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白ギャル黒ギャル戦争
ある日の零楼館
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青木さんたちと一緒にお昼を過ごすことが多くなって学校生活が楽しいって思えるようになってきたんだけど、それと反比例するかのように家に帰ってから一人で部屋にいる時間がさみしく感じてきた。もちろん、家にいても青木さんたちと連絡は取りあっていたりすることはあるんだけど、その場に私だけがいないというのはやはり寂しいと思ってしまっていた。今まではこんなことなかったから友達が出来ると嬉しいこともあれば悲しいこともあるんだなと学ぶことが出来た。
アルバイト先である零楼館でいつものように愛華ちゃんが撮影した写真の選別をしていると、なぜかその中に稲垣さんの写真が混ざっている事に気が付いた。
制服姿の稲垣さんしか見たことが無かったのでいつもと違う服装の稲垣さんの姿は新鮮に思えていた。健康的で活発でスポーティーな感じはとても似合っていると思う。それとは対照的にヒマワリ畑が似合いそうな清楚なワンピース姿も可愛らしくて似合っている。
私が手を止めて稲垣さんの写真を見ているのに気が付いた愛華ちゃんが私の隣に座って一緒に写真を見てきた。
「その子、うまなちゃんのクラスメイトの子なんだよね?」
「うん、そうだけど。なんで稲垣さんの写真があるの?」
「何でって言われてもね。たまたま買い物をしているときに出会って写真を撮らせてほしいってお願いしたんだよ。商店街の夏祭りのポスターにピッタリなんじゃないかなって思って撮らせてもらったんだ。いい写真でしょ」
ちょっと前に愛華ちゃんが私をモデルに撮りたいと言った話だったと思う。私はモデルになんてなりたくなかったんで断ったんだけど、こうして稲垣さんの写真を見て見ると私とは違って明るくて元気な感じが出ていていいポスターが出来上がりそうだと思った。
「凄くいい写真だと思う。学校の稲垣さんしか知らないからわからなかったけど、こんな表情もするんだって初めて知ったよ」
「話をしてたら結構明るい子だと思ってたんだけどな。学校だとあんまり誰かと話をしているところは見たことないから。あ、私と違ってちゃんと友達はいるみたいだよ。いっつも坂井さんって女の子と一緒にいるのを見かけるから。写真を撮った時って稲垣さんだけだったの?」
「私が話しかけたときは一人だったよ。撮影の時に坂井さんも見学にきてたんだけど、坂井さんは写りたくないって拒否されちゃった。うまなちゃんが拒否した時と同じようだったから無理にとは言わなかったんだけど、茜ちゃんが着る服とか表情とか色々と指示してくれて助かったよ。この子の事は私が一番よく知ってるんだって言ってたんだけど、それって嘘じゃなかったんだってこの写真を見たらわかるでしょ」
「うん、私が見たことない表情をしているから坂井さんが稲垣さんの事を良く知っているんだなってのはわかるよ。この写真で稲垣さんの撮影って終わりなの?」
「どうだろうね。ポスターを作る段階で別の写真が良いってなることがあるかもしれないけど、そうならないような予感はしているよ。だって、この写真は駅とかにあってもおかしくないくらいいい写真だと思うからね。私の腕がいいのかモデルの茜ちゃんがいいのかスタイリストの千秋ちゃんの腕がいいのかわからないけど、とにかくいい写真だと思うよ」
私も稲垣さんの写真はどれもいい写真だと思う。夏祭りのポスターでも使えるだろうし秋のスポーツ大会のポスターとしても使えるだろう。とってもいい写真だと思うんだけど、愛華ちゃんと稲垣さんたちの距離が近いことにちょっとだけ嫉妬してしまいそうになっていた。
私も稲垣さんと話をしたことは何度かあるけれど、こんな表情を見たことはない。自分から話しかけた愛華ちゃんとは自然な感じで話をしているんだろうなと想像が出来るくらい笑顔に不自然さはない。今にして思えば、稲垣さんが私に話しかける時はいつも言葉を選んでいるような不自然な間があったりしていた。私の両親の事を知っている人はそんな感じの人が多かったんで気にはしていなかったけれど、ここまで違うのを見せられると気になってしまうよね。
愛華ちゃんが社交的で稲垣さんと打ち解けるのが早かっただけなのかもしれないけど、私にはそれが出来ないというのはいったいどうしてなんだろうと考えてしまう。きっと、年齢だけじゃない何かが違っているんだろうな。
「そんな暗い顔して悩んじゃだめだよ。せっかくの可愛い顔が台無しだって。ほら、私がうまなちゃんの可愛い姿を撮ってあげるから笑って笑って」
私の気持ちを見透かすように愛華ちゃんは私にカメラを向けてきた。本心では愛華ちゃんに写真を撮ってほしいと思っている私なのだが、どうしても写真を撮られたくないという気持ちもあるのだ。なぜかわからないけど、私は小さい時から一人で写真を撮られるという事に物凄い恐怖を感じてしまっているのだ。
「ごめんごめん。じゃあ、今度茜ちゃんたちを呼んで三人の写真を撮ろうか。うまなちゃんも友達との写真を撮りたいでしょ?」
私と稲垣さんたちが友達かどうかはわからない。クラスメイトであるという事は間違いないけれど、友達と呼べるほど仲が良いか聞かれると答えることは出来ない。放課後に何度も何度も稲垣さんから話しかけてくれているから嫌われてはいないと思うけど、それに対して私はちゃんと答えることが出来ていない。そんな私が友達だと思っていいのだろうか。
そういえば、青木さんたちとも写真を撮ったことが無いかも。青木さんたちは三人で良く写真を撮っていたのを見ていたし、休み時間に動画を撮っているのも見たことがあった。私に話しかけてくれてから撮っているところを見なくなったような気がするんだけど、それって私に遠慮しているという事なんだろうか。
「茜ちゃんも千秋ちゃんもうまなちゃんと仲良くなりたいって言ってたんだけどな。二人とも良い子だと思うし気にせずに遊んでみたらいいんじゃないかな。うまなちゃんが三にで遊ぶのが不安だって思うんだったら、私も一緒に遊んであげるからね」
愛華ちゃんが一緒だったら遊んでみたいという気持ちはあった。いや、愛華ちゃんがいなくても三人で遊んでみたいという気持ちの方が強かったのかもしれない。
でも、青木さんたちの事を思うと稲垣さんたちと遊んでいいのかと考えてしまい、私は曖昧な返事をするだけで精一杯だった。
アルバイト先である零楼館でいつものように愛華ちゃんが撮影した写真の選別をしていると、なぜかその中に稲垣さんの写真が混ざっている事に気が付いた。
制服姿の稲垣さんしか見たことが無かったのでいつもと違う服装の稲垣さんの姿は新鮮に思えていた。健康的で活発でスポーティーな感じはとても似合っていると思う。それとは対照的にヒマワリ畑が似合いそうな清楚なワンピース姿も可愛らしくて似合っている。
私が手を止めて稲垣さんの写真を見ているのに気が付いた愛華ちゃんが私の隣に座って一緒に写真を見てきた。
「その子、うまなちゃんのクラスメイトの子なんだよね?」
「うん、そうだけど。なんで稲垣さんの写真があるの?」
「何でって言われてもね。たまたま買い物をしているときに出会って写真を撮らせてほしいってお願いしたんだよ。商店街の夏祭りのポスターにピッタリなんじゃないかなって思って撮らせてもらったんだ。いい写真でしょ」
ちょっと前に愛華ちゃんが私をモデルに撮りたいと言った話だったと思う。私はモデルになんてなりたくなかったんで断ったんだけど、こうして稲垣さんの写真を見て見ると私とは違って明るくて元気な感じが出ていていいポスターが出来上がりそうだと思った。
「凄くいい写真だと思う。学校の稲垣さんしか知らないからわからなかったけど、こんな表情もするんだって初めて知ったよ」
「話をしてたら結構明るい子だと思ってたんだけどな。学校だとあんまり誰かと話をしているところは見たことないから。あ、私と違ってちゃんと友達はいるみたいだよ。いっつも坂井さんって女の子と一緒にいるのを見かけるから。写真を撮った時って稲垣さんだけだったの?」
「私が話しかけたときは一人だったよ。撮影の時に坂井さんも見学にきてたんだけど、坂井さんは写りたくないって拒否されちゃった。うまなちゃんが拒否した時と同じようだったから無理にとは言わなかったんだけど、茜ちゃんが着る服とか表情とか色々と指示してくれて助かったよ。この子の事は私が一番よく知ってるんだって言ってたんだけど、それって嘘じゃなかったんだってこの写真を見たらわかるでしょ」
「うん、私が見たことない表情をしているから坂井さんが稲垣さんの事を良く知っているんだなってのはわかるよ。この写真で稲垣さんの撮影って終わりなの?」
「どうだろうね。ポスターを作る段階で別の写真が良いってなることがあるかもしれないけど、そうならないような予感はしているよ。だって、この写真は駅とかにあってもおかしくないくらいいい写真だと思うからね。私の腕がいいのかモデルの茜ちゃんがいいのかスタイリストの千秋ちゃんの腕がいいのかわからないけど、とにかくいい写真だと思うよ」
私も稲垣さんの写真はどれもいい写真だと思う。夏祭りのポスターでも使えるだろうし秋のスポーツ大会のポスターとしても使えるだろう。とってもいい写真だと思うんだけど、愛華ちゃんと稲垣さんたちの距離が近いことにちょっとだけ嫉妬してしまいそうになっていた。
私も稲垣さんと話をしたことは何度かあるけれど、こんな表情を見たことはない。自分から話しかけた愛華ちゃんとは自然な感じで話をしているんだろうなと想像が出来るくらい笑顔に不自然さはない。今にして思えば、稲垣さんが私に話しかける時はいつも言葉を選んでいるような不自然な間があったりしていた。私の両親の事を知っている人はそんな感じの人が多かったんで気にはしていなかったけれど、ここまで違うのを見せられると気になってしまうよね。
愛華ちゃんが社交的で稲垣さんと打ち解けるのが早かっただけなのかもしれないけど、私にはそれが出来ないというのはいったいどうしてなんだろうと考えてしまう。きっと、年齢だけじゃない何かが違っているんだろうな。
「そんな暗い顔して悩んじゃだめだよ。せっかくの可愛い顔が台無しだって。ほら、私がうまなちゃんの可愛い姿を撮ってあげるから笑って笑って」
私の気持ちを見透かすように愛華ちゃんは私にカメラを向けてきた。本心では愛華ちゃんに写真を撮ってほしいと思っている私なのだが、どうしても写真を撮られたくないという気持ちもあるのだ。なぜかわからないけど、私は小さい時から一人で写真を撮られるという事に物凄い恐怖を感じてしまっているのだ。
「ごめんごめん。じゃあ、今度茜ちゃんたちを呼んで三人の写真を撮ろうか。うまなちゃんも友達との写真を撮りたいでしょ?」
私と稲垣さんたちが友達かどうかはわからない。クラスメイトであるという事は間違いないけれど、友達と呼べるほど仲が良いか聞かれると答えることは出来ない。放課後に何度も何度も稲垣さんから話しかけてくれているから嫌われてはいないと思うけど、それに対して私はちゃんと答えることが出来ていない。そんな私が友達だと思っていいのだろうか。
そういえば、青木さんたちとも写真を撮ったことが無いかも。青木さんたちは三人で良く写真を撮っていたのを見ていたし、休み時間に動画を撮っているのも見たことがあった。私に話しかけてくれてから撮っているところを見なくなったような気がするんだけど、それって私に遠慮しているという事なんだろうか。
「茜ちゃんも千秋ちゃんもうまなちゃんと仲良くなりたいって言ってたんだけどな。二人とも良い子だと思うし気にせずに遊んでみたらいいんじゃないかな。うまなちゃんが三にで遊ぶのが不安だって思うんだったら、私も一緒に遊んであげるからね」
愛華ちゃんが一緒だったら遊んでみたいという気持ちはあった。いや、愛華ちゃんがいなくても三人で遊んでみたいという気持ちの方が強かったのかもしれない。
でも、青木さんたちの事を思うと稲垣さんたちと遊んでいいのかと考えてしまい、私は曖昧な返事をするだけで精一杯だった。
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