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うまなちゃんと愛玩機械人形
うまなちゃんと愛玩機械人形 第五話
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私が通された部屋は一見するとなんの変哲もないようなどこにでもあるような客間なのだが、何となく私は居心地の悪さを覚えていた。ソファも柔らかすぎず硬すぎずお尻と背中をちょうど良く包み込んでくれていて離れたくなくなってしまうような思いをしているけれど、あまりここに長居しては良くないような気がしてお姉さんの用件を聞いてさっさと帰ろうと思っている。それなのに、私は出されるものを口にしてしまっているだけでお姉さんの目的を聞くことが出来ずにいたのだ。
家の中に入ってからどれくらい時間が経ったのかわからないが、差し込んでいた光が無くなって虫の鳴き声が聞こえている事から夜になっているという事だけは理解出来た。少なくとも、四時間以上は経過していると思われるのだが、先程からいただいているお菓子やケーキのお陰で空腹感は一切なく、普段ならお腹の好いてくる頃合いだとは思うけれど空腹感の代わりに若干の睡魔が私を襲ってきているのである。
お姉さんはどこかへ行ってしまったようなので少しくらい目を閉じても良いのかなと思っていたタイミングで勢いよく窓ガラスを突き破って誰かが入ってきたので私は驚いてソファから飛び上がってしまいそうになっていた。だが、そんな私の事をソファは包み込んだまま離してくれることは無く私はそのまま侵入者から逃げることが出来ずにいたのだった。
このままでは侵入者に殺されてしまうと思った私は精一杯の抵抗をしようと試みたのだが、争い事が嫌いな私はこういう時に使えるとっておきの手というものを持っていない。私の機械の手は相手の機械を知ることが出来るだけなのでこんな時には何の役にも立たないのだ。いざという時のために力を隠し持っていた方が良いと何度も言われていたことを思い出したのだけど、私としては危ない目に合いそうな場所に行かなければ問題無いと思っていたので、こんな場面に出くわすことなんて一ミリも想定していなかったのだ。
「イザーちゃんが連れてきてくれた先生ってあなたなのね。もっと変な人なのかと思っていたんだけど、意外と小さくて可愛らしい人だったんだ。ちょっと意外だったな。それで、イザーちゃんはどこにいるのかな?」
侵入者は私の顔を確かめるように何度も見た後にそんな事を言っているのだけど、この人の言っている事がやはり理解出来ずに戸惑っていた。私をここに連れてきたお姉さんの名前がイザーちゃんだとしたら、この侵入者はお姉さんお知り合いの変な人だという事になると思うのだけど、今にして思えば私をこの部屋に連れてきたお姉さんも変な人だ。
「あ、うまなちゃんの気配がしたんで玄関に迎えに行ったのに何で部屋に入ってるのよ。急いでいたとしてもちゃんと玄関から入らないとダメだって言ってるでしょ。頭の悪い子供じゃないんだからちゃんと学びなさいよ」
「はいはい、ごめんごめん。でも、すぐに先生の事を見たいって思ってたんだから許してよね」
「先生の事をすぐ見たいって思ってたんだったら大人しくここで待っててよ。その約束だったでしょ。自分から招待しておいて五時間近くも待たせるなんて失礼だと思うよ。先生だってこの後用事とかあったかもしれないでしょ」
「そうは言うけどさ、私がここを離れる原因を作ったのはイザーちゃんなんだからね。イザーちゃんがちゃんと落とし前を付けてくれてたら私は何もしないで待ってることも出来たんだよ。それなのにさ、イザーちゃんはやられるだけやられて帰ってきちゃってるでしょ。そんなの栗宮院家として見過ごせないでしょ」
「そこは見逃してイイと思いますよ。大体、私は栗宮院家じゃないですし。うまなちゃんの付き人ってだけだからね。私はうまなちゃんのお家に嫁入りしてないから家の人間じゃないと思うよ」
「そういう問題じゃないのよ。私とイザーちゃんは家族であり姉妹であり友人であり戦友であり雇い主と使用人という関係なんだからね」
二人のやり取りを見ててわかったのは、私をここに連れてきたのがイザーさんで窓を割って入ってきたのがうまなさんだ。二人の関係性はよくわからないけれど、敵対しているという事ではないのは確かだと思う。イザーさんはうまなさんに向けられていた刺客を捕まえて無力化しているのだから二人が敵対しているはずはないのだけど、窓を割って入ってきた登場の仕方が普通ではなかったので私はいまいちそれを信じることが出来ずにいたのだ。
それに、家族や友人は何となく理解出来るのだけど、戦友というのと雇い主と使用人というのはどういう意味なんだろう。たぶん、私が想像しているような関係で間違いはないと思う。
「窓を割って入ってくるのがカッコイイと思ってるようだけどさ、私だけじゃなくて先生もドン引きしているよ。そんなのがカッコイイって思ってるのなんて時代遅れのおじさんたちしかいないと思うよ。普通に玄関から入ってきた方が大人っぽくていいと思うんだけどな。窓を割って入ってくるのって、完全に悪ガキだよね。うまなちゃんって、見た目は大人になってるのに子供っぽいところはそのままなんだ」
「そんな事ないもん。私だって窓を割って入るよりも玄関から入った方が良いってのはわかってるよ。でも、私はすぐにでも先生に会いたかったんだからね。イザーちゃんみたいに私も早い時間から出番が貰えるようにして欲しいんだもん。いっつも私の登場って遅くなっちゃってるし、それをどうにか出来ないかなって思ってたら、今すぐにでも先生に言わなきゃって思っただけなんだもん」
うまなさんが何を言っているのか理解出来ないのは変わらないのだが、登場に遅いとか早いとかどういうことなのだろう。私はイザーさんの答えを聞いて考えようと思ったのだけど、なぜかイザーさんはうまなさんの言っている事を理解している。
「その気持ちはよくわかるよ。でも、あんまり焦っちゃダメだよ。先生も嫌がらせでうまなちゃんの登場を遅くしてるわけじゃないんだからね。ほら、最初は登場が一番最後だったけど、先生は第零話って形でうまなちゃんの話を作ってくれてるんだからね。今までと違って一番最初にうまなちゃんが登場する話を載せてくれてるんだからからね」
家の中に入ってからどれくらい時間が経ったのかわからないが、差し込んでいた光が無くなって虫の鳴き声が聞こえている事から夜になっているという事だけは理解出来た。少なくとも、四時間以上は経過していると思われるのだが、先程からいただいているお菓子やケーキのお陰で空腹感は一切なく、普段ならお腹の好いてくる頃合いだとは思うけれど空腹感の代わりに若干の睡魔が私を襲ってきているのである。
お姉さんはどこかへ行ってしまったようなので少しくらい目を閉じても良いのかなと思っていたタイミングで勢いよく窓ガラスを突き破って誰かが入ってきたので私は驚いてソファから飛び上がってしまいそうになっていた。だが、そんな私の事をソファは包み込んだまま離してくれることは無く私はそのまま侵入者から逃げることが出来ずにいたのだった。
このままでは侵入者に殺されてしまうと思った私は精一杯の抵抗をしようと試みたのだが、争い事が嫌いな私はこういう時に使えるとっておきの手というものを持っていない。私の機械の手は相手の機械を知ることが出来るだけなのでこんな時には何の役にも立たないのだ。いざという時のために力を隠し持っていた方が良いと何度も言われていたことを思い出したのだけど、私としては危ない目に合いそうな場所に行かなければ問題無いと思っていたので、こんな場面に出くわすことなんて一ミリも想定していなかったのだ。
「イザーちゃんが連れてきてくれた先生ってあなたなのね。もっと変な人なのかと思っていたんだけど、意外と小さくて可愛らしい人だったんだ。ちょっと意外だったな。それで、イザーちゃんはどこにいるのかな?」
侵入者は私の顔を確かめるように何度も見た後にそんな事を言っているのだけど、この人の言っている事がやはり理解出来ずに戸惑っていた。私をここに連れてきたお姉さんの名前がイザーちゃんだとしたら、この侵入者はお姉さんお知り合いの変な人だという事になると思うのだけど、今にして思えば私をこの部屋に連れてきたお姉さんも変な人だ。
「あ、うまなちゃんの気配がしたんで玄関に迎えに行ったのに何で部屋に入ってるのよ。急いでいたとしてもちゃんと玄関から入らないとダメだって言ってるでしょ。頭の悪い子供じゃないんだからちゃんと学びなさいよ」
「はいはい、ごめんごめん。でも、すぐに先生の事を見たいって思ってたんだから許してよね」
「先生の事をすぐ見たいって思ってたんだったら大人しくここで待っててよ。その約束だったでしょ。自分から招待しておいて五時間近くも待たせるなんて失礼だと思うよ。先生だってこの後用事とかあったかもしれないでしょ」
「そうは言うけどさ、私がここを離れる原因を作ったのはイザーちゃんなんだからね。イザーちゃんがちゃんと落とし前を付けてくれてたら私は何もしないで待ってることも出来たんだよ。それなのにさ、イザーちゃんはやられるだけやられて帰ってきちゃってるでしょ。そんなの栗宮院家として見過ごせないでしょ」
「そこは見逃してイイと思いますよ。大体、私は栗宮院家じゃないですし。うまなちゃんの付き人ってだけだからね。私はうまなちゃんのお家に嫁入りしてないから家の人間じゃないと思うよ」
「そういう問題じゃないのよ。私とイザーちゃんは家族であり姉妹であり友人であり戦友であり雇い主と使用人という関係なんだからね」
二人のやり取りを見ててわかったのは、私をここに連れてきたのがイザーさんで窓を割って入ってきたのがうまなさんだ。二人の関係性はよくわからないけれど、敵対しているという事ではないのは確かだと思う。イザーさんはうまなさんに向けられていた刺客を捕まえて無力化しているのだから二人が敵対しているはずはないのだけど、窓を割って入ってきた登場の仕方が普通ではなかったので私はいまいちそれを信じることが出来ずにいたのだ。
それに、家族や友人は何となく理解出来るのだけど、戦友というのと雇い主と使用人というのはどういう意味なんだろう。たぶん、私が想像しているような関係で間違いはないと思う。
「窓を割って入ってくるのがカッコイイと思ってるようだけどさ、私だけじゃなくて先生もドン引きしているよ。そんなのがカッコイイって思ってるのなんて時代遅れのおじさんたちしかいないと思うよ。普通に玄関から入ってきた方が大人っぽくていいと思うんだけどな。窓を割って入ってくるのって、完全に悪ガキだよね。うまなちゃんって、見た目は大人になってるのに子供っぽいところはそのままなんだ」
「そんな事ないもん。私だって窓を割って入るよりも玄関から入った方が良いってのはわかってるよ。でも、私はすぐにでも先生に会いたかったんだからね。イザーちゃんみたいに私も早い時間から出番が貰えるようにして欲しいんだもん。いっつも私の登場って遅くなっちゃってるし、それをどうにか出来ないかなって思ってたら、今すぐにでも先生に言わなきゃって思っただけなんだもん」
うまなさんが何を言っているのか理解出来ないのは変わらないのだが、登場に遅いとか早いとかどういうことなのだろう。私はイザーさんの答えを聞いて考えようと思ったのだけど、なぜかイザーさんはうまなさんの言っている事を理解している。
「その気持ちはよくわかるよ。でも、あんまり焦っちゃダメだよ。先生も嫌がらせでうまなちゃんの登場を遅くしてるわけじゃないんだからね。ほら、最初は登場が一番最後だったけど、先生は第零話って形でうまなちゃんの話を作ってくれてるんだからね。今までと違って一番最初にうまなちゃんが登場する話を載せてくれてるんだからからね」
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