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第76話 真相が語られる
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彼は近づきながら、話を始めた。口の端をゆがめる、彼独特の笑いを浮かべながら。
「軍が、グラクイの運送劇を展開したときは、お笑いだったよ。
何ひとつ理解できていないことが、よくわかった。亡くなったローレンス博士にしたところで、そんなこともわかっていないのかという気分だった。
だって、グラクイの飼育で最も大事なことは、孵化時点でそばにいることで、グラクイだけ運送してくるということは、その大切な時期に一緒にいた人間の意味がわからず、そいつと別々に離してしまうということだからね。
つまり、軍や博士は何もわかっていなかったということだ。私は、大笑いしたよ」
そうか。それでちっとも引っかかってこなかったのか。罠が罠として機能していなかったわけだ。
「だが、軍にはあなたがいた。ローレンス博士に一度電話して聞いたが、研究を博士に委託することを提案したり、飼育資料の重要性を主張したり、さらには刷り込みの可能性まで示唆していたそうだね。
博士はどうやら刷り込み説は採らなかったらしいが、あなたがいれば、いずれグラクイの秘密は解き明かされてしまう。あなたは危険だった。あなたこそが危険人物だった」
私か。スコットは、ますます近づいてきた。
「あの、ジャニス・ガーランドという男に、君の情報を流したのは私だ。
あの間抜けは私が教えてやらなければ、一生、軍のホームページを開いてみるなどという真似はしなかったろう」
私は、はっとした。私が驚いた様子を見て、スコットは満足したようだった。
「もっとも、やつは、軍のホームページを読んで何をするかと思ったら、あなたに対する怨恨よりも、今の妻の元の夫に興味を持っていたようだったがね。
つまらない下々の者達の、薄汚い話だ。やきもちさ。くだらない。
くだらないといえば、軍のしたこともくだらないな。あなたを使って、私を引っ掛けようとしたらしいが、そんな手に誰が乗るものか。ばかばかしい。いまさら、あなたに何の関心があるものか」
スコットのプライドには、ますます磨きがかかったようだった。
「ジャニスが暗殺された後、卵の回収をさせたのは私だ。ジャニスのグラクイ達はジャニスの言うことしか聞かなかったけれど、そのジャニスは私を信用して、私の言うことなら聞いたからね」
スコットは得意げだった。癖のある笑い方で、口を少しゆがめるようにして、白い歯を見せて笑っていた。
「卵を集めるように、彼に進言したのだ。
私には、新しい卵が必要だった。
ジャニスには、卵を集めておけば、いつでもグラクイの補充が利くから、孵さないで保存しておいたほうがよいと言ってやったのさ。
むろん、私が使うつもりだった。
なにもかも思い通りにいったよ。
ジャニスをちょうどいい頃に殺してくれてありがとう。そろそろ邪魔になってきた頃だった。あなたが殺ったそうだね。意外だったよ。そんな女だとは、思っていなかった。いかすじゃないか」
スコットは、私を見た。そして、にやりと笑った。
「ジャニスのグラクイは、私には邪魔だった。彼らは私に忠誠を誓っているわけではなかった。
ジャニスを殺してくれた上、君たち軍は必死になって、ジャニスのグラクイを始末してくれた。ご苦労だった。手間が省けたよ。ほとんど全滅した。残ったのは、卵と、私に忠実なグラクイだけだった」
私はグラクイに同情心を全く持たなかったが、スコットのこの発言を聞いて、グラクイが気の毒になった。
「そして、もう、軍になにかしてもらうことは何も残っていなかった。危険な因子を取り除くほかは」
彼は、目を光らせてにじり寄ってきた。
「私はあなたが一人で行動する日を待っていた。ずいぶん待った。ローレンス博士の件でしばらく中央に行っていた期間以外は、ずっと待っていた。柄にもないことだけれど。それが今日だったのだ」
突然、彼は声を立てて笑った。
「今頃、あの基地の連中は、どうしているのだろうな。仲間意識の強い軍のことだ。あなたを必死で捜索しているかもしれない。
だが、無駄だ。一番先に、あなたのGPSを、破壊するように命令したからな。
GPSがなければ、あなたの位置情報は誰にも知られることがない。
グラクイの移動先を識別することはできるだろうが、六十匹もいるうちの、どのグラクイがあなたを連れ去ったのか、彼らにはわかるまい。グラクイには、全員が別々の場所に移動するよう命令しておいた。
六十箇所全部を探せば、わかるだろうが、時間がかかりすぎる。
それに、もし運よく早い時期にこのあたりを探すとしても、ここは地下だ。入り口は、私以外、絶対にわからない。カモフラージュされている。
ここは、ジャニスと呼ばれた男が使っていた場所のうちのひとつなのだ。私が改造した」
なるほど。この部屋の装飾の妙なこだわりの意味がわかった。スコットらしい趣味だった。
「この地下の住まいは、なかなかしゃれていてね。無線は届かないし、それなりの防犯もされている。軍は、この地下の住まいのことは絶対に知らないだろう」
私も、こんな施設があるだなんて全く知らなかった。荒野を何回もうろついていたのに、人造らしいものを見かけたことはなかった。
「あなたの軍服と靴は、失礼だが、拝借して、ジャニスのもうひとつの拠点のほうに置いてきた。
たぶん、軍はこちらではなく、向こうの方に引っかかるだろう。あちらの構造は複雑だ。五階建てくらいには相当するだろう。あそこ全体を捜索するには、相当時間がかかる。私がしたいことをする時間は充分あるわけだ」
額に汗がにじんだ。無線機は、上着にいれたままだ。GPSは壊された。多分、動いていないだろう。だが、予備の無線機を持って出たことをジェレミーは知っている。必ず、無線機を探すだろう。
つまり、軍は、必ず間違った場所にたどり着くわけだ。ジャニスの五階建ての施設とは、間違いなく、「ジャニスの城」を指すのだろう。あそこは広い。ジェレミーは、私の死体すら見つけ出せないかもしれなかった。絶望だ。倒れたとき、万にひとつの希望をつないだ無線機が、逆に私の唯一残った希望を打ち砕くとは。
スコットは二十センチの距離にまで近づいていた。
彼の光り過ぎる黒い目、ハンサムと言う程ではないが、比較的整った目鼻、見慣れた顔があった。
本当にひどく癖のある人間の顔だった。若かった頃と違い、それはよくわかった。私は壁まで後じさりした。
「ローレンス博士は、もうこの世にいない。グラクイを研究する者は、必ず殺される運命なのだ。後はあなたと軍だけ。
今、私が欲しいのは時間だ。あなたという研究者を失えば、軍は信用できる生物学の助言者を失い、この問題は停滞するだろう。その間に私は、色々なことができる。
まず、議会に働きかけて、グラクイの保護法案を通すのだ。
グラクイは本当は恐るべき動物だ。私には、絶対服従なのだ。だが、誰もそんなことは知らない。あなたとローレンス博士以外はね。そのグラクイに指一本させないようにして見せる。あなたと軍が指をくわえて見ているしかないようにして見せる。
そして、その間にグラクイを使っていろいろなことをしてみせる。すっかり計画は出来ているんだ。お金も稼げる。だが、もちろん、欲しい物はお金じゃない」
スコットは楽しそうで、目が異様にきらきらしていた。彼の行動についての私たちの読みは正しかったようだ。だが、もう遅いかもしれない。
「権力さ。グラクイは、地上を明るくしたり、暗くしたりいろいろなことが出来る。あなたは知らないだろうが、グラクイの呼気には、空を暗くする力があるのだ。そして、それは彼らが土を食べているからなのだ」
私ははっとした。これから死ぬからこそしゃべったのだろうか。
グラクイの呼気の秘密。それは私たちがずっと追及して、全然回答が得られなかった問題だった。
食べ物。土……これが、答えなのだろうか……
スコットは、私の反応に気がつかなかったようだった。自分の話に夢中になっていたのだ。
「人間と同じものを食べるグラクイは普通の循環しかしない。そんな呼気は吐かない。いくら研究してもわからないことだ。飼育するときに土を食わせるバカはいない。でも、土を食べた彼らは普通じゃない。悪魔のような空気を吐く。その悪魔の力を私が全て掌握するのだ。世界が私にひれ伏すだろう。そう、アイリス、あなたもだ」
銃口は額に押し付けられていた。冷たかった。頭の後ろは壁だった。もう下がれない。私は目をつぶった。
「軍が、グラクイの運送劇を展開したときは、お笑いだったよ。
何ひとつ理解できていないことが、よくわかった。亡くなったローレンス博士にしたところで、そんなこともわかっていないのかという気分だった。
だって、グラクイの飼育で最も大事なことは、孵化時点でそばにいることで、グラクイだけ運送してくるということは、その大切な時期に一緒にいた人間の意味がわからず、そいつと別々に離してしまうということだからね。
つまり、軍や博士は何もわかっていなかったということだ。私は、大笑いしたよ」
そうか。それでちっとも引っかかってこなかったのか。罠が罠として機能していなかったわけだ。
「だが、軍にはあなたがいた。ローレンス博士に一度電話して聞いたが、研究を博士に委託することを提案したり、飼育資料の重要性を主張したり、さらには刷り込みの可能性まで示唆していたそうだね。
博士はどうやら刷り込み説は採らなかったらしいが、あなたがいれば、いずれグラクイの秘密は解き明かされてしまう。あなたは危険だった。あなたこそが危険人物だった」
私か。スコットは、ますます近づいてきた。
「あの、ジャニス・ガーランドという男に、君の情報を流したのは私だ。
あの間抜けは私が教えてやらなければ、一生、軍のホームページを開いてみるなどという真似はしなかったろう」
私は、はっとした。私が驚いた様子を見て、スコットは満足したようだった。
「もっとも、やつは、軍のホームページを読んで何をするかと思ったら、あなたに対する怨恨よりも、今の妻の元の夫に興味を持っていたようだったがね。
つまらない下々の者達の、薄汚い話だ。やきもちさ。くだらない。
くだらないといえば、軍のしたこともくだらないな。あなたを使って、私を引っ掛けようとしたらしいが、そんな手に誰が乗るものか。ばかばかしい。いまさら、あなたに何の関心があるものか」
スコットのプライドには、ますます磨きがかかったようだった。
「ジャニスが暗殺された後、卵の回収をさせたのは私だ。ジャニスのグラクイ達はジャニスの言うことしか聞かなかったけれど、そのジャニスは私を信用して、私の言うことなら聞いたからね」
スコットは得意げだった。癖のある笑い方で、口を少しゆがめるようにして、白い歯を見せて笑っていた。
「卵を集めるように、彼に進言したのだ。
私には、新しい卵が必要だった。
ジャニスには、卵を集めておけば、いつでもグラクイの補充が利くから、孵さないで保存しておいたほうがよいと言ってやったのさ。
むろん、私が使うつもりだった。
なにもかも思い通りにいったよ。
ジャニスをちょうどいい頃に殺してくれてありがとう。そろそろ邪魔になってきた頃だった。あなたが殺ったそうだね。意外だったよ。そんな女だとは、思っていなかった。いかすじゃないか」
スコットは、私を見た。そして、にやりと笑った。
「ジャニスのグラクイは、私には邪魔だった。彼らは私に忠誠を誓っているわけではなかった。
ジャニスを殺してくれた上、君たち軍は必死になって、ジャニスのグラクイを始末してくれた。ご苦労だった。手間が省けたよ。ほとんど全滅した。残ったのは、卵と、私に忠実なグラクイだけだった」
私はグラクイに同情心を全く持たなかったが、スコットのこの発言を聞いて、グラクイが気の毒になった。
「そして、もう、軍になにかしてもらうことは何も残っていなかった。危険な因子を取り除くほかは」
彼は、目を光らせてにじり寄ってきた。
「私はあなたが一人で行動する日を待っていた。ずいぶん待った。ローレンス博士の件でしばらく中央に行っていた期間以外は、ずっと待っていた。柄にもないことだけれど。それが今日だったのだ」
突然、彼は声を立てて笑った。
「今頃、あの基地の連中は、どうしているのだろうな。仲間意識の強い軍のことだ。あなたを必死で捜索しているかもしれない。
だが、無駄だ。一番先に、あなたのGPSを、破壊するように命令したからな。
GPSがなければ、あなたの位置情報は誰にも知られることがない。
グラクイの移動先を識別することはできるだろうが、六十匹もいるうちの、どのグラクイがあなたを連れ去ったのか、彼らにはわかるまい。グラクイには、全員が別々の場所に移動するよう命令しておいた。
六十箇所全部を探せば、わかるだろうが、時間がかかりすぎる。
それに、もし運よく早い時期にこのあたりを探すとしても、ここは地下だ。入り口は、私以外、絶対にわからない。カモフラージュされている。
ここは、ジャニスと呼ばれた男が使っていた場所のうちのひとつなのだ。私が改造した」
なるほど。この部屋の装飾の妙なこだわりの意味がわかった。スコットらしい趣味だった。
「この地下の住まいは、なかなかしゃれていてね。無線は届かないし、それなりの防犯もされている。軍は、この地下の住まいのことは絶対に知らないだろう」
私も、こんな施設があるだなんて全く知らなかった。荒野を何回もうろついていたのに、人造らしいものを見かけたことはなかった。
「あなたの軍服と靴は、失礼だが、拝借して、ジャニスのもうひとつの拠点のほうに置いてきた。
たぶん、軍はこちらではなく、向こうの方に引っかかるだろう。あちらの構造は複雑だ。五階建てくらいには相当するだろう。あそこ全体を捜索するには、相当時間がかかる。私がしたいことをする時間は充分あるわけだ」
額に汗がにじんだ。無線機は、上着にいれたままだ。GPSは壊された。多分、動いていないだろう。だが、予備の無線機を持って出たことをジェレミーは知っている。必ず、無線機を探すだろう。
つまり、軍は、必ず間違った場所にたどり着くわけだ。ジャニスの五階建ての施設とは、間違いなく、「ジャニスの城」を指すのだろう。あそこは広い。ジェレミーは、私の死体すら見つけ出せないかもしれなかった。絶望だ。倒れたとき、万にひとつの希望をつないだ無線機が、逆に私の唯一残った希望を打ち砕くとは。
スコットは二十センチの距離にまで近づいていた。
彼の光り過ぎる黒い目、ハンサムと言う程ではないが、比較的整った目鼻、見慣れた顔があった。
本当にひどく癖のある人間の顔だった。若かった頃と違い、それはよくわかった。私は壁まで後じさりした。
「ローレンス博士は、もうこの世にいない。グラクイを研究する者は、必ず殺される運命なのだ。後はあなたと軍だけ。
今、私が欲しいのは時間だ。あなたという研究者を失えば、軍は信用できる生物学の助言者を失い、この問題は停滞するだろう。その間に私は、色々なことができる。
まず、議会に働きかけて、グラクイの保護法案を通すのだ。
グラクイは本当は恐るべき動物だ。私には、絶対服従なのだ。だが、誰もそんなことは知らない。あなたとローレンス博士以外はね。そのグラクイに指一本させないようにして見せる。あなたと軍が指をくわえて見ているしかないようにして見せる。
そして、その間にグラクイを使っていろいろなことをしてみせる。すっかり計画は出来ているんだ。お金も稼げる。だが、もちろん、欲しい物はお金じゃない」
スコットは楽しそうで、目が異様にきらきらしていた。彼の行動についての私たちの読みは正しかったようだ。だが、もう遅いかもしれない。
「権力さ。グラクイは、地上を明るくしたり、暗くしたりいろいろなことが出来る。あなたは知らないだろうが、グラクイの呼気には、空を暗くする力があるのだ。そして、それは彼らが土を食べているからなのだ」
私ははっとした。これから死ぬからこそしゃべったのだろうか。
グラクイの呼気の秘密。それは私たちがずっと追及して、全然回答が得られなかった問題だった。
食べ物。土……これが、答えなのだろうか……
スコットは、私の反応に気がつかなかったようだった。自分の話に夢中になっていたのだ。
「人間と同じものを食べるグラクイは普通の循環しかしない。そんな呼気は吐かない。いくら研究してもわからないことだ。飼育するときに土を食わせるバカはいない。でも、土を食べた彼らは普通じゃない。悪魔のような空気を吐く。その悪魔の力を私が全て掌握するのだ。世界が私にひれ伏すだろう。そう、アイリス、あなたもだ」
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