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第三十六話 私と柊政虎は友達と言っていいのだろうか
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学生街にあるスーパーのフードコートには見知った顔がいくつもあるのだ。当然、顔を知っているだけの連中なので私の友達と言うわけではないし、柊政虎の友達でもないだろう。そもそも、この男に友達と呼べるような人間は鬼仏院右近くらいしか存在しないと思う。
「前から気になっていたんだが、どうしてお前と鬼仏院右近は仲が良いんだ?」
「どうしてって言われてもな。喧嘩とかしないからじゃないか」
「喧嘩は良くしているように思うんだが、お前たちは喧嘩してると思ってないのか?」
「ああ、あんなのはただの言い合いだからな。右近は他人にはあまり見せないけど結構口が悪かったりするんだぜ。親の前でも猫被ってるような奴だから本当に気を許した相手にしか見せない一面だと思うんだけど、愛たちもその気を許せる仲間だと思われてるって事だな」
「そんな意外な一面が見れることは嬉しいような嬉しくないような複雑な心境だな」
私達はみんなから離れた席に座っているのだけれど、離れて座ってしまったがためにかえって周りの視線が私達に集中しているという事が理解出来ていた。たぶん、私と柊政虎が一緒にいることが不思議に思えているんだろうな。
「さっきみたいなところってさ、よく見かけるんだけど、愛ってあんな風に良くナンパされてるのか?」
「こっちに気たての頃は多かったと思う。最近はそんなに多くないとは思うんだけど、月に何回か知らない人に声をかけられることはあるな。でも、そんな時にどうするのが正解なのか私にはわからないんだ。男のお前に聞いても仕方ないと思うし、お前はナンパなんてしないだろうから相手の気持ちもわからないと思うけど、どんな風に接すればいいんだと思う?」
「そんなの一つしかないだろ。全く相手にしなければいいだけの話だろ」
確かにそれはそうだと思う。でも、相手だって多少は勇気を出して話しかけてきていると思うし、その勇気に多少は敬意を払っても良いとは思うんだ。それは間違っている事なのかもしれないけれど。
「愛って本当に優しいよな。俺だったら知らないやつにどう思われようが気にしたりなんてしないし。知ってるやつにどう思われても気にしないってのもあるけどな」
「私は別に優しくないと思うけど。優しいと言ったら唯ちゃんとか鬼仏院右近の方が優しいと思うけど」
「右近が誰にでも優しいってのはどうい出来るけどさ、唯は誰にでも優しいとはちょっと違うような気がするんだよな。俺とか愛とか右近とかには優しいって思うけど、それ以外の人にはちょっと物理的にも心理的にも距離をあけすぎてるんじゃないかなって思うよ。俺達以外に唯と話をしてる人って見た事が無いような気がするからな」
「それはあんたも一緒でしょ。あんただって私達以外と話してるところなんて見た事ないけど」
「それを言ったら愛だってそうだと思うけどな。俺達の中で社交性があるのって右近だけだと思うけど、あいつの社交性だって自分を守るために身につけたものだと思うしな」
「あんたも鬼仏院右近みたいにモテたいとか思ったりするわけ?」
「さすがにあそこまでモテるのって辛いんじゃないかなって思うよ。毎日のように誰かに告白されてたり見られてるのってストレス凄そうだもんな。俺にはわからない苦労とかしたいって思わないよ。そう言う意味じゃさ、俺なんかよりも愛の方が右近の気持ちとか理解出来るんじゃないかな」
「そう言う意味だと私の方が鬼仏院右近に近いかもしれないけどさ、あんな風に誰とでも付き合おうって気持ちはわからないかな。別にあいつの考えを否定するわけじゃないけど、誰とでも付き合うってのはどうかと思うし」
「あいつの場合は付き合うって言っても形式だけのものだからな。右近と付き合ったことが無い愛と唯が一番一緒にいるってのも皮肉なもんだけどさ、二人とも右近に対して恋愛感情を持ってないからこそ一緒にいられるって事なんだろうな」
「私も唯ちゃんも鬼仏院右近は恋愛対象として見てないからね。もちろん、私はあんたの事も恋愛対象としては見てないけど」
「それはお互い様だけどな」
さっきまで空席が目立っていたと思っていたのにいつの間にかほとんどの席が埋まりかけていた。近くの高校の授業が終わって高校生が増えてきたというのもあるのだろうけど、さっきよりも見たことがある人が増えているのも少しだけ気になっていた。
別に私は柊政虎と一緒にいるところを見られてもなんとも思いはしないけれど、柊政虎に対しての悪口にも似た言葉を聞くのはなんだか嫌な思いがするのであった。こいつが悪く言われるのは何の問題も無いとは思うけれど、私と一緒にいることでこいつが不当に悪く言われるというのはほんのちょっとだけ申し訳ない気持ちが芽生えない事も無い。
「今日は唯と一緒にご飯食べないのか?」
「毎日一緒ってわけでもないからね。今日は適当に出来合いのモノでも買って済ませようかと思ってるし」
「何か用事でもあるのか?」
「用事というか、来週提出のレポートをやっちゃおうかと思って。あんたはもう終わらせてるんだよね?」
「あのレポートならもう終わらせてるよ。あんな感じのテーマはわりと好きだったりするからな」
「そうなんだ。じゃあさ、どんな感じにしたのかあとで見せてもらえるかな。私は全然イメージ掴めてないからさ」
「別に減るもんじゃないからいいけど、パクったらダメだからな」
「そんな事しないわよ。あと、さっきは私の胸が小さいとか言ったよね?」
「小さいなんて言ってないって。無いって言っただけだよ」
「そっちの方が余計悪いわ。まあ、悪気があって言ってるわけじゃないと思うからいいけど、あんまりそういうことは言わない方が良いと思うよ。私じゃなければ怒ってるかもしれないからね」
今まで私の容姿について何か悪口を言ってくる人なんていなかった。こいつは私の胸が小さいことをやたらと言ってくるんだけど、唯ちゃんの大きい胸については何か言ってるのって聞いた事ないかもしれないな。
こいつにも恥ずかしいとか思うことってあるのかしら?
「前から気になっていたんだが、どうしてお前と鬼仏院右近は仲が良いんだ?」
「どうしてって言われてもな。喧嘩とかしないからじゃないか」
「喧嘩は良くしているように思うんだが、お前たちは喧嘩してると思ってないのか?」
「ああ、あんなのはただの言い合いだからな。右近は他人にはあまり見せないけど結構口が悪かったりするんだぜ。親の前でも猫被ってるような奴だから本当に気を許した相手にしか見せない一面だと思うんだけど、愛たちもその気を許せる仲間だと思われてるって事だな」
「そんな意外な一面が見れることは嬉しいような嬉しくないような複雑な心境だな」
私達はみんなから離れた席に座っているのだけれど、離れて座ってしまったがためにかえって周りの視線が私達に集中しているという事が理解出来ていた。たぶん、私と柊政虎が一緒にいることが不思議に思えているんだろうな。
「さっきみたいなところってさ、よく見かけるんだけど、愛ってあんな風に良くナンパされてるのか?」
「こっちに気たての頃は多かったと思う。最近はそんなに多くないとは思うんだけど、月に何回か知らない人に声をかけられることはあるな。でも、そんな時にどうするのが正解なのか私にはわからないんだ。男のお前に聞いても仕方ないと思うし、お前はナンパなんてしないだろうから相手の気持ちもわからないと思うけど、どんな風に接すればいいんだと思う?」
「そんなの一つしかないだろ。全く相手にしなければいいだけの話だろ」
確かにそれはそうだと思う。でも、相手だって多少は勇気を出して話しかけてきていると思うし、その勇気に多少は敬意を払っても良いとは思うんだ。それは間違っている事なのかもしれないけれど。
「愛って本当に優しいよな。俺だったら知らないやつにどう思われようが気にしたりなんてしないし。知ってるやつにどう思われても気にしないってのもあるけどな」
「私は別に優しくないと思うけど。優しいと言ったら唯ちゃんとか鬼仏院右近の方が優しいと思うけど」
「右近が誰にでも優しいってのはどうい出来るけどさ、唯は誰にでも優しいとはちょっと違うような気がするんだよな。俺とか愛とか右近とかには優しいって思うけど、それ以外の人にはちょっと物理的にも心理的にも距離をあけすぎてるんじゃないかなって思うよ。俺達以外に唯と話をしてる人って見た事が無いような気がするからな」
「それはあんたも一緒でしょ。あんただって私達以外と話してるところなんて見た事ないけど」
「それを言ったら愛だってそうだと思うけどな。俺達の中で社交性があるのって右近だけだと思うけど、あいつの社交性だって自分を守るために身につけたものだと思うしな」
「あんたも鬼仏院右近みたいにモテたいとか思ったりするわけ?」
「さすがにあそこまでモテるのって辛いんじゃないかなって思うよ。毎日のように誰かに告白されてたり見られてるのってストレス凄そうだもんな。俺にはわからない苦労とかしたいって思わないよ。そう言う意味じゃさ、俺なんかよりも愛の方が右近の気持ちとか理解出来るんじゃないかな」
「そう言う意味だと私の方が鬼仏院右近に近いかもしれないけどさ、あんな風に誰とでも付き合おうって気持ちはわからないかな。別にあいつの考えを否定するわけじゃないけど、誰とでも付き合うってのはどうかと思うし」
「あいつの場合は付き合うって言っても形式だけのものだからな。右近と付き合ったことが無い愛と唯が一番一緒にいるってのも皮肉なもんだけどさ、二人とも右近に対して恋愛感情を持ってないからこそ一緒にいられるって事なんだろうな」
「私も唯ちゃんも鬼仏院右近は恋愛対象として見てないからね。もちろん、私はあんたの事も恋愛対象としては見てないけど」
「それはお互い様だけどな」
さっきまで空席が目立っていたと思っていたのにいつの間にかほとんどの席が埋まりかけていた。近くの高校の授業が終わって高校生が増えてきたというのもあるのだろうけど、さっきよりも見たことがある人が増えているのも少しだけ気になっていた。
別に私は柊政虎と一緒にいるところを見られてもなんとも思いはしないけれど、柊政虎に対しての悪口にも似た言葉を聞くのはなんだか嫌な思いがするのであった。こいつが悪く言われるのは何の問題も無いとは思うけれど、私と一緒にいることでこいつが不当に悪く言われるというのはほんのちょっとだけ申し訳ない気持ちが芽生えない事も無い。
「今日は唯と一緒にご飯食べないのか?」
「毎日一緒ってわけでもないからね。今日は適当に出来合いのモノでも買って済ませようかと思ってるし」
「何か用事でもあるのか?」
「用事というか、来週提出のレポートをやっちゃおうかと思って。あんたはもう終わらせてるんだよね?」
「あのレポートならもう終わらせてるよ。あんな感じのテーマはわりと好きだったりするからな」
「そうなんだ。じゃあさ、どんな感じにしたのかあとで見せてもらえるかな。私は全然イメージ掴めてないからさ」
「別に減るもんじゃないからいいけど、パクったらダメだからな」
「そんな事しないわよ。あと、さっきは私の胸が小さいとか言ったよね?」
「小さいなんて言ってないって。無いって言っただけだよ」
「そっちの方が余計悪いわ。まあ、悪気があって言ってるわけじゃないと思うからいいけど、あんまりそういうことは言わない方が良いと思うよ。私じゃなければ怒ってるかもしれないからね」
今まで私の容姿について何か悪口を言ってくる人なんていなかった。こいつは私の胸が小さいことをやたらと言ってくるんだけど、唯ちゃんの大きい胸については何か言ってるのって聞いた事ないかもしれないな。
こいつにも恥ずかしいとか思うことってあるのかしら?
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