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第18話 新たな悩み
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栗宮院うまなは悩んでいた。
たい焼きが和菓子なのか微妙だと思うけれど、餡子を使っているという事を考えるとギリギリ和菓子と言っていいような気もしていた。ただ、クリームの場合は和菓子なのか洋菓子なのか判断に迷ってしまう。和菓子でもいいような気もするのだけれど、クリームを使っていることから洋菓子と言った方がいいのかもしれないという迷いがあった。
そんな栗宮院うまなの事などお構いなしに工藤珠希は別のたい焼きも購入していた。
「実はね、普段滅多に見かけないたい焼きが売っていたから買っておいたんだよ。一人で食べるには多すぎるからうまなちゃんと分けて食べたいんだけど、大丈夫かな?」
「半分にするんだったら大丈夫だと思うけど、何味なのかな?」
「えっとね、味はあんこだって。普通のたい焼きよりもあんこが多いのが特徴なんだって」
「あんこのたい焼きならさっき買ったと思うんだけど、見たことないってどういうことなのかな?」
「えへへ、それは見てからのお楽しみだよ。前から気になっていたんだけど、一人だとなかなか買う勇気が出なかったからうまなちゃんが一緒で良かったよ。買うのに結構勇気がいるんだよね」
「へえ、そうなんだ。ちなみになんだけど、どの辺が珍しいのかな?」
「これは答えになっちゃうかもしれないけど、ヒントを出すね。たぶんうまなちゃんはこれを聞いたらすぐにわかっちゃうと思うんだけど、中華風たい焼きだよ」
ヒントを聞いたところで全く想像がつかない栗宮院うまな。
中華風と聞くとちょっとピリ辛だったりするのか、はたまた餡は餡でもとろみのある中華餡だったりするのだろうか。ますます何が何だかわからなくなってしまった栗宮院うまなは今すぐにでもバスを降りてそのたい焼きを確かめたいと思ってしまった。
何でもすぐに中華風を名乗ることはあると思うのだが、知識がまったくない栗宮院うまなにとって中華風と言われてもまったくイメージすることが出来ない。栗宮院うまなの中で中華のデザートは杏仁豆腐かマンゴープリンか胡麻団子くらいしか思い浮かばない。中華料理と言われればいくらでも思いつくのだけど、デザートで中華風と名前の付くものと出会った記憶がないのだ。
一体どんなたい焼きが出てくるのか興味はあるのだけど、それと同じくらい不安もあったりする。
もしも、あんこではなく中に入っている餡が春巻きや餃子の餡が入っていたとしたら、それはもう完全に和菓子でも洋菓子でもなくなってしまう。そうなると、お菓子を食べたいと言っていた工藤珠希の気持ちが満たされないのではないかとも思えた。
しかし、世の中にはおやつ代わりに肉まんを食べる人だっているし、インスタントラーメンがおやつだという人も見たことがあるような気がしていた。記憶力の良い栗宮院うまなではあったが、その辺の記憶は意識的に覚えないようにしているのかもしれない。
「次の停留所で降りるんだよ。うまなちゃんってバスの降車ボタンを押したことある?」
「押した事は無いかも。路線バスは何回かしか乗ったことないし、乗ったとしても終点までだったり誰かが押してくれてたりするかな」
「そうなんだ。それだったら、次の停留所のアナウンスが聞こえたら押してもいいよ。他に誰も乗っていないから押すチャンスだね」
ボタンを押したら次の停留所で止まってくれる。それくらいはわかっている栗宮院うまなだったが、特にこのボタンを押してみたいと思った事は無かった。
ただ、工藤珠希にとってはこのボタンを押すことによって幸福感を感じるとでも言いたいかのような顔をしていたのだ。
確かに、ボタンを見れば押したくなるのが人情というものなのかもしれないが、サキュバスである栗宮院うまなにとってはボタンを押すという行為に何か特別な意味など感じてはいなかった。それでも、工藤珠希が譲ってくれるというのであれば押してみようという気にもなっていた。
しかし、後者ボタンがあるのは窓のすぐ横なので通路側に座っている栗宮院うまなが押すには不自然な気もしていた。工藤珠希の前に割り込んでまでボタンを押すことが本当に正しいことなのか悩んでしまう。
ボタンを押す体勢によっては工藤珠希に自分の胸を押し付けてしまう事になってしまいそうだ。いや、ここはあえて自分の胸を押し付けるべきなのではないだろうか。自分の方が降車ボタンに近いのにもかかわらず、押すように言ってきたという事はそういう事なのではないか。
おそらく、工藤珠希は自分が降車ボタンを押すことで感じる幸せよりも、栗宮院うまなの胸が自分に当たるという幸せを選んだという事なのだろう。
言ってくれれば胸くらいいつでも押し付けてあげるのに。そう思った栗宮院うまなであった。
次の停留所のアナウンスが終わったので工藤珠希の前に自分の体を入れて降車ボタンを押した栗宮院うまな。
当初の作戦では自分の胸を工藤珠希に押し付けて幸せな気持ちになってもらおうと考えていたのだが、今は生活しやすいように胸の成長を控えめなところで止めていたという事を思い出すことが出来た。
サキュバスの女王である本来の姿であれば間違いなく胸が当たっていたと思うのだが、今は生活しやすいように控えめな大きさにおさえているのだ。
降車ボタンを押して自分の座っていた場所に戻った栗宮院うまなを見た工藤珠希は何故かドヤ顔だったのだが、バスの降車ボタンを押すという事が特別なコトなのだという事は何となく理解することも出来たのだ。
あとは、中華風たい焼きの正体を知るだけだなと思う栗宮院うまなであった。
たい焼きが和菓子なのか微妙だと思うけれど、餡子を使っているという事を考えるとギリギリ和菓子と言っていいような気もしていた。ただ、クリームの場合は和菓子なのか洋菓子なのか判断に迷ってしまう。和菓子でもいいような気もするのだけれど、クリームを使っていることから洋菓子と言った方がいいのかもしれないという迷いがあった。
そんな栗宮院うまなの事などお構いなしに工藤珠希は別のたい焼きも購入していた。
「実はね、普段滅多に見かけないたい焼きが売っていたから買っておいたんだよ。一人で食べるには多すぎるからうまなちゃんと分けて食べたいんだけど、大丈夫かな?」
「半分にするんだったら大丈夫だと思うけど、何味なのかな?」
「えっとね、味はあんこだって。普通のたい焼きよりもあんこが多いのが特徴なんだって」
「あんこのたい焼きならさっき買ったと思うんだけど、見たことないってどういうことなのかな?」
「えへへ、それは見てからのお楽しみだよ。前から気になっていたんだけど、一人だとなかなか買う勇気が出なかったからうまなちゃんが一緒で良かったよ。買うのに結構勇気がいるんだよね」
「へえ、そうなんだ。ちなみになんだけど、どの辺が珍しいのかな?」
「これは答えになっちゃうかもしれないけど、ヒントを出すね。たぶんうまなちゃんはこれを聞いたらすぐにわかっちゃうと思うんだけど、中華風たい焼きだよ」
ヒントを聞いたところで全く想像がつかない栗宮院うまな。
中華風と聞くとちょっとピリ辛だったりするのか、はたまた餡は餡でもとろみのある中華餡だったりするのだろうか。ますます何が何だかわからなくなってしまった栗宮院うまなは今すぐにでもバスを降りてそのたい焼きを確かめたいと思ってしまった。
何でもすぐに中華風を名乗ることはあると思うのだが、知識がまったくない栗宮院うまなにとって中華風と言われてもまったくイメージすることが出来ない。栗宮院うまなの中で中華のデザートは杏仁豆腐かマンゴープリンか胡麻団子くらいしか思い浮かばない。中華料理と言われればいくらでも思いつくのだけど、デザートで中華風と名前の付くものと出会った記憶がないのだ。
一体どんなたい焼きが出てくるのか興味はあるのだけど、それと同じくらい不安もあったりする。
もしも、あんこではなく中に入っている餡が春巻きや餃子の餡が入っていたとしたら、それはもう完全に和菓子でも洋菓子でもなくなってしまう。そうなると、お菓子を食べたいと言っていた工藤珠希の気持ちが満たされないのではないかとも思えた。
しかし、世の中にはおやつ代わりに肉まんを食べる人だっているし、インスタントラーメンがおやつだという人も見たことがあるような気がしていた。記憶力の良い栗宮院うまなではあったが、その辺の記憶は意識的に覚えないようにしているのかもしれない。
「次の停留所で降りるんだよ。うまなちゃんってバスの降車ボタンを押したことある?」
「押した事は無いかも。路線バスは何回かしか乗ったことないし、乗ったとしても終点までだったり誰かが押してくれてたりするかな」
「そうなんだ。それだったら、次の停留所のアナウンスが聞こえたら押してもいいよ。他に誰も乗っていないから押すチャンスだね」
ボタンを押したら次の停留所で止まってくれる。それくらいはわかっている栗宮院うまなだったが、特にこのボタンを押してみたいと思った事は無かった。
ただ、工藤珠希にとってはこのボタンを押すことによって幸福感を感じるとでも言いたいかのような顔をしていたのだ。
確かに、ボタンを見れば押したくなるのが人情というものなのかもしれないが、サキュバスである栗宮院うまなにとってはボタンを押すという行為に何か特別な意味など感じてはいなかった。それでも、工藤珠希が譲ってくれるというのであれば押してみようという気にもなっていた。
しかし、後者ボタンがあるのは窓のすぐ横なので通路側に座っている栗宮院うまなが押すには不自然な気もしていた。工藤珠希の前に割り込んでまでボタンを押すことが本当に正しいことなのか悩んでしまう。
ボタンを押す体勢によっては工藤珠希に自分の胸を押し付けてしまう事になってしまいそうだ。いや、ここはあえて自分の胸を押し付けるべきなのではないだろうか。自分の方が降車ボタンに近いのにもかかわらず、押すように言ってきたという事はそういう事なのではないか。
おそらく、工藤珠希は自分が降車ボタンを押すことで感じる幸せよりも、栗宮院うまなの胸が自分に当たるという幸せを選んだという事なのだろう。
言ってくれれば胸くらいいつでも押し付けてあげるのに。そう思った栗宮院うまなであった。
次の停留所のアナウンスが終わったので工藤珠希の前に自分の体を入れて降車ボタンを押した栗宮院うまな。
当初の作戦では自分の胸を工藤珠希に押し付けて幸せな気持ちになってもらおうと考えていたのだが、今は生活しやすいように胸の成長を控えめなところで止めていたという事を思い出すことが出来た。
サキュバスの女王である本来の姿であれば間違いなく胸が当たっていたと思うのだが、今は生活しやすいように控えめな大きさにおさえているのだ。
降車ボタンを押して自分の座っていた場所に戻った栗宮院うまなを見た工藤珠希は何故かドヤ顔だったのだが、バスの降車ボタンを押すという事が特別なコトなのだという事は何となく理解することも出来たのだ。
あとは、中華風たい焼きの正体を知るだけだなと思う栗宮院うまなであった。
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