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第三十二話 唯と右近がオシャレなバーで二人きり
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こうして一緒の時間を過ごしていると、どうしてここまで右近君がモテるのかわかる気がする。右近君はきっと意識しないでやっているのだと思うけど、一緒にいて不快に思う事が本当にないのだ。隣にいる私だけにではなく知らない人にも気を使っているのがわかるし、誰よりも思いやりがある優しい人だという事が一つ一つの行動をとって見ても納得出来る。どうしてそこまで他人に気を使えるんだろうと思う事もあるのだけれど、鬼仏院右近とは自分の事を多少犠牲にしても他人のために何か出来る人間なんだという事がモテる秘訣なんだろうな。もちろん、顔も良いしスタイルだって芸能人なんじゃないかなって思うくらいに整っているというのもあるのだろうけどね。
普通はここまで完璧な人の隣に私みたいな人間がいると妬み嫉み僻みなどの感情をぶつけられてもおかしくないと思うのだけれど、不思議なことに右近君の事を好きになる人は私の事をあまり悪く言っている人はいないのだ。愛華ちゃんみたいに右近君の隣にいてもおかしくない容姿を持っていれば女子からも羨ましがられることがあるかもしれないけれど、私には他人に誇れるものなんてほとんど持ち合わせていない。まあ、愛華ちゃんよりはおっぱいが少し大きい、少しなんて言ったら愛華ちゃんに怒られてしまうかもしれないけど、それくらいしか取り柄も無いんだろうな。人によってはそれも取り柄として受け止めてくれないかもしれないと思うけどね。
でも、完璧で誰からも好かれると思う右近君の隣に私がいても誰にも何も言われないというのは明確な理由があるのだ。それは、誰が見てもわかるくらいに右近君は私に対して恋愛感情を抱いていないという事だ。右近君が私に対する行為は家族や親友に向けられるものと一緒だと思うのだが、それは知らない人が見てもほんの短い時間でわかるくらいに露骨な態度で表れているようだ。
今まで多くの女性と付き合ってきた右近君ではあるけれど、どの女性に対しても私に対する態度とあまり変わらないような感じであり、外から見ても近くで見ていてもこの人は女性に対してあまり良い印象を持っていないんだろうなという事が見て取れるのだ。他の人はたぶん気付いていないことだと思うのだけれど、右近君は女性に対して恋愛感情を抱くことは無く仲の良い友人としてしか見ていない。もしかしたら、愛華ちゃんもその事に気付いているのかもしれないけれど、政虎はきっとそんな事には気付いていないんだろうな。私の好意には気付いていてソレを避けようとしているくせに、右近君から向けられている好意には全く気付かずに自然と距離を詰めている鈍感男が柊政虎という男の悪いところなのだろう。
「普段はあんまり飲まないんだけどさ、こういうところで飲むお酒もたまにだったら美味しいね」
私は沈黙が続いてもなんとも思わないのだけれど、さすがにずっと黙っているのは気が引けるなという絶妙なタイミングで話しかけてくるのも右近君がモテる理由の一つなんだろうな。それに、こういう場面で右近君は絶対にネガティブな話題は出さないのだ。右近君から負の感情を見せることなんて滅多になく、一緒にいると私の中のそう言ったネガティブな感情も少しずつ失っていっているようにすら思えるくらいだった。
「私は親からお酒をあまり飲むなって言われて育ったんで右近君より飲んでないと思うんだけど、確かにここのお酒は飲みやすいって思うわ。ここの店を選んでくれたのって、私にも飲めるお酒があるからなの?」
「それもあるんだけどさ、ここだったら聞かれたくない話も出来るんじゃないかなって思ってね。周りはカップルばっかりだから他人に興味なんて持ってないと思うし、隣との仕切りもちゃんとあるから大丈夫だと思うんだ」
「確かにね、ここはデートにはうってつけの場所だと思うわ。私が政虎を誘っても一緒に来てくれないだろうって点を除けばいい店だと思う」
「だろうな。俺が誘っても中を見た時点で政虎は帰ろうとするんだろうな。お互いにこういう店に一番誘いたい相手が乗り気にならないってのが辛いところだよな」
グラスに少しだけ残ったお酒を一気に飲み干した右近君は同じものを注文していた。私も少しだけ自分のグラスに口を付けたのだけれど、右近君みたいにグイっと飲むことはせずにゆっくりとお酒の味を楽しんでいた。
店内はそれほど広くないのだけれど、数席間隔で空いていて隣の会話も聞こえにくいし雰囲気的にも大きな声で話すような場所ではないのだ。確かに、お酒の力に頼って他では出来ないような話をするにはちょうどいい場所なのかもしれない。
「で、唯は政虎とどこまで行ってるのかな?」
「どこまでって言うと?」
「あれから何か進展はあったのかな?」
「そうだね。強いて言えば、今までよりもご飯を食べてくれる回数が多くなったって事かな。最初の頃は遠慮して誘っても断られたりもしてたんだけどね、今では政虎からお願いしてくれることも増えてきたんだよ。お願いって言っても、日常会話の中で食べ物の話題が増えたくらいなんだけど、政虎の性格的に直接頼むのが恥ずかしいからそういう話題を出して私から誘うように仕向けてるんだと思うけどね」
「政虎ってそう言うところあるよな。俺にはハッキリといろいろ言ってくれてたけどさ。たぶんだけど、政虎はもう唯の料理の魅力に取りつかれてるんだと思うよ。一緒にゲームしてても唯の話題が出ることも多くなってきたからな。俺が隣にいるって言うのに他の女の話題を出すなよって思うけどさ、さすがにそんな事言ったら気持ち悪いって思われそうだから言えないよな。でも、唯の話題だからまだ我慢出来るけどね」
「私の話題って言うよりも、私の作った料理の話題なんでしょ?」
「そうなんだけどさ、なんでそこまで政虎の胃袋をガッチリつかめるんだろうって疑問なんだよな。確かに美味しいものを作ってるとは思うけどさ、政虎だけが絶賛するってのも不思議なんだよな。愛華だって美味しいとは思ってるだろうけど、正直に言って政虎が思うほどは凄いって思えないんだよな」
「あれは政虎が美味しいって感じるように色々と試してるからね。いろんな人に意見を聞いたりしてるってのもあるんだけど、普段食べてるものとか見てたら何となく好きな味とかもわかっちゃうんじゃないかな」
政虎の事を教えてくれる人は結構いるんだけど、みんな政虎の本質を見ていないだけなんだよね。でも、政虎が私だけに自分の本質を教えてくれているって言うのは、私的にはありだと思うんだよね。
普通はここまで完璧な人の隣に私みたいな人間がいると妬み嫉み僻みなどの感情をぶつけられてもおかしくないと思うのだけれど、不思議なことに右近君の事を好きになる人は私の事をあまり悪く言っている人はいないのだ。愛華ちゃんみたいに右近君の隣にいてもおかしくない容姿を持っていれば女子からも羨ましがられることがあるかもしれないけれど、私には他人に誇れるものなんてほとんど持ち合わせていない。まあ、愛華ちゃんよりはおっぱいが少し大きい、少しなんて言ったら愛華ちゃんに怒られてしまうかもしれないけど、それくらいしか取り柄も無いんだろうな。人によってはそれも取り柄として受け止めてくれないかもしれないと思うけどね。
でも、完璧で誰からも好かれると思う右近君の隣に私がいても誰にも何も言われないというのは明確な理由があるのだ。それは、誰が見てもわかるくらいに右近君は私に対して恋愛感情を抱いていないという事だ。右近君が私に対する行為は家族や親友に向けられるものと一緒だと思うのだが、それは知らない人が見てもほんの短い時間でわかるくらいに露骨な態度で表れているようだ。
今まで多くの女性と付き合ってきた右近君ではあるけれど、どの女性に対しても私に対する態度とあまり変わらないような感じであり、外から見ても近くで見ていてもこの人は女性に対してあまり良い印象を持っていないんだろうなという事が見て取れるのだ。他の人はたぶん気付いていないことだと思うのだけれど、右近君は女性に対して恋愛感情を抱くことは無く仲の良い友人としてしか見ていない。もしかしたら、愛華ちゃんもその事に気付いているのかもしれないけれど、政虎はきっとそんな事には気付いていないんだろうな。私の好意には気付いていてソレを避けようとしているくせに、右近君から向けられている好意には全く気付かずに自然と距離を詰めている鈍感男が柊政虎という男の悪いところなのだろう。
「普段はあんまり飲まないんだけどさ、こういうところで飲むお酒もたまにだったら美味しいね」
私は沈黙が続いてもなんとも思わないのだけれど、さすがにずっと黙っているのは気が引けるなという絶妙なタイミングで話しかけてくるのも右近君がモテる理由の一つなんだろうな。それに、こういう場面で右近君は絶対にネガティブな話題は出さないのだ。右近君から負の感情を見せることなんて滅多になく、一緒にいると私の中のそう言ったネガティブな感情も少しずつ失っていっているようにすら思えるくらいだった。
「私は親からお酒をあまり飲むなって言われて育ったんで右近君より飲んでないと思うんだけど、確かにここのお酒は飲みやすいって思うわ。ここの店を選んでくれたのって、私にも飲めるお酒があるからなの?」
「それもあるんだけどさ、ここだったら聞かれたくない話も出来るんじゃないかなって思ってね。周りはカップルばっかりだから他人に興味なんて持ってないと思うし、隣との仕切りもちゃんとあるから大丈夫だと思うんだ」
「確かにね、ここはデートにはうってつけの場所だと思うわ。私が政虎を誘っても一緒に来てくれないだろうって点を除けばいい店だと思う」
「だろうな。俺が誘っても中を見た時点で政虎は帰ろうとするんだろうな。お互いにこういう店に一番誘いたい相手が乗り気にならないってのが辛いところだよな」
グラスに少しだけ残ったお酒を一気に飲み干した右近君は同じものを注文していた。私も少しだけ自分のグラスに口を付けたのだけれど、右近君みたいにグイっと飲むことはせずにゆっくりとお酒の味を楽しんでいた。
店内はそれほど広くないのだけれど、数席間隔で空いていて隣の会話も聞こえにくいし雰囲気的にも大きな声で話すような場所ではないのだ。確かに、お酒の力に頼って他では出来ないような話をするにはちょうどいい場所なのかもしれない。
「で、唯は政虎とどこまで行ってるのかな?」
「どこまでって言うと?」
「あれから何か進展はあったのかな?」
「そうだね。強いて言えば、今までよりもご飯を食べてくれる回数が多くなったって事かな。最初の頃は遠慮して誘っても断られたりもしてたんだけどね、今では政虎からお願いしてくれることも増えてきたんだよ。お願いって言っても、日常会話の中で食べ物の話題が増えたくらいなんだけど、政虎の性格的に直接頼むのが恥ずかしいからそういう話題を出して私から誘うように仕向けてるんだと思うけどね」
「政虎ってそう言うところあるよな。俺にはハッキリといろいろ言ってくれてたけどさ。たぶんだけど、政虎はもう唯の料理の魅力に取りつかれてるんだと思うよ。一緒にゲームしてても唯の話題が出ることも多くなってきたからな。俺が隣にいるって言うのに他の女の話題を出すなよって思うけどさ、さすがにそんな事言ったら気持ち悪いって思われそうだから言えないよな。でも、唯の話題だからまだ我慢出来るけどね」
「私の話題って言うよりも、私の作った料理の話題なんでしょ?」
「そうなんだけどさ、なんでそこまで政虎の胃袋をガッチリつかめるんだろうって疑問なんだよな。確かに美味しいものを作ってるとは思うけどさ、政虎だけが絶賛するってのも不思議なんだよな。愛華だって美味しいとは思ってるだろうけど、正直に言って政虎が思うほどは凄いって思えないんだよな」
「あれは政虎が美味しいって感じるように色々と試してるからね。いろんな人に意見を聞いたりしてるってのもあるんだけど、普段食べてるものとか見てたら何となく好きな味とかもわかっちゃうんじゃないかな」
政虎の事を教えてくれる人は結構いるんだけど、みんな政虎の本質を見ていないだけなんだよね。でも、政虎が私だけに自分の本質を教えてくれているって言うのは、私的にはありだと思うんだよね。
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