67 / 111
王様リセマラ
王様リセマラ 第七話
しおりを挟む
ポンピーノ姫が持ってきた一冊の絵本には銀髪の女性が死体の山を築いているところが描かれていた。
みんな一斉にイザーちゃんの事を見ていたけれど、イザーちゃんはその絵本について言いたいことがあるみたいだ。
「ちょっと待ってよ、これって間違ってるよ。私は人を殺したことがあってもこんな風に殺した人を一か所に集めたりなんてしないって」
「そうかもしれないですね。今までもイザーさんは殺した証拠が残らないように他の世界に持っていってたりしてますからね。こんな風に死体を残すなんてことはしないと思いますね」
「そうだよ。愛華の言う通りだよ。私は人は殺してもちゃんと自分で処理はしてるからね」
胸を張って言うようなことでもないと思うし、そんな風に言うとこの絵本のモデルが自分だと言っているようなものではないか。誰もそれに気付いていないようなのであえて言うことはないけれど、完全に自白しているようなものではないだろうか。
うまなちゃんはそれに気付いてしまったようだけど、俺と同じく黙っているようだ。目くばせで何となく察してしまった。
「そんなコトより、この絵本って昔からあるの?」
「いえ、これは最近私が作りました。おじいさまのお話を思い出しながら描いたんですけど、完成してすぐにイザーさんがやってきたので驚いていたことろなんです」
「そうなんだ。お姫様が作って完成させた所だったんだね。そんな偶然もあるなんて驚きだね」
おそらくだが、これは偶然などではなく仕組まれたモノなのだろう。
イザーちゃんがこの場所とこの時代を選んだのだって何かしらの意図があったのかもしれないが、そう誘導されていたという可能性だってあるのではないだろうか。
神や悪魔だっている世界だし、イザーちゃんの行動を意のままに操るような恐ろしい存在がいたとしても何らおかしいことなんて無いと思う。
うまなちゃんが俺の心を読んでいるかの如く頷いているのだが、俺の考えが本当に読めているのか後で確認しておきたいなと思ってしまった。
「おじいさまから聞いた話ではもっと残忍な方だったので、少しでも表現が柔らかくなると思って絵本にしたんですよ。ですが、私の表現力ではここまでが精一杯だったようです」
「十分わかりやすいと思うけどね。でも、私はこんなに残酷なことはしてないんだよ。本当だって、嘘じゃないんだって」
「あら、そんな風に必死になると余計に怪しく見えちゃうわよ。イザーちゃんは本当にこんなに人を殺してしまったのかしら?」
「イザーさんなら殺せると思いますよ。ですが、こんな風に綺麗に形が残るような殺し方はしないと思うんですよね。ほら、さっきの暴れっぷりを見てもそれはわかりますよね」
愛華ちゃんにそう言われたからなのか柘榴ちゃんは先ほどの光景を思い浮かべているようだ。
襲い掛かってくる騎士を鎧ごと真っ二つに引き裂く腕力はいったいどんな鍛え方をしてきたのかと思うくらいなのだが、そう言われてみると五人とも違う方法で戦いを行っているのが思い出される。
銃で撃ち殺している愛華ちゃんは別として、他の四人が手を下した人の死体は個人が特定できるような状態ではなかったと思う。
イザーちゃんが絵本の中の人達をやったのだとしたら、あの絵本に描かれているような綺麗な死体を積み重ねることなんて出来そうもないな。
「思い出したわ。確かにイザーさんの方法ではあんな風に死体を積み重ねることなんて出来ないわね。でも、あの絵本に描かれている死体がこちからか見える範囲のだけが形を保っているという可能性もあるのよね。イザーさんならそれをやりかねないとは思うのよ」
「そんなことしないわよ。そんな事をする必要なんてないでしょ」
「ちょっと気になるんだけど、なんでみんなそんなにポンピーノ姫が作った絵本が全部正しいって思ってるのかな。絵本なんて本当にあったことを描いてるって可能性は低いんじゃないかな。だって、ポンピーノ姫はイザーちゃんが戦ってるところなんて見たことなかったんでしょ?」
「はい、おじいさまから聞いた話を私なりにまとめて描いてみました。銀髪の少女が死体の山の上でお祈りをしていた。って話を聞いてこの絵を描いたんです」
うまなちゃんの言う通りで、絵本に描かれていることがすべて正しいとみんなが思い込んでいたのはおかしいと思う。
写真や映像ならそう信じるのもわかるのだけど、このお姫様が描いたという絵が完璧にあの場面を描いていると信じる根拠はいったい何なんだろう。俺にはそれもわからない。
今も嬉しそうな顔で柘榴ちゃんが絵本を読み進めているのだが、時々見比べるようにイザーちゃんと絵本を見比べているのがココからでもわかってしまった。
俺はまだあの絵本を全部読んでいないのでわからないことだらけなのだが、それ以前にイザーちゃんが何のためにこの世界に来ていたのかという事も気になっている。
「それにしても、この絵本に出てくる銀髪の美少女はなかなかよく描けてると思うよ。私も嫉妬してしまいそうなくらい綺麗に描けてるよね。これも想像して描いたって事なのかな?」
「嫉妬するほどでもないと思うけど、何も見てないにしてはイザーちゃんの特徴をよくとらえていると思うな。ほら、この少女もイザーちゃんも胸が膨らんでないからね」
さすがにそんな事を言うのはうまなちゃんだとしてもまずいのではないだろうか。
「自分だってそんなにないくせに」
イザーちゃんも負けじと言い返しているのだけど、声が小さすぎたのかうまなちゃんには聞こえていないようだった。
聞こえていたところで二人は喧嘩をするなんてことはないだろう。
そう思って見ていると、なぜか二人はターゲットに愛華ちゃんを選んだようだった。
みんな一斉にイザーちゃんの事を見ていたけれど、イザーちゃんはその絵本について言いたいことがあるみたいだ。
「ちょっと待ってよ、これって間違ってるよ。私は人を殺したことがあってもこんな風に殺した人を一か所に集めたりなんてしないって」
「そうかもしれないですね。今までもイザーさんは殺した証拠が残らないように他の世界に持っていってたりしてますからね。こんな風に死体を残すなんてことはしないと思いますね」
「そうだよ。愛華の言う通りだよ。私は人は殺してもちゃんと自分で処理はしてるからね」
胸を張って言うようなことでもないと思うし、そんな風に言うとこの絵本のモデルが自分だと言っているようなものではないか。誰もそれに気付いていないようなのであえて言うことはないけれど、完全に自白しているようなものではないだろうか。
うまなちゃんはそれに気付いてしまったようだけど、俺と同じく黙っているようだ。目くばせで何となく察してしまった。
「そんなコトより、この絵本って昔からあるの?」
「いえ、これは最近私が作りました。おじいさまのお話を思い出しながら描いたんですけど、完成してすぐにイザーさんがやってきたので驚いていたことろなんです」
「そうなんだ。お姫様が作って完成させた所だったんだね。そんな偶然もあるなんて驚きだね」
おそらくだが、これは偶然などではなく仕組まれたモノなのだろう。
イザーちゃんがこの場所とこの時代を選んだのだって何かしらの意図があったのかもしれないが、そう誘導されていたという可能性だってあるのではないだろうか。
神や悪魔だっている世界だし、イザーちゃんの行動を意のままに操るような恐ろしい存在がいたとしても何らおかしいことなんて無いと思う。
うまなちゃんが俺の心を読んでいるかの如く頷いているのだが、俺の考えが本当に読めているのか後で確認しておきたいなと思ってしまった。
「おじいさまから聞いた話ではもっと残忍な方だったので、少しでも表現が柔らかくなると思って絵本にしたんですよ。ですが、私の表現力ではここまでが精一杯だったようです」
「十分わかりやすいと思うけどね。でも、私はこんなに残酷なことはしてないんだよ。本当だって、嘘じゃないんだって」
「あら、そんな風に必死になると余計に怪しく見えちゃうわよ。イザーちゃんは本当にこんなに人を殺してしまったのかしら?」
「イザーさんなら殺せると思いますよ。ですが、こんな風に綺麗に形が残るような殺し方はしないと思うんですよね。ほら、さっきの暴れっぷりを見てもそれはわかりますよね」
愛華ちゃんにそう言われたからなのか柘榴ちゃんは先ほどの光景を思い浮かべているようだ。
襲い掛かってくる騎士を鎧ごと真っ二つに引き裂く腕力はいったいどんな鍛え方をしてきたのかと思うくらいなのだが、そう言われてみると五人とも違う方法で戦いを行っているのが思い出される。
銃で撃ち殺している愛華ちゃんは別として、他の四人が手を下した人の死体は個人が特定できるような状態ではなかったと思う。
イザーちゃんが絵本の中の人達をやったのだとしたら、あの絵本に描かれているような綺麗な死体を積み重ねることなんて出来そうもないな。
「思い出したわ。確かにイザーさんの方法ではあんな風に死体を積み重ねることなんて出来ないわね。でも、あの絵本に描かれている死体がこちからか見える範囲のだけが形を保っているという可能性もあるのよね。イザーさんならそれをやりかねないとは思うのよ」
「そんなことしないわよ。そんな事をする必要なんてないでしょ」
「ちょっと気になるんだけど、なんでみんなそんなにポンピーノ姫が作った絵本が全部正しいって思ってるのかな。絵本なんて本当にあったことを描いてるって可能性は低いんじゃないかな。だって、ポンピーノ姫はイザーちゃんが戦ってるところなんて見たことなかったんでしょ?」
「はい、おじいさまから聞いた話を私なりにまとめて描いてみました。銀髪の少女が死体の山の上でお祈りをしていた。って話を聞いてこの絵を描いたんです」
うまなちゃんの言う通りで、絵本に描かれていることがすべて正しいとみんなが思い込んでいたのはおかしいと思う。
写真や映像ならそう信じるのもわかるのだけど、このお姫様が描いたという絵が完璧にあの場面を描いていると信じる根拠はいったい何なんだろう。俺にはそれもわからない。
今も嬉しそうな顔で柘榴ちゃんが絵本を読み進めているのだが、時々見比べるようにイザーちゃんと絵本を見比べているのがココからでもわかってしまった。
俺はまだあの絵本を全部読んでいないのでわからないことだらけなのだが、それ以前にイザーちゃんが何のためにこの世界に来ていたのかという事も気になっている。
「それにしても、この絵本に出てくる銀髪の美少女はなかなかよく描けてると思うよ。私も嫉妬してしまいそうなくらい綺麗に描けてるよね。これも想像して描いたって事なのかな?」
「嫉妬するほどでもないと思うけど、何も見てないにしてはイザーちゃんの特徴をよくとらえていると思うな。ほら、この少女もイザーちゃんも胸が膨らんでないからね」
さすがにそんな事を言うのはうまなちゃんだとしてもまずいのではないだろうか。
「自分だってそんなにないくせに」
イザーちゃんも負けじと言い返しているのだけど、声が小さすぎたのかうまなちゃんには聞こえていないようだった。
聞こえていたところで二人は喧嘩をするなんてことはないだろう。
そう思って見ていると、なぜか二人はターゲットに愛華ちゃんを選んだようだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる