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第五十九話 私も海水浴に誘われました

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 ゼミが始まる前に聞いていたので知っていたのだけれど右近たちは今年の夏休みに海水浴に行くらしい。私達も一緒に行きたいなとは思っていたのだけれどみんな実家に帰省していたり就職活動なんかもあるので自分たちから声はかけづらかった。右近と愛ちゃんが一緒にいる空間に割り込む自信も無かったとのだけれど、それ以上に政虎君も一緒にいるんだという事を考えると一緒に行ってみたいという気持ちもそれほど湧いてこなかったのだった。
「桜さんが来てくれて良かったです。桜さんがいればお兄さんも参加してくれると思ってたんですよ」
「そんな事ないと思うよ。私がいなくても政虎君は参加してたと思うし」
「それがそうでもないんですよ。お兄さんは私が誘っても右近君が誘っても愛華ちゃんが誘っても参加するって言ってくれなかったんですからね。お姉ちゃんは断られるのが最初から分かっていたみたいで声もかけなかったみたいなんです。でも、お姉ちゃんのアドバイス通り桜さんも誘ったらお兄さんも来てくれることになってよかったです。もちろん、お兄さんなんかいてもいなくても桜さんも一緒に来てくれたら嬉しいなって思ってたんですよ」
「へえ、唯ちゃんが私を誘ってくれたんだ。あんまりお話とかしたことないからちょっと意外だったけど、誘ってくれて嬉しいなって思うよ」
 千雪ちゃんとはこうして話すことも多いのだけれど唯ちゃんとはほとんど話したことが無いと思うんだよね。授業関係で必要な事とかくらいしか話した記憶はないんだけど、政虎君が近くにいる時はいつもよりも話しかけにくい感じな気がしてるんだよね。唯ちゃんが政虎君の事を好きだって事は学校中のみんなが知っている事なので二人が近くにいる時は話しかけるのとかも自然と遠慮しちゃうんだけど、どうしてあの二人は付き合ったりしないんだろうかなって思うよ。政虎君と唯ちゃんが付き合えば私と右近が付き合える可能性だって出てくると思うんだけどな。
「桜さんってどんな水着にするんですか?」
「あ、私は水着は持ってかないかな。海は見るだけで入ったり出来ないんだよね。海水に入ると肌がちょっと炎症起こしちゃうかもしれないんだ。ちょっとくらいだったら平気だと思うんだけど、みんなに迷惑かけちゃうかもしれないからね。でも、みんなが遊んでるのを見るのは楽しそうだからさ」
「うーん、それは残念です。桜さんはお姉ちゃんほどじゃないけど胸も大きいですし、スタイルも良いから将来の参考にしたいなって思ってたんですよ。たぶん、千雪はお姉ちゃんほど胸は大きくならないと思うんで桜さんみたいにスタイルがいい感じになれた時を想像したかったんです。愛華ちゃんは身長も高くてスレンダーでも出るみたいだなって思うんですけど、大人なのに千雪とそこまで胸の大きさが変わらないんで参考にならないんですよね。まあ、あの顔とスタイルで胸まで大きかったら反則だと思うんでいいことだと思うんですけど、体型に関しては何の参考にも出来ないと思います。あ、そうだ、旅館に行ったら一緒にお風呂に入りましょうね。お姉ちゃんも愛華ちゃんも誘いたいけど二人とも断ってきそうですし、千雪は桜さんと一緒にお風呂に入りたいです」
「部屋のお風呂とかは無理だけど大浴場とかあったら一緒に入ろうか。男湯と女湯ってわかれてるんだよね?」
「もちろんですよ。さすがに千雪も混浴は嫌ですからね。共同浴場は混浴みたいですけど、旅館にもお風呂があるんでわざわざそこに行く理由もないですからね。桜さんは行ってみたいですか?」
「行ってみたくはないかな。私も混浴は嫌だと思うし」
 右近に一緒にお風呂に入ろうと誘われたら混浴に行くのもありかもしれないって思うんだけど、そうなった場合はきっと政虎君も一緒になるよね。それはちょっと嫌だと思うな。
 あの二人が混浴に行くような感じには見えないけど、万が一誘われる可能性も無いわけじゃないよね。あんまり日数は無いけど少しだけダイエットしておこうかな。バイト先で甘いもの食べるのもちょっとだけ控えることにしようかな。
「盗み聞きをしてたわけじゃないんだけどさ、千雪はさっき私の胸が無いとか言ってたよな?」
「え、そんなこと言ったっけ。千雪は覚えてないかも」
「言ってないんだったらいいけどさ、あんまりそういうこと言わない方が良いと思うよ。千雪も人の事言えるような感じじゃないんだし、私の事を馬鹿にしてると自分の将来に響いてきちゃうんじゃないかな。唯ちゃんに聞いたんだけどさ、千雪のお母さんもおばあちゃんも胸は小さいらしいじゃない。親戚の中でも唯ちゃん以外はみんな小さいから大きいのが恥ずかしいって言ってたんだけど、そう考えたら千雪はそこから成長しない可能性の方が高いんじゃないかな。バストよりもウエストの方が大きくなっちゃう可能性だってあるんじゃないかな」
「そ、そんなことは無いもん。千雪はお姉ちゃんと一緒で大きくなる可能性があるんだもん」
「残酷なことを言うかもしれないけどな、あんまり希望は持たない方が良いぜ。唯ちゃんは自分でも突然変異だって自覚しているし、千雪くらいの年齢の時にはもう大きかったからな。だからさ、希望なんて持たずに諦めろよ。な、諦めちまいなって」
「確かに、お姉ちゃんは小学生の時から大きかったかもしれないけど、千雪だってこれからまだ大きくなるかもしれないからね。愛華ちゃんと違って千雪には可能性があるんだもん」
 こうして喧嘩はしているけど仲の良い二人を見ていると姉妹みたいだなって思うことがある。顔だけ見たら千雪ちゃんは唯ちゃんと似ていると思うんだけど、こうして話をしているところを見ると愛ちゃんも姉妹なんじゃないかなってくらい仲が良く見えるんだよね。私もその輪に加わったら楽しそうだなって思うんだけど、唯ちゃんと政虎君の事を考えるとちょっとだけ躊躇しちゃうんだ。
「そうそう、桜は海に入れないって聞いてるんだけどさ、水着は着たりしないのか?」
「うん、肌が弱いから海水とか日光もあんまり良くないんだ。誘ってもらったのにごめんね」
「いや、こっちこそそんな事も知らないで誘っちゃってごめんな。嫌だったら無理して参加しなくても良いんだからな」
「全然嫌とかは無いよ。千雪ちゃんとは仲良くしてるけどさ、愛ちゃんとか唯ちゃんとも仲良くしたいなって思ってるからね。誘ってくれて嬉しいって思うよ」
「私も桜とは話してみたいなって思ってたよ。唯ちゃんも桜と仲良くなりたいって言ってたしな。あらためてよろしくな。桜が良ければなんだけど、週末に一緒に買い物に行かないかな。ちょっとみんなで選びたいものがあるみたいなんだけど、大丈夫だったりするかな?」
「夜はバイトあるけど日中だったら大丈夫だよ。土曜日でも日曜日でも大丈夫だから」
 みんなで選びたいものが何なのか気になるけど、それ以上に右近も一緒に買い物に行くのかが気になるよね。右近が来るんだったら政虎君も来るんだろうけど、少しくらいは我慢しなきゃダメだと思うからね。
 せっかく誘ってもらったのに空気を悪くするような事はしないようにしないとね。
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