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第二部 二人だけの世界編

みさきの思考は正常です

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 私がまー君を信頼しているのはお互いの行動を把握しているからではなくて、お互いに心から信頼しあっているからなのだ。お姉ちゃんは私達の事を変だと言っていたけれど、私達にとってはこれは普通だし、何もやましい事をしていないのだからお互いに分かりあえるという事にはデメリットも無いのになんでみんなやらないのか不思議でしょうがなかった。
 久子さんも結婚しているんだから旦那さんと一緒にやってみたらいいのにと思うのだけれど、今回みたいに友達が変な事をしてしまうという可能性もあるんだったら難しいのかもしれない。私の友達は彼女のいる男に手を出そうとはしないので問題ないのだけれど、久子さんの友達はちょっとおかしい人っぽいからそう言うところで問題があるのかもしれないね。

「久子さんも旦那さんと一緒にアプリを使ってみたらどうですか?」
「私達はそう言うのを使わなくても大丈夫だからね。それにさ、夫婦間でも言えない事ってあったりするし」
「それって、久子さんの友達が今まー君にしているような事ですか?」
「そ、そうだね。アレはちょっと人には聞かせられないと思うよ」
「そうですよね。普通にあんな風に誘うのってどうなんだろうって思いますよね。万が一ですけど、まー君を誘っている音声を職場の人に聞かれたりしたら大変ですよね。だって、まー君は男の子だけど未成年だし」
「それはそうだけど。もしかして、みさきちゃんはその音声を誰かに聞かせようって思ったりはしてないよね?」
「今のところは考えてませんよ。でも、まー君に何かあったら考えが変わっちゃうかもしれないですよね」
「それって、正樹君が良美たちと体の関係をもったら言うって事なのかな?」
「どうですかね。私はまー君に限ってはそう言うことは無いと知ってますよ。久子さんの友達は二人とも綺麗だと思いますし、まー君じゃない男の子だったら手を出しちゃうんじゃないかなって思いますもん。でも、まー君はそう言うのに乗らないんですよ」
「ねえ、なんでそんなに自信があるの?」
「なんでって言われましても、だって、私がいるんですよ。それ以上に何が必要なんですか?」
「みさきちゃんって本当に自信たっぷりなんだね。でもさ、それだけ自信があるんだったら良美たちが正樹君を誘ってる時の音声も必要無いんじゃないかな。私はそう言うの無くても大丈夫なんじゃないかなって思うけどな。私が正樹君をどうこうしようって話はしてないからその音声を誰かに聞かれたとしても平気なんだけどさ、良美と愛ちゃんはちょっと大変なことになっちゃうかもしれないしね」
「そうでしょうね。もしも、万が一にでも、高校生男子を誘惑していたなんて会社の人に知られたら大変ですよね。一回あることって他にもあるんじゃないかって思われるかもしれないし、久子さんだって今日はたまたままー君に何も悪い事をしなかっただけで、他の時は積極的に男をあさっているって思われるかもしれないですよね。私が何も言わなくても、聞かされた方が受ける印象ってどうしようもないですからね。久子さんとその友達が久子さんはそう言うのにかかわってないって言ったとしても、その場にいることには変わりないですからどんな風に受け取るかなんってわからないですよね。映像があれば別かもしれませんけど、音声だけってなると感じ方って受け手に委ねられちゃいますからね」
「でもさ、そうなったとしても正樹君が良美たちとやってしまうって可能性だってあるわけだしさ、そうなったとして良美たちが同意は無かったって言っちゃったら正樹君の方が立場は悪くなっちゃうと思うんだけど、そうなったとしてもみさきちゃんは平気なのかな?」
「大丈夫ですよ。そうなることは確実にあり得ない事ですから。もう一度言いますけど、まー君は久子さんの友達には絶対に手を出さないですよ。だって、私と付き合ってるんですからね」
「本当にすごい自身だね。でも、それだったらいいんだけど、本当にそんなに信用して大丈夫なのかな。もしも、裏切られたとしたらその時は許すことが出来るとは思えないけどな」
「まー君が私以外の女とやったらッてことですか?」
「そうだね。そう言うことになるね」
「正直に言ってしまえば、私はまー君が誰とやったとしても気にしないと思います。いや、少しは気にしちゃうかもしれないけど、その女としたこと以上の事を私にしてくれたらそれでいいと思います。私の彼氏だとしてもまー君も男だし、間違ってそうなってしまう可能性もありますからね。それはそれで仕方のない事だと思いますし、最終的に私に帰ってくればいいと思いますよ」
「意外と大人びた考えなんだね。でもさ、本当にそうなった時に許すことが出来るのかな。今日は何もないと思うけど、別の日に何かあるかもしれないよ。それこそ、みさきちゃんの友達が正樹君を襲う事だってあるんじゃないかな」
「その可能性も無いとは言い切れないですけど、そうなってしまったら私はその人を絶対に許さないと思いますよ。私が許さないだけで何もしないと思いますけどね。久子さんは浮気されたことって今まであるんですか?」
「私が知っている限りでは、旦那が浮気してるってことは無いと思うよ。仕事が終わってもまっすぐ帰ってくるし、休みの日も一緒に居ることが多いからね。そんな時間は無いと思うよ」
「そうかもしれないですけど、今は旦那さんと一緒に居るわけじゃないですよね。不安になったりしないんですか?」
「浮気とかの心配はしてないけど、食事とかの心配はしているかもね。でもさ、疑うって事はないかな。みさきちゃん達みたいに相手の事を離れている時に監視するのって、相手を信用してないっていう風にも取れるんじゃないかな?」
「そうですね。受け取り方は人それぞれですからね。でも、私とまー君はそれでいいと思ってるんですよ。そのお陰で今日みたいな面白いことも起きてるんですからね。そうだ、そろそろスキンケアの話をしてもらってもいいですか?」

 久子さんは少し嫌そうな顔をしていたけれど、私にスキンケアの方法とコツを教えてくれた。特別何かを使うとか変わったことをするのではなく、しっかりと保湿に気を遣えばいいという事だった。それ以外にも細かい事をいくつか教えてくれたのだけれど、一回では覚えきれなさそうだったのであとで録音した内容をまとめてみることにしよう。
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