山姥(やまんば)

野松 彦秋

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第3章 相談と対策、そして宿泊研修

4.前日の買い物

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宿泊研修の出発日の前日、加賀谷先生が急用で来れなかったが、福岡先生は代わりに来てくれた。

『福岡先生、加賀谷先生の急用って、何何ですか?』

『・・・ウ~ン、何か、宿泊研修の為とか、言ってたけど、私にも良く分からない・・』

『もしかして、私と買い物に行くのが怖かった・・フフッ』

『加賀谷先生が、福岡先生と買い物に行くのが怖い・・、嬉しいのの、間違いじゃないの?』

『さぁて、それはどうかしら、先生、これでも結構怖いのよ・・』

福岡先生は、そう言いながら、自分で楽しそうに笑っていた。

『あ、それはみんな知ってます!』とナオケンが素直に反応する。

(ああ、言わなくていい事を・・)

哲也がそう思うと、案の定、福岡先生は、かぶっていた帽子を片手に取り、ナオケンの頭に振り落とした。

『痛てぇ!』

痛くなさそうに見えるナオケンが、大げさに声をあげる。

どうやら、其処迄そこまでがナオケンの悪ふざけみたいであった。

加賀谷先生を除く哲也達4人は、午前中に一度学校に集まり、宿題にしていた、自分なりの山姥に対する対抗策を話し合っていた。

それをふまえた上で、買い物に来て、いま丁度買い物が終わった時であった。

4人が最終的に必要だと判断したのは、5つのモノだった。

1)香水、痴漢撃退用スプレー ※鼻が利く山姥をかく乱する為 福岡先生の案

2)トランシーバー ※ナオケンと哲也が各自セットを持っており、あわせて4個 ナオケン案

3)お守りと魔除けの護符 ※哲也からカッチに連絡済み 当日、先生の分も持ってくる いずみ案

4)100円ライターとライター用オイル ※絵巻物を焼く為   全員一致の案

福岡先生の車に哲也達3人が乗る。

一番、最後に乗ったのは、運転する福岡先生だった。

福岡先生は、車のエンジンをかけると、3人の状況を確認する。

『皆、乗ってる?、シートベルト閉めてる?』

『出発するわよ?』

『ハイ、大丈夫です!』

3人を代表して、いずみが答えると、4人が乗る車は出発した。

『バラバラになった時の為の、トランシーバーが佐上君、犬崎君が持ってたから、思ったより、必要なモノって少なかったわよね』

『まあ、サイフを持つ私にしては、助かったけど』

『お金があまりかからなかったから、先生が皆にアイスでも食べさせてあげよう!』

其処そこのガストで良い?』

後ろに乗った3人は、申し訳なさそうに頷いた。

フロントミラーで、その様子を確認した福岡先生は微かにほほ笑んだ。

『明日、宿泊研修の出発で朝早いから、家に帰ったら直ぐに明日の準備して、今日は早く寝るのよ』

『は~い』と、3人は元気よく返事をした。

教師である二人が、4人に協力してくれた事で、哲也達の対策は思った様に進んだ。

だが、二人が協力した事で自然と3人の緊張感と恐怖心は薄れていた。

良くも悪くもである。

哲也は、出発の日の前日、心の何処かでワクワクしていた。

それは、遠足の前、ワクワクしながらオヤツを買う時の気持ちに似ていた。

しかし、これから迎える宿泊研修は唯の遠足の様な行事では無かった。

例えて言えば、死の遠足である。

この時の3人は、すっかりその事を、忘れてかけていた。

それだけ、幸せだったのかもしれない。

そして、カッチを含め6名は、宿泊研修の出発の日を迎え、山姥が目的地に出発したのである。

山姥が4人を手ぐすねを引いてまっているとも知らずに・・。

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