81 / 111
勇者の試練
勇者の試練 第三話
しおりを挟む
試練を受けるためには扉を開けてダンジョンの中へ入らないといけないのだが、その扉を開けるために必要な鍵は存在しない。
鍵が存在しないので鍵がかかっていることはないのだが、誰よりも怪力なイザーちゃんが押しても引いても持ち上げても扉を下に押し込んでも動く気配すらなかった。
「この扉って本当に開くのかな。どんなに力を入れても開かないんだけど、お兄さんも手伝ってもらってもいいかな?」
「手伝うのは構わないけど、百の力が百一になったところで何も変わらないと思うけどね」
「それはそうかもしれないんだけどさ、私と逆の方向に力を入れてもらっていいかな。私が右に押すときは左に押してみて」
俺は言われた通りに力を入れてみたのだが、どうやっても動く気がしなかった。
何か特別な方法で開けるとしか思えない。
俺もイザーちゃんもその方法を見つけ出そうと色々と試した見たのだけれど、どんなに頑張っても扉が動く気配すら感じられなかった。
「その扉は普通にやっても開きませんよ。条件がそろわないと開かない魔法がかかってるんですって。皆さんが帰ってきたら教えて貰えると思いますよ」
「どんなに力を入れてもどうすることも出来なかったのよね。力を入れても入れてもどこかに力が逃げているような感覚だったもんね。お兄さんもそう感じなかった?」
俺は必死になっていたので細かいことは覚えていないのだが、言われてみれば確かに力が分散してしまっていたような気もしてきた。
気がしていただけなので実際にどうだったのかなんて気にしないのが一番だろう。覚えていないなんて言ったらただの役立たずだと思われてしまうかもしれない。
四人の中で一番最初に帰ってきたのは『全国勇者連合』に言っていた愛華ちゃんであった。
この世界にも空を飛ぶ乗り物があったことにも驚いたのだが、特に補給もすることなく再び戻っていったことに驚いてしまった。
「私が最初に戻ってくるって言うのは意外でした。皆さんよりも遠い場所に行くことになってしまった事もあって、話を聞き終わった後は急いで戻りたいと言ってみたんです。そうしたら、真琴さんとポンピーノ姫が見ていた飛行船に乗ることが出来たんですよ。元の世界でも乗ったことがない飛行船に乗れて嬉しかったんですけど、空の上でも魔物が襲ってきたので大変でした。私の銃では魔物の八割を駆除するので精いっぱいだったんですよ」
八割も倒すことが出来たのであれば誇ることはあっても落ち込む必要はないと思うのだが。圧倒的な力を持つと、人はより謙虚になってしまうのだろうか。もう少し気を大きく持ってくれてもいいのではないかと思っていた。
「早速ですが、『全国勇者連合』の管理する扉を開ける条件って何だったんですか?」
「そう慌てなくても大丈夫よ。でも、私と真琴さんで開けることが出来るか心配になっちゃう条件なんですよね」
「愛華とお兄さんの二人で難しいって事は、うまなちゃんたちの帰りを待った方がいいって事なのかな?」
「そうですね。私と真琴さんの二人だと開けることが出来ないって言うのを皆さんに見てもらった方がいいかもしれないです。私も精一杯努力はしようと思うんですけど、この条件はあまりにも厳しいので私と真琴さんの二人では開けることが出来ないんじゃないかな」
「私もさっきお兄さんと一緒に開けようとしたんだけどね、どんなに力を入れても開かなかったんだよ。押しても引いても上げても下げても蹴り飛ばしても開くことはなかったんだ」
「イザーさんの力でも開かないって事は、純粋な力だけで試練の扉を開けることが出来る人類は存在しないって事ですね」
「ちょっと待って、その言い方だと私が人類最強みたいに聞こえるんだけど。愛華ってそういう風に思っててくれたの?」
「もちろんですよ。私が知っている世界だとダントツでイザーさんが力持ちだと思うんです。私の知らない強い人がいるかもしれないって思う事もあるんですけど、どう考えてもイザーさんよりも力が強い人っていないと思うんですよ」
イザーちゃんの力が世界で一番強いというのは俺も完全に同意している。
体が金属で出来ている魔物を素手で真っ二つに裂けるのはどれくらいの力が必要なのかわからないが、どんなに世界が広いと言えどもイザーちゃんの真似ができる人間なんて存在しないだろう。
「それにしても、みんな遅いわね。こんなに遅いんだったら私も急ぐ必要はなかったみたいですね」
「そうは言うけどさ、俺としては愛華ちゃんが無事に帰ってきてくれて嬉しいよ。戻ってくるのが遅くなるとその分だけ心配になっちゃうからね」
「もう、そう言ってもらえるなんて思ってなかったんで嬉しいですね。私の事を心配してくれるって事は、真琴さんもそういう事なんですね。そういう事だったら、私たちの試練は扉を開けることすら出来ずに終わってしまうって事になるかもしれないですよ」
俺が心配することで扉が開かなくなるという理由がわからない。
イザーちゃんもポンピーノ姫も愛華ちゃんの言っていることを理解出来ていないと思う。
理由を知るとデメリットがあるという事なのだろうか。
頭のいい愛華ちゃんが隠すという事は、その理由を知らない方がいいという事なのだろうな。
俺もイザーちゃんもそれはわかっているのだが、ポンピーノ姫はどうにかして愛華ちゃんに扉を開ける方法を聞こうとしていた。それでも、愛華ちゃんが理由を教えてくれることはなかったのだ。
鍵が存在しないので鍵がかかっていることはないのだが、誰よりも怪力なイザーちゃんが押しても引いても持ち上げても扉を下に押し込んでも動く気配すらなかった。
「この扉って本当に開くのかな。どんなに力を入れても開かないんだけど、お兄さんも手伝ってもらってもいいかな?」
「手伝うのは構わないけど、百の力が百一になったところで何も変わらないと思うけどね」
「それはそうかもしれないんだけどさ、私と逆の方向に力を入れてもらっていいかな。私が右に押すときは左に押してみて」
俺は言われた通りに力を入れてみたのだが、どうやっても動く気がしなかった。
何か特別な方法で開けるとしか思えない。
俺もイザーちゃんもその方法を見つけ出そうと色々と試した見たのだけれど、どんなに頑張っても扉が動く気配すら感じられなかった。
「その扉は普通にやっても開きませんよ。条件がそろわないと開かない魔法がかかってるんですって。皆さんが帰ってきたら教えて貰えると思いますよ」
「どんなに力を入れてもどうすることも出来なかったのよね。力を入れても入れてもどこかに力が逃げているような感覚だったもんね。お兄さんもそう感じなかった?」
俺は必死になっていたので細かいことは覚えていないのだが、言われてみれば確かに力が分散してしまっていたような気もしてきた。
気がしていただけなので実際にどうだったのかなんて気にしないのが一番だろう。覚えていないなんて言ったらただの役立たずだと思われてしまうかもしれない。
四人の中で一番最初に帰ってきたのは『全国勇者連合』に言っていた愛華ちゃんであった。
この世界にも空を飛ぶ乗り物があったことにも驚いたのだが、特に補給もすることなく再び戻っていったことに驚いてしまった。
「私が最初に戻ってくるって言うのは意外でした。皆さんよりも遠い場所に行くことになってしまった事もあって、話を聞き終わった後は急いで戻りたいと言ってみたんです。そうしたら、真琴さんとポンピーノ姫が見ていた飛行船に乗ることが出来たんですよ。元の世界でも乗ったことがない飛行船に乗れて嬉しかったんですけど、空の上でも魔物が襲ってきたので大変でした。私の銃では魔物の八割を駆除するので精いっぱいだったんですよ」
八割も倒すことが出来たのであれば誇ることはあっても落ち込む必要はないと思うのだが。圧倒的な力を持つと、人はより謙虚になってしまうのだろうか。もう少し気を大きく持ってくれてもいいのではないかと思っていた。
「早速ですが、『全国勇者連合』の管理する扉を開ける条件って何だったんですか?」
「そう慌てなくても大丈夫よ。でも、私と真琴さんで開けることが出来るか心配になっちゃう条件なんですよね」
「愛華とお兄さんの二人で難しいって事は、うまなちゃんたちの帰りを待った方がいいって事なのかな?」
「そうですね。私と真琴さんの二人だと開けることが出来ないって言うのを皆さんに見てもらった方がいいかもしれないです。私も精一杯努力はしようと思うんですけど、この条件はあまりにも厳しいので私と真琴さんの二人では開けることが出来ないんじゃないかな」
「私もさっきお兄さんと一緒に開けようとしたんだけどね、どんなに力を入れても開かなかったんだよ。押しても引いても上げても下げても蹴り飛ばしても開くことはなかったんだ」
「イザーさんの力でも開かないって事は、純粋な力だけで試練の扉を開けることが出来る人類は存在しないって事ですね」
「ちょっと待って、その言い方だと私が人類最強みたいに聞こえるんだけど。愛華ってそういう風に思っててくれたの?」
「もちろんですよ。私が知っている世界だとダントツでイザーさんが力持ちだと思うんです。私の知らない強い人がいるかもしれないって思う事もあるんですけど、どう考えてもイザーさんよりも力が強い人っていないと思うんですよ」
イザーちゃんの力が世界で一番強いというのは俺も完全に同意している。
体が金属で出来ている魔物を素手で真っ二つに裂けるのはどれくらいの力が必要なのかわからないが、どんなに世界が広いと言えどもイザーちゃんの真似ができる人間なんて存在しないだろう。
「それにしても、みんな遅いわね。こんなに遅いんだったら私も急ぐ必要はなかったみたいですね」
「そうは言うけどさ、俺としては愛華ちゃんが無事に帰ってきてくれて嬉しいよ。戻ってくるのが遅くなるとその分だけ心配になっちゃうからね」
「もう、そう言ってもらえるなんて思ってなかったんで嬉しいですね。私の事を心配してくれるって事は、真琴さんもそういう事なんですね。そういう事だったら、私たちの試練は扉を開けることすら出来ずに終わってしまうって事になるかもしれないですよ」
俺が心配することで扉が開かなくなるという理由がわからない。
イザーちゃんもポンピーノ姫も愛華ちゃんの言っていることを理解出来ていないと思う。
理由を知るとデメリットがあるという事なのだろうか。
頭のいい愛華ちゃんが隠すという事は、その理由を知らない方がいいという事なのだろうな。
俺もイザーちゃんもそれはわかっているのだが、ポンピーノ姫はどうにかして愛華ちゃんに扉を開ける方法を聞こうとしていた。それでも、愛華ちゃんが理由を教えてくれることはなかったのだ。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる