42 / 44
白ギャル黒ギャル戦争
中田博臣討伐
しおりを挟む
郊外にある偽教会まで続く道は周りが雑木林に囲まれているので車が通れる道は一か所しかない。
中田博臣が車ではなくバイクや自転車で来るのなら道を塞いでいる事に意味なんてないのだけれど、監視をしていた幽霊たちの話では前に見た車に乗って向かっているという事だった。
もうすでにうまなちゃんたちは偽教会に入ってはいるようなのだけど青木たちだけでは何も始まらないと思うのでそこまで心配することでもない。それはわかっているのだけど、今すぐあの偽教会に行ってうまなちゃんを助け出したいという思いは捨てられなかった。
「大丈夫。あいつらだけじゃ何もしないから。土山久雄の話では西勇作は一人で何かをすることが出来ない小心者だって話だし、中田博臣を待たずに勝手に始めることなんて出来ないってさ。もう少しで中田博臣がやってくるみたいだけど、私がついているから怖くないからね。君たちは何も心配しなくていいんだからね」
愛華ちゃんは私たちをそっと抱きしめてくれた。ほんのりと甘い香りがして怒りと恐怖で落ち着かなかった心が少しだけいつものようになったように思えた。
私はうまなちゃんが心配で偽教会の方を何度も見てしまうのだけれど茜は今来た道を真っすぐに見つめていた。その表情に迷いも恐怖心もなく今からやって来る中田博臣を迎え撃つ気満々と言った表情に見えた。
「ねえ、あんたどうしたの。そんなに気を張ってどうしたの?」
「別に、どうもしないよ。それよりも、中田博臣って一人で来ると思う?」
「え、愛華ちゃんは一人で車に乗ってるって言ってたじゃない」
「そうじゃなくてさ、中田博臣についている守護霊はどうなったのかなって思って。ほら、あの死神みたいに強い幽霊だよ」
「ごめん、私はあんたたちと違ってそういうの見えないからわかんないよ。って言うか、それって清澄さんが憑けた幽霊に食べられたんじゃなかったっけ?」
茜は腕を組んで考え込んでいた。あんなに怖がっていた幽霊の事を忘れるなんてどうかしていると思ったけれど、そんなタイミングであの独特な車の音が近付いてきていた。
物凄いスピードで近付いてきた車も愛華ちゃんの車が道を塞いでいるのに気が付いて急ブレーキを踏んでけたたましくクラクションを鳴らしてきた。
愛華ちゃんが中田博臣の車に近付くよりも早く茜が走って車の横に移動すると、何を思ったのか茜は中田博臣の車の助手席のドアを何度も何度も蹴り続けていた。その姿を見た私はあっけにとらわれてしまった。愛華ちゃんが茜を止めようと駆け寄ると同時に車から降りてきた中田博臣が茜に殴りかかっていた。
中田博臣のパンチを笑いながら交わした茜はそのまま流れるような動きで再び車を蹴っていたのだが、中田博臣は茜を掴もうと手を伸ばしてきたのだが茜はその腕をしゃがんでかわすとその勢いのまま両手で中田博臣の膝に抱き着いてオリンピックで見たレスリングのタックルのように中田博臣を倒していた。
受け身をとれなかった中田博臣はそのまま背中から真っすぐに倒れて呼吸が出来ないようだったが茜は構わずそのまま馬乗りになって中田博臣の顔面にパンチを叩き込んでいた。
「お前に憑いてたあいつがいなくなったことを恨むんだな。お前なんてこの世界に必要ない人間なんだ。今まで自分がしてきたことを後悔しろ」
今まで茜と喧嘩をしたことは何度もあったけれどこんなに攻撃的な姿を見たことはなかった。殴り合いの喧嘩なんてしたことがないし茜が誰かとそんな事をしているところも見たことはない。それどころか、一緒にオリンピックを見ているときも私は日本人選手が活躍している姿を見て喜んでいたのに茜は興味なさそうに見ていたと思う。レスリングもボクシングも柔道も全く興味がなさそうに見えた。
そんな茜が喧嘩慣れしてそうな中田博臣を圧倒している事に強烈な違和感があった。まるで誰かが乗り移ってしまったのではないかと思ってしまうくらい今の茜は別人のように見えた。昨日感じた違和感とは比べ物にならないくらい茜が別人になっているようにしか思えなかった。
「それ以上やったら死んじゃうよ。もうこいつは動けないよ」
愛華ちゃんが茜を止めると茜は遊んでいたオモチャを取り上げられた子供のように悲しそうな表情を浮かべていた。こんなに寂しそうな顔をする茜を見たのはいつ以来だろうと思っていたけれど、あの表情をしている茜も別人なのかもしれないと感じてしまった。
茜は蹴り続けたことで歪んで閉まらなくなっていた中田博臣の車のドアを開けて中からロープを取り出すと意識を失って動けない中田博臣の手足を縛ってから道のわきに生えている木にその体を縛り付けていた。
「ココで油断したらダメだよ。こいつは執念深いから意識を取り戻した後はきっと私たちの事を襲おうとしてくるからね。その時にこいつが動けないようにしっかり縛っておかなくちゃダメだよ。それに、このロープはこいつが自分で持ってきたやつなんだから問題ないでしょ」
見た目にはどこにも違和感がないし声も茜のままなのに別人のようにしか思えない。だけど、それを指摘してしまうと私も中田博臣のようにされてしまうのではないかという恐怖が少しだけあって何も言うことが出来なかった。
「ねえ、教会に行くんだったらこの車に乗っていった方が良いんじゃないかな。あの車で行ったら警戒されちゃうと思うよ。あなたはこの車運転出来るよね?」
私は愛華ちゃんと顔を見合わせたすぐ後に頷くと愛華ちゃんは自分の車を少し移動させてから中田博臣の車に乗り込んだ。
私は一人後部座席に座って茜の後姿をじっと見つめていた。
茜なのに茜じゃない、そんな気はするのにどう見ても目の前にいるのは私の知っている茜だった。
中田博臣が車ではなくバイクや自転車で来るのなら道を塞いでいる事に意味なんてないのだけれど、監視をしていた幽霊たちの話では前に見た車に乗って向かっているという事だった。
もうすでにうまなちゃんたちは偽教会に入ってはいるようなのだけど青木たちだけでは何も始まらないと思うのでそこまで心配することでもない。それはわかっているのだけど、今すぐあの偽教会に行ってうまなちゃんを助け出したいという思いは捨てられなかった。
「大丈夫。あいつらだけじゃ何もしないから。土山久雄の話では西勇作は一人で何かをすることが出来ない小心者だって話だし、中田博臣を待たずに勝手に始めることなんて出来ないってさ。もう少しで中田博臣がやってくるみたいだけど、私がついているから怖くないからね。君たちは何も心配しなくていいんだからね」
愛華ちゃんは私たちをそっと抱きしめてくれた。ほんのりと甘い香りがして怒りと恐怖で落ち着かなかった心が少しだけいつものようになったように思えた。
私はうまなちゃんが心配で偽教会の方を何度も見てしまうのだけれど茜は今来た道を真っすぐに見つめていた。その表情に迷いも恐怖心もなく今からやって来る中田博臣を迎え撃つ気満々と言った表情に見えた。
「ねえ、あんたどうしたの。そんなに気を張ってどうしたの?」
「別に、どうもしないよ。それよりも、中田博臣って一人で来ると思う?」
「え、愛華ちゃんは一人で車に乗ってるって言ってたじゃない」
「そうじゃなくてさ、中田博臣についている守護霊はどうなったのかなって思って。ほら、あの死神みたいに強い幽霊だよ」
「ごめん、私はあんたたちと違ってそういうの見えないからわかんないよ。って言うか、それって清澄さんが憑けた幽霊に食べられたんじゃなかったっけ?」
茜は腕を組んで考え込んでいた。あんなに怖がっていた幽霊の事を忘れるなんてどうかしていると思ったけれど、そんなタイミングであの独特な車の音が近付いてきていた。
物凄いスピードで近付いてきた車も愛華ちゃんの車が道を塞いでいるのに気が付いて急ブレーキを踏んでけたたましくクラクションを鳴らしてきた。
愛華ちゃんが中田博臣の車に近付くよりも早く茜が走って車の横に移動すると、何を思ったのか茜は中田博臣の車の助手席のドアを何度も何度も蹴り続けていた。その姿を見た私はあっけにとらわれてしまった。愛華ちゃんが茜を止めようと駆け寄ると同時に車から降りてきた中田博臣が茜に殴りかかっていた。
中田博臣のパンチを笑いながら交わした茜はそのまま流れるような動きで再び車を蹴っていたのだが、中田博臣は茜を掴もうと手を伸ばしてきたのだが茜はその腕をしゃがんでかわすとその勢いのまま両手で中田博臣の膝に抱き着いてオリンピックで見たレスリングのタックルのように中田博臣を倒していた。
受け身をとれなかった中田博臣はそのまま背中から真っすぐに倒れて呼吸が出来ないようだったが茜は構わずそのまま馬乗りになって中田博臣の顔面にパンチを叩き込んでいた。
「お前に憑いてたあいつがいなくなったことを恨むんだな。お前なんてこの世界に必要ない人間なんだ。今まで自分がしてきたことを後悔しろ」
今まで茜と喧嘩をしたことは何度もあったけれどこんなに攻撃的な姿を見たことはなかった。殴り合いの喧嘩なんてしたことがないし茜が誰かとそんな事をしているところも見たことはない。それどころか、一緒にオリンピックを見ているときも私は日本人選手が活躍している姿を見て喜んでいたのに茜は興味なさそうに見ていたと思う。レスリングもボクシングも柔道も全く興味がなさそうに見えた。
そんな茜が喧嘩慣れしてそうな中田博臣を圧倒している事に強烈な違和感があった。まるで誰かが乗り移ってしまったのではないかと思ってしまうくらい今の茜は別人のように見えた。昨日感じた違和感とは比べ物にならないくらい茜が別人になっているようにしか思えなかった。
「それ以上やったら死んじゃうよ。もうこいつは動けないよ」
愛華ちゃんが茜を止めると茜は遊んでいたオモチャを取り上げられた子供のように悲しそうな表情を浮かべていた。こんなに寂しそうな顔をする茜を見たのはいつ以来だろうと思っていたけれど、あの表情をしている茜も別人なのかもしれないと感じてしまった。
茜は蹴り続けたことで歪んで閉まらなくなっていた中田博臣の車のドアを開けて中からロープを取り出すと意識を失って動けない中田博臣の手足を縛ってから道のわきに生えている木にその体を縛り付けていた。
「ココで油断したらダメだよ。こいつは執念深いから意識を取り戻した後はきっと私たちの事を襲おうとしてくるからね。その時にこいつが動けないようにしっかり縛っておかなくちゃダメだよ。それに、このロープはこいつが自分で持ってきたやつなんだから問題ないでしょ」
見た目にはどこにも違和感がないし声も茜のままなのに別人のようにしか思えない。だけど、それを指摘してしまうと私も中田博臣のようにされてしまうのではないかという恐怖が少しだけあって何も言うことが出来なかった。
「ねえ、教会に行くんだったらこの車に乗っていった方が良いんじゃないかな。あの車で行ったら警戒されちゃうと思うよ。あなたはこの車運転出来るよね?」
私は愛華ちゃんと顔を見合わせたすぐ後に頷くと愛華ちゃんは自分の車を少し移動させてから中田博臣の車に乗り込んだ。
私は一人後部座席に座って茜の後姿をじっと見つめていた。
茜なのに茜じゃない、そんな気はするのにどう見ても目の前にいるのは私の知っている茜だった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
機織姫
ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ゴーストバスター幽野怜
蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。
山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。
そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。
肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性――
悲しい呪いをかけられている同級生――
一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊――
そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王!
ゴーストバスターVS悪霊達
笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける!
現代ホラーバトル、いざ開幕!!
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる