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第6話 メリンダ嬢、目の前を通過する
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「いいか、狙い目は最年少女子と、欠席を決めこんでいる女子だ」
「欠席を決め込んでいる女子って、訳アリなんでは?」
「そんなもの、ワケ次第だろ?」
イベント担当として定評のあるジョナスと、広報戦略に長けたルイスは、戦法を練った。
そもそも親衛隊なんかが女子に人気がある訳がない。
しかし、五十人もいれば、そのうち一人くらいそこそこイケメンで、そこまでオタクでない人物がいるかもしれないではないか。
もしかして、爵位持ちの嫡子とかもいるかもしれないではないか。
ダンスパーティの三日前に演舞は、特別許可を得て、全員が胸に番号をつけて戸外で行われた。
見物自由である。
「そばに寄っていいから」
手に手に紙を持った女性たちが顔と条件を確認しにやってくる。
当日、ダンスパーティ会場で落ち合ってもらうというすごく雑なやり方である。
従って、パーティ当日はビクビクものだった。
「一応、格好だけは着てきたが、約束した女の子が来なかったり、別の男と一緒に来てたらどうしよう?」
「そこまで頑張る必要もない。来なくてパートナーがいなくても、急だったし事情が事情だから仕方ない」
ルイスは胸を張って、隊員に告げた。
「緊急事態だったということは、みんな承知してくれている。それに、今回のパートナーが臨時のものだってことも」
時間よりだいぶ前に集合した親衛隊員はかなり不安そうで、キョロキョロしていたが、そのうち一人、二人と約束したパートナーが現れ始めた。
「よかったな」
アランがホッとしたようにルイスに声をかけた。
ルイスも明らかにホッとした様子だった。
「親衛隊に入会したばっかりに、ダンスパーティでパートナーなしはあんまりだもんな」
どんどん人がやってくる。
アランも定刻通りに現れたパートナーを見つけて、顔が綻んだ。
「じゃ、失礼するよ、ルイス」
だが、アランは顔が凍っているルイスに気がついてびっくりした。
「おい、ルイス? どうした、ルイス」
目の前では、メリンダ嬢が、堂々とジョナスにエスコートされていた。
ルイスに気がつくと、ジョナスとメリンダ嬢はにっこり笑って見せた。
「どういう……」
「だって、ダンスパーティのエスコートはできないっていうお手紙をいただきましたから」
「だそうだ。それで、俺も父に勧められて、メリンダ嬢のエスコート役をさせていただくことになった」
「演舞のデモンストレーションで会ったわけじゃないのか?」
「違うよ。父親同士の縁なんだ。じゃ、失礼するよ?」
ルイスは顎が外れるほど、驚いていたが、アランがイラついた様子で聞いた。
「なんだ、お前は? ロザモンド殿下のお供で隣国に行くんじゃなかったのか?」
「え?」
ルイスがもう虚無な顔になって振り返った。どちらかといえば暑苦しい系の男前なだけに、似合わない表情だ。
「あら、私、ルイス様はロザモンド様に生涯の忠誠を誓われて、隣国に渡られる、でも独身ではまずいので、メリンダ様と結婚して形だけでも既婚者としてついていかれると伺いましたわ。よかったですわね。王家からそこまで信頼されて」
「聞いてない」
「まあ。でも、よかったではございませんか」
ルイスは惨めそうな視線をジョナスとメリンダ嬢の後ろ姿に送った。
「ロザモンド殿下のお付きになれるかもしれません」
「メリンダは?」
「そうですねえ……」
アランの婚約者は、ジョナスとメリンダ嬢の後ろ姿を、ルイスの視線と一緒になって追った。
「別に一緒に暮らすわけではないので、ルイス様のご結婚相手はどなたでも宜しいんじゃございません? メリンダ様は、そんな別居結婚がお嫌なのかも知れませんわ」
「欠席を決め込んでいる女子って、訳アリなんでは?」
「そんなもの、ワケ次第だろ?」
イベント担当として定評のあるジョナスと、広報戦略に長けたルイスは、戦法を練った。
そもそも親衛隊なんかが女子に人気がある訳がない。
しかし、五十人もいれば、そのうち一人くらいそこそこイケメンで、そこまでオタクでない人物がいるかもしれないではないか。
もしかして、爵位持ちの嫡子とかもいるかもしれないではないか。
ダンスパーティの三日前に演舞は、特別許可を得て、全員が胸に番号をつけて戸外で行われた。
見物自由である。
「そばに寄っていいから」
手に手に紙を持った女性たちが顔と条件を確認しにやってくる。
当日、ダンスパーティ会場で落ち合ってもらうというすごく雑なやり方である。
従って、パーティ当日はビクビクものだった。
「一応、格好だけは着てきたが、約束した女の子が来なかったり、別の男と一緒に来てたらどうしよう?」
「そこまで頑張る必要もない。来なくてパートナーがいなくても、急だったし事情が事情だから仕方ない」
ルイスは胸を張って、隊員に告げた。
「緊急事態だったということは、みんな承知してくれている。それに、今回のパートナーが臨時のものだってことも」
時間よりだいぶ前に集合した親衛隊員はかなり不安そうで、キョロキョロしていたが、そのうち一人、二人と約束したパートナーが現れ始めた。
「よかったな」
アランがホッとしたようにルイスに声をかけた。
ルイスも明らかにホッとした様子だった。
「親衛隊に入会したばっかりに、ダンスパーティでパートナーなしはあんまりだもんな」
どんどん人がやってくる。
アランも定刻通りに現れたパートナーを見つけて、顔が綻んだ。
「じゃ、失礼するよ、ルイス」
だが、アランは顔が凍っているルイスに気がついてびっくりした。
「おい、ルイス? どうした、ルイス」
目の前では、メリンダ嬢が、堂々とジョナスにエスコートされていた。
ルイスに気がつくと、ジョナスとメリンダ嬢はにっこり笑って見せた。
「どういう……」
「だって、ダンスパーティのエスコートはできないっていうお手紙をいただきましたから」
「だそうだ。それで、俺も父に勧められて、メリンダ嬢のエスコート役をさせていただくことになった」
「演舞のデモンストレーションで会ったわけじゃないのか?」
「違うよ。父親同士の縁なんだ。じゃ、失礼するよ?」
ルイスは顎が外れるほど、驚いていたが、アランがイラついた様子で聞いた。
「なんだ、お前は? ロザモンド殿下のお供で隣国に行くんじゃなかったのか?」
「え?」
ルイスがもう虚無な顔になって振り返った。どちらかといえば暑苦しい系の男前なだけに、似合わない表情だ。
「あら、私、ルイス様はロザモンド様に生涯の忠誠を誓われて、隣国に渡られる、でも独身ではまずいので、メリンダ様と結婚して形だけでも既婚者としてついていかれると伺いましたわ。よかったですわね。王家からそこまで信頼されて」
「聞いてない」
「まあ。でも、よかったではございませんか」
ルイスは惨めそうな視線をジョナスとメリンダ嬢の後ろ姿に送った。
「ロザモンド殿下のお付きになれるかもしれません」
「メリンダは?」
「そうですねえ……」
アランの婚約者は、ジョナスとメリンダ嬢の後ろ姿を、ルイスの視線と一緒になって追った。
「別に一緒に暮らすわけではないので、ルイス様のご結婚相手はどなたでも宜しいんじゃございません? メリンダ様は、そんな別居結婚がお嫌なのかも知れませんわ」
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