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恋愛インスピレーション

第一話

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 クラスの中で恋愛アプリというのが流行ってきたらしい。私は他の人達とあまり絡んだりしないのでわからないけれど、近くの女子たちが恋愛アプリの話題で盛り上がっているのが嫌でも耳に入ってきたのだ。

 実は、その恋愛アプリを私は半年前くらいから使っているのだ。これは、時代がやっと私に追いついてきたという証拠なのかなと思っていたんだが、それはあまりにも幼稚な考えだったと自分で思ってしまったのは内緒にしておこう。ただ、こんなことを言える友達なんてクラスにいないし、クラスで普通に話が出来る奥谷にも言うようなことではないんだと思う。それに、私は恋愛アプリをみんなのように両想いか確かめるためのツールとして使っているのではなく、ネットゲームを一緒にやっている仲間たちとの連絡手段として使っているだけなのだ。他にもいろいろなツールはあるのだけれど、恋愛アプリのグループ通信を使うと貯まるポイントで課金アイテムが買えるという利点があるのだ。
 私は恋愛に興味が無いし、他の人達みたいに誰が誰を好きだの誰と誰が両想いだっただので盛り上がったりはしないので登録なんてしてないし、そもそもクラスのというか男子の生年月日と血液型を知らないのだ。普通の女子はそういうのをちゃんと知っているものなのかと思っていたんだけど、意外とそんな情報は知らずにみんな一喜一憂していたんだなと思って見ていた。お互いに情報を知らないという事は登録していないだけなんだろうし、逆に言えば情報を知らないので登録することが出来ないので振られてはいないという証拠になるって思っていたりするんだろうな。それぞれの情報が出そろってしまうと両想いにならなかったことがそのまま脈なしという事に繋がってしまうと女子たちは気付いているのに、男子はその事に全く気付いていない感じなのが男女の考え方の違いなのかもしれない。

 そんな風に考えていたんだけれど、空気を読めないバカの西森がクラスLINEを使ってみんなの生年月日と血液型を収集しようとしていた。そんな事をしてしまったらモテない女子たちがひっそりと深い傷を負うだけだという事がわかっていないのだろうか。恋愛以外は何も考えていないような頭と尻の軽い女は良かれと思ってやっていることが有難迷惑だという事に気付いていないんだろうな。ただ、私にはそれを知ったからと言って登録するような相手がいないというのは変わらないのだがな。

「なあ、山口はクラスLINEで回ってきたアプリって登録したの?」
「ああ、アレなら結構前にゲーム友達に教えてもらったやつだったよ。アプリはグループメッセージ機能を使ってるけど、恋愛的な使い方はしたことないな。そもそも、私は好きな相手とかいないしな。奥谷は誰か登録したのか?」
「俺は一応登録したよ。今のところ片思いって表示されているけどね」
「へえ、恋愛の方を使った事ないからわからなかったけど、そうやって知らせてくれるのは何でもいい事だな。奥谷の好きな相手が奥谷の情報を入れてくれるといいな」
「そうだな。今のところその可能性は無さそうなんだけど、めげずに頑張ってみるわ」

 そう言えば、奥谷も意外とこういうのが好きそうなんだよな。小さい時から女子である私よりも占いとか好きだったみたいだし、公園に行った時も四つ葉を探していたりしていたな。あの時はメルヘンチックな男だと思っていたのだけれど、高校生になってまでそんな事をやっているのを見ると少し痛々しく感じてしまう。それに、奥谷はずっと体育会系の男だと思っていたのに、高校に入ってから急に演劇部に入部したのも何かあるんじゃないかと勘繰ってしまう。一部の女子の間では、いつだったかの演劇で奥谷が見せた女装姿を待ち受けにしているのが流行っていたみたいなのだが、そんなものが一生残ってしまうのは奥谷にとって黒歴史になってしまうんじゃないかと幼馴染としても心配になってしまうな。
 そんな奥谷の事を登録してみようかと思ったこともあったけれど、奥谷も私の事を登録していたら面倒なことになりそうだなと思ってそれだけはやめておくことにしていた。奥谷も私以外の女子の生年月日も血液型も知らないだろうし、私を何となく登録しているという可能性は低くなさそうだもんな。
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