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第29話 着々と進む親善パーティーの準備
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抱きしめられながら、この期に及んで、ローザは婚約したくないなーとか思っていた。学園で婚約者だと言わないでいてくれて助かったわと。
悪女?
いやいや。婚約って、めんどくさくないか?
ケネスは思いあう恋人同士?がむりやり婚約破棄させられた感じで盛り上がっているのだが、ローザはラッキーとか思っていた。
手紙一枚で、長年の婚約者を他人(妹だが)に取られてしまうのは、なんだか釈然としなかったが、現物(ケネス)を目の前にすると、これで良かったかもと思ってしまうのだ。
なんだか、ケネスの中では、自分もケネスを好き設定になってるっぽいが、これも円満解決の為には、黙っているべきところだろう。
ここまで熱くなくて、もっと几帳面じゃなくて、あれこれ注文をつけない男がいいなー……と思ってしまった。そして、おもしろい男。
そう、エドワードのような、腹に一物あるくらいの男の方が楽しいような……。
ケネスはチェックが細かいのだ。
それに……自宅にいた頃、好きなら好きで、ヴァイオレットではなくてローザを呼んでくれたら少しは違っていたかもしれない。
比べられて、捨てられたと言う思いは、気持ちのいいものじゃない。
自分をいらないのなら、そんな人を想い続けることは、つらいだけだ。ローザは、家にいた頃、時間をかけて自分を納得させていたのだ。ケネスはローザのことを好きじゃないのだと。選ばれなかったのだと。
「親善パーティーの欠席はいまさら撤回出来ない。準備もあるし。だが、婚約の件はなんとか撤回させてみせる。待っていて! ローザ」
そう宣言すると、ケネスは帰って行った。女子寮の入り口では長話は出来ない。
ローザは、走り去っていくケネスの後姿を見送るだけだった。どうしたらいいのか、わからなかった。
それに抱きしめた件は校則違反にならないだろうか? 誰かに見られていたのではないだろうか。
親善パーティーは、もう数日後に迫っていた。
ドレスだって髪飾りだって、ローザは何も準備していない。やる気ゼロだ。
家から来た手紙の返事は書きにくかったが、とにかく、親善パーティーに出ないことだけは伝えなくてはいけないと思って、それは書いた。
両親には責任を感じて欲しかったので、母はとにかく父には期待して、良縁を頼むと書いて送った。
「それで、親善パーティーに出ないのは責任放棄っぽいけど」
まあ、いいか。
パーティーでは、ケネスとヴァイオレットの組み合わせは、とても華やかで、さぞ人目を惹くことだろう。
こんなになってしまっては、見に行くことすら叶わないが、むしろ、行かないで済んで良かったかもしれない。
きっと婚約者の変更も無理ないなどと、言われることだろう。
ナタリーも、キャサリンも、授業のために寮を出て行った。
一人で部屋でぼんやりしていると、寮母さんらしい人がドアを叩いた。
「ウォルバート嬢! いるのかい? あんたに会いたいって人が入り口のとこに来てるんだけど」
いっくら学園が平等だって、この寮母さんの口のききぶりはなんなんだ。
「寮の入り口に、また男が来てるよ!」
ジョアンナの言うことは正しいかもしれない。昼間っから、男ばかりが訪ねてくる。
「ローザ嬢」
なめらかな口調と表情は、側近エドワード特有のものだった。身なりもビシッと決まっていて隙が無い。
さすが王太子殿下の側近は違う。
「親善パーティーの件ですが」
「欠席の届けをすでに出しておりまして」
「帳消しにしましたから」
速攻、返事が来た。ローザは目を見開いてエドワードを見た。本気か?
「我々を誰だと思っているのです? それくらい朝飯前です」
エドワードが時々、人を煙に巻くことがあることをローザは知っていた。
だが、エドワードはローザの詰問調の目つきに対して、深く頷いてみせた。マジらしい。
「でも、ドレスがありませんわ」
ドレスは準備に時間がかかる。ドレスがなければ、絶対出席出来ない。
「こちらで準備しました」
「え?」
ローザは聞き返した。ドレスは高い。伯爵家でさえ、そうそう新調出来ない。
「本気です。この前も言いましたよね?」
ローザは、なんとも言えない顔をした。言われたことは言われたが、本気なのかどうか? 王太子殿下のエスコートなんか、あり得ないと思う。
「それで今日はドレスの寸法直しのお誘いに」
「あ! いや、結構です」
「ダメです。さあ!」
エドワードが後ろに向かって手招きすると、屈強な殿下の側近たち……ではなくて、どうやら針子たちらしい女たちが数名現れた。
「男の私が拉致すると具合が悪いので」
「女の人でも同じですよ!」
ローザは抵抗した。
「まあまあ。騒がないで。ここはひとつ穏便に。でないと……」
エドワードは、ローザのそばに近づいて小声で凄んだ。
「ジョアンナ嬢にバラしますよ?」
「な、何を?」
「あなたがアレク様の恋人だって。あなたがアレク様に迫ったって」
「それ、嘘!」
「それを聞いたら、ジョアンナ嬢が何を言いだすことやら。何も言われたくなければ、おとなしく言うことを聞いてください。さあさあ」
ローザは針子らしい女性数人に取り囲まれ、迎賓館と呼ばれている建物に案内(拉致)された。
悪女?
いやいや。婚約って、めんどくさくないか?
ケネスは思いあう恋人同士?がむりやり婚約破棄させられた感じで盛り上がっているのだが、ローザはラッキーとか思っていた。
手紙一枚で、長年の婚約者を他人(妹だが)に取られてしまうのは、なんだか釈然としなかったが、現物(ケネス)を目の前にすると、これで良かったかもと思ってしまうのだ。
なんだか、ケネスの中では、自分もケネスを好き設定になってるっぽいが、これも円満解決の為には、黙っているべきところだろう。
ここまで熱くなくて、もっと几帳面じゃなくて、あれこれ注文をつけない男がいいなー……と思ってしまった。そして、おもしろい男。
そう、エドワードのような、腹に一物あるくらいの男の方が楽しいような……。
ケネスはチェックが細かいのだ。
それに……自宅にいた頃、好きなら好きで、ヴァイオレットではなくてローザを呼んでくれたら少しは違っていたかもしれない。
比べられて、捨てられたと言う思いは、気持ちのいいものじゃない。
自分をいらないのなら、そんな人を想い続けることは、つらいだけだ。ローザは、家にいた頃、時間をかけて自分を納得させていたのだ。ケネスはローザのことを好きじゃないのだと。選ばれなかったのだと。
「親善パーティーの欠席はいまさら撤回出来ない。準備もあるし。だが、婚約の件はなんとか撤回させてみせる。待っていて! ローザ」
そう宣言すると、ケネスは帰って行った。女子寮の入り口では長話は出来ない。
ローザは、走り去っていくケネスの後姿を見送るだけだった。どうしたらいいのか、わからなかった。
それに抱きしめた件は校則違反にならないだろうか? 誰かに見られていたのではないだろうか。
親善パーティーは、もう数日後に迫っていた。
ドレスだって髪飾りだって、ローザは何も準備していない。やる気ゼロだ。
家から来た手紙の返事は書きにくかったが、とにかく、親善パーティーに出ないことだけは伝えなくてはいけないと思って、それは書いた。
両親には責任を感じて欲しかったので、母はとにかく父には期待して、良縁を頼むと書いて送った。
「それで、親善パーティーに出ないのは責任放棄っぽいけど」
まあ、いいか。
パーティーでは、ケネスとヴァイオレットの組み合わせは、とても華やかで、さぞ人目を惹くことだろう。
こんなになってしまっては、見に行くことすら叶わないが、むしろ、行かないで済んで良かったかもしれない。
きっと婚約者の変更も無理ないなどと、言われることだろう。
ナタリーも、キャサリンも、授業のために寮を出て行った。
一人で部屋でぼんやりしていると、寮母さんらしい人がドアを叩いた。
「ウォルバート嬢! いるのかい? あんたに会いたいって人が入り口のとこに来てるんだけど」
いっくら学園が平等だって、この寮母さんの口のききぶりはなんなんだ。
「寮の入り口に、また男が来てるよ!」
ジョアンナの言うことは正しいかもしれない。昼間っから、男ばかりが訪ねてくる。
「ローザ嬢」
なめらかな口調と表情は、側近エドワード特有のものだった。身なりもビシッと決まっていて隙が無い。
さすが王太子殿下の側近は違う。
「親善パーティーの件ですが」
「欠席の届けをすでに出しておりまして」
「帳消しにしましたから」
速攻、返事が来た。ローザは目を見開いてエドワードを見た。本気か?
「我々を誰だと思っているのです? それくらい朝飯前です」
エドワードが時々、人を煙に巻くことがあることをローザは知っていた。
だが、エドワードはローザの詰問調の目つきに対して、深く頷いてみせた。マジらしい。
「でも、ドレスがありませんわ」
ドレスは準備に時間がかかる。ドレスがなければ、絶対出席出来ない。
「こちらで準備しました」
「え?」
ローザは聞き返した。ドレスは高い。伯爵家でさえ、そうそう新調出来ない。
「本気です。この前も言いましたよね?」
ローザは、なんとも言えない顔をした。言われたことは言われたが、本気なのかどうか? 王太子殿下のエスコートなんか、あり得ないと思う。
「それで今日はドレスの寸法直しのお誘いに」
「あ! いや、結構です」
「ダメです。さあ!」
エドワードが後ろに向かって手招きすると、屈強な殿下の側近たち……ではなくて、どうやら針子たちらしい女たちが数名現れた。
「男の私が拉致すると具合が悪いので」
「女の人でも同じですよ!」
ローザは抵抗した。
「まあまあ。騒がないで。ここはひとつ穏便に。でないと……」
エドワードは、ローザのそばに近づいて小声で凄んだ。
「ジョアンナ嬢にバラしますよ?」
「な、何を?」
「あなたがアレク様の恋人だって。あなたがアレク様に迫ったって」
「それ、嘘!」
「それを聞いたら、ジョアンナ嬢が何を言いだすことやら。何も言われたくなければ、おとなしく言うことを聞いてください。さあさあ」
ローザは針子らしい女性数人に取り囲まれ、迎賓館と呼ばれている建物に案内(拉致)された。
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