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第十五話 私はいつでも唯ちゃんの味方です

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 こいつに愛華と呼び捨てに呼ばれるのは嫌だけど、髑髏沼と呼ばれるのはもっと嫌なのだ。なんでこんな可愛くない禍々しい苗字なのかってご先祖様を恨んでしまうよね。でも、この名字のお陰なのかわからないけれど、名字以外に悪いところはあまりない家系でもある。柊政虎は私の事を性格がきついとか胸が小さいとか馬鹿にしてくるけれど、そんなのはデメリットではないと思うんだよね。きつく言われる事が好きだったり控えめな胸が好きだったりする人も多いみたいだし。
 唯ちゃんみたいに顔も可愛らしくて胸も大きい女の子の方がモテると思うけど、不思議なことに男子ってあまり唯ちゃんの事に興味がないみたいなんだよね。鬼仏院右近が唯ちゃんに興味がないのはわかるんだけど、柊政虎まで唯ちゃんに興味を持たないというのが全くもって理解出来ない。私が柊政虎の立場だったら喜んで唯ちゃんの彼氏になると思うんだけど、こいつは唯ちゃんの部屋に遊びに行った時に見た魔法陣とぬいぐるみが怖くて二人っきりになりたくないとか言ってるんだよね。今は唯ちゃんもこいつと二人っきりになるのは緊張しちゃうからって事で私がついてきてるんだけど、どんな理由であれ唯ちゃんと一緒にいられることが出来るというのは私にとって喜ばしい事なのよ。
 それにしても、なんで唯ちゃんはこいつの事をそんなに好きになったんだろう。私にはこいつの良さが一ミリも理解出来ないんだよね。見た目も冴えないし特別秀でてる何かがあるってわけでもないし、性格だって私よりも何倍も悪いのにね。見た目と性格だけだったら鬼仏院右近の方が良さそうだとは思うけど、あいつもあいつでちょっと闇が深いところがあるのよね。それがあるから私も唯ちゃんも安心して鬼仏院右近と遊ぶことが出来るって事があるんだけど、何も知らない人が見たら見た目だけで判断して私と鬼仏院右近がお似合いだとか言うのよ。お互いに興味はない同士ではあるんだけど、ルックスに関してはお互いに認め合っていると言ってもいいのかもしれないな。
「さっきから黙って睨んできてるけどさ、俺って何か悪いことでもした?」
「は、別にお前の事なんて睨んでないけど。それに、悪いことをしてない瞬間って一度でもあったのか?」
「いや、さすがにあるだろ。というか、俺は別に悪いことをするのが生きがいってわけじゃないんだからな。偏見じゃないかな」
「偏見を持たれるような事をしなけりゃいいだけの話だと思うけど」
 私が考え事をしててたまたま視界に入っていただけなのに睨んでいるとか言われても困るのよね。それよりも、なんで私がこいつの事をこんなに考えなくちゃいけないのよ。なんだかそう考えると、無性に腹立たしくなってきたじゃない。何かこいつに嫌がらせでもしてやろうかしら。そう言えば、こいつは唯ちゃんが作ってるぬいぐるみの話を何も知らないんだったっけ。魔法陣の中心に置いてあるだけだと思ってるあのぬいぐるみの話をしてあげるのも面白いかもね。
「そう言えば唯ちゃんの作ったぬいぐるみって最近へたってきたんじゃない?」
「そうなんだよね。最後につめ直したのが年末だったと思うからちょっと小さくなってきちゃったんだよ。でも、近いうちにつめ直すから大丈夫かも」
「中身も手に入ったみたいだし、今度はちゃんと効果があるといいね」
「そうだよね。次は独学で学んだことじゃなくておばあちゃんに昔のやり方を聞いてやってみようかなって思ってるよ。私のやり方じゃあんまり効果ないみたいだからさ、他のやり方でも試してみた方が良いかなって思うんだよね。愛華ちゃんはあんまりそう言うの興味無いみたいだけど、上手くいったらちゃんと報告するからね」
「上手くいくように私も祈っておくよ。でも、上手くいったら報告してくれなくてもわかっちゃうと思うよ」
 唯ちゃんは柊政虎と幸せになることが一番の望みなんだと思う。私は唯ちゃんに幸せになってもらいたいと思ってはいるんだけど、幸せになる条件が誰かと付き合う事だったとしたら素直に喜んでいいのか迷てしまいそうだ。でも、その相手が柊政虎じゃなければ悩んだとしても、最終的に私は喜んでいるのだと思う。
 唯ちゃんには幸せになってもらいたいけど、唯ちゃんを幸せにする相手がこいつだというのはちょっと納得出来ないんだよね。頑張ってどこか良いところを探せば一つくらい認められることがあるのかもしれないけど、私はしばらく柊政虎を見てきたのにそのいい部分を探し出すことは出来なかった。何より、こいつはこんなに唯ちゃんにアプローチをされてご飯だってよく作ってもらっているというのに、他の女の事が好きなのだ。
 こいつが誰を好きになろうが私には関係ない話ではあるけれど、その事で唯ちゃんが傷付いてしまうのは許せない事なのだ。幸いなことに、こいつが好きな桜唯菜は柊政虎の事をこの世界にいる誰よりも嫌っているという事なので二人が付き合うということはありえない。なぜそこまで嫌っているのか私にも何となく理由はわかるけれど、きっとそれを聞いたとしてもうまく言葉にすることは出来なんだろうね。それは私も一緒だったりするのだけど。
「これからは中身も毎週手に入っちゃうし、今まで以上に大切にしなくちゃね」
「大切にって、あの魔法陣に置いてあったぬいぐるみの話?」
「そうだよ。私が手作りしたんだよ。男の子は見ても可愛いって思わないかもしれないけど、愛華ちゃんも桜さんも可愛いって言ってくれるんだよね」
「そうなんだ。俺も右近もあれを見て可愛いって思うよりも先に怖いって思っちゃったからな。見た目は可愛いとは思うけどさ、何となく怖い感じがしたんだよな」
「それってさ、男子はあんまりぬいぐるみとかお人形とかに触れあってなかったからそう感じてただけなんじゃないの。私だって男子がもってるモデルガンとか見てもカッコいいって思うよりも怖いって感じちゃうもん」
「確かにな。俺達はぬいぐるみとかと触れ合う機会とか少ないしな。何となく怖いって思ってたのかもしれないな」
 適当に言った事で納得させることが出来るとは思わなかったけれど、こいつはなぜか私の言葉を聞いて納得していたのだ。なんでこんな事で納得するのだろうと思ったけれど、きっとこれは唯ちゃんが作った人形の話だから知らないうちに理解していたって事なんだろうな。
 それと、こいつは何か気にしてるみたいだけど、ご飯に変な薬とか入れるわけないよね。変に疑ってるけど、それって唯ちゃんが柊政虎のために愛情をこめて作ったってだけの話なんだよね。込めているのは愛情だけじゃないのかもしれないけど、それって私達には無害だから関係なって事だしね。
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