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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第四十八幕 黒ずくめと第三ラウンド

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 書斎で気分良くティータイムを楽しむラロスとそれに付き合う形で紅茶を飲むフラン。
 する事が無ければ帰れば良い話だが、そうもいかない。千夜たちの生死の報告を部下から聞かされるまでは帰れないのだ。
(また来るのも面倒だからな)
 まだ千夜たちが死んだわけでもないのに、死んだと仮定して今後の未来を楽しそうに語るラロスを尻目にフランはそんな事を考える。
 そんな時、懐に入れていた通信結晶が光りだす。

「どうやら部下から連絡がきたようだ」
「やっとか、まったく時間を取らせる」
 テーブルに置いた通信結晶に魔力を込めると立体映像が映し出される。
 映し出されたのは目深くフードを被った男。

「それでどうなった?」
「そ、それが……」
「焦らすな。さっさと答えろ」
「……分かりました。冒険者たちは全ての魔物を討伐し現在生き残りがいないか後処理をしている最中です」
「なに!?」
「それは本当か?」
「はい。正直目の前で起こった出来事に自分も驚いています」
「詳しく話せ」
「はい」
 男は千夜たちがいったいどのような方法で敵を倒したのか説明する。
 フランとラロスはその内容に言葉を失う。

「広範囲殲滅魔法だと。そんな魔法一介の冒険者が使えるものではないぞ!」
「し、しかし、村全体に氷の槍が降り注ぐなど、それしか考えられないかと」
「ぬぅ………」
「それで、如何されますか?」
「そんなの決まっている! 今すぐ襲撃して殺せ!」
「宜しいので?」
「誰に者を言っている。私がやれと言っているのだ!」
「こいつの上司は私だ。口出しするな」
「依頼主は私だぞ!」
「部下をみすみす殺されるわけにはいかない」
「お前の組織は腰抜けばかりか! 相手が凄い魔法が使えたとしても上級に位置する広範囲殲滅魔法を使ったんだ。奴らの魔力は既に無いに決まっている!」
「どうされますか?」
「……仕方ないな。依頼主の命令だ。冒険者たちを殺せ」
「はっ!」
 そこで通信が切れる。

「そうやって最初から命令していれば良いんだ。まったく手間を取らせやがって」
「………」
「さて、これで次に進めるな」
 ラロスは安堵したのか残りの紅茶を飲み干す。しかしラロスとフランはしらない。自分たちが手に掛けようとしている存在が姿を変えた鬼であることを。

              ******************************

 後処理のため、各家々を回り中に魔物が居ないか調べていく。
 もともと大半が全壊、もしくは半壊の家を調べるのに苦労はない。そのため始めてから十数分で調べ終わった。

「これで最後だな」
 呟きながら生き残っていたコボルトから刀を抜く。

「そっちも終わったか?」
「ええ、こっちには居なかったわ」
「そうか。全部で4体か」
「結構少なかったわね」
「確かにな。倍は居るかと思っていたが大半が家の外に出ていたようだな」
「お父様、魔物から魔核を取り終えました」
「そうか、ありがとうな」
 そう言って千夜はアイテムボックスにしまう。

「さて、後はこいつらを燃やすだけだな」
「ギルドで買い取って貰わないのですか?」
「それでも構わないが、お金に困っているわけでもないからな」
「なら、いくつか持って帰って貰って良いですか?」
「何に使うんだ?」
「学園の友達と冒険者活動する時の資金にしようかと」
「そうか。なら構わないぞ。自分で倒した分ぐらいならな」
「解りました」
 そう言ってウィルは数体のコボルトとゴブリンの死体を持ってくる。

「ではお願いします」
「ああ、解った」
 アイテムボックスにしまった千夜は残りを一箇所に集めていたエルザ、ミレーネ、クロエの許に向かった。

「もう終わりそうか?」
「はい。ですが、これだけの数は流石に大変です」
「なら俺も手伝おう」
「本当ですか」
「ああ。だがその前に――」
 突如現れた黒ずくめの集団に包囲される。

「こいつらを始末してからだ」
 千夜は再び鬼椿を抜刀する。それに続くかたちでミレーネたちも武器を構える。

「エリー、ウィルを頼んだ」
「ええ、任せて」
 少し離れた場所に居るウィルとエリーゼに声を掛けた千夜は目の前に敵に視線を合わせる。

「全員殺しますか?」
「いや、2、3人は生かしておく、情報を聞き出さないといけないからな」
「解りました」
 双剣を構えるエルザに千夜は返答する。

「それじゃあ、第三ランドの始まりだ!」
 こうして戦闘が始まった。
 接近してくる敵に迎え撃つのではなく自らも接近する。

「シッ!」
 叫んで攻撃してくる盗賊と違い、静かに攻撃してくる黒ずくめの一撃を鬼椿で受け流した千夜は鞘で殴り飛ばす。
 姿は違えど中身はXランク冒険者の実力は伊達ではなく、軽く殴られただけで、木にぶつかり気絶する。

「まずは一人」
 視界の端で確認した千夜は次々襲い掛かってくる敵の攻撃を躱し、鬼椿で斬り殺していく。

「ルーザ、そっちは何人気絶させた」
「一人です」
「解った、ならあと一人はこっちで生け捕りにする」
「解りました」
 余裕のある会話。事実掠り傷すら負うことなく次々と倒していく千夜たち。しかしそれは相手とって憤りを覚えることでしかなかった。

「調子に乗るな!」
「ほぅ、女か。ならお前に決めた」
 短剣の一撃を鬼椿で受け流し体勢を崩したところで顎を殴り気絶させる。

「よし、残りは殺して構わない」
 なんとも物騒な指示にたしてエリーゼたちはただ頷くだけだった。しかしそれはすぐに行動に出た。先ほどまでとは比べ物にならない動きで敵を殺していく。
 結果、たった5分弱の戦闘は千夜たちの圧勝で幕を閉じた。
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