上 下
26 / 44

26 常勝相模学園②

しおりを挟む

 
八神やがみさくらしらない?」
 零斗れいとは辺りを見渡すもさくらが居ないのが気になり、さくら番の八神やがみに声をかけた。
「あー、マネと一緒にどっか行ったよ」
 適当な返事しやがって、こっちはさくらに面会者が来てるからさがしてんだっつーの!
「さっくらー」
 零斗れいとは綺麗な顔に似合わない野太い声でさくらを探す。
「面会って誰よ」
 あそこのめちゃくちゃ美人だと、零斗れいとはいうと、さすがDKだ。
 美人に弱いお年頃。つい練習もそこそこに人だかりが出来た。

「すいません、わざわざこんな所まで来ていただいて、今うちのマネが連れ出してしまったらしく、もう少しお待ちいただけますか?」
 さすが部長だけある。
 川越かわごえの物腰丁寧なその口調に、その美人はにっこり笑い、
「待ってます。ありがとう」
 と言った。
「えっ声少し……低くね?」
 首をかしげる彼女にやべぇと思って
「あっ、すいません。低い女性もいるのに、セクハラではないですから!」
 クスクス笑う足の綺麗な彼女はスレンダーで、モデルみたいにスラッとしてる。
「ねーえ?ついでに聞いても良いかしら……」
 もう何でも聞いて下さい!
 奴なんで」
 エッチなDKに普通の会話をありがとう!
「さくらちゃん、20キロ目標なんです」
「ダイエットですか?それは死んじゃうって!やばいやつっすよ」

「いえいえランニング」
 あー、それならと
「すでにクリアしてますよ。あいつ昔から、あー幼馴染なんですけど、やると決めたらやる奴なんで」
 日向ひゅうがが割って入ってきた。
「だから身長無いのに、タカラジェンヌ希望者だって言った時、なんて言って良いかわからなかった」
「なんて言ったの?」
 謎の美人は聞いた。
 爽やかな風が吹き、美人のスカートをフワッとめくる。
 慌てて手で抑えてうつむいた姿が、滅茶苦茶可愛くて、年上なのについ息子が反応しそうだった。
「んー、なんも言ってねっす。だって伸びるかもしんないし、努力はしとかないと身長伸びてからなんて甘いこと言ってたら、たぶん間に合わないから……」

 
零斗れいとは言った。
「俺たち皆、夢は頑張ればチャンスはあると思ってんすよ。勿論皆、努力するわけだから頑張ったからって皆が甲子園に行けるわけじゃない。でもがんばれなければ……その切符すらチャンスはなくないですか?」
 しっかりした子たちだ。謎の美人は思った。
「あんた達みたいなのがついてんなら、心配はいらないか」
 
「あなたは?さくらの何ですか?」
「教師だよ。バレエの担当。あいつここんとこ一気に身長伸びてる。娘役なら今年……おそらく受かる!でも男役に拘るならちょっと厳しい。ただまだ来年もあるから、あいつがどう考えてるのかなと思って」
「バレエの先生?」
「うん、そうだよ?なぜ?」
「なら聞いていいすか?」
 零斗れいとはベンチの横に腰かけて手を広げた。
「バレエってのは怠けて練習休んだら、駄目にならないんすか?」
 まっすぐな目をした男子だ。
 常勝の重みに負けじと頑張る高校球児のなかでも彼はエースNo.だった。
 背負っているものも半端ない重圧だったろう。
「野球は?」
 質問に質問で返すのかよ!と嫌そうな顔をしたが、そこは運動部員、爽やかさが売りなだけはある。
 すぐにニッコリと微笑み、しっかりした口調で言いきった。
「駄目になりますよ」

 
「なら一緒よ。本気の物は皆そうよね、さくらに言っといて」
「はい?」
「娘役じゃなく男役に拘れ!ってさ」

 先生はベンチから立ち上がるとクルリと身を翻し、敬礼していった。
「頼むな!君たち!」
 野太い声にいかにも男らしい目付きに部員は目を丸くしたが、部長が敬礼したのを筆頭に、皆の敬礼がキマル!
「任せて下さい!」


 それから30分後マネと帰ってきたさくらは汗がびっしょりで、なんかしたんだとわかると零斗れいとは美人の伝言を伝えた。
「美人?私がここにいるって知ってる美人ってだれだろつ……」
「バレエ教師って言ってたぞ!今の身長じゃ男役は無理かもしれねーけど、拘れって言ってたぞ。すげー野太い声のスレンダー美人だ!」
 と川越かわごえがいうと……さくらは嬉しそうに満面の笑顔でいった。

「頑張るよ!雨情うじょう先生!」

 くるっと振り返り、まるで男役の様に斜めに立ち、右手を大きく斜めにあげて、言った。

 
「雨情摩利、鬼のバレエ教師、あれでも立派な男だよ!」

 さくらが低く響くいい声で、爆弾を投下すると、皆から驚愕の声が上がりその場で失恋決定したものもでた。
「え――――――――――――?うっそだ――」

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

NTRするなら、お姉ちゃんより私の方がいいですよ、先輩?

和泉鷹央
青春
 授業のサボリ癖がついてしまった風見抱介は高校二年生。  新学期早々、一年から通っている図書室でさぼっていたら可愛い一年生が話しかけてきた。 「NTRゲームしません?」 「はあ?」 「うち、知ってるんですよ。先輩がお姉ちゃんをNTRされ……」 「わわわわっーお前、何言ってんだよ!」  言い出した相手は、槍塚牧那。  抱介の元カノ、槍塚季美の妹だった。 「お姉ちゃんをNTRし返しませんか?」  などと、牧那はとんでもないことを言い出し抱介を脅しにかかる。 「やらなきゃ、過去をバラすってことですか? なんて奴だよ……!」 「大丈夫です、私が姉ちゃんの彼氏を誘惑するので」 「え? 意味わかんねー」 「そのうち分かりますよ。じゃあ、参加決定で!」  脅されて引き受けたら、それはNTRをどちらかが先にやり遂げるか、ということで。  季美を今の彼氏から抱介がNTRし返す。  季美の今の彼氏を……妹がNTRする。    そんな提案だった。  てっきり姉の彼氏が好きなのかと思ったら、そうじゃなかった。  牧那は重度のシスコンで、さらに中古品が大好きな少女だったのだ。  牧那の姉、槍塚季美は昨年の夏に中古品へとなってしまっていた。 「好きなんですよ、中古。誰かのお古を奪うの。でもうちは新品ですけどね?」  姉を中古品と言いながら自分のモノにしたいと願う牧那は、まだ季美のことを忘れられない抱介を背徳の淵へと引きずり込んでいく。 「新品の妹も、欲しくないですか、セ・ン・パ・イ?」  勝利者には妹の愛も付いてくるよ、と牧那はそっとささやいた。  他の投稿サイトでも掲載しています。

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち
青春
同じ学年。 同じ年齢。 なのに、俺と親友で、なんでこんなによって来る人が違うんだ?! 俺、高橋敦志(たかはしあつし)は、高校で出会った親友・山内裕太(やまうちゆうた)と学校でもプライベートでも一緒に過ごしている。 のに、彼は、モテまくりで、机に集まるのは、成績優秀の美男美女。 対して、俺は、バカのフツメンかブサメンしか男女共に集まってこない! そして、友情を更に作る可愛い系男子・三石遼太郎(みいしりょうたろう)と、3人で共に、友情とは、青春とは、何なのかを時にぶつかりながら探す、時にほっこり、時に熱い友情青春物語。           ※※※ 驟雨(@Rainshower0705)さんが、表紙、挿絵を描いてくれました。 「ソウルエクスキューター」という漫画をアルファポリスで描いてらっしゃるので是非一度ご覧ください!           ※※※ ノベルアップ+様でも投稿しております。

[1分読書]彼女を寝取られたので仕返しします・・・

無責任
青春
僕は武田信長。高校2年生だ。 僕には、中学1年生の時から付き合っている彼女が・・・。 隣の小学校だった上杉愛美だ。 部活中、軽い熱中症で倒れてしまった。 その時、助けてくれたのが愛美だった。 その後、夏休みに愛美から告白されて、彼氏彼女の関係に・・・。 それから、5年。 僕と愛美は、愛し合っていると思っていた。 今日、この状況を見るまでは・・・。 その愛美が、他の男と、大人の街に・・・。 そして、一時休憩の派手なホテルに入って行った。 僕はどうすれば・・・。 この作品の一部に、法令違反の部分がありますが、法令違反を推奨するものではありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

入社した会社でぼくがあたしになる話

青春
父の残した借金返済のためがむしゃらに就活をした結果入社した会社で主人公[山名ユウ]が徐々に変わっていく物語

処理中です...