上 下
49 / 111
悪魔狩り

悪魔狩り 第十二話

しおりを挟む
 グラニュー糖をかけたアメリカンドックは見た目通りの味ではあるが、癖になる味わいでケチャップにはない良さが感じられた。
 もう一度この味を楽しみたいかと言われると即答は出来ないが、五回に一回くらいならこの味も楽しみたいなと思うような感じだった。

 その後に口の中をさっぱりさせるという目的でかき氷を食べていたのだが、その時にはもうすでに腹八分目を超えて満腹に近くなっていた。

「結構食べ過ぎたかも。愛華ちゃんはフランクフルトを五本くらい食べてたし、イザーちゃんは凄く綺麗な綿あめを作ってたね。柘榴ちゃんはアメリカンドックのケチャップ味とグラニュー糖味を交互に食べてたよね」
「そういうお兄さんは残った焼きそばを食べてたじゃない。そんなに食べてうまなちゃんとお姉ちゃんの作ったたこ焼きを食べることできるのかな?」

 すっかり忘れていたのだが、今まで食べていたのは二人が作ったたこ焼きが出来上がるまでの繋ぎだったのだ。
 あまりにも美味しかったからと言って焼きそばを食べ過ぎたのは完全に失敗だったのだが、あそこまで美味しい焼きそばを作る方にも問題がある。味変アイテムもふんだんに用意されてたし、あそこまで種類があるなら全部試さないといけないような感じだったのも全部愛華ちゃんが悪いと思う。

 ただ、たこ焼きの事を忘れてしまっていた俺が一番悪いというのは理解していた。

「それにしても、たこ焼きを焼くのって結構時間かかるんだね。ここに来てからもう二時間くらい経ってると思うんだけど、うまなちゃんもお姉ちゃんもどれだけ作ってるんだろうね」
「うまなさんも瑠璃さんもだいぶ前に完成はしてたみたいですよ。ただ、納得のいく形になっていなかったのか何度も作り直してましたね。そこまで変ではないと思うのですが、気に入らなかったって事なんでしょうか」

「何人か先生たちが来てたけどみんな美味しそうにたこ焼きを食べてたよね。瑠璃先生は先生たちに恐縮しながら配ってたけど、うまなさんは形が綺麗じゃないからって謝りながら渡してたようですよ。たこ焼きなんて形にこだわる必要ないと思うんだけど、うまなちゃんも瑠璃先生もこだわりが強いんだろうね」

 何人か出入りしているなと思っていたけれど、あの人たちはみんな瑠璃とうまなちゃんが作ったたこ焼きを貰いに来てたのか。
 一言言ってくれれば焼きそばもアメリカンドックもフランクフルトもあったのにな。

「そう言えば、午彪さんと奈緒美さんに私のお母様がお願いしてこの屋台を週末に開放することになったみたいですよ。うまなさんや瑠璃さんが毎回作るという事ではなく、先生方や生徒さんで作りたい人がいれば立候補してほしいという事らしいです。愛華さんの作った焼きそばがとても美味しかったので、今度私の家族にも作っていただきたいくらいです」
「材料さえあればいくらでも作りますよ。作り方を知りたいんだったら教えますし、柘榴さんも綿あめ以外に作りたいものあれば立候補してみたらいいんじゃないですかね」
「私も色々と作ってみたいんですが、私が作ると他の生徒さんに迷惑がかかっちゃうと思いますので遠慮させていただきますわ」

 細かいことはわからないが、この学校の生徒たちは柘榴ちゃんの事を露骨に避けている。カフェに通い始めてくれていた時は柘榴ちゃんの姿を見ただけで店を後にする人が多かったけど、今では柘榴ちゃんがいても帰る人はほとんどいなくなっていた。
 ただ、柘榴ちゃんとコミュニケーションをとろうとする人は俺以外いないようだけど。

「みんな噂を信じちゃってるんですよ。私も他のクラスの子から聞いた話なんで信じてないんで気を悪くしてほしくないんですけど、柘榴さんが野城圭重さんが入院する事になった原因だって言ってたんですよ。私は全然そんなこと信じてないんですけど、みんなそれを信じているみたいで柘榴さんに関わらないようにしようってしてるみたいです」
「その話は私も聞いたことあるかも。野城が入院した理由ってのが精神的な病気だって聞いてたけど、柘榴ちゃんがそこまで彼を追い詰めたって事なのかな?」

「どうなんでしょうね。私は野城君と関わりなんてほとんどなかったと思うんですよ。同じクラスでもなかったし、寮も男女だったし食堂でもほとんど会ったことが無かったと思うんです。でも、なんでそんな噂が広がってるんですかね」

 野城圭重が一年近く入院していたのは紛れもない事実である。
 一年近くも入院する原因になったのは彼が悪魔を呼び出してしまったからと言っていたが、それがどうして柘榴ちゃんのせいになるのだろう。
 彼が自分で悪魔を呼び出したという話なのに、全く関係のない柘榴ちゃんが原因になるというのは俺の知らない理由があるとでも言うのだろうか。

 もしかしたら、クラスメートともあまり話さないそのミステリアスさと、うまなちゃんと親戚だという事で妬まれているという事も関係あるのかもしれない。
 良いところのお嬢様でスタイルも顔も性格も良い女子が他の女子から嫉妬されているという可能性も無きにしも非ずだし、彼女の事を好きになった男子が柘榴ちゃんの事を孤立させるためにそんな噂を流しているという可能性だってあるだろう。

 いや、後者はほとんど可能性もないだろうな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...