151 / 185
サジシーム
第151話 本隊は二人だけ(ダリア側)
しおりを挟む
もう夕暮れだった。
すでに布陣は終わっており、ロンゴバルト兵がカプトルの町から戻ってくるのを待ち構えていた。
一日が終わって、疲れた時間を狙う作戦だった。
「しかし、我慢しかねる光景じゃった」
気の短いザリエリ候が、市民を装ってカプトルに近づいたらしかった。
「一人で行くのはおやめくださいよ、侯爵」
ロドリックが注意した。
「あぶのうございます」
「なに、遠くの丘の上から見ただけじゃ」
見つかるからやめてくれと言いたかった。
「町が灰埃に帰していた」
フリースラントは黙っていた。
「ザリエリ候はバジエ辺境伯と共に戦っていただく」
「フリースラント、鋼鉄の騎士がいかに強いかはわかっておる。だが、本隊がわずか二百騎とは……」
ザリエリ候は食い下がった。
「お任せください」
フリースラントとロドリック、テンセスト女伯、ルシアは、ロジアン以下兵二百とともに小さな教会に集まった。
そろそろ、暗くなりかけていた。教会の内部は暗く、ロジアンほか、フリースラントとロドリックに常に付き従っている数名の騎士は、小さなローソクを囲んだ。
「時間で動く」
皆がうなずいた。
フリースラントとロドリックが、かわるがわる説明した。
「まず、バジエ辺境伯とゼンダの領主がそれぞれの陣地で派手に燈火を灯し気勢を上げる」
「それに呼応して、ロンゴバルドの首長達が、砦から出撃するかどうかが、この戦いの分かれ目だ」
「出撃しなければ失敗だ。我々は戦わない。だが、犠牲者は出ない。」
「出撃するようなら、彼らが出払った頃に、砦に攻め入る」
全員が真剣にうなずいた。
「おそらく、ロンゴバルトはダリアをなめ切っていると思う。そこがねらい目だ。軽く見て出撃してくる可能性がある」
「出てくれば儲けものだ」
ロンゴバルトは、前回の進撃と異なり、今回はやすやすとカプトルまで進むことができた。王宮でも反撃らしいものは何もなかった。
もし、大部分の兵が砦を出るようなことがあれば……
「俺が出る」
ロドリックが言った。
ルピーダ、ペリソン、ハリルが、ロドリックの顔を見た。ローソクの光だけでは、ロドリックの表情は読めなかった。
彼らは、あの大虐殺の晩、レイビック城に一緒にいた。
ロドリックが何をしたか知っていた。
「砦を取り戻すことができれば、我々は、出撃したロンゴバルトの後を追う。ルシアの城館もモルラ殿の屋敷も平時の居住用で、堀や石垣も、本格的なものではない。ロンゴバルトは、人数は万を数える。ゼンダの領主とバジエ辺境伯が危ない」
若い騎士たちはうなずいた。
「時間との勝負だ」
フリースラントが言った。
「ロドリックと二人で行く」
ルピーダ、ハリル、ペリゾンの三人は、驚いてフリースラントの顔を見た。
ロドリックの図抜けた実力を知りすぎていたので、まさかフリースラントが並ぶとは思わなかったのだ。
騎士の誰かが動いた。ロジアンだった。
「わたくしも……」
「ダメだ」
ロドリックが静止した。
「フリースラントだけだ」
ロジアンは、ロドリックの鎧を見たことがなかった。実際に鋼鉄の騎士が動いているところも。ロドリックがあの鎧を着たのは、ただ一度だけだった。
だから、ほかの3人がロジアンが一緒に行くと言いだしたのを見て驚いた様子なのが解せなかった。
「ご領主様をそのような危険なところへ護衛なしとは! 私どもが非力なことは重々承知しております。僭越だということも。しかし……」
もはや、人間ではなかった。ほかの騎士たちが黙りこくっていたのは、彼らには絶対、真似ができないことを思い知っていたからだった。
ハリルがロジアンの肩に手を置いて無言で彼を止めた。
「女伯とルシアを頼む」
二人が出て行った。
「ふたり……」
誰かがため息のようにつぶやいた。その意味は、ロドリックだけではないことを知った衝撃だった。
彼らの領主、レイビック伯爵フリースラントもまた、鋼鉄の騎士だったのだ。彼は、ロドリックと同じ鎧兜を櫃の中から取り出し、軽々と背負った。
騎士たちは目を見張った。
全く同じもの……
それから、二人は愛用の剣を手にし、出て行った。
「鋼鉄の騎士の再来さ」
夜道を明りも灯さず、黙々と進みながらロドリックは言った。
「もう二度としないと誓ったのに」
フリースラントは無視した。やらねばならない。ゼンダの領主とギュレーターの命がかかっている。ダリアの命運もだ。
「まっすぐ砦を目指す。中の人間は皆殺し。特に首長連中は、必ず殺すこと」
「砦を占拠したら、花火を上げる。教会で待機している二百人の騎士がなだれ込んでくる」
「砦を取り返し、二百の騎士で完全に守る」
既に日は落ち、暗かった。
耳を澄ますと、遠くから声が聞こえる。バジエ辺境伯とゼンダの領主軍が大きな音を立てていた。左右二個所で、大きな火が見えた。
「ギュレーターにもゼンダの領主にも、絶対に持ち場から離れるなと言ってある。もちろん、ロンゴバルトがやって来たときは別だ。すぐに逃げるように命じた」
「怖いのは、あいつらがロンゴバルトに刃向った時だ」
「うん……。おとなしく逃げるようにくれぐれも念押ししたし、不精不精にうなずいていたが」
砦までは、あと少し。誰も彼らに気づいていない。ロドリックはロンゴバルト語がわかる。耳を澄ますと、ロンゴバルト兵の荒い言葉が切れ切れに聞こえて生きた。
「でるらしいな、砦を」
ロドリックが言った。
「成功というわけか」
二人は緊張した。
「あちらは囮。こちらが本隊だ」
「たった二人だが」
フリースラントが、馬車の窓から身を乗り出して、あっという間に馬車の上によじ登った。
「危ないぞ、フリースラント」
ロドリックが声をかけた。彼らの周りは真の闇だった。彼らは暗闇でも見える。燈火など要らない。
「あいつらはバカだ。砦から簡単に出やがった」
フリースラントがつぶやいた。思うつぼだ。だが、急がないといけない。
ちょうど、どこかの首長が旗を先頭に勇ましくバジエ辺境伯のいる元のルシア妃の城館目指して、大声を上げながら砦から飛び出してきたところだった。大勢が篝火を手にしている。
「どんどん出て行っている。砦の扉はあけ放たれている」
始まりだした戦闘は止められない。ダリアに対し、勝利の経験しかないロンゴバルトは、勢い込んで砦から次から次へと流れ出していた。
「降りろ、フリースラント。お前の体重で天井が危ないんだ。俺だったら、確実に屋根を踏み抜いてる。鎧の重さを忘れんな」
フリースラントはそのことはすっかり忘れていた。
あわてて、地面に飛び落ちた。踏みにじられた草の匂いがする。
「行くぞ、ロドリック」
ロドリックはドアを開けて出てきた。二人は走りだした。
真っ暗な晩だった。
砦の門は開け放たれていた。
ちょうど、ほかの首長の一族が勇んで出て行こうとしているところだった。
「早く! 早くいかないと、ほかの部族に手柄を取られてしまう!」
「ダリアの軍など、剣の握り方も知らない連中だ。目にもの見せてくれようぞ!」
「いくら何でも、舐め過ぎだろう」
ロンゴバルト語の分かるロドリックがぼやいた。
かなりの人数が砦から出てきていた。軍隊が途切れるまで二人は待った。
「中に入ろう。門を閉められると厄介だ」
フリースラントが促した。
二人は出来るだけ暗闇に身をひそめながら近づいて、暗闇の中から砦の大扉のど真ん中へ乗り込んだ。
「あ?」
「ああーッ?! ダリアか?」
「待て!これは、こいつらは……もしかして……」
フリースラントとロドリックは、剣を振るった。一薙ぎで二、三人が倒れていく。
「生き返らないといいな」
「次行く! 次!」
二人は階段を駆け上がり、食事の支度をしていた奴隷に当たった。
「それはどこへ持っていくのだ?」
ロドリックが流ちょうなロンゴバルト語で聞いた。奴隷は震え上がって、目で上の部屋を指し示した。
二人はその部屋になだれ込み、食事を待っていた十名ほどを斬り殺した。
部屋部屋を探索し、全室を血まみれにした後、彼らは砦の一番上に上がって花火を上げた。
細い火が上に上がっていくだけの簡単な代物である。
「下へ降りよう」
下は大騒ぎだった。周りにテントを張って野営していた連中が残っていたのである。腕の立つ兵たちは、みな出て行った後なので、戦士と言うより雑務担当の者たちだった。彼らは砦の様子がおかしいので見に来たのだ。
「ああッ?!」
階段を三段飛ばしで、降りてきた、全身を鎧兜で覆われた、信じられないほど大柄な二人の騎士を見て、ロンゴバルトの雑兵は言葉を失った。
砦の中は灯火で照らされていた。おかげで、鎧兜が鉄製であることも、体の大きさが並外れていることも見ることができた。
「あれは……?」
だが、反応している時間はなかった。
騎士はたちまち走り寄って来て、あっという間に彼らをなぎ倒していく。
何十人いたのかわからない。
気が付いて、外へ逃げようとする者もいたが、重い鎧を着ているくせに二人の男の動きは素早かった。誰一人、その剣を逃れた者はいなかった。
砦の扉は、ぽっかりと大きく開け放たれたままで、中からはオレンジ色の燈火があたりを照らしていた。そして、恐ろしく大きな人影が二つ並んでいた。
そこにはもう、ほかに動くものは何もなくなっていた。
すでに布陣は終わっており、ロンゴバルト兵がカプトルの町から戻ってくるのを待ち構えていた。
一日が終わって、疲れた時間を狙う作戦だった。
「しかし、我慢しかねる光景じゃった」
気の短いザリエリ候が、市民を装ってカプトルに近づいたらしかった。
「一人で行くのはおやめくださいよ、侯爵」
ロドリックが注意した。
「あぶのうございます」
「なに、遠くの丘の上から見ただけじゃ」
見つかるからやめてくれと言いたかった。
「町が灰埃に帰していた」
フリースラントは黙っていた。
「ザリエリ候はバジエ辺境伯と共に戦っていただく」
「フリースラント、鋼鉄の騎士がいかに強いかはわかっておる。だが、本隊がわずか二百騎とは……」
ザリエリ候は食い下がった。
「お任せください」
フリースラントとロドリック、テンセスト女伯、ルシアは、ロジアン以下兵二百とともに小さな教会に集まった。
そろそろ、暗くなりかけていた。教会の内部は暗く、ロジアンほか、フリースラントとロドリックに常に付き従っている数名の騎士は、小さなローソクを囲んだ。
「時間で動く」
皆がうなずいた。
フリースラントとロドリックが、かわるがわる説明した。
「まず、バジエ辺境伯とゼンダの領主がそれぞれの陣地で派手に燈火を灯し気勢を上げる」
「それに呼応して、ロンゴバルドの首長達が、砦から出撃するかどうかが、この戦いの分かれ目だ」
「出撃しなければ失敗だ。我々は戦わない。だが、犠牲者は出ない。」
「出撃するようなら、彼らが出払った頃に、砦に攻め入る」
全員が真剣にうなずいた。
「おそらく、ロンゴバルトはダリアをなめ切っていると思う。そこがねらい目だ。軽く見て出撃してくる可能性がある」
「出てくれば儲けものだ」
ロンゴバルトは、前回の進撃と異なり、今回はやすやすとカプトルまで進むことができた。王宮でも反撃らしいものは何もなかった。
もし、大部分の兵が砦を出るようなことがあれば……
「俺が出る」
ロドリックが言った。
ルピーダ、ペリソン、ハリルが、ロドリックの顔を見た。ローソクの光だけでは、ロドリックの表情は読めなかった。
彼らは、あの大虐殺の晩、レイビック城に一緒にいた。
ロドリックが何をしたか知っていた。
「砦を取り戻すことができれば、我々は、出撃したロンゴバルトの後を追う。ルシアの城館もモルラ殿の屋敷も平時の居住用で、堀や石垣も、本格的なものではない。ロンゴバルトは、人数は万を数える。ゼンダの領主とバジエ辺境伯が危ない」
若い騎士たちはうなずいた。
「時間との勝負だ」
フリースラントが言った。
「ロドリックと二人で行く」
ルピーダ、ハリル、ペリゾンの三人は、驚いてフリースラントの顔を見た。
ロドリックの図抜けた実力を知りすぎていたので、まさかフリースラントが並ぶとは思わなかったのだ。
騎士の誰かが動いた。ロジアンだった。
「わたくしも……」
「ダメだ」
ロドリックが静止した。
「フリースラントだけだ」
ロジアンは、ロドリックの鎧を見たことがなかった。実際に鋼鉄の騎士が動いているところも。ロドリックがあの鎧を着たのは、ただ一度だけだった。
だから、ほかの3人がロジアンが一緒に行くと言いだしたのを見て驚いた様子なのが解せなかった。
「ご領主様をそのような危険なところへ護衛なしとは! 私どもが非力なことは重々承知しております。僭越だということも。しかし……」
もはや、人間ではなかった。ほかの騎士たちが黙りこくっていたのは、彼らには絶対、真似ができないことを思い知っていたからだった。
ハリルがロジアンの肩に手を置いて無言で彼を止めた。
「女伯とルシアを頼む」
二人が出て行った。
「ふたり……」
誰かがため息のようにつぶやいた。その意味は、ロドリックだけではないことを知った衝撃だった。
彼らの領主、レイビック伯爵フリースラントもまた、鋼鉄の騎士だったのだ。彼は、ロドリックと同じ鎧兜を櫃の中から取り出し、軽々と背負った。
騎士たちは目を見張った。
全く同じもの……
それから、二人は愛用の剣を手にし、出て行った。
「鋼鉄の騎士の再来さ」
夜道を明りも灯さず、黙々と進みながらロドリックは言った。
「もう二度としないと誓ったのに」
フリースラントは無視した。やらねばならない。ゼンダの領主とギュレーターの命がかかっている。ダリアの命運もだ。
「まっすぐ砦を目指す。中の人間は皆殺し。特に首長連中は、必ず殺すこと」
「砦を占拠したら、花火を上げる。教会で待機している二百人の騎士がなだれ込んでくる」
「砦を取り返し、二百の騎士で完全に守る」
既に日は落ち、暗かった。
耳を澄ますと、遠くから声が聞こえる。バジエ辺境伯とゼンダの領主軍が大きな音を立てていた。左右二個所で、大きな火が見えた。
「ギュレーターにもゼンダの領主にも、絶対に持ち場から離れるなと言ってある。もちろん、ロンゴバルトがやって来たときは別だ。すぐに逃げるように命じた」
「怖いのは、あいつらがロンゴバルトに刃向った時だ」
「うん……。おとなしく逃げるようにくれぐれも念押ししたし、不精不精にうなずいていたが」
砦までは、あと少し。誰も彼らに気づいていない。ロドリックはロンゴバルト語がわかる。耳を澄ますと、ロンゴバルト兵の荒い言葉が切れ切れに聞こえて生きた。
「でるらしいな、砦を」
ロドリックが言った。
「成功というわけか」
二人は緊張した。
「あちらは囮。こちらが本隊だ」
「たった二人だが」
フリースラントが、馬車の窓から身を乗り出して、あっという間に馬車の上によじ登った。
「危ないぞ、フリースラント」
ロドリックが声をかけた。彼らの周りは真の闇だった。彼らは暗闇でも見える。燈火など要らない。
「あいつらはバカだ。砦から簡単に出やがった」
フリースラントがつぶやいた。思うつぼだ。だが、急がないといけない。
ちょうど、どこかの首長が旗を先頭に勇ましくバジエ辺境伯のいる元のルシア妃の城館目指して、大声を上げながら砦から飛び出してきたところだった。大勢が篝火を手にしている。
「どんどん出て行っている。砦の扉はあけ放たれている」
始まりだした戦闘は止められない。ダリアに対し、勝利の経験しかないロンゴバルトは、勢い込んで砦から次から次へと流れ出していた。
「降りろ、フリースラント。お前の体重で天井が危ないんだ。俺だったら、確実に屋根を踏み抜いてる。鎧の重さを忘れんな」
フリースラントはそのことはすっかり忘れていた。
あわてて、地面に飛び落ちた。踏みにじられた草の匂いがする。
「行くぞ、ロドリック」
ロドリックはドアを開けて出てきた。二人は走りだした。
真っ暗な晩だった。
砦の門は開け放たれていた。
ちょうど、ほかの首長の一族が勇んで出て行こうとしているところだった。
「早く! 早くいかないと、ほかの部族に手柄を取られてしまう!」
「ダリアの軍など、剣の握り方も知らない連中だ。目にもの見せてくれようぞ!」
「いくら何でも、舐め過ぎだろう」
ロンゴバルト語の分かるロドリックがぼやいた。
かなりの人数が砦から出てきていた。軍隊が途切れるまで二人は待った。
「中に入ろう。門を閉められると厄介だ」
フリースラントが促した。
二人は出来るだけ暗闇に身をひそめながら近づいて、暗闇の中から砦の大扉のど真ん中へ乗り込んだ。
「あ?」
「ああーッ?! ダリアか?」
「待て!これは、こいつらは……もしかして……」
フリースラントとロドリックは、剣を振るった。一薙ぎで二、三人が倒れていく。
「生き返らないといいな」
「次行く! 次!」
二人は階段を駆け上がり、食事の支度をしていた奴隷に当たった。
「それはどこへ持っていくのだ?」
ロドリックが流ちょうなロンゴバルト語で聞いた。奴隷は震え上がって、目で上の部屋を指し示した。
二人はその部屋になだれ込み、食事を待っていた十名ほどを斬り殺した。
部屋部屋を探索し、全室を血まみれにした後、彼らは砦の一番上に上がって花火を上げた。
細い火が上に上がっていくだけの簡単な代物である。
「下へ降りよう」
下は大騒ぎだった。周りにテントを張って野営していた連中が残っていたのである。腕の立つ兵たちは、みな出て行った後なので、戦士と言うより雑務担当の者たちだった。彼らは砦の様子がおかしいので見に来たのだ。
「ああッ?!」
階段を三段飛ばしで、降りてきた、全身を鎧兜で覆われた、信じられないほど大柄な二人の騎士を見て、ロンゴバルトの雑兵は言葉を失った。
砦の中は灯火で照らされていた。おかげで、鎧兜が鉄製であることも、体の大きさが並外れていることも見ることができた。
「あれは……?」
だが、反応している時間はなかった。
騎士はたちまち走り寄って来て、あっという間に彼らをなぎ倒していく。
何十人いたのかわからない。
気が付いて、外へ逃げようとする者もいたが、重い鎧を着ているくせに二人の男の動きは素早かった。誰一人、その剣を逃れた者はいなかった。
砦の扉は、ぽっかりと大きく開け放たれたままで、中からはオレンジ色の燈火があたりを照らしていた。そして、恐ろしく大きな人影が二つ並んでいた。
そこにはもう、ほかに動くものは何もなくなっていた。
10
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
試験雇用中の冒険者パーティー【ブレイブソード】のリーダーに呼び出されたウィルは、クビを宣言されてしまう。その理由は同じ三ヶ月の試験雇用を受けていたコナーを雇うと決めたからだった。
ウィルは冒険者になって一年と一ヶ月、対してコナーは冒険者になって一ヶ月のド新人である。納得の出来ないウィルはコナーと一対一の決闘を申し込む。
その後、なんやかんやとあって、ウィルはシェフィールドの町を出て、実家の農家を継ぐ為に乗り合い馬車に乗ることになった。道中、魔物と遭遇するも、なんやかんやとあって、無事に生まれ故郷のサークス村に到着した。
無事に到着した村で農家として、再出発しようと考えるウィルの前に、両親は半年前にウィル宛てに届いた一通の手紙を渡してきた。
手紙内容は数年前にウィルが落とし物を探すのを手伝った、お爺さんが亡くなったことを知らせるものだった。そして、そのお爺さんの遺言でウィルに渡したい物があるから屋敷があるアポンタインの町に来て欲しいというものだった。
屋敷に到着したウィルだったが、彼はそこでお爺さんがS級冒険者だったことを知らされる。そんな驚く彼の前に、伝説級最強アイテムが次々と並べられていく。
【聖龍剣・死喰】【邪龍剣・命喰】【無限収納袋】【透明マント】【神速ブーツ】【賢者の壺】【神眼の指輪】
だが、ウィルはもう冒険者を辞めるつもりでいた。そんな彼の前に、お爺さんの孫娘であり、S級冒険者であるアシュリーが現れ、遺産の相続を放棄するように要求してきた。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる