28 / 64
アイドル編
最終話 真白先生は離島へ行くことになりました
しおりを挟む
私たちが離島へ向けて出発することを聞いた楓さんが私たちのもとへと駆けつけてくれた。二日前に見た時よりも随分とやつれてしまっているが、その目に宿る情熱は以前と何も変わらないように見えた。
「私のせいでご迷惑をおかけして申し訳ないです」
「いえいえ、こちらの方こそ知らなかったとはいえ大変失礼したしました」
「私がちょっと悪乗りをしてしまったのが原因ですので。今もヒナミさんは近くにいるんですか?」
「はい、すぐそばにいますけど、もう見えなくなっちゃったんですか?」
さっきから私の方をチラチラと見ているとは思っていたけれど、いっこうに目が合わないのが不思議であった。あんなことがあった直後なので目を見れないのかなとも思っていたけれど、私の姿も声も楓さんには届かなくなってしまったようだ。
ここで真白先生の精液を飲めば前みたいに話も出来るようになるのかもしれないと思ったけれど、そんな事をする理由が今の楓さんにはないのだ。
「あの、鵜崎家の方からも直接今回の件で約束していた報酬はいただけないという連絡が着たんですけど、本当にそれでいいんですかね?」
「そう言うことなんで気にしなくて大丈夫ですよ。それに、約束の代金代わりにやつはもう前払いしてもらったみたいなもんですから」
「そ、そうでしたね。でも、私はちゃんとこの体でお支払いしたいと思ってましたよ。愛が無かったとしても真白先生からは他の人にはない思いやりを感じさせるような素敵な時間でしたからね。私の体調が戻ったら、今回の件とは関係なく一度どうですか?」
「いや、そう言うのはやめておきましょう。私にとってとても魅力的なご提案ではありますけど、楓さんにとってその行動がプラスになることは無いと思いますよ。私が言うのも変な話ではありますが、ご自身の事をもっと大切にした方が良いと思いますよ。ヒナミもそう言ってますし」
『私はそんな事言ってないですよ。ただ、今まで見てきた人達の中で一番気持ちよさそうにしてきたのは楓さんだとは思いますけどね』
「そうなですか。そうですね。ヒナミちゃんにもそう言われているなら仕方ないです。真白先生とヒナミちゃんが言う通りにして、私はもう少し健康になれるように努力しますよ」
見送りに来てくれたのは楓さんだけだった。紗雪さんは起きてからすぐに電車に乗って家に帰ってしまったし、明里さん達は普通に授業があるとのことでお見送りにくることは出来なかった。
『何だか今生の別れみたいになってますね。でも、永遠に離島に閉じ込められるわけでもないんですし、せっかくだから楽しんでみたらどうですか?』
「楽しむと言われてもな。俺は釣りもダイビングもやらないからな。離島なんていっても何もしないで時間が過ぎてくだけだと思うよ」
『せっかくだし、エッチな事以外でも趣味を見付けたらいいと思うんですけどね。それにしても、フェリーって幽霊の私が乗っても大丈夫なんでしょうか?』
「さあ、運賃も一応払ってるから大丈夫じゃないか。チケットも二枚あるし」
真白先生が見せてくれたチケットには名前が書かれ値ているのだが、そこには鵜崎真白と鵜崎紗雪と書かれているのだ。なんで紗雪さんの名前が?
「あれ、チケットの名前がヒナミじゃなくて紗雪になってる。これって、紗雪も一緒についてくるって事なのか?」
真白先生はその事を確認するために紗雪さんに電話をしているのだけれど、紗雪さんは真白先生の電話には出なかったようだ。
続いて真白先生は鵜崎家に電話をしていたのだが、そちらはすぐに繋がって紗雪さんの名前が記載されたチケットの謎が解けたようだ。
「チケットに書かれている名前なんだけどさ、鵜崎紗雪って書かれているのは間違いじゃないらしいよ。でも、紗雪はこのフェリーには乗らないってさ。何でも、ここからフェリーで丸二日くらいかかる船旅になるらしいんだけど、少しでもゆっくりできるように二人部屋を予約しておいたんだって。それ以外の個室はもう埋まってたって話なんだけど、一人で二人部屋はとれないから俺と紗雪の名前を使ったって事らしいよ」
『そうなんですね。紗雪さんは学校もあるから来ることは出来ないだろうなって思ったんですけど、昨日みたいな感じだと普通についてくるような感じでしたよね』
「そうなんだよな。紗雪だけじゃなくて母さんも叔母さんも行動が読めないんだよな。鵜崎家の女ってだけでも少し怖いのにさ、そんな謎な行動ばっかりとられたら俺も困っちゃうよ」
実際に真白先生は鵜崎家の女性に対して頭があがらないし、逆らう事も出来ないのだろう。本来ならこの世に生まれてくることが無かった真白先生は鵜崎家には逆らうことが出来ないのだ。もしも逆らったとしたら、この世に真白先生がいた痕跡を根こそぎ消去していくのだ問う話を冗談交じりにされたことがある。ただ、その事を話してくれた真白先生の表情がだんだんと曇っていったのは何か理由があったのだろうとその時は想像していたのだ。
何も無い水平線に沈んでいく太陽を見て綺麗だと感動していたのだが、太陽が完全に落ちてしばらく経った後の世界は満天の星空で、その一つ一つの輝きが今にも零れ落ちて来そうなくらい大量に輝いていた。
その星の輝きを見ていた私は思わず真白先生の方に寄り添ってみたのだけれど、ほんの少しだけ真白先生の体を感じ取ることが出来たような気がしていた。
「私のせいでご迷惑をおかけして申し訳ないです」
「いえいえ、こちらの方こそ知らなかったとはいえ大変失礼したしました」
「私がちょっと悪乗りをしてしまったのが原因ですので。今もヒナミさんは近くにいるんですか?」
「はい、すぐそばにいますけど、もう見えなくなっちゃったんですか?」
さっきから私の方をチラチラと見ているとは思っていたけれど、いっこうに目が合わないのが不思議であった。あんなことがあった直後なので目を見れないのかなとも思っていたけれど、私の姿も声も楓さんには届かなくなってしまったようだ。
ここで真白先生の精液を飲めば前みたいに話も出来るようになるのかもしれないと思ったけれど、そんな事をする理由が今の楓さんにはないのだ。
「あの、鵜崎家の方からも直接今回の件で約束していた報酬はいただけないという連絡が着たんですけど、本当にそれでいいんですかね?」
「そう言うことなんで気にしなくて大丈夫ですよ。それに、約束の代金代わりにやつはもう前払いしてもらったみたいなもんですから」
「そ、そうでしたね。でも、私はちゃんとこの体でお支払いしたいと思ってましたよ。愛が無かったとしても真白先生からは他の人にはない思いやりを感じさせるような素敵な時間でしたからね。私の体調が戻ったら、今回の件とは関係なく一度どうですか?」
「いや、そう言うのはやめておきましょう。私にとってとても魅力的なご提案ではありますけど、楓さんにとってその行動がプラスになることは無いと思いますよ。私が言うのも変な話ではありますが、ご自身の事をもっと大切にした方が良いと思いますよ。ヒナミもそう言ってますし」
『私はそんな事言ってないですよ。ただ、今まで見てきた人達の中で一番気持ちよさそうにしてきたのは楓さんだとは思いますけどね』
「そうなですか。そうですね。ヒナミちゃんにもそう言われているなら仕方ないです。真白先生とヒナミちゃんが言う通りにして、私はもう少し健康になれるように努力しますよ」
見送りに来てくれたのは楓さんだけだった。紗雪さんは起きてからすぐに電車に乗って家に帰ってしまったし、明里さん達は普通に授業があるとのことでお見送りにくることは出来なかった。
『何だか今生の別れみたいになってますね。でも、永遠に離島に閉じ込められるわけでもないんですし、せっかくだから楽しんでみたらどうですか?』
「楽しむと言われてもな。俺は釣りもダイビングもやらないからな。離島なんていっても何もしないで時間が過ぎてくだけだと思うよ」
『せっかくだし、エッチな事以外でも趣味を見付けたらいいと思うんですけどね。それにしても、フェリーって幽霊の私が乗っても大丈夫なんでしょうか?』
「さあ、運賃も一応払ってるから大丈夫じゃないか。チケットも二枚あるし」
真白先生が見せてくれたチケットには名前が書かれ値ているのだが、そこには鵜崎真白と鵜崎紗雪と書かれているのだ。なんで紗雪さんの名前が?
「あれ、チケットの名前がヒナミじゃなくて紗雪になってる。これって、紗雪も一緒についてくるって事なのか?」
真白先生はその事を確認するために紗雪さんに電話をしているのだけれど、紗雪さんは真白先生の電話には出なかったようだ。
続いて真白先生は鵜崎家に電話をしていたのだが、そちらはすぐに繋がって紗雪さんの名前が記載されたチケットの謎が解けたようだ。
「チケットに書かれている名前なんだけどさ、鵜崎紗雪って書かれているのは間違いじゃないらしいよ。でも、紗雪はこのフェリーには乗らないってさ。何でも、ここからフェリーで丸二日くらいかかる船旅になるらしいんだけど、少しでもゆっくりできるように二人部屋を予約しておいたんだって。それ以外の個室はもう埋まってたって話なんだけど、一人で二人部屋はとれないから俺と紗雪の名前を使ったって事らしいよ」
『そうなんですね。紗雪さんは学校もあるから来ることは出来ないだろうなって思ったんですけど、昨日みたいな感じだと普通についてくるような感じでしたよね』
「そうなんだよな。紗雪だけじゃなくて母さんも叔母さんも行動が読めないんだよな。鵜崎家の女ってだけでも少し怖いのにさ、そんな謎な行動ばっかりとられたら俺も困っちゃうよ」
実際に真白先生は鵜崎家の女性に対して頭があがらないし、逆らう事も出来ないのだろう。本来ならこの世に生まれてくることが無かった真白先生は鵜崎家には逆らうことが出来ないのだ。もしも逆らったとしたら、この世に真白先生がいた痕跡を根こそぎ消去していくのだ問う話を冗談交じりにされたことがある。ただ、その事を話してくれた真白先生の表情がだんだんと曇っていったのは何か理由があったのだろうとその時は想像していたのだ。
何も無い水平線に沈んでいく太陽を見て綺麗だと感動していたのだが、太陽が完全に落ちてしばらく経った後の世界は満天の星空で、その一つ一つの輝きが今にも零れ落ちて来そうなくらい大量に輝いていた。
その星の輝きを見ていた私は思わず真白先生の方に寄り添ってみたのだけれど、ほんの少しだけ真白先生の体を感じ取ることが出来たような気がしていた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
うまなちゃんはもっと感じたい
釧路太郎
ホラー
天才霊能力者栗宮院午彪と天才霊能力者栗宮院奈緒美の娘である栗宮院うまなは生まれる前から期待されていたのだが、残念なことに霊能力を持つことはなかった。
霊能力はないものの、持ち前の明るさと努力することを苦ともしない根性で勉強も運動も人並み以上にこなせており、人望も厚く学級委員長を任されるほどでもあった。
栗宮院うまなは両親からの寵愛を一身に受けすくすくと育ってはいたのだが、天才霊能力者である両親から生まれた事もあり、外野からの期待は栗宮院うまなにとって重いプレッシャーとなって圧し掛かっていき、家に帰ってくると自室へ閉じこもりふさぎ込むようになってしまった。
そんな彼女の様子を見かねた両親は信頼出来る友人である清澄真名のフォトスタジオでアルバイトとして働かせることで彼女に秘められた力を育てようとしたのであった。
清澄真名が代表を務めるフォトスタジオ零楼館は通常の写真とは別に心霊写真を収集して調査し、場合によっては除霊までを行う業務を行っているのだ。
栗宮院うまなは清澄真名のもとで修業し、一流の霊能力者になることが出来るのだろうか。
彼女にかかっているプレッシャーが軽くなることはあるのだろうか。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる