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第29話 侵略者
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眩しい物体はその光を弱めることもなく宙を漂っていた。
窓を開けてみても何の音も聞こえないことから、この光っているいる物体がドローン兵器などではないという事だけはわかったのだ。ただ、これほどまでに眩しく光り続けているのに無音だというのは物凄く不気味ではあった。
その時、窓を開けて物体を観察していた栗宮院うまなはたまたま持っていた狩猟用の槍を光る物体に向かって勢いよく投げていた。
物凄い勢いで槍が物体に向かって飛んでいったのだが、物体に触れた槍は音もなくその姿を消してしまった。影すらも残らずに槍は消えてしまったのだ。
「ちょっと、うまなちゃん何しているの?」
「何って、アレが眩しいからどうにか出来ないかなって思って、そこにあった槍を投げつけてみたんだけど。あの槍ってどこに行っちゃったんだろうね?」
「それはわからないけど、いきなり物を投げつけるのって良くないんじゃないかな?」
「それを言うんだったら、いきなり人の学校にやって来るのもどうかと思うよ。しかも、あんなに目立つように眩しく光るとかおかしいんじゃないかな」
「確かに、うまなちゃんのいう事も一理あるね。私も生徒会長としてアレを見過ごすことは出来ないんだけど、いったいどうすればいいモノか考えてみようか」
栗宮院うまなが槍を投げつけていたという事が他の生徒たちにも何らかの影響を与えていたのは確かなことであった。
生徒会長の栗鳥院柘榴がこの事態をどうするべきなのか思案していたのを知ってか知らずか、多くの生徒たちは外敵用に設置されている大砲や機関銃を光る物体に向かって発射していた。
一人二人ではない、多くの生徒が固定機関砲を使って攻撃を開始しているのだが、光っている物体は全く微動だにもせずその場にとどまっていた。
無数に発射されていた弾丸は物体に当たっているとは思われるのだが、聞こえるのは発射音だけで命中しているとは言い切れなかったのだ。
「なんかあの光っている玉が気持ち悪いんだよね。上手く言えないんだけど、なんかすごく不愉快な気持ちになってくるんだよ。珠希ちゃんもそう思わないかな?」
「別にボクは何とも思わないかも。確かにちょっと不思議な感じはしてるけど、不愉快な感じにはならないかな。柘榴ちゃんも不愉快に感じてるの?」
「私も不愉快に感じてはいるけれど、うまなちゃんが感じているのとは少し違うかもしれないな。私の場合は、眩しくて不愉快に感じているだけだからな。あの眩しさがおさえられればそんな気持ちにはなっていないかもしれない」
「眩しいからとかじゃなくて、あの中がどうなっているのか気になるんだよな。窓も何も無くて光っているだけのあの玉から刺すような視線を感じるのがたまらなく不愉快なんだよ。珠希ちゃんたちは普通の人間だからそういうのにも気付かないのかもしれないけど、私たちサキュバスはあれから凄く嫌な印象を受けてるよ」
あの光っている物体に攻撃を仕掛けているのはサキュバスばかりだという事に言われてから気が付いた。レジスタンス側にも攻撃をしているものは数名いるのだが、サキュバス達に比べると圧倒的に数は少ないのだ。サキュバスが人間に比べて好戦的だという事ではなく、光っている物体に対して本能的に嫌悪感を抱いてしまっているためなのかもしれない。
「とにかく、あの光ってる玉が気になって仕方ないんだよ。何をしても意味なんて無いかもしれないけど、今は私に出来ることを全力でやるしかない。じゃないと、何か大変なことになりそうな気がするんだよね」
「そうなのか。うまなちゃんがそこまで言うんだったら私たちもレジスタンスの力を集結させて協力するよ。うまなちゃんほどの人がそこまで言うのであれば私たちにとっても良くないことになりかねないからね。間違っていたとしたら、その時に考えればいいだけだからね」
サキュバスとレジスタンスは事あるごとに争っている印象を持っている工藤珠希だったが、そんな関係であってもお互いに降りかかりそうな脅威に対しては協力するという事に関しては納得していた。
今までも何度か零楼館高校に対して外敵が襲ってきたこともあったのだが、その時にはサキュバスもレジスタンスも力を合わせて撃退していたのである。イザーと工藤太郎がいなくても軍隊とわたりあうだけの力を持っているのだ。
そんな事をぼんやりと考えながら一斉に始まったサキュバスとレジスタンスの同時攻撃を見ていた工藤珠希だが、光る物体に対して砲撃をしている発射音はしているのに着弾している音が一切していないことに新たな疑問を抱いていた。
以前の戦闘時に感じていた着弾時の爆発音と衝撃波を一切感じない。どんなに攻撃をしても何も変わらない光っている物体に段々と恐怖を感じていたのであった。
「貴様らの行動に何一つ意味などない。大人しく我に従うが良い。さすれば貴様らに安全なる死を与えよう」
機械を何重にも通したような声が聞こえてきたのだが、それは耳から入ってきた音ではなく直接脳に届いているのではないかと思えるような声だった。
その声が聞こえた者は攻撃の手を止めて光っている物体をただ見つめていた。
不思議なことにあれほど眩しく不快だと思っていたのに、声が聞こえてからは今までの事が嘘だったのではないかと思ってしまう程落ち着いて見ることが出来ていた。
窓を開けてみても何の音も聞こえないことから、この光っているいる物体がドローン兵器などではないという事だけはわかったのだ。ただ、これほどまでに眩しく光り続けているのに無音だというのは物凄く不気味ではあった。
その時、窓を開けて物体を観察していた栗宮院うまなはたまたま持っていた狩猟用の槍を光る物体に向かって勢いよく投げていた。
物凄い勢いで槍が物体に向かって飛んでいったのだが、物体に触れた槍は音もなくその姿を消してしまった。影すらも残らずに槍は消えてしまったのだ。
「ちょっと、うまなちゃん何しているの?」
「何って、アレが眩しいからどうにか出来ないかなって思って、そこにあった槍を投げつけてみたんだけど。あの槍ってどこに行っちゃったんだろうね?」
「それはわからないけど、いきなり物を投げつけるのって良くないんじゃないかな?」
「それを言うんだったら、いきなり人の学校にやって来るのもどうかと思うよ。しかも、あんなに目立つように眩しく光るとかおかしいんじゃないかな」
「確かに、うまなちゃんのいう事も一理あるね。私も生徒会長としてアレを見過ごすことは出来ないんだけど、いったいどうすればいいモノか考えてみようか」
栗宮院うまなが槍を投げつけていたという事が他の生徒たちにも何らかの影響を与えていたのは確かなことであった。
生徒会長の栗鳥院柘榴がこの事態をどうするべきなのか思案していたのを知ってか知らずか、多くの生徒たちは外敵用に設置されている大砲や機関銃を光る物体に向かって発射していた。
一人二人ではない、多くの生徒が固定機関砲を使って攻撃を開始しているのだが、光っている物体は全く微動だにもせずその場にとどまっていた。
無数に発射されていた弾丸は物体に当たっているとは思われるのだが、聞こえるのは発射音だけで命中しているとは言い切れなかったのだ。
「なんかあの光っている玉が気持ち悪いんだよね。上手く言えないんだけど、なんかすごく不愉快な気持ちになってくるんだよ。珠希ちゃんもそう思わないかな?」
「別にボクは何とも思わないかも。確かにちょっと不思議な感じはしてるけど、不愉快な感じにはならないかな。柘榴ちゃんも不愉快に感じてるの?」
「私も不愉快に感じてはいるけれど、うまなちゃんが感じているのとは少し違うかもしれないな。私の場合は、眩しくて不愉快に感じているだけだからな。あの眩しさがおさえられればそんな気持ちにはなっていないかもしれない」
「眩しいからとかじゃなくて、あの中がどうなっているのか気になるんだよな。窓も何も無くて光っているだけのあの玉から刺すような視線を感じるのがたまらなく不愉快なんだよ。珠希ちゃんたちは普通の人間だからそういうのにも気付かないのかもしれないけど、私たちサキュバスはあれから凄く嫌な印象を受けてるよ」
あの光っている物体に攻撃を仕掛けているのはサキュバスばかりだという事に言われてから気が付いた。レジスタンス側にも攻撃をしているものは数名いるのだが、サキュバス達に比べると圧倒的に数は少ないのだ。サキュバスが人間に比べて好戦的だという事ではなく、光っている物体に対して本能的に嫌悪感を抱いてしまっているためなのかもしれない。
「とにかく、あの光ってる玉が気になって仕方ないんだよ。何をしても意味なんて無いかもしれないけど、今は私に出来ることを全力でやるしかない。じゃないと、何か大変なことになりそうな気がするんだよね」
「そうなのか。うまなちゃんがそこまで言うんだったら私たちもレジスタンスの力を集結させて協力するよ。うまなちゃんほどの人がそこまで言うのであれば私たちにとっても良くないことになりかねないからね。間違っていたとしたら、その時に考えればいいだけだからね」
サキュバスとレジスタンスは事あるごとに争っている印象を持っている工藤珠希だったが、そんな関係であってもお互いに降りかかりそうな脅威に対しては協力するという事に関しては納得していた。
今までも何度か零楼館高校に対して外敵が襲ってきたこともあったのだが、その時にはサキュバスもレジスタンスも力を合わせて撃退していたのである。イザーと工藤太郎がいなくても軍隊とわたりあうだけの力を持っているのだ。
そんな事をぼんやりと考えながら一斉に始まったサキュバスとレジスタンスの同時攻撃を見ていた工藤珠希だが、光る物体に対して砲撃をしている発射音はしているのに着弾している音が一切していないことに新たな疑問を抱いていた。
以前の戦闘時に感じていた着弾時の爆発音と衝撃波を一切感じない。どんなに攻撃をしても何も変わらない光っている物体に段々と恐怖を感じていたのであった。
「貴様らの行動に何一つ意味などない。大人しく我に従うが良い。さすれば貴様らに安全なる死を与えよう」
機械を何重にも通したような声が聞こえてきたのだが、それは耳から入ってきた音ではなく直接脳に届いているのではないかと思えるような声だった。
その声が聞こえた者は攻撃の手を止めて光っている物体をただ見つめていた。
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