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序章・見えないエール
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「君面接の子?」
「はい。子なんて年じゃないですけど……三渕 葵です」
「時間がないからサクサク行こっか、私は川崎です。今回の面接官だよ。決定権は私が握っている」
窓際からこちらに向かって歩いてくる男性は、40は超えているのかと思うような年格好でスーツを着るための筋肉がしっかりついた中年男性だった。グレーのスーツに焦げ茶色のウィングチップを履きこなし、朝から隙がない。
小さな時から少し年の離れた男の人が好きで、父親の愛情に飢えている自覚のある葵は、掛け値なしにファザコンだ。
アンニュイな色気にゴクリと喉を鳴らした。
ああ、あの人もこんないで立ちだったのだろうか。
声しか覚えていない。逆に言えば、声だけなら何百回と聞いた。
妄想が頭を支配した。
「聞いてるかい」
やばっっ。
「はい。聞いてます。宜しくお願いいたします」
僕はペコリと頭を下げた。
「まずうちはエレベーターホールが広くてね。暖房も完備されているから全裸でも平気」
「はあ……全裸……」
僕は理解が追い付かず何度も頭で反芻した。
「そう、実際は勿論全裸なんかじゃなく下着一枚だけどね、マネキンの仕事はこのエレベーターホールでやって貰うよ。全ての従業員が目にするから、ただし来客用のエレベーターホールは別にあるから、あくまでも社内用のコンペの下着マネキンだ」
目の前にボクサーパンツ、ビキニ、ジャックストラップ、ソング、Gストリングと様々な下着が置かれていた。中にはふんどしなんかもあった。
そうか、男物って事か。
「これを着て僕が立つんですか?」
僕は一番まともなボクサーパンツを手にして川崎さんに声をかけた。
「そうだよ。着るものはコンペに合わせたものだから、ちょっと過激な物もあるけれど、君には選択権はない。まずは脱いで貰おうか」
「え……?いやちょっと待って、ここで全裸とか、無理だから……更衣室とかないんですか?」
僕は2歩3歩と後退り、そのままドンと何かにぶつかった。
あわてて後ろを見ると、偉く体格のいい男性が背後に立っていた。ベリーショートの茶髪にメガネが色っぽい。
「コンペ用のランジェリー持ってきたんすけど、マネキンがやめたってまじっすか?」
なんだ、見た目よりチャラいのか?
「あー、本当だよ新谷君。いつもの薫のちょっかいで雇ってばっかの子がやめてしまったんだよ」
「この際薫にマネキンさせりゃ良いんすよ。どうせ誰も続かねーんだから……俺呼んでくるっす。徹夜組だからまだいるっすよ」
「あー新谷君待って、この彼マネキン面接なんだよ」
新谷と呼ばれてる茶髪のチャラ男は、ちらりと僕をみると鼻で笑い下半身をむんずと掴んできた。
「何するんだ……放してよ」
ゲラゲラ笑うと川崎さんに向かって言った。
「チンコ触られたくらいでこんな動揺して、マネキンなんか出来ないって、どうせ時給に釣られてきたんだろ?」
馬鹿にしたまま部屋を出ていこうとしたあいつに、僕はつい啖呵を切ってしまった。
「マネキン位できるよ。小さいからってバカにしないで」
「基本的にはマネキンにおさわりは無しだから、たまにやんちゃな奴がいるくらいでね。ならまだ面接は続けるかい?」
川崎さんは合否書類を僕に見せ、面接の意思を確認してきた。
一気にシャツも下着も脱ぎ捨てた。
「スリーサイズ測って下さい」
「いい子だ、ついでにチンコのサイズもはかろうか。勃起時もね」
「はぁ――――――?」
あははははははは。新谷さんは大声をあげて笑って言った。
「冗談冗談」
「はい。子なんて年じゃないですけど……三渕 葵です」
「時間がないからサクサク行こっか、私は川崎です。今回の面接官だよ。決定権は私が握っている」
窓際からこちらに向かって歩いてくる男性は、40は超えているのかと思うような年格好でスーツを着るための筋肉がしっかりついた中年男性だった。グレーのスーツに焦げ茶色のウィングチップを履きこなし、朝から隙がない。
小さな時から少し年の離れた男の人が好きで、父親の愛情に飢えている自覚のある葵は、掛け値なしにファザコンだ。
アンニュイな色気にゴクリと喉を鳴らした。
ああ、あの人もこんないで立ちだったのだろうか。
声しか覚えていない。逆に言えば、声だけなら何百回と聞いた。
妄想が頭を支配した。
「聞いてるかい」
やばっっ。
「はい。聞いてます。宜しくお願いいたします」
僕はペコリと頭を下げた。
「まずうちはエレベーターホールが広くてね。暖房も完備されているから全裸でも平気」
「はあ……全裸……」
僕は理解が追い付かず何度も頭で反芻した。
「そう、実際は勿論全裸なんかじゃなく下着一枚だけどね、マネキンの仕事はこのエレベーターホールでやって貰うよ。全ての従業員が目にするから、ただし来客用のエレベーターホールは別にあるから、あくまでも社内用のコンペの下着マネキンだ」
目の前にボクサーパンツ、ビキニ、ジャックストラップ、ソング、Gストリングと様々な下着が置かれていた。中にはふんどしなんかもあった。
そうか、男物って事か。
「これを着て僕が立つんですか?」
僕は一番まともなボクサーパンツを手にして川崎さんに声をかけた。
「そうだよ。着るものはコンペに合わせたものだから、ちょっと過激な物もあるけれど、君には選択権はない。まずは脱いで貰おうか」
「え……?いやちょっと待って、ここで全裸とか、無理だから……更衣室とかないんですか?」
僕は2歩3歩と後退り、そのままドンと何かにぶつかった。
あわてて後ろを見ると、偉く体格のいい男性が背後に立っていた。ベリーショートの茶髪にメガネが色っぽい。
「コンペ用のランジェリー持ってきたんすけど、マネキンがやめたってまじっすか?」
なんだ、見た目よりチャラいのか?
「あー、本当だよ新谷君。いつもの薫のちょっかいで雇ってばっかの子がやめてしまったんだよ」
「この際薫にマネキンさせりゃ良いんすよ。どうせ誰も続かねーんだから……俺呼んでくるっす。徹夜組だからまだいるっすよ」
「あー新谷君待って、この彼マネキン面接なんだよ」
新谷と呼ばれてる茶髪のチャラ男は、ちらりと僕をみると鼻で笑い下半身をむんずと掴んできた。
「何するんだ……放してよ」
ゲラゲラ笑うと川崎さんに向かって言った。
「チンコ触られたくらいでこんな動揺して、マネキンなんか出来ないって、どうせ時給に釣られてきたんだろ?」
馬鹿にしたまま部屋を出ていこうとしたあいつに、僕はつい啖呵を切ってしまった。
「マネキン位できるよ。小さいからってバカにしないで」
「基本的にはマネキンにおさわりは無しだから、たまにやんちゃな奴がいるくらいでね。ならまだ面接は続けるかい?」
川崎さんは合否書類を僕に見せ、面接の意思を確認してきた。
一気にシャツも下着も脱ぎ捨てた。
「スリーサイズ測って下さい」
「いい子だ、ついでにチンコのサイズもはかろうか。勃起時もね」
「はぁ――――――?」
あははははははは。新谷さんは大声をあげて笑って言った。
「冗談冗談」
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