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本編
20 今、したい話はコレじゃない! 軌道修正を求む!
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――いやぁ。大変だったな。まさかクラさんとカムロさんが喧嘩になるなんて!
お屋敷の主であるカムロさんを先頭にして、応接間に到着。立派な応接セットのある広々空間。ここなら落ち着いて話が出来ますでしょう! ささ、伯父上殿、お座りくださいませ!
いそいそとクラさんをソファーへ誘導していると、カムロさんが真顔で「私も話を聞きたいです。同席を許してくれますか」なんて言ってきた。俺が出ていくことになりそうだから、気にしてるのかな。
「構わぬ。ハス、お前はどうだ」
「いいですよ。別に聞かれて困る話でもないから」
「そうか」
ってことで、カムロさんも同席して話をすることになった。2人とも……、特にカムロさんは大声で騒いだから喉乾いてるかな。いつもの紅茶と、お茶請けの菓子をちょっと出そう。
「お茶を淹れてきます」
俺が動こうとすると「あっ、私が……」って、なぜかカムロさんが挙動不審になったので「何を言ってるんですか。いつも通り、俺がやりますよ」なんて軽く笑いながら言うと、あからさまにほっとした顔をされた。
さっき冷たい態度をとったのが、そんなにショックだったのかな。早いとこ、美味しい紅茶を出してあげよう。さささっと駆け足で調理場に飛び込んで、ティーメイカーで紅茶を淹れて菓子と一緒に持ってきた。
全部をテーブルに並べ終えたところで、先に座っていたカムロさんが「こっちに座ってください」って俺に手招きしたので、ぽすんと隣に座った。対面にはクラさんがドーンと座っている。部屋の豪華さに負けてないゴージャスさですよ! さすがクラさん!
……それにしても、何かの面談みたいな感じだな。この構図。
「……ハス、お前はディザート殿の屋敷で雇われているのか」
「あ、うん。住み込み家政夫で雇ってもらってるよ」
「ふむ。不満はないか? ディザート殿は気難しい御仁だ。戦後、屋敷を構えた際に雇い入れた使用人を、ひと月足らずで悉く解雇したと聞いている。お前が手を焼いていないか、心配なのだが」
――なんという言われ様でございましょうか。
クラさんまだ喧嘩腰なのか? なんて思ったけど、本気で心配して聞いている様子。
ここに来た当時の、「全員クビにしました」とか、「気に入らなかったんです」とか、つーんとした不機嫌な顔で言っていたカムロさんを思い出す。全員クビにしたのは事実だもんな! 俺、いつクビにされるんだろうって、最初のうちはちょっと緊張していたなぁ。
「そんなことないよ。俺の料理を気に入ってくれてるし、待遇もすごくいいし」
「……ほう、王国筆頭魔術師の胃袋を掴んだか。さすがユリの子だ」
「あはは、父さんに料理を教えてもらってなかったら、こうはいかなかったと思うよ」
……あれ?
ところで今って、職場の面談中だったかな。騎士団とかの話をするつもりだったのに!
うむうむと俺の言葉に頷いて、どこか誇らし気なクラさん。その姿が、子供の勤め先に来た保護者みたいに見えた。いやあの、クラさん? 何しに来たつもりだったの? まさかこれが本命ですか。
――今、したい話はコレじゃない! 軌道修正を求む!
お屋敷の主であるカムロさんを先頭にして、応接間に到着。立派な応接セットのある広々空間。ここなら落ち着いて話が出来ますでしょう! ささ、伯父上殿、お座りくださいませ!
いそいそとクラさんをソファーへ誘導していると、カムロさんが真顔で「私も話を聞きたいです。同席を許してくれますか」なんて言ってきた。俺が出ていくことになりそうだから、気にしてるのかな。
「構わぬ。ハス、お前はどうだ」
「いいですよ。別に聞かれて困る話でもないから」
「そうか」
ってことで、カムロさんも同席して話をすることになった。2人とも……、特にカムロさんは大声で騒いだから喉乾いてるかな。いつもの紅茶と、お茶請けの菓子をちょっと出そう。
「お茶を淹れてきます」
俺が動こうとすると「あっ、私が……」って、なぜかカムロさんが挙動不審になったので「何を言ってるんですか。いつも通り、俺がやりますよ」なんて軽く笑いながら言うと、あからさまにほっとした顔をされた。
さっき冷たい態度をとったのが、そんなにショックだったのかな。早いとこ、美味しい紅茶を出してあげよう。さささっと駆け足で調理場に飛び込んで、ティーメイカーで紅茶を淹れて菓子と一緒に持ってきた。
全部をテーブルに並べ終えたところで、先に座っていたカムロさんが「こっちに座ってください」って俺に手招きしたので、ぽすんと隣に座った。対面にはクラさんがドーンと座っている。部屋の豪華さに負けてないゴージャスさですよ! さすがクラさん!
……それにしても、何かの面談みたいな感じだな。この構図。
「……ハス、お前はディザート殿の屋敷で雇われているのか」
「あ、うん。住み込み家政夫で雇ってもらってるよ」
「ふむ。不満はないか? ディザート殿は気難しい御仁だ。戦後、屋敷を構えた際に雇い入れた使用人を、ひと月足らずで悉く解雇したと聞いている。お前が手を焼いていないか、心配なのだが」
――なんという言われ様でございましょうか。
クラさんまだ喧嘩腰なのか? なんて思ったけど、本気で心配して聞いている様子。
ここに来た当時の、「全員クビにしました」とか、「気に入らなかったんです」とか、つーんとした不機嫌な顔で言っていたカムロさんを思い出す。全員クビにしたのは事実だもんな! 俺、いつクビにされるんだろうって、最初のうちはちょっと緊張していたなぁ。
「そんなことないよ。俺の料理を気に入ってくれてるし、待遇もすごくいいし」
「……ほう、王国筆頭魔術師の胃袋を掴んだか。さすがユリの子だ」
「あはは、父さんに料理を教えてもらってなかったら、こうはいかなかったと思うよ」
……あれ?
ところで今って、職場の面談中だったかな。騎士団とかの話をするつもりだったのに!
うむうむと俺の言葉に頷いて、どこか誇らし気なクラさん。その姿が、子供の勤め先に来た保護者みたいに見えた。いやあの、クラさん? 何しに来たつもりだったの? まさかこれが本命ですか。
――今、したい話はコレじゃない! 軌道修正を求む!
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