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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第三十七幕 予想外だった人物と不安しかないルイラ村の守護者
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「でも私たちはそんな代官の目論見を潰したのよね」
「まあ、そうなるな」
「それって代官や特に暗霧の十月に目をつけられるんじゃない?」
「だろうな」
「なに、暢気に言ってるのよ!」
「いや、これで良いんだ。偶然とはいえターゲットの顔ぐらい見ておきたいからな」
「そうかもしれないけど。そうなれば行動しにくくなるわよ」
「どうだろうな。都市でも有名になってきた俺たちを暗殺しようとは考え難い、あり得るとしたら依頼中に魔物に襲われたように偽装するぐらいだろう」
「それって……」
「ああ、俺たちに指名依頼がきたら間違いなく暗霧の十月の部下、それもそれなりの手練が襲ってくるだろう」
「でしょうね」
「どうした疲れたのか?」
「いえ、もっと穏便に依頼がこなせると思っただけよ」
「ま、そうそう上手くいく事の方が少ないからな」
他人事のように言う千夜の言葉に再び嘆息する。
「でも、そうなるとアミッツたち大丈夫かしら。また魔物に襲われたりしないわよね」
「可能性的には低いだろうがあり得ない話ではないな。だが魔物の数にも限度があるだろうし、すべて使役できているとは考え難い。だが暗霧の十月の部下を使って魔物に襲わせたようにする可能性はあるかもしれないな」
「そこまでする必要があるの?」
「あるだろうな」
「どうして?」
「代官にとって一番予想外だったのはやはりアミッツだからだ」
「?」
「アミッツがギルドで言っていた事を覚えているか?」
「ギルドで?」
「そうだ。アミッツは助けを請うために代官の許にも行った、と言っていた」
「確かに言っていたわね。話すら聞いて貰えなかったって」
「そうだ。だがそれは当たり前だ。村にゴブリンを差し向けたのが代官張本人なんだからな」
「確かにそうね」
「ボロボロの姿になってやってきた子供の話を聞かなかったとしてもなんの問題もない。冒険者の誰もがその依頼を引き受けなかったらな。もしも誰かが引き受けたとしても間に合うわけがないと考えていたんだろう。だが」
「私たちが引き受けて、見事達成したわね」
「そうだ。俺たちがルーセントに戻れば間違いなく、ボロボロになってまで助けを求めてきた少女の村を見事に救った。と俺たちは賞賛されるだろう。その反面代官はどうだ。そんな少女に会おうともしなかった。と信頼を落とす事になるだろう。ましてや目的まで潰されたとなれば」
「間違いなく激怒するわね」
「だろうな。そこで暗霧の十月の部下に村を襲わせる。そうすれば俺たちの依頼は失敗したと思い込ませる事が少しは出来るかもな」
「最低ね」
「ま、代官にとって一番得なのがルーセントに戻るまでに俺たちも殺す事だろう。そうすれば間に合ったが失敗したと完全に思い込ませる事ができるだろうからな」
「つまり私たちも危ないわけね」
「ああ。だが俺たちよりも一番危ないのは」
「アミッツたちね」
「そうだ。ま、俺の推測が当たっていればの話だがな」
「これまでに外れた事があったかしら?」
「あったと思うが?」
「無いわよ」
「そうだったか?」
自分の事に関して記憶力の無い千夜である。
「でもどうするのこのままだとアミッツたちが」
「ま、正直任せるには心配しかないが仕方が無い。出て来いバンシー」
千夜の口から吐かれた名前にエリーゼたちは眉を潜め、ウィルは少し怯えていた。
「御呼びでしょうか我が君」
「ああ。この先にルイラ村という村がある。その村と村人を絶対に護れ」
「畏まりました我が君。して、その村人たちは――」
「実験台にするなよ」
「解りました……」
少し残念そうだったが千夜無視する。
「その代わり、襲ってくるであろう人間かもしくは魔物は好きにしても良い」
「解りました」
さっきとは打って変わって弾んだ声で返事する。
「それともし人間が襲ってきた場合はなにか情報を引き出せ。特に暗霧の十月に関する情報だ。何か組織のタトゥーなんかがあればもっと良いんだがな。ま、現れたら即座に連絡しろ」
「解りました。実験中にそれとなく調べておきましょう」
「それと村人たちと接触することは禁止する」
「解りました」
「それじゃ頼んだぞ」
「御意に」
跪き見事な一礼をしたバンシーは即座に村へと向かった。
「大丈夫よね?」
「ああ」
「村人たちで実験とかしないわよね」
「あ、ああ。ちゃんと言いつけたからな」
「本当に大丈夫よね」
「大丈夫だ。だから心配するな」
自分が治めていた領地の村人という事もあり何時も以上に心配性なエリーゼをどうにか宥める千夜であった。
「それじゃ、ルーセントに戻るとしよう。一応警戒は怠らないようにな」
「ええ」
「解りました」
「大丈夫じゃ」
「ご安心ください」
「頑張ります!」
全員がそれぞれ周囲を警戒しながら都市ルーセントへと向かった。
「まあ、そうなるな」
「それって代官や特に暗霧の十月に目をつけられるんじゃない?」
「だろうな」
「なに、暢気に言ってるのよ!」
「いや、これで良いんだ。偶然とはいえターゲットの顔ぐらい見ておきたいからな」
「そうかもしれないけど。そうなれば行動しにくくなるわよ」
「どうだろうな。都市でも有名になってきた俺たちを暗殺しようとは考え難い、あり得るとしたら依頼中に魔物に襲われたように偽装するぐらいだろう」
「それって……」
「ああ、俺たちに指名依頼がきたら間違いなく暗霧の十月の部下、それもそれなりの手練が襲ってくるだろう」
「でしょうね」
「どうした疲れたのか?」
「いえ、もっと穏便に依頼がこなせると思っただけよ」
「ま、そうそう上手くいく事の方が少ないからな」
他人事のように言う千夜の言葉に再び嘆息する。
「でも、そうなるとアミッツたち大丈夫かしら。また魔物に襲われたりしないわよね」
「可能性的には低いだろうがあり得ない話ではないな。だが魔物の数にも限度があるだろうし、すべて使役できているとは考え難い。だが暗霧の十月の部下を使って魔物に襲わせたようにする可能性はあるかもしれないな」
「そこまでする必要があるの?」
「あるだろうな」
「どうして?」
「代官にとって一番予想外だったのはやはりアミッツだからだ」
「?」
「アミッツがギルドで言っていた事を覚えているか?」
「ギルドで?」
「そうだ。アミッツは助けを請うために代官の許にも行った、と言っていた」
「確かに言っていたわね。話すら聞いて貰えなかったって」
「そうだ。だがそれは当たり前だ。村にゴブリンを差し向けたのが代官張本人なんだからな」
「確かにそうね」
「ボロボロの姿になってやってきた子供の話を聞かなかったとしてもなんの問題もない。冒険者の誰もがその依頼を引き受けなかったらな。もしも誰かが引き受けたとしても間に合うわけがないと考えていたんだろう。だが」
「私たちが引き受けて、見事達成したわね」
「そうだ。俺たちがルーセントに戻れば間違いなく、ボロボロになってまで助けを求めてきた少女の村を見事に救った。と俺たちは賞賛されるだろう。その反面代官はどうだ。そんな少女に会おうともしなかった。と信頼を落とす事になるだろう。ましてや目的まで潰されたとなれば」
「間違いなく激怒するわね」
「だろうな。そこで暗霧の十月の部下に村を襲わせる。そうすれば俺たちの依頼は失敗したと思い込ませる事が少しは出来るかもな」
「最低ね」
「ま、代官にとって一番得なのがルーセントに戻るまでに俺たちも殺す事だろう。そうすれば間に合ったが失敗したと完全に思い込ませる事ができるだろうからな」
「つまり私たちも危ないわけね」
「ああ。だが俺たちよりも一番危ないのは」
「アミッツたちね」
「そうだ。ま、俺の推測が当たっていればの話だがな」
「これまでに外れた事があったかしら?」
「あったと思うが?」
「無いわよ」
「そうだったか?」
自分の事に関して記憶力の無い千夜である。
「でもどうするのこのままだとアミッツたちが」
「ま、正直任せるには心配しかないが仕方が無い。出て来いバンシー」
千夜の口から吐かれた名前にエリーゼたちは眉を潜め、ウィルは少し怯えていた。
「御呼びでしょうか我が君」
「ああ。この先にルイラ村という村がある。その村と村人を絶対に護れ」
「畏まりました我が君。して、その村人たちは――」
「実験台にするなよ」
「解りました……」
少し残念そうだったが千夜無視する。
「その代わり、襲ってくるであろう人間かもしくは魔物は好きにしても良い」
「解りました」
さっきとは打って変わって弾んだ声で返事する。
「それともし人間が襲ってきた場合はなにか情報を引き出せ。特に暗霧の十月に関する情報だ。何か組織のタトゥーなんかがあればもっと良いんだがな。ま、現れたら即座に連絡しろ」
「解りました。実験中にそれとなく調べておきましょう」
「それと村人たちと接触することは禁止する」
「解りました」
「それじゃ頼んだぞ」
「御意に」
跪き見事な一礼をしたバンシーは即座に村へと向かった。
「大丈夫よね?」
「ああ」
「村人たちで実験とかしないわよね」
「あ、ああ。ちゃんと言いつけたからな」
「本当に大丈夫よね」
「大丈夫だ。だから心配するな」
自分が治めていた領地の村人という事もあり何時も以上に心配性なエリーゼをどうにか宥める千夜であった。
「それじゃ、ルーセントに戻るとしよう。一応警戒は怠らないようにな」
「ええ」
「解りました」
「大丈夫じゃ」
「ご安心ください」
「頑張ります!」
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