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42 シカゴに向かって② 桜華あんずVS南條さくら

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【試験二日目前日】

 課題
 
 ダンス
 演目当日発表
 見本に講師1人
 テスト人数1回 10人

 これが昨日廊下に張り出されていた内容。

 予科生も本科生も今回に至っては課題はシカゴだと思っていた。
 夏休み返上でシカゴをⅮⅤⅮで見まくり、バレエ教室で叩き込まれた生徒もいた。

 各言うさくらもその1人だ。
「うわぁ、心臓が喉にあるみたいに苦しいし……
 あと、喉が熱いよね」

「喉が熱いって何?」
 すみれがさくらに声をかけた。
「びっくりした―。そっと立たないでよ」
「声かけたよ。なんか集中していたから」

「窓の外を見てたんだ……」
「外を?」
 さくらの視線を追うと、綺麗な緑の羽根の鳥が木の枝にとまっていた。
 1本の枝に止まる沢山の鳥たちは、みな一直線に並び同じ方を向いていた。

「かっこよくない?鳥のラインダンス」
 つい吹いてしまった。
「ラインダンス?」
「そうそう、私は身長が高いから右側かな―。その横はサツキ?」
 廊下を誰かが歩く音がする。

「そこ!ここは廊下よ?」
 ヤバいっっ
 本科生、しかも委員だ……成績トップ3に入るような面々がぎろっとにらんでる。
「申し訳ございません」
 すみれもさくらも深々と頭を下げ、申し訳なさ全面だ。
「何をしていたの?」
 本科生トップの下條 梨花さんが優しい声をかけてくれた。
「ちょっと、梨花、甘やかさないで」
「まぁまぁ、何を見ていたの?答えは簡潔に」
「鳥です」
 さくらは言った。
「鳥?なぜ?」
「ラインダンスの様に見えて綺麗だったからです」
 あはははははは。
「ちょっと梨花!」
「廊下ではお話は禁止です。次回はないですよ」
 私達は瞬間的に体の向きを変え口を閉じ謝罪の角度ぴったりに体を曲げた。
「返事は?」
「 ・はい」
「テンポが遅い!」
「ハイ」
「よろしい、行きなさい」
「あ、はい」
 つい素が出た。
「お礼でしょ?」
 しまった――――。
「早く!」
「ありがとうございました!」
 

 
 試験前に本科生のお呼び出しも、お小言も、謹慎で試験不参加も嫌だから。

 本科生がそのまま過ぎ去るのを待った。

 音楽学校の規則……
 謹慎中は試験に出れない。
 ここで謹慎食らったら、桜華と戦わずして不戦敗。
 最低な二日目になるところだった。

 急いでバレエ教室に移動し明日の本番前の最後のレッスンだ。

 私はバレエは得意。
 今日の練習はカルメンから【ビゼー】とエチュード【ツェルニー】だ。
 練習様にカウントやプレパレーションが取りやすいものがメインなのであくまで明日に向かって変な癖を残すなと言いたいんだろう。

 明日はダンス……。
 自分のことは自分が一番良く分かっている。

 ダンスのキレやテクニックじゃ、まだまだ桜華あんずの足元にも及ばない。
 わかってる。
 それならば、技術じゃなく雰囲気、それも圧倒的な何かで…………。

 今の私に出来る事!
 私の長所は諦めの悪い点だ。

「ほら、やるぞ」
 先生が音楽をかける。
「アン、ドゥ、トロヮ」
 頭の中で回転灯が回った。脚だ、跳ねろ、伸びろ、つかめ!表情だ!口角をあげろ!

 
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