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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第十六幕 サンライトの実とアムエル・ギグ

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「やはりどこのギルドにもガラの悪い奴は居るもんだな」
「ああいう、害虫はこの世から殲滅するべきです」
「まあ、そう言うな」
「でも、確かに相手するのは面倒よね」
「せっかくの団欒を邪魔されるわけですしね」
「迷惑極まりないのう」
「あはは……」
「ま、平和に穏便に済ませるのが一番だ」
「旦那様が言えた事じゃないわよね」
「それを言われると辛いが、終わった事を一々言っていても仕方が無い。さっさと依頼を受けるとしよう」
 何事も無かったように千夜たちは受付に依頼を持って向かう。

「すまないが、この依頼を受けたい」
「わ、解りました。ではギルドカードの提示をお願いします」
 千夜たちはカウンターにギルドカードを提出する。

「そう言えば旦那様何時の間に選んでいたの? 見ていた感じ悩んでいたようだけど」
「騒ぎになってこっちに来る時に適当にな」
「その依頼大丈夫なの?」
「安心しろ。ウィルも居るからなランクは低いのを選んである」
「そう。なら安心だわ」
「依頼を受理しました。依頼内容はBランクのサンライトの実の採取です。依頼達成には30個必要になります」
「解った」
「では、お気をつけて。そ、それと……」
「ん?」
「また、会いましたね」
「そうなの旦那様?」
 受付嬢の言葉に背後から命の危険すら感じさせるオーラが漂っていた。
(ど、どこかで会ったのか? 思い出せ。でないとまた死んでしまう!)
 顔を赤らめながら上目遣いでチラチラと視線を向けてくる受付嬢。
(思い出せ。赤毛のミディアムヘアに青い瞳。確かどこかで……っ!」

「そうだな。またヒッタクリされていないか?」
「まだ一日しか経っていないので大丈夫です」
「そうだな」
「ヒッタクリ?」
 千夜の言葉にエリーゼは首を傾げていた。

「昨日ヒッタクリ犯を捕まえただろう。そのヒッタクリの被害にあったのが彼女だ」
「そうだったの」
「少し鍛えた方が良いです」
「私運動は苦手なので。あ、まだ名乗っていませんでしたね。私はアムエル・ギグって言います。ギグ商会の次女です」
「ギグ商会?」
「はい。この都市にある商会の一つです。帝都にあるリッチネス商会などに比べたら弱小商会ではありますけど」
「そう悲観する事はない。これから頑張れば良いだけの話だ」
「はい」
「それよりもアムエル――」
「私の子とはアミーと呼んでください。周りからはそう呼ばれていますので」
「解った。アミー最近変わった事とか無いか?」
「変わった事ですか?」
「ああ、この都市に来て間もなくてな。依頼を受けるのも今日が初めてだから近づかない方が良い場所とかあれば教えて貰えると助かる」
「解りました。それなら歩いて一日の距離に廃村があるんですが最近その周辺を魔物が増えたって聞きます」
「魔物が?」
「はい。森の奥深くにありますし廃村になってからは誰も近づく人が居ないので魔物たちが住処にしたんじゃないかって皆言ってます」
「そうか。ならそこには近づかないように気をつけるとしよう」
「はい、そうして下さい」
「では、行ってくる」
「お気をつけて」
 こうして千夜たちはサンライトの実を採取すべく廃村がある森とは逆方向の森に向かった。

「お父様」
「なんだ?」
「サンライトの実ってなんですか?」
「学園で習わなかったか?」
「はい。まだ習って無いだけかもしれませんが」
「そうか。サンライトの実は主に中級の回復ポーションの材料として使われる。下級の回復ポーションと違い材料が薬草だけはないからな」
「なるほど」
「またサンライトの実はそのまま食べてと美味しく市場に出る回数は年に数回と少ないため高値で取引されている。ま、大半は回復ポーションの材料として使われるし、採取が難しく、採取区域にはサンライトの実を好んで食べるC~Bランクの魔物が多く生息しているしたまにAランクの魔物が出る事もあるから、依頼ランクがBランクと高めの理由でもある」
「そうだったんですね。てっ事は今から向かう場所にはC~Bランクの魔物が居て、もしかしたらAランクの魔物が出現するってことですか?」
「そういう事だな」
「が、頑張ります!」
「大丈夫よウィル。私もついてるし、もしもの時は旦那様がなんとかしてくれるわ」
「ああ。大事な息子を死なせるつもりはない」
「はい!」
 仲の良い親子の光景を撒き散らしながら都市を出た。

              ******************************

 少し時間を遡り、とある領地境界の検問場で一つの集団が兵士と揉めていた。

「なによ一人当たり銀貨10枚って高すぎるわよ!」
「仕方が無いだろ。これも上からの命令なのだ。犯罪者や浮浪者をこの領地に入れないためのな。それに嫌なら入る必要はない!」
「くっ!」
「真由美、気持ちは解るけど依頼をこなす為には払うしか無いよ」
「勇治は甘いのよ。なによ一人あたり銀貨10枚ってべら棒な金額よ! そんなの払う冒険者なんて居るわけがないでしょ!」
「そうかも知れないけど払わないと依頼が達成出来ないよ」
「……………解ったわよ」
 真由美は渋々通行料として銀貨10枚を支払った。

「まったく災難続きよ」
「そうぼやかないで。確かに調べた情報で盗賊が居る場所に向かったら既に移動していて無駄足だったけど」
「これも勉強だと思えば良いだけです。真由美」
「相変わらずポジティブね、紅葉は」
「いえ、そう考えないと苛立ちが増すからです」
「そ、そう」
 勇者たちも色々苦労しながら依頼達成に向けて動いているのだった。
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