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誘拐事件
誘拐事件 第十一話
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何事も無かったかのようにイザーちゃんが戻ってきたことで三人の間に緊張が走ったのだが、そのすぐ後に入ってきたうまなちゃんの姿を見た瞬間に三人の目から自然と涙がこぼれ落ちていた。
その姿を見た俺たちは軽く戸惑ってしまったのだが、一番戸惑っていたのはうまなちゃんだろう。
三人の男はうまなちゃんに向かって深々と頭を下げるとそのまま泣き続けていた。
大の男がここまで泣きじゃくっている姿を見るのは初めての事だったが、俺だけではなくイザーちゃんも瑠璃もドン引きしていたし、愛華ちゃんに至っては三人に銃口を向けていた。
「え、これってどういう状況?」
うまなちゃんの疑問は当然の物だと思うけれど、それに答えることが出来る人は俺たちの中には誰もいなかった。
この三人の男たちにしかわからない何かがあるのだろう。先ほど話していた金色の天使と銀色の悪魔というものに関係しているのかもしれない。
「金色の天使と銀色の悪魔が同時に存在するという事は、ココはやはり私たちの知らない世界なのだな」
「それは間違いないと思います。ですが、我々の知っている金色の天使と少し違うような気もするのですが」
「そのようなことは気にする必要はない。我々の前に金色の天使がいるという事実が重要なのだ」
俺は何となく話を聞いていたのでそういう事なのかと理解出来て来たのだが、うまなちゃんたちはこの男の人達が何の話をしているのか理解出来ていないだろう。
イザーちゃんの事を恐れていた理由とうまなちゃんを見て泣き出した理由を俺が理解している範囲で説明すると、瑠璃はイザーちゃんをからかい愛華ちゃんはうまなちゃんの事を尊敬のまなざしで見つめていた。
うまなちゃんはただただ困っているだけであった。
「私は別に悪魔ってほどでもないと思うよ。君たちの世界で私に似ている人が銀色の悪魔って呼ばれているのかもしれないけど、私は別に悪魔的なコトとかしてないし」
この人たちを殺したり殺そうとしたのは悪魔的なことではないのかと言いそうになってしまったが、そんな事を言ってしまえば俺が酷い目に遭いそうな予感がしてのでグッとその言葉を飲み込んだ。
何かを察したイザーちゃんは俺の事を軽くにらんできたけれど、すぐにいつもの笑顔に戻っていた。その笑顔の裏にとても怖いものが隠れているように思えたのは先ほどの恐ろしい姿を見てしまったからかもしれない。
「でも、イザーさんは悪魔的所業を繰り返しているような気がするんですよね。私も午彪さんと奈緒美さんと協力してそれらを無かったことにしてきましたし」
「そういう余計なことは今言わなくてもいいの。ほら、このおじさんたちも私の事を怖がってるでしょ。愛華が余計なことを言うからだよ」
「ごめんなさいね。この人はあなたたちが知ってる銀色の悪魔さんとは違って少し優しい人ですからね。そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」
男たちはイザーちゃんの事を怖がっているようなのだが、それ以上に愛華ちゃんの事も怖がっているように見える。愛華ちゃんは気付いていないようなのだが、愛華ちゃんが近付いてきた時に男たちはどこからか取り出したナイフを力強く握っていたのだ。
「二人とも、この人たちを怖がらせたらダメだよ。私を誘拐した人と違う人だってことだし、あんまり意地悪しちゃダメでしょ。ほら、二人とも謝りなさい」
五人の間に割って入ったうまなちゃんはイザーちゃんと愛華ちゃんに軽く説教を始めていた。イザーちゃんも愛華ちゃんも調子に乗り過ぎたことを謝ってから男たちとの距離をあけていた。
「ねえ、あの人たちってさっきの誘拐犯と性格が違い過ぎない?」
「別人なんだからそうなると思いますよ。イザーさんの事を悪魔って呼んでたのは面白いなって思ったんですけど、あんなふうに人を殺せる人は悪魔と呼ばれても仕方ないですよね」
「それを言うんだったら、愛華だって悪魔だと思うけどね。普通の人は誘拐犯を見つけてもいきなり射殺したりしないし。人質であるうまなちゃんの安全を確保してからにした方がいいと思ったな。もしかして、久々に人を撃てるという事で舞い上がっちゃったのかな」
「それはイザーさんの話ですよね。ご自身がそうだったので私もそうだと思いたいって事ですよね。私は人数の不利を解消するためにやったことですけど、イザーさんのやったことは完全に不必要な行動でしたよね」
俺はイザーちゃんと愛華ちゃんは仲が良いと思っていた。
うまなちゃんを助けに行くと決めた時も協力し合っているだと思ったけれど、今にして思うと二手に分かれたのも一緒に居たくなかったからという事なのだろうか。
そんな事はないと信じたいのだが、こうして二人で言い争っている姿を見ると、その信じたいという気持ちが少しずつ失われているように思えていた。
「ストップ。喧嘩はそこまでにしてね。銀色の悪魔も桃色の処刑人も落ち着いてね」
瑠璃がイザーちゃんと愛華ちゃんの隣に立って二人の腰にそっと手を回していた。
三人の男たちは突然やってきた瑠璃に驚いたのかうまなちゃんの影に隠れるようにしてこちらの様子をうかがっているのだが、三人の男が見ているのはイザーちゃんでも愛華ちゃんでも俺でもなく、瑠璃をじっと見つめているのであった。
銀色の悪魔に桃色の処刑人。
また新しい二つ名が出てきたけれど、こうなると瑠璃が向こうの世界で何と呼ばれているのかが気になってしまう。
銀色の悪魔も桃色の処刑人も俺と同じように気になっているようだ。
その姿を見た俺たちは軽く戸惑ってしまったのだが、一番戸惑っていたのはうまなちゃんだろう。
三人の男はうまなちゃんに向かって深々と頭を下げるとそのまま泣き続けていた。
大の男がここまで泣きじゃくっている姿を見るのは初めての事だったが、俺だけではなくイザーちゃんも瑠璃もドン引きしていたし、愛華ちゃんに至っては三人に銃口を向けていた。
「え、これってどういう状況?」
うまなちゃんの疑問は当然の物だと思うけれど、それに答えることが出来る人は俺たちの中には誰もいなかった。
この三人の男たちにしかわからない何かがあるのだろう。先ほど話していた金色の天使と銀色の悪魔というものに関係しているのかもしれない。
「金色の天使と銀色の悪魔が同時に存在するという事は、ココはやはり私たちの知らない世界なのだな」
「それは間違いないと思います。ですが、我々の知っている金色の天使と少し違うような気もするのですが」
「そのようなことは気にする必要はない。我々の前に金色の天使がいるという事実が重要なのだ」
俺は何となく話を聞いていたのでそういう事なのかと理解出来て来たのだが、うまなちゃんたちはこの男の人達が何の話をしているのか理解出来ていないだろう。
イザーちゃんの事を恐れていた理由とうまなちゃんを見て泣き出した理由を俺が理解している範囲で説明すると、瑠璃はイザーちゃんをからかい愛華ちゃんはうまなちゃんの事を尊敬のまなざしで見つめていた。
うまなちゃんはただただ困っているだけであった。
「私は別に悪魔ってほどでもないと思うよ。君たちの世界で私に似ている人が銀色の悪魔って呼ばれているのかもしれないけど、私は別に悪魔的なコトとかしてないし」
この人たちを殺したり殺そうとしたのは悪魔的なことではないのかと言いそうになってしまったが、そんな事を言ってしまえば俺が酷い目に遭いそうな予感がしてのでグッとその言葉を飲み込んだ。
何かを察したイザーちゃんは俺の事を軽くにらんできたけれど、すぐにいつもの笑顔に戻っていた。その笑顔の裏にとても怖いものが隠れているように思えたのは先ほどの恐ろしい姿を見てしまったからかもしれない。
「でも、イザーさんは悪魔的所業を繰り返しているような気がするんですよね。私も午彪さんと奈緒美さんと協力してそれらを無かったことにしてきましたし」
「そういう余計なことは今言わなくてもいいの。ほら、このおじさんたちも私の事を怖がってるでしょ。愛華が余計なことを言うからだよ」
「ごめんなさいね。この人はあなたたちが知ってる銀色の悪魔さんとは違って少し優しい人ですからね。そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」
男たちはイザーちゃんの事を怖がっているようなのだが、それ以上に愛華ちゃんの事も怖がっているように見える。愛華ちゃんは気付いていないようなのだが、愛華ちゃんが近付いてきた時に男たちはどこからか取り出したナイフを力強く握っていたのだ。
「二人とも、この人たちを怖がらせたらダメだよ。私を誘拐した人と違う人だってことだし、あんまり意地悪しちゃダメでしょ。ほら、二人とも謝りなさい」
五人の間に割って入ったうまなちゃんはイザーちゃんと愛華ちゃんに軽く説教を始めていた。イザーちゃんも愛華ちゃんも調子に乗り過ぎたことを謝ってから男たちとの距離をあけていた。
「ねえ、あの人たちってさっきの誘拐犯と性格が違い過ぎない?」
「別人なんだからそうなると思いますよ。イザーさんの事を悪魔って呼んでたのは面白いなって思ったんですけど、あんなふうに人を殺せる人は悪魔と呼ばれても仕方ないですよね」
「それを言うんだったら、愛華だって悪魔だと思うけどね。普通の人は誘拐犯を見つけてもいきなり射殺したりしないし。人質であるうまなちゃんの安全を確保してからにした方がいいと思ったな。もしかして、久々に人を撃てるという事で舞い上がっちゃったのかな」
「それはイザーさんの話ですよね。ご自身がそうだったので私もそうだと思いたいって事ですよね。私は人数の不利を解消するためにやったことですけど、イザーさんのやったことは完全に不必要な行動でしたよね」
俺はイザーちゃんと愛華ちゃんは仲が良いと思っていた。
うまなちゃんを助けに行くと決めた時も協力し合っているだと思ったけれど、今にして思うと二手に分かれたのも一緒に居たくなかったからという事なのだろうか。
そんな事はないと信じたいのだが、こうして二人で言い争っている姿を見ると、その信じたいという気持ちが少しずつ失われているように思えていた。
「ストップ。喧嘩はそこまでにしてね。銀色の悪魔も桃色の処刑人も落ち着いてね」
瑠璃がイザーちゃんと愛華ちゃんの隣に立って二人の腰にそっと手を回していた。
三人の男たちは突然やってきた瑠璃に驚いたのかうまなちゃんの影に隠れるようにしてこちらの様子をうかがっているのだが、三人の男が見ているのはイザーちゃんでも愛華ちゃんでも俺でもなく、瑠璃をじっと見つめているのであった。
銀色の悪魔に桃色の処刑人。
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