74 / 100
第七十四話 日焼けを気にしない女子中学生は元気です
しおりを挟む
バカみたいに海ではしゃいでいて思ったのだが、海で遊ぶという事は思っていたよりも体力を消耗してしまうという事だ。まだまだ若い千雪ちゃんは俺の事なんて気にせずに海の中に入って見たり砂浜を駆け回ったりして遊んでいる。あんなに激しく遊んでいたらせっかく縫った日焼け止めも効果が無いのではないかと思っていたのだけれど、病的なほどに色白だった千雪ちゃんは少しくらい健康的に日焼けした方が良いんじゃないかなと勝手に思っていた。その場合は、千雪という名前に相応しくないと思うけれどそんな事は俺の知った事ではないよな。
「お兄さんはもう疲れちゃったんですか。まあ、海で遊べるのは今日だけじゃないですしそれなりに楽しめればいいかもしれないですね。でも、お兄さんが千雪と二人だけで遊べる日なんて今日だけかもしれないんですよ。それなのに、お兄さんはそんなにダラダラとしてて後悔しないんですかね?」
「明日からは唯や右近も一緒に海に来るもんな。そうなると今みたいに二人だけで海で遊ぶって事は出来なくなると思うよ。だけどさ、千雪ちゃんと二人だけで遊ぶことにそこまで意味があるのかなって思っちゃうよね。それに、千雪ちゃんって勉強が出来て運動が出来ない典型的な頭脳派の人間だと思ってたのに、意外と体力あるんだね。そんなに元気なのって、若いってだけじゃないと思うんだけど」
「そうですよ。千雪は若いだけじゃなくて体力もあるんです。小さい時からおばあちゃん達と一緒に山に登ったり崖を下ったりって修行してましたからね」
「意外な事実だな。でも、その割には全然日焼けしてないよね。名前の通り雪みたいに透き通った白さを感じるんだけど」
「太陽が出てない時にやるから日焼けなんてするわけないじゃないですか。明るい時に修行しても意味ないですからね。まあ、今はその話はどうでもいい事ですよ。そろそろ休憩も終わりにしてもっと千雪と遊びましょうよ。それとも、夜になってから一緒に海に入りますか?」
「夜に海はダメでしょ。色々と危なそうだし、唯もさすがにダメだって言うと思うよ」
「お姉ちゃんならいいって言ってくれると思うんだけどな。でも、お兄さんがダメって言ったらお姉ちゃんもダメって言うかもしれないな。夜の方が絶対楽しいのに」
小さい時から夜の山で修業しているという話が本当なのかはわからないけれど、千雪ちゃんが色白で若いだけという理由では説明できない程元気があるという事は紛れもない事実なのだ。それを唯に聞いたところで素直に教えてくれるとは思わないけれど、後でこっそりと聞いておこうかな。
「じゃあ、最後に一回だけで良いんで海の中で息止め競争しましょうよ。千雪が勝ったら明日からもお兄さんに遊んでもらうって事でいいですか?」
「俺が勝った場合はどうなるの?」
「お兄さんが勝った場合ですか。そんな事にはならないと思いますけど、そうなったら千雪がお兄さんと遊んであげてもいいですよ」
それはどっちが勝っても同じなんじゃないかと思うんだけど、それを言ったところでそれは全然違うとか言ってきてその主張は曲げないんだろうな。悲しいことに俺はこんな小さな中学生の女の子と言い合いをして勝てるという自信は無いのだ。多少は遠慮して言いたいことも我慢してしまうという事もあるのだろうけど、俺はなぜか千雪ちゃんに対して強気に出ることが出来ないのだ。相手が髑髏沼愛華だったなら素直に思ったことを言えるのだけれど、なぜか千雪ちゃんが相手だとそうもいかないのだ。千雪ちゃんと唯の顔が似ているとかは関係なく、千雪ちゃんには言いたいことを全然言えずに最終的にはしたがってしまっている事が多いのだ。
「じゃあ、海に入ってから勝負ですからね。お兄さんがいっぱい遊んでくれたことはおばあちゃんにも教えないといけないですし、お姉ちゃんにも報告しときますからね。二人とも喜んでくれると思うんですけど、千雪が勝ったって報告の方が喜んでもらえると思うんですよ。ね、お兄さん」
俺の手を引いて千雪ちゃんはそのまま海に飛び込んでいった。手を繋いだままの状態なので俺も同時に海に引きずり込まれてしまうのだが、こればかりは何度経験しても慣れることは無く海に入った瞬間は何が何だかわからない状況に陥ってしまっているのだ。こんな経験を人生で何度もしてたまるかという気持ちはあるのだけれど、今日一日だけでも両手で足りない位海に飛び込まされているような気はしているのだ。
海から飛び出て死にそうになっている俺を見て千雪ちゃんは本当に楽しそうに笑っているのだけれど、さすがにこの状況の俺を見て笑うのは良くないのではないかという思いもある。しかし、楽しそうに笑ってくれている千雪ちゃんが見れるのならこれも良い事なのではないかという考えも少なからずあったりはするのだ。
「ちょっと、必死過ぎますって。ここは膝立ちでも大丈夫なくらいの深さなんですからそんなに慌てないでくださいよ。千雪の方が悪いことしてるんじゃないかって思っちゃいそうですもん。そんな風に千雪に心配させて気を引こうとか考えちゃダメですからね。そんな事しなくても、こうしてたくさん遊んでくれたんだからお兄さんの事はほんの少しだけいい人なのかもしれないなって思ってきたところですから。安心してくれていいですからね」
ほんの少しだけいい人だという言葉はちょっと引っかかってしまうけれど、嫌われていないという事がわかっただけでも良しとしようかな。
明日からはもう少しマイルドに遊べるといいなと思いつつも、今日が最後だという思いで俺は千雪ちゃんとの息止め競争に挑むのであった。勝っても負けても結果は何も変わらないと思うのだけれど、せめて一回くらいは男らしいところを見せて勝てるといいなという思いはあったのだけれど、その思いは簡単に破られてしまうのであった。
「お兄さんはもう疲れちゃったんですか。まあ、海で遊べるのは今日だけじゃないですしそれなりに楽しめればいいかもしれないですね。でも、お兄さんが千雪と二人だけで遊べる日なんて今日だけかもしれないんですよ。それなのに、お兄さんはそんなにダラダラとしてて後悔しないんですかね?」
「明日からは唯や右近も一緒に海に来るもんな。そうなると今みたいに二人だけで海で遊ぶって事は出来なくなると思うよ。だけどさ、千雪ちゃんと二人だけで遊ぶことにそこまで意味があるのかなって思っちゃうよね。それに、千雪ちゃんって勉強が出来て運動が出来ない典型的な頭脳派の人間だと思ってたのに、意外と体力あるんだね。そんなに元気なのって、若いってだけじゃないと思うんだけど」
「そうですよ。千雪は若いだけじゃなくて体力もあるんです。小さい時からおばあちゃん達と一緒に山に登ったり崖を下ったりって修行してましたからね」
「意外な事実だな。でも、その割には全然日焼けしてないよね。名前の通り雪みたいに透き通った白さを感じるんだけど」
「太陽が出てない時にやるから日焼けなんてするわけないじゃないですか。明るい時に修行しても意味ないですからね。まあ、今はその話はどうでもいい事ですよ。そろそろ休憩も終わりにしてもっと千雪と遊びましょうよ。それとも、夜になってから一緒に海に入りますか?」
「夜に海はダメでしょ。色々と危なそうだし、唯もさすがにダメだって言うと思うよ」
「お姉ちゃんならいいって言ってくれると思うんだけどな。でも、お兄さんがダメって言ったらお姉ちゃんもダメって言うかもしれないな。夜の方が絶対楽しいのに」
小さい時から夜の山で修業しているという話が本当なのかはわからないけれど、千雪ちゃんが色白で若いだけという理由では説明できない程元気があるという事は紛れもない事実なのだ。それを唯に聞いたところで素直に教えてくれるとは思わないけれど、後でこっそりと聞いておこうかな。
「じゃあ、最後に一回だけで良いんで海の中で息止め競争しましょうよ。千雪が勝ったら明日からもお兄さんに遊んでもらうって事でいいですか?」
「俺が勝った場合はどうなるの?」
「お兄さんが勝った場合ですか。そんな事にはならないと思いますけど、そうなったら千雪がお兄さんと遊んであげてもいいですよ」
それはどっちが勝っても同じなんじゃないかと思うんだけど、それを言ったところでそれは全然違うとか言ってきてその主張は曲げないんだろうな。悲しいことに俺はこんな小さな中学生の女の子と言い合いをして勝てるという自信は無いのだ。多少は遠慮して言いたいことも我慢してしまうという事もあるのだろうけど、俺はなぜか千雪ちゃんに対して強気に出ることが出来ないのだ。相手が髑髏沼愛華だったなら素直に思ったことを言えるのだけれど、なぜか千雪ちゃんが相手だとそうもいかないのだ。千雪ちゃんと唯の顔が似ているとかは関係なく、千雪ちゃんには言いたいことを全然言えずに最終的にはしたがってしまっている事が多いのだ。
「じゃあ、海に入ってから勝負ですからね。お兄さんがいっぱい遊んでくれたことはおばあちゃんにも教えないといけないですし、お姉ちゃんにも報告しときますからね。二人とも喜んでくれると思うんですけど、千雪が勝ったって報告の方が喜んでもらえると思うんですよ。ね、お兄さん」
俺の手を引いて千雪ちゃんはそのまま海に飛び込んでいった。手を繋いだままの状態なので俺も同時に海に引きずり込まれてしまうのだが、こればかりは何度経験しても慣れることは無く海に入った瞬間は何が何だかわからない状況に陥ってしまっているのだ。こんな経験を人生で何度もしてたまるかという気持ちはあるのだけれど、今日一日だけでも両手で足りない位海に飛び込まされているような気はしているのだ。
海から飛び出て死にそうになっている俺を見て千雪ちゃんは本当に楽しそうに笑っているのだけれど、さすがにこの状況の俺を見て笑うのは良くないのではないかという思いもある。しかし、楽しそうに笑ってくれている千雪ちゃんが見れるのならこれも良い事なのではないかという考えも少なからずあったりはするのだ。
「ちょっと、必死過ぎますって。ここは膝立ちでも大丈夫なくらいの深さなんですからそんなに慌てないでくださいよ。千雪の方が悪いことしてるんじゃないかって思っちゃいそうですもん。そんな風に千雪に心配させて気を引こうとか考えちゃダメですからね。そんな事しなくても、こうしてたくさん遊んでくれたんだからお兄さんの事はほんの少しだけいい人なのかもしれないなって思ってきたところですから。安心してくれていいですからね」
ほんの少しだけいい人だという言葉はちょっと引っかかってしまうけれど、嫌われていないという事がわかっただけでも良しとしようかな。
明日からはもう少しマイルドに遊べるといいなと思いつつも、今日が最後だという思いで俺は千雪ちゃんとの息止め競争に挑むのであった。勝っても負けても結果は何も変わらないと思うのだけれど、せめて一回くらいは男らしいところを見せて勝てるといいなという思いはあったのだけれど、その思いは簡単に破られてしまうのであった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
漫才部っ!!
育九
青春
漫才部、それは私立木芽高校に存在しない部活である。
正しく言えば、存在はしているけど学校側から認められていない部活だ。
部員数は二名。
部長
超絶美少女系ぼっち、南郷楓
副部長
超絶美少年系ぼっち、北城多々良
これは、ちょっと元ヤンの入っている漫才部メンバーとその回りが織り成す日常を描いただけの物語。
善意一〇〇%の金髪ギャル~彼女を交通事故から救ったら感謝とか同情とか罪悪感を抱えられ俺にかまってくるようになりました~
みずがめ
青春
高校入学前、俺は車に撥ねられそうになっている女性を助けた。そこまではよかったけど、代わりに俺が交通事故に遭ってしまい入院するはめになった。
入学式当日。未だに入院中の俺は高校生活のスタートダッシュに失敗したと落ち込む。
そこへ現れたのは縁もゆかりもないと思っていた金髪ギャルであった。しかし彼女こそ俺が事故から助けた少女だったのだ。
「助けてくれた、お礼……したいし」
苦手な金髪ギャルだろうが、恥じらう乙女の前に健全な男子が逆らえるわけがなかった。
こうして始まった俺と金髪ギャルの関係は、なんやかんやあって(本編にて)ハッピーエンドへと向かっていくのであった。
表紙絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストです。
全体的にどうしようもない高校生日記
天平 楓
青春
ある年の春、高校生になった僕、金沢籘華(かなざわとうか)は念願の玉津高校に入学することができた。そこで出会ったのは中学時代からの友人北見奏輝と喜多方楓の二人。喜多方のどうしようもない性格に奔放されつつも、北見の秘められた性格、そして自身では気づくことのなかった能力に気づいていき…。
ブラックジョーク要素が含まれていますが、決して特定の民族並びに集団を侮蔑、攻撃、または礼賛する意図はありません。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
世見津悟志の学園事件簿
こうづけのすけ
青春
高校二年生の世見津悟志が紡ぐ、怪奇なことがよく起こるこの学校と地域の伝承伝説に触れてゆく。個性豊かなクラスメイトと、土地を訪ねるごとに関りを持つ人々。世見津悟志が、青春と怪奇な世界とを行き来する学園青春サバイバルサスペンス。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる