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第12話 あなたの恋人になります
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「私、ドリュー様さえ構わなければ、ドリュー様の偽の恋人になりますわ」
私は思い切って言った。フェイクだもん。
「恋人どうのといいましても、友達の妹を救うためのウソですもの。申し込まれた私の正体が明らかになれば、ドリュー様の婚約者の方も納得されると思います」
ドリュー様はいきなり真っ赤になった。
「僕の婚約って……ロイから何か聞いてるの?」
ああ。本当なのか。胸がズキンと痛んだ。
「さっきエリー様に言ってたじゃありませんか」
ドリュー様は、顔を赤くしたり青くしたり、相当困った様子だった。
「ええと、俺は婚約して欲しい人はいるけど、婚約者はまだいないんだ。あの、本人から承諾してもらえていないんだ」
私は無理やり微笑んだ。本当は泣きそうだった。現実って、残酷。
ドリュー様がそんなことを言うだなんて。その方はお幸せね。
遊び人という噂がどこかへ飛んで行った。ドリュー様は、真剣にその人のことが好きなんだと伝わってきた。
うらやましい。
フェイクの恋人申し込みの私とは大違い。
自分のものではない幸せは、虹色に見える。
ドリュー様が突然下を向いて言い出した。
「いつの間にか好きになっていた。同じ時間を過ごすうちにかけがえのない人になっていった。だけど、実は申し込みができていない。もう学園も卒業なので、俺は文官になる試験を受けるのに忙しくて」
「兄も同じ試験を受けていましたから知ってますわ」
「二人とも受かった。あとは、その、大切な女性に申し込みをするだけなんだけど。ちょっと、その、彼女の方に事情があって、表立って申し込みが出来ないんだ。とても美しい人なんだ」
ドリュー様は真っ赤になりながら私に向かって真剣に話しかけた。
そのお話は、私ではなくて、その大事な方になさった方が……。私は聞きたくない。それなのに妙に惹きつけられる。
「実は、彼女には正式な婚約者がいる」
ドリュー様が言い出した。
「え……?」
それは……本当はよくないことなのでは? 人様の大事な方に横恋慕しているようなものですわ?
「だが、その婚約者は彼女のことをないがしろにしているんだ。全然大事にしない。それどころか軽んじ、バカにしてあちこちで悪口を言って歩いている。会ったこともないのに」
私のケースと似ている。そう言ったお話は社交界には多いのね。私は社交界に出入りしていないからよく知らないけど。
「君の兄上のおかげで、僕はその人と会う機会を得たんだ。その男にはもったいなさ過ぎる。純粋で美しい人だった。彼女を守りたい」
「まあ」
まるで私みたいな境遇の方。唯一違うところは、純粋で美しい方だと言う点だわ。
でも、ロマンチックで共感できる恋物話だった。ドリュー様の目は真剣な色を帯びていた。本気なのね、ドリュー様。
自分のものにしたいと希う愛もあるけど、恋人の幸福を目立たないところから祈る愛もある。
「ドリュ―様の為なら、私なんでもしますわ」
私は言った。そう。敬愛するドリュー様の為に。
どうしてかドリュー様はますます赤くなったが、言葉を続けた。
「学園のパーティの時には婚約申し込みを出来ると信じている。そのために、邪魔なダドリーを陥れる案を完璧に作り上げないといけないからね」
ダドリー様がドリュー様の邪魔を? ドリュー様のお好きな方はダドリー様のお知り合いなのかしら。
どうも話がよくわからないけど、それならドリュー様、私の婚約問題にかかわっている場合ではないのでは。
「ダドリーのばかめ。自分の婚約者のことを悪く言って、どんな利益があると言うのだ。妻の悪口は自分に返ってくるものだ。俺は絶対に大事にする。まだ申し込みもできていないけど、彼女は我慢強くて優しくて、静かな美人なんだ」
ドリュー様の妻……そうなのか。私とは大違いですね……
私にできることはドリュー様の幸せな結婚を願うことだけ。
「じゃあ、恋人になってくれる申し込み、受けてもらえるんだよね?」
ドリュー様が期待感を込めて聞いた。こんなに熱を込めて聞いて来るだなんて、なんかおかしい。おかしいけれど、ここは承知しなくてはいけない。
「もちろんですわ。ありがとうございます」
ドリュー様の結婚に差支えは出ないかな? ドリュー様の婚約にダドリー様の婚約破棄は必要不可欠だそうで、ドリュー様はもっと説明したそうだったけど、私はさえぎった。
そんな説明聞きたくない。
ドリュー様も所詮は美人好きで、お優しくていい方だけど、その点ではダドリー様と同じね。
この恋人宣言がドリュー様の婚約に悪影響があるのじゃないかが心配だけど、あと二週間くらいの期間限定の偽の噂だ。ダドリー様との婚約を解消してもしなくても、ドリュー様からの愛人申し込みは嘘だったことは私が保証できるから、ドリュー様の大切な方に悪く思われることはないだろう。
何かあったら、私はもちろん謝りに行くわ。
心の中でちょっと会いたくない……と思ってしまったけど。
私は私で、自分の幸せを頑張らないといけない。でないと悲劇の主人公気取りのダドリー様みたいになってしまうわ。なんだか、しんどくてつらい気がするけど、ドリュー様の恋人役の申し込みを受けることになった。
私は思い切って言った。フェイクだもん。
「恋人どうのといいましても、友達の妹を救うためのウソですもの。申し込まれた私の正体が明らかになれば、ドリュー様の婚約者の方も納得されると思います」
ドリュー様はいきなり真っ赤になった。
「僕の婚約って……ロイから何か聞いてるの?」
ああ。本当なのか。胸がズキンと痛んだ。
「さっきエリー様に言ってたじゃありませんか」
ドリュー様は、顔を赤くしたり青くしたり、相当困った様子だった。
「ええと、俺は婚約して欲しい人はいるけど、婚約者はまだいないんだ。あの、本人から承諾してもらえていないんだ」
私は無理やり微笑んだ。本当は泣きそうだった。現実って、残酷。
ドリュー様がそんなことを言うだなんて。その方はお幸せね。
遊び人という噂がどこかへ飛んで行った。ドリュー様は、真剣にその人のことが好きなんだと伝わってきた。
うらやましい。
フェイクの恋人申し込みの私とは大違い。
自分のものではない幸せは、虹色に見える。
ドリュー様が突然下を向いて言い出した。
「いつの間にか好きになっていた。同じ時間を過ごすうちにかけがえのない人になっていった。だけど、実は申し込みができていない。もう学園も卒業なので、俺は文官になる試験を受けるのに忙しくて」
「兄も同じ試験を受けていましたから知ってますわ」
「二人とも受かった。あとは、その、大切な女性に申し込みをするだけなんだけど。ちょっと、その、彼女の方に事情があって、表立って申し込みが出来ないんだ。とても美しい人なんだ」
ドリュー様は真っ赤になりながら私に向かって真剣に話しかけた。
そのお話は、私ではなくて、その大事な方になさった方が……。私は聞きたくない。それなのに妙に惹きつけられる。
「実は、彼女には正式な婚約者がいる」
ドリュー様が言い出した。
「え……?」
それは……本当はよくないことなのでは? 人様の大事な方に横恋慕しているようなものですわ?
「だが、その婚約者は彼女のことをないがしろにしているんだ。全然大事にしない。それどころか軽んじ、バカにしてあちこちで悪口を言って歩いている。会ったこともないのに」
私のケースと似ている。そう言ったお話は社交界には多いのね。私は社交界に出入りしていないからよく知らないけど。
「君の兄上のおかげで、僕はその人と会う機会を得たんだ。その男にはもったいなさ過ぎる。純粋で美しい人だった。彼女を守りたい」
「まあ」
まるで私みたいな境遇の方。唯一違うところは、純粋で美しい方だと言う点だわ。
でも、ロマンチックで共感できる恋物話だった。ドリュー様の目は真剣な色を帯びていた。本気なのね、ドリュー様。
自分のものにしたいと希う愛もあるけど、恋人の幸福を目立たないところから祈る愛もある。
「ドリュ―様の為なら、私なんでもしますわ」
私は言った。そう。敬愛するドリュー様の為に。
どうしてかドリュー様はますます赤くなったが、言葉を続けた。
「学園のパーティの時には婚約申し込みを出来ると信じている。そのために、邪魔なダドリーを陥れる案を完璧に作り上げないといけないからね」
ダドリー様がドリュー様の邪魔を? ドリュー様のお好きな方はダドリー様のお知り合いなのかしら。
どうも話がよくわからないけど、それならドリュー様、私の婚約問題にかかわっている場合ではないのでは。
「ダドリーのばかめ。自分の婚約者のことを悪く言って、どんな利益があると言うのだ。妻の悪口は自分に返ってくるものだ。俺は絶対に大事にする。まだ申し込みもできていないけど、彼女は我慢強くて優しくて、静かな美人なんだ」
ドリュー様の妻……そうなのか。私とは大違いですね……
私にできることはドリュー様の幸せな結婚を願うことだけ。
「じゃあ、恋人になってくれる申し込み、受けてもらえるんだよね?」
ドリュー様が期待感を込めて聞いた。こんなに熱を込めて聞いて来るだなんて、なんかおかしい。おかしいけれど、ここは承知しなくてはいけない。
「もちろんですわ。ありがとうございます」
ドリュー様の結婚に差支えは出ないかな? ドリュー様の婚約にダドリー様の婚約破棄は必要不可欠だそうで、ドリュー様はもっと説明したそうだったけど、私はさえぎった。
そんな説明聞きたくない。
ドリュー様も所詮は美人好きで、お優しくていい方だけど、その点ではダドリー様と同じね。
この恋人宣言がドリュー様の婚約に悪影響があるのじゃないかが心配だけど、あと二週間くらいの期間限定の偽の噂だ。ダドリー様との婚約を解消してもしなくても、ドリュー様からの愛人申し込みは嘘だったことは私が保証できるから、ドリュー様の大切な方に悪く思われることはないだろう。
何かあったら、私はもちろん謝りに行くわ。
心の中でちょっと会いたくない……と思ってしまったけど。
私は私で、自分の幸せを頑張らないといけない。でないと悲劇の主人公気取りのダドリー様みたいになってしまうわ。なんだか、しんどくてつらい気がするけど、ドリュー様の恋人役の申し込みを受けることになった。
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