11 / 11
第11話 ロザリンダ嬢の幸せと殿下の決意
しおりを挟む
あのあと、王妃様のお茶会で陛下にもお目にかかり、話はトントン拍子に進んだ。
結婚式の日は快晴で、大勢の見物が出た。
クリスときたら、素晴らしかった。
だんな様より注目を集めてしまって、困ったわ。
でも、公爵家から私を送り出しするのはクリスしかいない。
「姉様、幸せになって」
なんだかクリスが切なそうだわ。
「あなたの結婚が決まっていれば、こんなに心残りではないのだけど」
「俺のことはいいですよ。姉様さえ、幸せなら」
私はびっくりした。
だってクリスは今まで、自分のこと、僕って言い続けていた。
そうか。
クリスも成長したのね。
婚約の確認から結婚式までは、やっぱり一年ほどかかってしまった。
クリスからは、もう少年ぽさは少なくなって、一人前の男になっていた。
「さよなら、姉様」
クリスが頬にキスした時、ざらっとヒゲが当たった。
ああ、本当にもう子どもではない。
かわいい弟。
一人前の大人になっても、弟は弟。家族の一人。
私に子どもが生まれたら、あなたには甥や姪が出来るのよ。
「大丈夫さ。ヤツはしぶとくて、厚かましい」
夫が苦々しげに言った。一体、クリスとの間に何があったの?
「あいつのことは、これから、王家のためにコキ使うつもりだ。その意味では、あんな上玉はいない。ロザリンダが僕の妻である限り、人質みたいなものさ」
「ええ?」
「それから、セバスもだ。セバスとは連絡をとってるんだ。クリスには、いい嫁を斡旋するつもりだ」
それは、ありがたいけど。
「私も、あなたのために頑張りますわ」
「うん。あなたはいつだって、誰かのために頑張る人だ。わかってる」
彼はパレードの途中で大っぴらにキスした。
周り中の観衆が大声で囃し立てて、何も聞こえなくなってしまう。
「クリスに言われたんだ。姉様は自分の幸せを忘れてしまう人だって。人にばかり尽くして。だから、王妃や王太子妃なんかには不向きだって。きっと不幸せになる、間違いないって」
「なに? 何言ってるの? フィリップ」
「絶対に幸せにするよ。僕が守る」
ヤツは嫌がらせで言ってるだけだ。
だけど、たまには真実が混じる。
ロザリンダはそう言う人だ。
自分より他人が先。
あの弟が飛んでくるようなことにはさせない。
「大事にするよ」
殿下はもう一度妻にキスした。
結婚式の日は快晴で、大勢の見物が出た。
クリスときたら、素晴らしかった。
だんな様より注目を集めてしまって、困ったわ。
でも、公爵家から私を送り出しするのはクリスしかいない。
「姉様、幸せになって」
なんだかクリスが切なそうだわ。
「あなたの結婚が決まっていれば、こんなに心残りではないのだけど」
「俺のことはいいですよ。姉様さえ、幸せなら」
私はびっくりした。
だってクリスは今まで、自分のこと、僕って言い続けていた。
そうか。
クリスも成長したのね。
婚約の確認から結婚式までは、やっぱり一年ほどかかってしまった。
クリスからは、もう少年ぽさは少なくなって、一人前の男になっていた。
「さよなら、姉様」
クリスが頬にキスした時、ざらっとヒゲが当たった。
ああ、本当にもう子どもではない。
かわいい弟。
一人前の大人になっても、弟は弟。家族の一人。
私に子どもが生まれたら、あなたには甥や姪が出来るのよ。
「大丈夫さ。ヤツはしぶとくて、厚かましい」
夫が苦々しげに言った。一体、クリスとの間に何があったの?
「あいつのことは、これから、王家のためにコキ使うつもりだ。その意味では、あんな上玉はいない。ロザリンダが僕の妻である限り、人質みたいなものさ」
「ええ?」
「それから、セバスもだ。セバスとは連絡をとってるんだ。クリスには、いい嫁を斡旋するつもりだ」
それは、ありがたいけど。
「私も、あなたのために頑張りますわ」
「うん。あなたはいつだって、誰かのために頑張る人だ。わかってる」
彼はパレードの途中で大っぴらにキスした。
周り中の観衆が大声で囃し立てて、何も聞こえなくなってしまう。
「クリスに言われたんだ。姉様は自分の幸せを忘れてしまう人だって。人にばかり尽くして。だから、王妃や王太子妃なんかには不向きだって。きっと不幸せになる、間違いないって」
「なに? 何言ってるの? フィリップ」
「絶対に幸せにするよ。僕が守る」
ヤツは嫌がらせで言ってるだけだ。
だけど、たまには真実が混じる。
ロザリンダはそう言う人だ。
自分より他人が先。
あの弟が飛んでくるようなことにはさせない。
「大事にするよ」
殿下はもう一度妻にキスした。
53
お気に入りに追加
239
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
【完結】仕方がないので結婚しましょう
七瀬菜々
恋愛
『アメリア・サザーランド侯爵令嬢!今この瞬間を持って貴様との婚約は破棄させてもらう!』
アメリアは静かな部屋で、自分の名を呼び、そう高らかに宣言する。
そんな婚約者を怪訝な顔で見るのは、この国の王太子エドワード。
アメリアは過去、幾度のなくエドワードに、自身との婚約破棄の提案をしてきた。
そして、その度に正論で打ちのめされてきた。
本日は巷で話題の恋愛小説を参考に、新しい婚約破棄の案をプレゼンするらしい。
果たしてアメリアは、今日こそ無事に婚約を破棄できるのか!?
*高低差がかなりあるお話です
*小説家になろうでも掲載しています
婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった
有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。
何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。
諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
新作の方から飛んできて、楽しく拝読しました。
面白かったです(˶' ᵕ ' ˶)
セバス、仕事のできる人ですね〜
(最後の紹介は殿下の発案でしょうが……www)
弟君の黒さにはちょっと引きましたが笑いました。
これから他のお作も読ませていただきます( *´꒳`*)
感想を書いてくださってありがとうございます😭
弟君の評判が悪くって……容認してくださる感想の方が少ない感じでした。
ほとんどの作品に腹黒の夫や恋人が登場しております。
よろしくお願いします。
(腹黒好き募集中です)