αと嘘をついたΩ

赤井ちひろ

文字の大きさ
上 下
87 / 88
最終章 永遠

86文月 共に見る空の果て③

しおりを挟む
「柊、じゃぁ……もう少しだけ、子宮の手前まで、ねぇそれならいいだろぉ」
「美月……」
 懇願する可愛い恋人の上目遣いを我慢できる男が、この世界の一体どこにいるというのだろう。
「泣いても知らねぇぞ」
「柊、エッチの時、口悪いんだね」
「うっせぇ。黙って脚開いてろ」
 威嚇したアルファのフェロモンに、紫苑の穴が反応し、どろどろに流れ出すアヌスの粘液に、えげつないほどの大きなペニスは、ニチャニチャと音をさせながら埋まっていった。
 普通なら裂けてしまうのではという程の質量だったが、ヒートのオメガの穴はそれをどんどん飲み込み、離さないほどに吸い付いた。それこそがオメガであったし、紫苑の言うような出来損ないのオメガなんかそこには居なかった。
 涎と涙でぐちょぐちょの紫苑の顔は、いやらしいほどに神々しく、神無月は自身を世界で一番幸せな男だと思っていた。
「ん、んん、んぁ――もう逝きたくない」
 掠れるほどに叫び続ける紫苑の喉が、擦られるアヌスに反応するように、幾度となく上下に痙攣した。
 神無月のペニスは休むことを知らず、かわいい恋人の穴の中を擦り続けた。紫苑のペニスからは何度も白濁としたものが飛び出し、半分意識をもっていかれそうになりながら、懸命に腰を振り続けた。
「無意識に腰振るとか、すっげぇエロくて可愛いよ。ほら、もっと逝って」
 煽るだけ煽り、飛びそうになる紫苑を覚醒させながら、尻の穴の中に精子を注ぎ込んだ。
 入りきらない精液が、ペニスの隙間から漏れ、部屋中に神無月の臭いが充満し、それに反応するようにヒートの香りは強くなっていった。
「すげぇ精液くせぇのに、お前のフェロモンのがもっと強烈な匂いだよ」
「すげぇ甘い。百合って言ったっけ?……この匂い嗅いだだけでいっちまいそう……」
「……」
「おい美月」
「……」
「飛んだのかよ」
 意識のとんだ紫苑のアヌスを擦りながら、休憩する様にサイドチェストに手をかけた。
 意識のない恋人に舌を絡めるようにキスをし、口から引いた糸が、神無月の口から紫苑の腹に滴った。
 おいしそうな獲物を見つけた獣のように、上唇をべろりと舐めた。
「起こしてやるよ」
 ペニスをつかむと、尿道口にカテーテルをあてがい、そのまま一気にぶすぶすと差し込んだ。
 ビクンと体が反応し、大きく目が見開かれた。
「んはぁ」
 まだペニスの先端から20㎝は出ている細めのそれを見て、紫苑は手を伸ばした。
「おっと、なにするの?」
「痛い、痛い、抜いて」
「お願いしなきゃ駄目だろう」
 言葉の冷たさとは裏腹に、優しく見下ろす神無月の顔に安心したように、抜いてください……と紫苑は小さな声で言った。
「そんな安心した顔をされると、心が痛むんだが」
 片手で紫苑のペニスをむんずと掴み「聞こえない」と呟くと、そのまま直径3ミリほどの細い管を全て差し込んだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 部屋に反響する絶叫に、神無月は、「まるで最高のクラシックのBGMの様だ」とうっとりしながら紫苑を見下ろした。
「柊……」
「俺の愛し方だけ……感じて。俺のオメガだ、俺だけの。痛みも快感も、白城さんがお前に与えた全てを、俺は上書きしたい。二度と二度と誰にもやらない。あの人が触っただろう所全て、俺のペニスで指で唇で、俺の全てで、お願い。愛しているんだ……美月」
 耳元で繰り返し囁く、懺悔のような神無月の言葉に、紫苑は黙って頭を撫でた。
「ごめん、ごめん美月」
 顔の横にベッドに手をつくように伸びていた神無月の腕には、自分で嚙んだであろう無数の歯形が鮮血の薔薇の様に散らばっていた。
「大丈夫、柊の好きにして。貴方のすることなら、僕は何でも受け入れる事が出来るから」
 血の滲む歯型に優しくキスをし、そう言った紫苑の指は、自身のプロテクターをカチリと外した。
「嚙んで――」
 露わになった首筋に、紫苑の口から紡がれた三文字……。
「み……つ……」
 神無月の目からは大粒の涙がとめどなく溢れ、呼吸さえ詰まるような緊張と興奮に、ただひたすら空唾を飲み、歯を立て、そしてゆっくりと項に歯を埋めた。
「俺のオメガ……」




 
 次回 最終話 エピローグ
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】両性を持つ魔性の王が唯一手に入れられないのは、千年族の男の心

たかつじ楓
BL
【美形の王×異種族の青年の、主従・寿命差・執着愛】ハーディス王国の王ナギリは、両性を持ち、魔性の銀の瞳と中性的な美貌で人々を魅了し、大勢の側室を囲っている王であった。 幼い頃、家臣から謀反を起こされ命の危機にさらされた時、救ってくれた「千年族」。その名も”青銅の蝋燭立て”という名の黒髪の男に十年ぶりに再会する。 人間の十分の一の速さでゆっくりと心臓が鼓動するため、十倍長生きをする千年族。感情表現はほとんどなく、動きや言葉が緩慢で、不思議な雰囲気を纏っている。 彼から剣を学び、傍にいるうちに、幼いナギリは次第に彼に惹かれていき、城が再建し自分が王になった時に傍にいてくれと頼む。 しかし、それを断り青銅の蝋燭立ては去って行ってしまった。 命の恩人である彼と久々に過ごし、生まれて初めて心からの恋をするが―――。 一世一代の告白にも、王の想いには応えられないと、去っていってしまう青銅の蝋燭立て。 拒絶された悲しさに打ちひしがれるが、愛しの彼の本心を知った時、王の取る行動とは……。 王国を守り、子孫を残さねばならない王としての使命と、種族の違う彼への恋心に揺れる、両性具有の魔性の王×ミステリアスな異種族の青年のせつない恋愛ファンタジー。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

記憶の欠片

藍白
BL
囚われたまま生きている。記憶の欠片が、夢か過去かわからない思いを運んでくるから、囚われてしまう。そんな啓介は、運命の番に出会う。 過去に縛られた自分を直視したくなくて目を背ける啓介だが、宗弥の想いが伝わるとき、忘れたい記憶の欠片が消えてく。希望が込められた記憶の欠片が生まれるのだから。 輪廻転生。オメガバース。 フジョッシーさん、夏の絵師様アンソロに書いたお話です。 kindleに掲載していた短編になります。今まで掲載していた本文は削除し、kindleに掲載していたものを掲載し直しました。 残酷・暴力・オメガバース描写あります。苦手な方は注意して下さい。 フジョさんの、夏の絵師さんアンソロで書いたお話です。 表紙は 紅さん@xdkzw48

ハッピーエンド

藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。 レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。 ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。 それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。 ※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。

僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル
BL
(2024.6.19 完結) 両親と離れ一人孤独だった慶太。 容姿もよく社交的で常に人気者だった玲人。 高校で出会った彼等は惹かれあう。 「君と出会えて良かった。」「…そんなわけねぇだろ。」 甘くて苦い、辛く苦しくそれでも幸せだと。 そんな恋物語。 浮気×健気。2人にとっての『ハッピーエンド』を目指してます。 *1ページ当たりの文字数少なめですが毎日更新を心がけています。

【完結】人形と皇子

かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。 戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。   性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。 第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。

これがおれの運命なら

やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。 ※オメガバース。Ωに厳しめの世界。 ※性的表現あり。

処理中です...