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第5話 ロザリンダ嬢へのお茶会の誘い

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「王妃様のお茶会へのご招待?」

 来るものが来たという感じだった。

 婚約解消に向けて話が進んでいるのだわ。


「なんのお話なのですか? 王家から、使者がわざわざ口上を伝えにやって来るだなんて」

 クリスが心配してくれた。

「ああ。何でもないの。王妃様からのお茶会のお誘いよ」

「姉様!」

 クリスがいつもかわいい様子と違って、深刻な表情になった。

「きっと婚約の解消のお話なのでは?」

「そ、そうかも知れないわ」

「いいえ。きっと、そうなのでしょう。でも、もう、書面で十分でしょう。当家は今回の婚約解消に反対はしません。それとも……」

 クリスは、突然いつものかわいらしい顔に戻った。

「姉様は、あの王太子がお好きですか? いつもほかのご令嬢に取り囲まれている、あの王太子殿下を?」

 わからない。殿下は本当は優しい人なんだと思っている。だけど、私と結婚しても利益はないのだ。だから、仕方がないの。

「返事はどうされるのです?」

「これから、使者に伝えることになっているの」

「では、僕が伝えてきましょう。婚約解消は重大な問題です。当主が関わるべき問題です」

「なんて答えるつもり?」

イエスと。王家に逆らうつもりはありません。昨夜、ボーム侯爵の話を漏れ聞きました。婚約解消、謹んでお受けいたします、と」

 セバスも、女中頭も沈痛な顔をして、うなずいていた。

「そ、そうね。王家に逆らうつもりはありません。クリスの言うとおりだわ」

 使者は、王妃様付きの侍女のエバンス夫人だった。

「え? 何をおっしゃっていらっしゃるのですか? 王妃様からのお茶会のお誘いの返事に、そんな訳の分からないことをおっしゃられても」

「でも、昨晩、ボーム侯爵自らが、両陛下にご検討いただいていると明言されていましたわ。でも、先にわたくしとの婚約を解消しませんと、お話が進みませんでしょう」

「それに、ボーム家のご令嬢ご自身から、昨夜、実は姉様は声をかけられていました。邪魔だからどけと」

 クリスが付け加えた。

「え?」

 事情通のはずのエバンス夫人が、知らなかったらしく、驚いていた。

 言われたことは言われたわね。だけど、よく覚えていたわね、クリス。単純に邪魔だから道をどけと言っただけで、婚約者の地位をどけと言ったわけじゃないと思うけど。

 この言葉を聞いた、公爵家の使用人たちは、一斉に身震いした。そして、申し合わせたように、エバンス夫人の顔を憎々し気ににらんだ。

「私は茶会に参加するようにと伝えに参っただけでございます。婚約問題については、なんの指示も受けておりません。伝言はいたしますが、お茶会へのご出席につきましては?」

「もちろん、伺います。王家の命に是非はございません。ただ、婚約解消のお話のための茶会であれば、御前に伺う必要とてございませんでしょう。当主の私が代理で参ります」

 クリス、すごいわ。さすがだわ。エバンス夫人相手に、こんなにすらすらしゃべれるなんて。
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