上 下
69 / 108
第一部 日常生活編

佐藤みさきと花咲撫子

しおりを挟む
 まー君の昔の話が聞けるのは嬉しかったけれど、まー君が他の女と二人っきりになっているというのは嬉しい事ではない。でも、そんな事で目くじらを立てているようでは良い彼女とは言えないだろう。私はまー君にとっていい彼女であり続けたいと思っているのだ。
少なくとも、この姉妹のどちらよりもまー君と一緒にいると思うのだけれど、私の知らないまー君の事を知っている人がいるというのは気分のいいものではなかった。

「先輩って昔からお姉ちゃんには優しいんですよ。今もお姉ちゃんの事が好きだから一緒にいてくれるのかな?」
「まー君は誰にでも優しいから勘違いしちゃうかもしれないけど、あなたのお姉ちゃんの事はそんなに好きじゃないと思うよ。私の勘だけど、あなたのお姉ちゃんもまー君の事を異性として見てないんじゃないかな?」
「ま、お姉ちゃん程度の人間じゃ先輩の隣にはふさわしくないってことですよね。あなたも先輩の隣が相応しくないと思うんですけど、それはどう思うんですか?」
「どう思うって言われてもね。私以上にまー君に相応しい女なんていないと思うけど」
「確かに、あなたは可愛らしいとは思いますけど、私に比べたらまだまだじゃないですかね。どう見たって私の方が可愛いですし、今日だってあなたの気持ちよりも私のお願いを優先して聞いてくれたじゃないですか。他の女のお願いを聞いてくれるのって、彼女の事をないがしろにしているってことじゃないですかね?」
「それはどうかな。まー君って優しいから頼まれたことはあんまり断らないと思うんだよね。でも、今日は何か理由があったんじゃないかって思うけどね。そうじゃなかったとしても、あなたが思っているほどまー君には好かれていないと思うよ」
「はあ、私みたいにかわいい子が好かれていないはずないじゃないですか。あなたは何を言っているんですか。私の事を良いなって思っているから先輩は家までついて来てくれたんじゃないですかね」
「そんなことは無いと思うよ。あなたの姿を見た時のまー君はどう見ても面倒ごとに巻き込まれたって顔してたからね。確かに、あなたは見た目だけなら可愛く見えるけれど、なんか胡散臭いのよね。私はそう思うけれど、まー君もそう思ってるんじゃないかしらね」
「ちょっと、どういう意味なのか理解に苦しむんだけど、あんたって撫子の事バカにしてるの?」
「馬鹿にはしてないけど、なんとなくいい人っぽくないなってのは感じるのよね。あなたのお姉さんは見るからにいい人そうだったけど、あなたはなんか腹黒さを感じるのよ。良い人を演じようとしているってのが見え見えなんだよね」
「そんなわけないでしょ。撫子は見た目だけじゃなくて中身も素晴らしい女の子なんだよ。あんたみたいな変態ストーカー監視女とは違うんです。撫子はそんなことしなくても先輩にちゃんと見てもらえてるんですぅ」
「あなたはそう思っているかもしれないけど、まー君はあなたの目を見てたことなかったと思うんだけど、今日一日で何回まー君と目があったのかな?」
「えっと、それは先輩が撫子の可愛さで恥ずかしくなって見れなかっただけで、先輩の視線は何度も感じていましたけど」
「私はまー君の事を見ていたけど、あなたの事をちゃんと見ようとしたことは一度も無かったと思うよ。微妙に目が合わないようにしてたと思うんだけど、それは感じなかったのかな?」
「撫子の事を見る男の子は大体そんな感じですから問題ありません。どんなに自身がある男の子でも撫子の顔を直視するのは恥ずかしいって言ってたし、あんた程度の見た目ならその苦労を味わえてないと思うんですけど、そう考えたらどっちが女として魅力があるかわかると思うんですけど、それってどうなんでしょうね?」
「別にどうでもいい事じゃないかな。私はまー君が私の事だけ見てくれればいいだけだし、あなたはまー君じゃなくてもいいみたいな言い方だけど、それってどうなのかな。クラスに好きな人がいるけど振り向いてもらえないとか?」
「そんなわけないでしょ。撫子から好きになって振り向いてもらえないとか何言ってんの。あんたは自分がそうだからって撫子までそうだと思うのはやめてよね。あんたはたまたまタイミングが良くて先輩と付き合ってるだけだし、撫子が本気を出したらあんたなんてすぐに捨てられちゃうんだからね」
「それは困っちゃうけど、あなたにそんな魅力があるとは思えないけどね。そんなくだらない話を聞くためにまー君と離れてあなたについてきたんじゃないんだけど、まー君が中学生の時の話はまだなの?」
「はああ? このタイミングでするわけないでしょ。あんたが撫子に言った暴言を謝罪してからよ。なんで撫子があんた程度の人間にそこまで侮辱されないといけないのよ。まずは謝りなさいよ」
「ごめんごめん。謝ったからまー君の昔の事話してよ。私が知らない奴で頼むわよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

見知らぬ男に監禁されています

月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。 ――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。 メリバ風味のバッドエンドです。 2023.3.31 ifストーリー追加

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!

高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

ヤンデレ幼馴染が帰ってきたので大人しく溺愛されます

下菊みこと
恋愛
私はブーゼ・ターフェルルンデ。侯爵令嬢。公爵令息で幼馴染、婚約者のベゼッセンハイト・ザンクトゥアーリウムにうっとおしいほど溺愛されています。ここ数年はハイトが留学に行ってくれていたのでやっと離れられて落ち着いていたのですが、とうとうハイトが帰ってきてしまいました。まあ、仕方がないので大人しく溺愛されておきます。

処理中です...