25 / 100
第二十五話 いつもと同じ少し違う朝
しおりを挟む
昨日貰ったサンドイッチは冷蔵庫に入れていたためか少し硬くなっていたけれど最後まで美味しくいただくことが出来た。あまり冷えた食べ物は好みではないのだけれど朝は時間もあまりないので贅沢なことは言っていられないな。
時報代わりに流しているニュースでは俺の住んでいる地域にはあまり関係ないニュースをやっていた。俺は自分に関わりのないことはあまり興味を持てないので集中してみることは無いのだけれど、好奇心旺盛な鬼仏院右近はこういった話題も欠かさずチェックして会話のタネをたくさん集めているんだろうな。そんなところも俺と鬼仏院右近が女子に与えている印象の違いになっていたりするんだろうとは思うけれど、今更性格も行動パターンも思考も帰る事なんて容易ではないと思って諦めていたりもするのだ。
朝一の講義は少し面倒に感じているし必修と言うわけでもないので受ける必要もないと思うのだけれど、鬼仏院右近がどうしても俺と一緒に受けたいという事なので履修登録しているのだ。それなりに興味もあるので問題はないのだけれど。
ニュースの終わりに数分間だけ放送される本日の占いが終わったタイミングで家を出ると鬼仏院右近がちょうど俺の家の近くにやってくる頃合いなので俺はそれに合わせて家を出るのだ。占いなんかに興味はないのだけれど、今日の運勢が良かったりすると少しだけ嬉しく思ってしまうというのは俺も案外乗せられやすい性格なのかもしれないなと思っていたりもした。
俺の家のすぐ近くにある自動販売機は学生マンションの敷地にあるからなのか他の自動販売機よりも少し安めの金額設定になっているのだが、あまり利用している人を見かけることは無かった。近所に安いスーパーがいくつかあることも理由だと思うけれど、そもそも自動販売機を誰かが使っている事を見る機会なんて早々ないのだと思う。
「あ、おはよう。昨日はありがとうね」
「おはよう。こっちこそありがとうな。今日の朝も食べようと思ってたんだけどさ、昨日バイト帰りにやってきた右近に全部食べられちゃったよ」
「そうなんだ。それだったらまた今度何か作ってあげるよ。次は右近君の嫌いなものにしちゃおうかな」
毎回この自動販売機の前で悩んでいる鵜崎唯に挨拶をするのだが、隣にいる髑髏沼愛華は俺の存在に気付いていないのか全く俺の事を見ようとはしないのだ。昨日は普通に話も出来たしご飯だって一緒に食べたりゲームもやった仲ではあるのだけれど、なぜか朝だけは毎回俺の事を無視してくるのだ。
「今日は右近君来てないの?」
「そう言えばまだ見てないな。いつもならこれくらいの時間にはこの辺にいるのにな」
「あいつなら先に行ってるって連絡がきてたぞ。今日提出しないといけない書類があるから朝一で学生課に行かないといけないって言ってたからな。二人には連絡きてないのか?」
「そうなんだ。私にはきてないけど政虎にもきてないの?」
「ああ、俺にもそんな連絡はきてないな。そもそも、あんまり携帯で連絡とりあったりしてないしな」
「そうなのか。なんであいつは私にだけそんな連絡をしてきたんだ。みんなに送るのだってそんなに手間ではないと思うのだけど」
たぶんだけど、鬼仏院右近はあえて髑髏沼愛華にだけ連絡したのだと思う。俺や鵜崎唯に送ることも出来たと思うのだけれど、それをしてしまうと俺と髑髏沼愛華が一言も会話を交わさないままこの朝の時間を過ごすとでも思ったのだろう。せっかく一緒にいるのだから何か話せばいいのにと毎回俺達に口うるさく言ってくる鬼仏院右近なりの思いやりなんだろうけど、これが仲の良い人同士の会話なのかと思えてしまうのだ。
それに、鬼仏院右近も鵜崎唯も知らないとは思うけれど、俺と髑髏沼愛華は二人だとそれなりに会話もしていたりするのだ。俺も髑髏沼愛華も沈黙を苦にしないタイプではあると思うのだけれど、鬼仏院右近も鵜崎唯もいない時だと意外とどうでもいい事も話していたりするし一緒に課題をやったりもしているのだ。だが、髑髏沼愛華は鵜崎唯がいる時にはあまり他の人と話をしていないような傾向があるように思えるのだ。
「じゃあ、今日はこのまま三人で教室に行こうか。いつもの席が空いてるといいな」
「最前列中央って早々埋まらないと思うよ。今までもあの席が埋まってたのは見た事ないし」
「そうかもしれないけどさ、今日は埋まってるかもしれないじゃない。毎回同じだからって今日もそれと同じになるとは限らないんだからね」
鵜崎唯の言葉を聞いて俺は感銘を受けてしまったのだが、髑髏沼愛華は少し考えた後に俺の方を向かずに鵜崎唯だけに話しかけていた。
「でも、あの授業ってみんな同じ席に座ってるからわざわざ移動したりしないと思うよ。唯ちゃんが心配しなくてもいつもの席に座れると思うな」
「私もそう思ってるんだけどさ、今日の占いがあんまり良くなかったからね。そう言うところで悪いことが起きると後で嫌な事ないんじゃないかなって思っただけなんだよ」
「そうだったんだ。私は占いとか見てないからわからなかったかも」
「本当に愛華ちゃんは占いとか信じないよね。私も完全に信じてるってわけじゃないんだけどさ、良くない結果の時ってなぜか信じちゃうんだよね。ちなみにだけど、愛華ちゃんの今日の運勢はなかなかいいみたいだったよ。政虎は……頑張ってね」
「その言い方って、唯より悪いって事なのか?」
なぜか俺に謝る鵜崎唯と軽くため息をついた後に憐憫の眼差しを向けてきた髑髏沼愛華に対して何とも言えない感情を抱いてしまったのだが、俺は占いなんて信じていないのだ。今この場でそれを言ったとしてもただの強がりとしか思われそうなので何も言わないのだけれど、俺は本当に占いの結果が悪かったくらいで落ち込んだりなんてしない男なのだ。
時報代わりに流しているニュースでは俺の住んでいる地域にはあまり関係ないニュースをやっていた。俺は自分に関わりのないことはあまり興味を持てないので集中してみることは無いのだけれど、好奇心旺盛な鬼仏院右近はこういった話題も欠かさずチェックして会話のタネをたくさん集めているんだろうな。そんなところも俺と鬼仏院右近が女子に与えている印象の違いになっていたりするんだろうとは思うけれど、今更性格も行動パターンも思考も帰る事なんて容易ではないと思って諦めていたりもするのだ。
朝一の講義は少し面倒に感じているし必修と言うわけでもないので受ける必要もないと思うのだけれど、鬼仏院右近がどうしても俺と一緒に受けたいという事なので履修登録しているのだ。それなりに興味もあるので問題はないのだけれど。
ニュースの終わりに数分間だけ放送される本日の占いが終わったタイミングで家を出ると鬼仏院右近がちょうど俺の家の近くにやってくる頃合いなので俺はそれに合わせて家を出るのだ。占いなんかに興味はないのだけれど、今日の運勢が良かったりすると少しだけ嬉しく思ってしまうというのは俺も案外乗せられやすい性格なのかもしれないなと思っていたりもした。
俺の家のすぐ近くにある自動販売機は学生マンションの敷地にあるからなのか他の自動販売機よりも少し安めの金額設定になっているのだが、あまり利用している人を見かけることは無かった。近所に安いスーパーがいくつかあることも理由だと思うけれど、そもそも自動販売機を誰かが使っている事を見る機会なんて早々ないのだと思う。
「あ、おはよう。昨日はありがとうね」
「おはよう。こっちこそありがとうな。今日の朝も食べようと思ってたんだけどさ、昨日バイト帰りにやってきた右近に全部食べられちゃったよ」
「そうなんだ。それだったらまた今度何か作ってあげるよ。次は右近君の嫌いなものにしちゃおうかな」
毎回この自動販売機の前で悩んでいる鵜崎唯に挨拶をするのだが、隣にいる髑髏沼愛華は俺の存在に気付いていないのか全く俺の事を見ようとはしないのだ。昨日は普通に話も出来たしご飯だって一緒に食べたりゲームもやった仲ではあるのだけれど、なぜか朝だけは毎回俺の事を無視してくるのだ。
「今日は右近君来てないの?」
「そう言えばまだ見てないな。いつもならこれくらいの時間にはこの辺にいるのにな」
「あいつなら先に行ってるって連絡がきてたぞ。今日提出しないといけない書類があるから朝一で学生課に行かないといけないって言ってたからな。二人には連絡きてないのか?」
「そうなんだ。私にはきてないけど政虎にもきてないの?」
「ああ、俺にもそんな連絡はきてないな。そもそも、あんまり携帯で連絡とりあったりしてないしな」
「そうなのか。なんであいつは私にだけそんな連絡をしてきたんだ。みんなに送るのだってそんなに手間ではないと思うのだけど」
たぶんだけど、鬼仏院右近はあえて髑髏沼愛華にだけ連絡したのだと思う。俺や鵜崎唯に送ることも出来たと思うのだけれど、それをしてしまうと俺と髑髏沼愛華が一言も会話を交わさないままこの朝の時間を過ごすとでも思ったのだろう。せっかく一緒にいるのだから何か話せばいいのにと毎回俺達に口うるさく言ってくる鬼仏院右近なりの思いやりなんだろうけど、これが仲の良い人同士の会話なのかと思えてしまうのだ。
それに、鬼仏院右近も鵜崎唯も知らないとは思うけれど、俺と髑髏沼愛華は二人だとそれなりに会話もしていたりするのだ。俺も髑髏沼愛華も沈黙を苦にしないタイプではあると思うのだけれど、鬼仏院右近も鵜崎唯もいない時だと意外とどうでもいい事も話していたりするし一緒に課題をやったりもしているのだ。だが、髑髏沼愛華は鵜崎唯がいる時にはあまり他の人と話をしていないような傾向があるように思えるのだ。
「じゃあ、今日はこのまま三人で教室に行こうか。いつもの席が空いてるといいな」
「最前列中央って早々埋まらないと思うよ。今までもあの席が埋まってたのは見た事ないし」
「そうかもしれないけどさ、今日は埋まってるかもしれないじゃない。毎回同じだからって今日もそれと同じになるとは限らないんだからね」
鵜崎唯の言葉を聞いて俺は感銘を受けてしまったのだが、髑髏沼愛華は少し考えた後に俺の方を向かずに鵜崎唯だけに話しかけていた。
「でも、あの授業ってみんな同じ席に座ってるからわざわざ移動したりしないと思うよ。唯ちゃんが心配しなくてもいつもの席に座れると思うな」
「私もそう思ってるんだけどさ、今日の占いがあんまり良くなかったからね。そう言うところで悪いことが起きると後で嫌な事ないんじゃないかなって思っただけなんだよ」
「そうだったんだ。私は占いとか見てないからわからなかったかも」
「本当に愛華ちゃんは占いとか信じないよね。私も完全に信じてるってわけじゃないんだけどさ、良くない結果の時ってなぜか信じちゃうんだよね。ちなみにだけど、愛華ちゃんの今日の運勢はなかなかいいみたいだったよ。政虎は……頑張ってね」
「その言い方って、唯より悪いって事なのか?」
なぜか俺に謝る鵜崎唯と軽くため息をついた後に憐憫の眼差しを向けてきた髑髏沼愛華に対して何とも言えない感情を抱いてしまったのだが、俺は占いなんて信じていないのだ。今この場でそれを言ったとしてもただの強がりとしか思われそうなので何も言わないのだけれど、俺は本当に占いの結果が悪かったくらいで落ち込んだりなんてしない男なのだ。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
十条先輩は、 ~クールな後輩女子にだけ振り向かれたい~
神原オホカミ【書籍発売中】
青春
学校で一番モテる男、十条月日。彼には人に言えない秘密がある。
学校一モテる青年、十条月日。
どれくらいモテるかというと、朝昼放課後の告白イベントがほぼ毎日発生するレベル。
そんな彼には、誰にも言えない秘密があった。
――それは、「超乙女な性格と可愛いものが好き」という本性。
家族と幼馴染以外、ずっと秘密にしてきたのに
ひょんなことから後輩にそれを知られてしまった。
口止めをしようとする月日だったが
クールな後輩はそんな彼に興味を一切示すことがなく――。
秘密を持った完璧王子×鉄壁クール後輩の
恋心をめぐるボーイミーツガールな学園ラブコメ。
◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。
◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。
◆大変申し訳ありませんが不定期更新です。また、予告なく非公開にすることがあります。
◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。
◆アルファポリスさん/エブリスタさん/カクヨムさん/なろうさんで掲載してます。
〇構想:2021年、投稿:2023年
アオハルレシピは嘘をつく
七尾ネコ
青春
「料理しか取り柄のないクズ」と周りから距離を置かれている男子高校生【小鳥遊 夜接(たかなし よつぎ)】は、高校一年生にして全国制覇を達成した。
高校生活二度目の春。夜接は、数少ない彼の理解者である女子高校生【星宮 つゆり(ほしみや つゆり)】とともに料理部を結成することに。
結成直後にもかかわらず廃部寸前まで追い込まれた料理部は、さらにクセの強いメンバーを仲間にしていくことで、なんとか廃部を回避する。
次々と引き起こされる困難に立ち向かい、時にはダッシュで逃げまくりながらも、少しずつ成長していく夜接たち。
変人ばかりの料理部で巻き起こる青春は、ただの青い春では終わらない!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる