百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎

文字の大きさ
上 下
78 / 127
おパンツ戦争

第78話 宇宙船発着所

しおりを挟む
 通話が途中で途切れてしまったのでもう一度かけなおそうかと思った工藤太郎であったが、すぐに工藤珠希から地球の座標がメールで送られてきたのでかけなおすことはなかった。
 工藤珠希が怒っているのを感じてしまった事もあって電話はしなかったのだが、メールには一応返信をしておいたのだ。それに対する返事はなかったのだが、そこはあまり気にしてはいないのが工藤太郎なのである。

「何か悪いことを言ってしまったのかな?」

 ペタコン博士は申し訳なさそうに工藤太郎に話しかけていたのだが、工藤太郎はあまり気にしていないのか笑顔を見せていた。

「気にすることないですよ。それよりも、地球の座標が送られてきたんですけどコレであってるんですかね?」
「この座標で間違いないだろうね。太郎ちゃんの持ってるそれから出てる電波もその座標のあたりまで飛んでいたみたいだし、まず間違いないことだと思うよ」
「俺には全く読めない文字だったんでちょっとだけ心配でした。でも、大丈夫だって言うんだったらこのまま地球に向かいましょう」
「まあまあ、そんなに急いでも良いことなんて無いし、最低限の準備だけはしておこうか」

 工藤太郎とペタコン博士が地球へ向かうための準備を始めていたのと時を同じくして、全てを終わらせたイザーが零楼館高校へと戻ってきたのだ。

 たった一人でピンクのおパンツ派と戦っていた鈴木愛華を労うと同時に学校にある全ての布を水色に変えるという暴挙に出たのだった。
 何もかもを水色に変えたイザーを止めようと多くのサキュバスとレジスタンスが行動を起こしたのだが、その行動一つ一つをイザーはたった一人で阻止し新たに水色で塗りつぶしていったのだった。

「たった一人で良くここまで耐え抜いたね。私が戻ってきたからにはピンクの時代もここで終わるよ。さあ、二人で水色の世界を創造していこう」
「あの、そこまでしなくても大丈夫だと思うよ。ピンクのおパンツを推しているうまなちゃんがまだ幼児化したままなんでイザーちゃんが何もしなくても負ける事は無いかと思うな」
「まだ子供みたいなうまなちゃんのままって事なのか。それだったら私たちの勝ちは揺るぎないものになるな」
「そういうわけにもいかないかもしれないんだよね。だって、珠希ちゃんって水色のおパンツもピンクのおパンツもどっちも興味ないって感じなんだよ。どっちかを穿いてくれないとこの争いはいつまでも終わらないと思うんだけど、どうにかして説得することは出来ないのかな?」
「その珠希ちゃんはいったいどこに居るのかな?」
「たぶん、クリームパイちゃんと一緒に宇宙船の発着所にいると思うよ。太郎ちゃんがもう少しで帰ってくるって言ってたからそこで待ってるんじゃないかな」
「宇宙船の発着所なんていつの間に出来たんだ。私が戻ってきた時にはそんなものはなかったような気がするんだけど」
「いつの間にか出来てたんだよ。クリームパイちゃんとクリーキーが勝手に作ったって噂なんだけど、学校側も容認しているとは思う」

 鈴木愛華に宇宙船の発着所の場所を聞いたイザーは一目散にそこを目指して走り出したのだ。
 レジスタンス側の校舎を抜けた先に宇宙船の発着所があるようなのだが、イザーの記憶だとその場所は車が三台ほど止められるくらいのスペースしかなかったと思う。そんな狭い場所に宇宙船が降り立つことが出来るのか疑問なのだが、実際に行ってみないことには始まらない。

 どこにでもあるようなフェンスに囲まれた草むらは看板が無ければ宇宙船の発着所だとは誰も気付かないだろう。それくらいに何の変哲もないただの空き地だとしか思えない場所だった。
 特に何かあるわけでもなく、ベンチすらない殺風景な場所であるのだ。フェンスの中にある草が不自然な倒れ方をして何かの模様を描いているのが辛うじてわかる程度にミステリー要素はあるのだが、それが本当に宇宙船が作り出したものなのか確かめる手段はなかったのだ。

「ここに来たって事は太郎ちゃんの帰りを待ってるってことなのかな。それとも、珠希ちゃんに会いに来たって事なのかな?」
「珠希ちゃんに会いに来たんだけど、どこに居るのかな?」
「そう焦らなくても大丈夫だよ。今はちょっと違う場所にいるんだけど、すぐに戻ってくるはずさ。それにしても、君ほどの人が珠希ちゃんがいないことに気付かなかったなんて何かあったのかな?」
「別に、何もないけど。それがどうかしたのか?」
「おっと、そんなに怒らないでくれたまえ。私はどっちの派閥でもないからね。かといってクリーキーみたいなバカなことを言うつもりもないさ。ただ、珠希ちゃんにはピンクでも水色でもどちらのおパンツも似合うとは思っているよ。もちろん、それ以外のおパンツも似合うとは思うけどね」
「珠希ちゃんならどんなおパンツも似合うとは思うよ」

 どこからともなく現れたクリームパイに対してイザーはいつもとは違って強く警戒していた。
 いつもであればどこに隠れていたとしてもどんな存在でも見逃さないはずのイザーであるが、何も遮るものがないこの場所でクリームパイに話しかけられるまで気が付かなかったという事は、世界最強のサキュバスとしてのイザーが本来の調子を取り戻せていないという証拠にもなるのだ。

 ただ、それには深い理由があったのだが、それに気付かれないようにイザーは平静を装っているのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...