69 / 127
おパンツ戦争
第69話 野生のサキュバス達の思い
しおりを挟む
真剣な表情でイザーを見ているサキュバスのお姉さんと同じように他のサキュバス達もイザーを真っすぐに見つめていた。
断られてしまっても後悔はない。イザーの怒りを買って殲滅されるようなことになったとしても、その時期が少し早くなってしまっただけの事だと思っているのだ。
自分を見つめてくる真剣な眼差しに答えるようにイザーは一人一人の顔を確認し、最後にサキュバスのお姉さんを真っすぐに見つめて、イザーが工藤珠希を見る時と同じ笑顔を見せていた。
「傘下に入れてくれって話だけど、私が決める事じゃないんでこの場では何とも言えないね。でも、ちょっと前にうまなちゃん達とも話してたことがあって、あなたたち野生のサキュバスと仲良く出来たらいいのにねってみんな考えてるんだよ。今まで色々と行き違いはあったけど、私たちとしても同じサキュバスであるあなたたちと事を構えるようなことはしたくないんだよね。だって、あなたたちがどんなに頑張ったところで私には勝つことが出来ないんだから。それをわかった上で挑んでくるのは凄いことだと思うんだけど、もう少しお互いにとっていい方法があるんじゃないかなって思うよ」
イザーの言う通りで、今まで幾度となく衝突を繰り返してきた零楼館とその他のサキュバス達。
サキュバス界において新興勢力である零楼館サイドに対して圧倒的な人員をもって制圧しようとしたこともあったのだが、それらのほとんどはイザー一人の手によってあっという間に返り討ちにあっていたのであった。何度負けても立ち上がる不屈の精神を持つものも多くいたのだが、何度挑んでも攻略の糸口さえ見るけることの出来ない状況に一人また一人と戦う意欲を削がれていっていたのである。
このままでは自然消滅してしまうと考えたサキュバスサイドは負けるとわかってはいたものの定期的に零楼館と戦うことによって新規参戦者を募ることはしていた。ただ、その新規参戦者も数回参加すると自分の無力さを実感し、戦う意欲もほぼ無くなってしまっているのが現状であった。
そんな中、サキュバスサイドの切り札として考えられたのが栗宮院うまなとイザーの寵愛する工藤珠希を味方に引き入れるという作戦だったのだが、その作戦も工藤珠希に直接会ってその魅力に惹かれたサキュバス達の考えを完全に変えさせる結果になってしまったのだ。
「私たちの傘下に入るってのはここにいるあなたたちだけって事なのかな?」
「はい、他の仲間には何も言っていませんので今時点ではこの場にいる者だけになります。ただ、私たちの考えを伝えれば多くの者も賛同してくれるとは思います。意地になって最後まで敵対しようとする者もいると思うのですが、ハッキリ言ってしまうとそういった人たちはただ騒いでいるだけで何も実行することが出来ず力のない口先だけの弱者なので気にする必要も無いと思います」
「なかなかハッキリ言うね。そういった人たちはどこにでもいるかもしれないな。私も今まで様々な世界で色々な人を見てきたけど、そういった人たちは自分たちの主張を通すためにはどんな手段だって用いるから結構面倒なことになると思うよ。どんなに些細なことでもそれが重要なことかのように触れ回っていくだろうし、物事の表面しか見ることの出来ない多くの人達はそれを真実だと思い込んでしまう事だってあるんじゃないかな。みんながみんなあなたたちのように“ちゃんと”自分を持っているとは限らないからね。それでも、気にする必要はないって言えるのかな?」
「気にする必要は無いと言えます。これだけは断言できます」
「そんなに言い切るとは大した自身だね。その根拠はあるのかな?」
「上手く言葉には出来ませんが、私は珠希ちゃんに会って話をして何か凄く凄いものを感じました。何と言うか、心の底から満たされているような不思議な感覚でした。それを感じたのが私だけなのかと思っていましたが、この場にいるみんなが私と同じような気持ちを感じていたんです。もちろん、みんながみんな珠希ちゃんとお話をしたというわけではないのですけど、話をしていない者も含めてみんな珠希ちゃんと一緒にいることで今までになかったような幸福感を感じて一つになっているような感覚を味わっていました。だから、私はこの場にいないサキュバスの子たちも珠希ちゃんと同じ空間にいることが出来れば争う事もなく平和に過ごすことが出来るんじゃないかと思ってるんです」
サキュバスのお姉さんが話を終えると同時に賛同するかの如くサキュバス達から拍手が沸き起こった。その中には数人のサキュバス星人も混ざっているのだが、イザーはその事に気付くことはなかった。
「なるほど、確かに君たちの言う通りで珠希ちゃんには私たちを幸せな気持ちにさせる凄い力がある。それは事実だ。でも、私たちが珠希ちゃんを独占したいと言ったらどうするのかな?」
「何もしません。その事実を黙って受け入れるだけです。私たちが今まで何となく戦っていたという理由で攻めていたから敗走することも蘇ることも出来たと思うんですが、責める目的が珠希ちゃんの奪取になった時点で私たちは何も残らなくなると思います。それは間違いないですよね?」
「確かにね。君たちが珠希ちゃんを欲しがって取りに来たんだとしたら、今までとは違ってみんな本気になるだろうね。レジスタンスの最終兵器も動き出しちゃうと思うし、そうなったら私でも止められないと思うよ」
「私たちは、そうならないように祈るだけです。今一度お尋ねいたしますが、私たちが零楼館の傘下に加えていただけるでしょうか?」
「私としては問題無いと思うんだけど、今のうまなちゃんの状況を考えると返事は待ってもらうことになるかもしれないね。少なくとも、今私たちが抱えている問題が解決するまでは答えられないと思うよ」
断られてしまっても後悔はない。イザーの怒りを買って殲滅されるようなことになったとしても、その時期が少し早くなってしまっただけの事だと思っているのだ。
自分を見つめてくる真剣な眼差しに答えるようにイザーは一人一人の顔を確認し、最後にサキュバスのお姉さんを真っすぐに見つめて、イザーが工藤珠希を見る時と同じ笑顔を見せていた。
「傘下に入れてくれって話だけど、私が決める事じゃないんでこの場では何とも言えないね。でも、ちょっと前にうまなちゃん達とも話してたことがあって、あなたたち野生のサキュバスと仲良く出来たらいいのにねってみんな考えてるんだよ。今まで色々と行き違いはあったけど、私たちとしても同じサキュバスであるあなたたちと事を構えるようなことはしたくないんだよね。だって、あなたたちがどんなに頑張ったところで私には勝つことが出来ないんだから。それをわかった上で挑んでくるのは凄いことだと思うんだけど、もう少しお互いにとっていい方法があるんじゃないかなって思うよ」
イザーの言う通りで、今まで幾度となく衝突を繰り返してきた零楼館とその他のサキュバス達。
サキュバス界において新興勢力である零楼館サイドに対して圧倒的な人員をもって制圧しようとしたこともあったのだが、それらのほとんどはイザー一人の手によってあっという間に返り討ちにあっていたのであった。何度負けても立ち上がる不屈の精神を持つものも多くいたのだが、何度挑んでも攻略の糸口さえ見るけることの出来ない状況に一人また一人と戦う意欲を削がれていっていたのである。
このままでは自然消滅してしまうと考えたサキュバスサイドは負けるとわかってはいたものの定期的に零楼館と戦うことによって新規参戦者を募ることはしていた。ただ、その新規参戦者も数回参加すると自分の無力さを実感し、戦う意欲もほぼ無くなってしまっているのが現状であった。
そんな中、サキュバスサイドの切り札として考えられたのが栗宮院うまなとイザーの寵愛する工藤珠希を味方に引き入れるという作戦だったのだが、その作戦も工藤珠希に直接会ってその魅力に惹かれたサキュバス達の考えを完全に変えさせる結果になってしまったのだ。
「私たちの傘下に入るってのはここにいるあなたたちだけって事なのかな?」
「はい、他の仲間には何も言っていませんので今時点ではこの場にいる者だけになります。ただ、私たちの考えを伝えれば多くの者も賛同してくれるとは思います。意地になって最後まで敵対しようとする者もいると思うのですが、ハッキリ言ってしまうとそういった人たちはただ騒いでいるだけで何も実行することが出来ず力のない口先だけの弱者なので気にする必要も無いと思います」
「なかなかハッキリ言うね。そういった人たちはどこにでもいるかもしれないな。私も今まで様々な世界で色々な人を見てきたけど、そういった人たちは自分たちの主張を通すためにはどんな手段だって用いるから結構面倒なことになると思うよ。どんなに些細なことでもそれが重要なことかのように触れ回っていくだろうし、物事の表面しか見ることの出来ない多くの人達はそれを真実だと思い込んでしまう事だってあるんじゃないかな。みんながみんなあなたたちのように“ちゃんと”自分を持っているとは限らないからね。それでも、気にする必要はないって言えるのかな?」
「気にする必要は無いと言えます。これだけは断言できます」
「そんなに言い切るとは大した自身だね。その根拠はあるのかな?」
「上手く言葉には出来ませんが、私は珠希ちゃんに会って話をして何か凄く凄いものを感じました。何と言うか、心の底から満たされているような不思議な感覚でした。それを感じたのが私だけなのかと思っていましたが、この場にいるみんなが私と同じような気持ちを感じていたんです。もちろん、みんながみんな珠希ちゃんとお話をしたというわけではないのですけど、話をしていない者も含めてみんな珠希ちゃんと一緒にいることで今までになかったような幸福感を感じて一つになっているような感覚を味わっていました。だから、私はこの場にいないサキュバスの子たちも珠希ちゃんと同じ空間にいることが出来れば争う事もなく平和に過ごすことが出来るんじゃないかと思ってるんです」
サキュバスのお姉さんが話を終えると同時に賛同するかの如くサキュバス達から拍手が沸き起こった。その中には数人のサキュバス星人も混ざっているのだが、イザーはその事に気付くことはなかった。
「なるほど、確かに君たちの言う通りで珠希ちゃんには私たちを幸せな気持ちにさせる凄い力がある。それは事実だ。でも、私たちが珠希ちゃんを独占したいと言ったらどうするのかな?」
「何もしません。その事実を黙って受け入れるだけです。私たちが今まで何となく戦っていたという理由で攻めていたから敗走することも蘇ることも出来たと思うんですが、責める目的が珠希ちゃんの奪取になった時点で私たちは何も残らなくなると思います。それは間違いないですよね?」
「確かにね。君たちが珠希ちゃんを欲しがって取りに来たんだとしたら、今までとは違ってみんな本気になるだろうね。レジスタンスの最終兵器も動き出しちゃうと思うし、そうなったら私でも止められないと思うよ」
「私たちは、そうならないように祈るだけです。今一度お尋ねいたしますが、私たちが零楼館の傘下に加えていただけるでしょうか?」
「私としては問題無いと思うんだけど、今のうまなちゃんの状況を考えると返事は待ってもらうことになるかもしれないね。少なくとも、今私たちが抱えている問題が解決するまでは答えられないと思うよ」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる