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34 初日の洗礼

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 静まり返る教室。

「早く!」
 廊下にでると本科生が何人もたっていた。
「申し訳ございませんでした!」
「あなたねー反省してないわよね」
「反省してます!」
「その目は反省してないわよ」
「反省してます!もういいですか?」
 何しているの?
 先生だ。
「南條さんに規律を教えていました!」
「次試験なんだからそこまでにしなさいな」

 小高先生は笑いながら言うと、南條に言った。
「日舞は首席だな。次の授業、田原坂をやるんだ!お前出来るか?」

「はい!出来ます」
「では俺と群舞をしょう。田原坂では初の試みだ」


「次の予科生の演目の1つに田原坂がある」
「田原坂?」
 皆はキョロキョロあたりを見渡し、私に視線を集めると指をくいって動かした。
 やるの?という意味か。

 これに着替えて、と先生に渡された着物に袖をとおすと、気分が引き締まる。
 田原坂
 熊本の民謡だ。
 西南戦争で亡くなられた九州男児を偲んで作られた楽曲だ。
 私はいつも踊るときは男舞いを踊る。
 傘をかぶり群舞にするやり方もあるが、田原坂は刀を手に踊るのが凄く綺麗できちっときまる。

 背中が丸まれば綺麗に見えないし、動きがあまり上下に揺れてもかっこわるい。

 九州男児を思い浮かべるなら、踊る私も九州男児でいきたいものだ。

「音楽かけるぞ!南條いいか?」

「はい!」 

 私と先生は背中合わせの体制をとり、お互い唄にあわせ、一歩進めた!

「雨は降る降る人馬はぬれる
 こすにこされぬ田原坂
 右手めてに血刀左手ゆんでに手綱
 馬上ゆたかな美少年

 草をしとねに夢やいずこ
 明けのみ空に日の御旗
 田原坂なら昔が恋し
 男同士の夢の跡
 …………………………」


 皆は南條に釘付けだ。
「うまいとかのレベルじゃない……。まさに圧巻。そんな印象だった」
 今回の発表会は予科生は初めての経験だ。
 合同部屋でやった日舞は本科生も見ることになり、田原坂が得意な先生が生徒と対で田原坂を、舞う。

 まさに奇跡の瞬間だった。



 □□□


「このドヘタ!南條何度言えばわかる!キレがないんだよ!キレが」
 初回からどやされまくったダンスが終わる頃にはまさに疲弊しまくっていた。

「あはははははは」
 日舞の小高先生は俺のが上手いな!と笑っていった。

「田原坂、踊るんだって?南條」
 職員室で声をかけられた小高先生が答えた。
「圧巻だよ。俺が本気で舞える」
 

 それを聞いた島津先生は
「わおっ、ならダンスもやってもらおうか!こっそりレッスンを組み換えた」

 
 
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