、それは私だけが感じているのではなく真白先生もいつもとは違って落ち着きがない様子なので似たように感じている事なのだろう。
「すいません、お待たせしちゃいました」
音もなく扉を開けて忍さんが入ってきたのでそちらを振り向くと、そこに立っていたのはなぜかセーラー服を着ている忍さんだった。
「何でセーラー服なの?」
真白先生は明らかに動揺している様子なのだが、私も忍さんがなぜセーラー服を着ているのかという事を疑問に思っていたのでその答えは知りたかった。ただ、こうしてセーラー服を着ている忍さんは高校生や中学生と言っても信じてしまいそうなくらい幼さを残していたのである。
「えっと、僕が持ってる服の中で一番可愛くて女の子っぽいのは何だろうって考えてみたんですけど、一晩考えてみた結果これになりました。じいちゃんの手伝いをする事が多いから動きやすい服しかなくて、可愛いのって去年まで着てたこの制服しかなかったんですよ。でも、私服でも良かったんであんまり着てなかったんですけど似合ってないですよね」
「そんな事ないよ。一瞬本当に高校生かと思っちゃったからね。でも、制服が汚れたりしたら洗うの面倒じゃない?」
「大丈夫だと思います。たぶん、もう着る機会もないと思いますし。それに、少しでも鵜崎先生に可愛いって思ってもらいたいなって思ってますから。どうですか、僕はちゃんと女の子に見えますか?」
忍さんは髪が短かったり元気いっぱいなところがあったりで男の子っぽいところが多く感じてしまうのだけれど、こうしてスカートを履いている姿を見ると女の子なんだなって感じてしまう。
胸もお尻もそこまで大きいわけではないのだけれど、肩から腕にかけての感じやスラっと伸びた足も男性らしい直線的な感じというよりは女性らしい曲線のように見えているのだ。
「うん、忍さんは可愛いよ。女の子だって聞いてたんで最初にあった時は少し戸惑ったりもしたけどさ、こうして一緒に過ごしてみると可愛い女の子なんだなって感じてるしね。学校でもモテてたんじゃないの?」
「どうでしょうね。あんまりそう言った話題も無かったですよ。他の島の子とかも多かったですし、仲良くなっても学校以外で会うことってないですからね。みんな自分の家族の手伝いとかしてますから、こうして今みたいに二人で会うって事は無かったですよ。あ、二人じゃなかったですね」
その言葉を聞いて二人同時に私の事を見てきたんですけど、私は二人と目を合わさないように顔をそむけてしまいました。二人の事は見たいって思うんですけど、そんな二人に見られるのはちょっと恥ずかしいんですよね。私が見る分にはいいのかもなって思うんですけど、二人から見られるってのは何か違うんじゃないかなって思ってます。勝負ではないけど、何か負けてしまったような気がしちゃうんですよね。
『私の事は気にしないでください。ここに居ますけど、今更邪魔なんてしようとは思わないですから』
忍さんはきっとなんでこの部屋に居座っているんだろうって思ってますよね。私が忍さんの立場だったらそう思ってしまうだろうし、出来ることなら出て行って欲しいって思うでしょう。でも、私にはそれをすることが出来ないのです。窓は開いているので外に出ることも可能だとは思うんですけど、何かのタイミングで窓を閉められてしまうと大変なことになってしまうんですよ。
「ごめんね。ヒナミは俺と同じ空間に滞在してないといけないって決まりがあるんだよ。だから、この部屋にいることになるんだけどさ、気になるなら今日はお話だけして伝八さんの帰りを待つことにしようか」
「うーん、そんな決まりがあるのなら仕方ないですね。わかりました。僕はヒナミさんの事は幽霊なのに怖いって思ったこともないですし、特別な事情があるんだったら大丈夫です。でも、あんまりじっくり見られるのは恥ずかしいかもしれないです」
『そんなにじっくりは見ないですし、なるべく近付いたりもしないようにしますよ。二人の邪魔をすると私も大変なことになっちゃうかもしれないので、この辺で小さくなってます』
この前みたいになっても困りますし、私は本当に邪魔にならないような場所で見守ることにしますよ。応援とかはしないですけど、せっかくの機会なので真白先生が気持ちいいと思うような場所を見付けられたらいいなと思います。
でも、忍さんはあんまり経験も無さそうですし、真白先生を満足させることなんて出来るんでしょうかね。それだけがちょっと心配ですね。
「あの、最初に断っておくんですけど、僕って経験したことが無いんで、間違ってたり良くなかったりしたらごめんなさい」
「そんな事は気にしなくても大丈夫だよ。俺だって経験豊富なわけではないからさ、忍さんのしたいことを好きなようにしてくれたらいいからね」
「わかりました。あと、僕の事は忍さんじゃなくて忍か忍ちゃんって呼んでもらえたら嬉しいです」
経験が少なそうだとは思っていたんですけど、未経験だとは思わなかったですね。でも、ちょっと前まで高校生だったんならおかしい話ではないですよね。その割には、真白先生のモノを口で上手にしてたような気もするんですが、それって天性の才能だったりするんでしょうかね。
あと、忍さんじゃなくていいってのは私にも言ってるように思えるんですけど、私も忍ちゃんって呼んじゃってもいいんでしょうか。それは後で確認する事にしましょう。今はそんな事を聞いて変な空気にしない方が良いでしょうし、そうなったらあとで真白先生に怒られちゃうかもしれないですからね。
天気も良くて外で何かして遊ぶには絶好の機会だとは思うのだけれど、忍さんの部屋はカーテンが閉められており外の様子をうかがう事も出来ないのであった。それは外から中をのぞくことが出来ないという事と同義であるのだ。
鵜崎先生はそんな忍さんの部屋で一人待っているのだ。忍さんは準備をしてくると言って出て行ってすでに十分は経っているように思えていた。虫の鳴き声も風の音も聞こえないこの島でただ黙って待っているという事は永遠にも近い時間に感じてしまうのだけれど、それは私だけが感じているのではなく真白先生もいつもとは違って落ち着きがない様子なので似たように感じている事なのだろう。
「すいません、お待たせしちゃいました」
音もなく扉を開けて忍さんが入ってきたのでそちらを振り向くと、そこに立っていたのはなぜかセーラー服を着ている忍さんだった。
「何でセーラー服なの?」
真白先生は明らかに動揺している様子なのだが、私も忍さんがなぜセーラー服を着ているのかという事を疑問に思っていたのでその答えは知りたかった。ただ、こうしてセーラー服を着ている忍さんは高校生や中学生と言っても信じてしまいそうなくらい幼さを残していたのである。
「えっと、僕が持ってる服の中で一番可愛くて女の子っぽいのは何だろうって考えてみたんですけど、一晩考えてみた結果これになりました。じいちゃんの手伝いをする事が多いから動きやすい服しかなくて、可愛いのって去年まで着てたこの制服しかなかったんですよ。でも、私服でも良かったんであんまり着てなかったんですけど似合ってないですよね」
「そんな事ないよ。一瞬本当に高校生かと思っちゃったからね。でも、制服が汚れたりしたら洗うの面倒じゃない?」
「大丈夫だと思います。たぶん、もう着る機会もないと思いますし。それに、少しでも鵜崎先生に可愛いって思ってもらいたいなって思ってますから。どうですか、僕はちゃんと女の子に見えますか?」
忍さんは髪が短かったり元気いっぱいなところがあったりで男の子っぽいところが多く感じてしまうのだけれど、こうしてスカートを履いている姿を見ると女の子なんだなって感じてしまう。
胸もお尻もそこまで大きいわけではないのだけれど、肩から腕にかけての感じやスラっと伸びた足も男性らしい直線的な感じというよりは女性らしい曲線のように見えているのだ。
「うん、忍さんは可愛いよ。女の子だって聞いてたんで最初にあった時は少し戸惑ったりもしたけどさ、こうして一緒に過ごしてみると可愛い女の子なんだなって感じてるしね。学校でもモテてたんじゃないの?」
「どうでしょうね。あんまりそう言った話題も無かったですよ。他の島の子とかも多かったですし、仲良くなっても学校以外で会うことってないですからね。みんな自分の家族の手伝いとかしてますから、こうして今みたいに二人で会うって事は無かったですよ。あ、二人じゃなかったですね」
その言葉を聞いて二人同時に私の事を見てきたんですけど、私は二人と目を合わさないように顔をそむけてしまいました。二人の事は見たいって思うんですけど、そんな二人に見られるのはちょっと恥ずかしいんですよね。私が見る分にはいいのかもなって思うんですけど、二人から見られるってのは何か違うんじゃないかなって思ってます。勝負ではないけど、何か負けてしまったような気がしちゃうんですよね。
『私の事は気にしないでください。ここに居ますけど、今更邪魔なんてしようとは思わないですから』
忍さんはきっとなんでこの部屋に居座っているんだろうって思ってますよね。私が忍さんの立場だったらそう思ってしまうだろうし、出来ることなら出て行って欲しいって思うでしょう。でも、私にはそれをすることが出来ないのです。窓は開いているので外に出ることも可能だとは思うんですけど、何かのタイミングで窓を閉められてしまうと大変なことになってしまうんですよ。
「ごめんね。ヒナミは俺と同じ空間に滞在してないといけないって決まりがあるんだよ。だから、この部屋にいることになるんだけどさ、気になるなら今日はお話だけして伝八さんの帰りを待つことにしようか」
「うーん、そんな決まりがあるのなら仕方ないですね。わかりました。僕はヒナミさんの事は幽霊なのに怖いって思ったこともないですし、特別な事情があるんだったら大丈夫です。でも、あんまりじっくり見られるのは恥ずかしいかもしれないです」
『そんなにじっくりは見ないですし、なるべく近付いたりもしないようにしますよ。二人の邪魔をすると私も大変なことになっちゃうかもしれないので、この辺で小さくなってます』
この前みたいになっても困りますし、私は本当に邪魔にならないような場所で見守ることにしますよ。応援とかはしないですけど、せっかくの機会なので真白先生が気持ちいいと思うような場所を見付けられたらいいなと思います。
でも、忍さんはあんまり経験も無さそうですし、真白先生を満足させることなんて出来るんでしょうかね。それだけがちょっと心配ですね。
「あの、最初に断っておくんですけど、僕って経験したことが無いんで、間違ってたり良くなかったりしたらごめんなさい」
「そんな事は気にしなくても大丈夫だよ。俺だって経験豊富なわけではないからさ、忍さんのしたいことを好きなようにしてくれたらいいからね」
「わかりました。あと、僕の事は忍さんじゃなくて忍か忍ちゃんって呼んでもらえたら嬉しいです」
経験が少なそうだとは思っていたんですけど、未経験だとは思わなかったですね。でも、ちょっと前まで高校生だったんならおかしい話ではないですよね。その割には、真白先生のモノを口で上手にしてたような気もするんですが、それって天性の才能だったりするんでしょうかね。
あと、忍さんじゃなくていいってのは私にも言ってるように思えるんですけど、私も忍ちゃんって呼んじゃってもいいんでしょうか。それは後で確認する事にしましょう。今はそんな事を聞いて変な空気にしない方が良いでしょうし、そうなったらあとで真白先生に怒られちゃうかもしれないですからね。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる