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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第十二幕 死霊生成と別れ道
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エリーゼの推測通り走って十分で別れ道に到着した。
枝木のように三方向に分かれた道にはそれぞれ看板があり、名前が綴られていた。
「左がケアド、真ん中がルーセント、右がダラか。さてと……」
マップを開いた千夜は周りに敵が居ない事を確認した後、バンシーを呼び出す。
「この時をお待ちしておりました。我が君」
目深く被ったフードで素顔は分からないが、その姿から漂う妖艶な雰囲気に普通の男ならば固唾を呑むところだが、千夜とウィルは昨晩の事を思い出しため、ため息が漏れる。
「どうかされたのですか?」
「いや、なんでもない。それよりバンシーお前にはここに居る俺を含む6名の分身をそれぞれ5体生成して欲しい」
「畏まりました。して、お好みがあれば聞きますが?」
「何があ――」
「お任せで頼む」
「畏まりました?」
好奇心から尋ねようとするエリーゼの言葉を遮り、お任せにした千夜。
(聞かない方が精神的、衛生面的にも良い筈だ。エリーゼ頼むから睨まないでくれ)
頬を膨らせて睨みつけてくるエリーゼの姿に千夜は視線を合わせようとしなかった。
「それでは始めさせて貰います。サイズは全員の身長と同じぐらいで宜しいですね」
「ああ、それで構わない。あと出来れば独自で戦闘が可能だと助かる」
「畏まりました。さあ、お出でなさい私の可愛い実験体たち」
死霊生成スキルによって生み出された各種のアンデットたち。そこから漂う死臭にエリーゼたちは顔を顰めて口と鼻を覆い隠す。
「なんて酷い臭いなの」
「鼻が捥げそうなのじゃ」
「そうですか? 私にはとても安心できる臭いなのですが」
「旦那様とウィルが嫌そうな顔をした意味が分かったわ」
「フィリス聖王国、スレッド法国、教会がしったら真っ先に討伐対象になりますね」
「どうしてこんな頭のイカれた眷属を主は創ったのですか」
「イメージで」
「よく、分かりました」
魔物生成や死霊生成で自我を持つ存在を作り出す時、人格などは使用者のイメージが反映される。
次々と地面から這い出すようにして出てくるアンデットは屍戦死、腐敗子供、屍鬼、屍暗殺者、屍弓兵、腐肉吸血鬼がそれぞれ5体姿を現した。
ホラースポットや墓場よりも恐怖を与えそうな異様な光景に千夜たちは言葉が出てこなかった。ウィルにいたっては青ざめエリーゼの背中に隠れてしまった。
「これでよろしいでしょうか、我が君」
「ああ、よくここまでの者を作り出してくれた」
「勿体無きお言葉にございます。して如何様な命令を下せば宜しいでしょうか?」
「そうだな。それぞれに目的地を与える。そこまで到達する事が出来たら消滅させてくれ。街や村に被害をだしたくないからな。勿論敵意や殺意をもって襲い掛かってくる奴らは殺しも構わない。あと、盗賊を発見しだい殲滅しろ」
「畏まりました。我が君」
「それじゃあ、全員にこの外套を配る顔が見えないように目深く被れ」
全員に配り終えるとアンデットたちは無言で外套に身を包む。
「さあ、私の実験体たち、我が君の命令に従いそれぞれの目的地に向かいなさい」
返事も頷く事もしないが理解は出来ているのかそれぞれが目的地に向かって行動を開始した。
「バンシー、お前は亜空間に戻り、呼び出しがあるまで待機。アンデットたちが目的を果たして消滅するのが嫌なら亜空間に連れ込んでもかまわない」
「畏まりました。それでは我が君、いつでもおよび下さい」
「あ、ああ」
ようやく精神的安寧を取り戻した千夜は安堵し、息を吐く。
「それにしても私たちが予想していた魔人とは大違いね」
「そうですね。スケアクロウさんやラッヘンさんとも違います」
「あれが一番身の危険を感じたのじゃ」
「一番、主に近づけては駄目な女です」
「僕、トラウマになりそうです」
各々がそれぞれの感想を述べる姿に千夜は責任感を感じるのであった。
(次からはもう少しイメージを抑えて創るとしよう)
そうでもないかもしれない。
「でも、あれじゃどれが本体なのか解らないわね」
「あれに勘違いられるのは癪ですけど」
「僕の分身の子供目から蛆虫が湧いてました」
「ま、これで盗賊の殲滅は一気に進むだろう」
「そうね」
「私たちの分身死体に殺される盗賊たちが少し不憫に感じますが仕方ないですよね」
「考えないようにするのじゃ」
「俺らも都市ルーセントに向かう。今日入れて4日の道のりになる。何が起きるか解らない。全員周囲警戒しつつ向かうとしよう」
千夜の言葉に全員が頷く。ウィルだけは未だに恐怖で震えていた。
別れ道の一つに入り千夜たちは都市ルーセントに向けて行動を再開した。
枝木のように三方向に分かれた道にはそれぞれ看板があり、名前が綴られていた。
「左がケアド、真ん中がルーセント、右がダラか。さてと……」
マップを開いた千夜は周りに敵が居ない事を確認した後、バンシーを呼び出す。
「この時をお待ちしておりました。我が君」
目深く被ったフードで素顔は分からないが、その姿から漂う妖艶な雰囲気に普通の男ならば固唾を呑むところだが、千夜とウィルは昨晩の事を思い出しため、ため息が漏れる。
「どうかされたのですか?」
「いや、なんでもない。それよりバンシーお前にはここに居る俺を含む6名の分身をそれぞれ5体生成して欲しい」
「畏まりました。して、お好みがあれば聞きますが?」
「何があ――」
「お任せで頼む」
「畏まりました?」
好奇心から尋ねようとするエリーゼの言葉を遮り、お任せにした千夜。
(聞かない方が精神的、衛生面的にも良い筈だ。エリーゼ頼むから睨まないでくれ)
頬を膨らせて睨みつけてくるエリーゼの姿に千夜は視線を合わせようとしなかった。
「それでは始めさせて貰います。サイズは全員の身長と同じぐらいで宜しいですね」
「ああ、それで構わない。あと出来れば独自で戦闘が可能だと助かる」
「畏まりました。さあ、お出でなさい私の可愛い実験体たち」
死霊生成スキルによって生み出された各種のアンデットたち。そこから漂う死臭にエリーゼたちは顔を顰めて口と鼻を覆い隠す。
「なんて酷い臭いなの」
「鼻が捥げそうなのじゃ」
「そうですか? 私にはとても安心できる臭いなのですが」
「旦那様とウィルが嫌そうな顔をした意味が分かったわ」
「フィリス聖王国、スレッド法国、教会がしったら真っ先に討伐対象になりますね」
「どうしてこんな頭のイカれた眷属を主は創ったのですか」
「イメージで」
「よく、分かりました」
魔物生成や死霊生成で自我を持つ存在を作り出す時、人格などは使用者のイメージが反映される。
次々と地面から這い出すようにして出てくるアンデットは屍戦死、腐敗子供、屍鬼、屍暗殺者、屍弓兵、腐肉吸血鬼がそれぞれ5体姿を現した。
ホラースポットや墓場よりも恐怖を与えそうな異様な光景に千夜たちは言葉が出てこなかった。ウィルにいたっては青ざめエリーゼの背中に隠れてしまった。
「これでよろしいでしょうか、我が君」
「ああ、よくここまでの者を作り出してくれた」
「勿体無きお言葉にございます。して如何様な命令を下せば宜しいでしょうか?」
「そうだな。それぞれに目的地を与える。そこまで到達する事が出来たら消滅させてくれ。街や村に被害をだしたくないからな。勿論敵意や殺意をもって襲い掛かってくる奴らは殺しも構わない。あと、盗賊を発見しだい殲滅しろ」
「畏まりました。我が君」
「それじゃあ、全員にこの外套を配る顔が見えないように目深く被れ」
全員に配り終えるとアンデットたちは無言で外套に身を包む。
「さあ、私の実験体たち、我が君の命令に従いそれぞれの目的地に向かいなさい」
返事も頷く事もしないが理解は出来ているのかそれぞれが目的地に向かって行動を開始した。
「バンシー、お前は亜空間に戻り、呼び出しがあるまで待機。アンデットたちが目的を果たして消滅するのが嫌なら亜空間に連れ込んでもかまわない」
「畏まりました。それでは我が君、いつでもおよび下さい」
「あ、ああ」
ようやく精神的安寧を取り戻した千夜は安堵し、息を吐く。
「それにしても私たちが予想していた魔人とは大違いね」
「そうですね。スケアクロウさんやラッヘンさんとも違います」
「あれが一番身の危険を感じたのじゃ」
「一番、主に近づけては駄目な女です」
「僕、トラウマになりそうです」
各々がそれぞれの感想を述べる姿に千夜は責任感を感じるのであった。
(次からはもう少しイメージを抑えて創るとしよう)
そうでもないかもしれない。
「でも、あれじゃどれが本体なのか解らないわね」
「あれに勘違いられるのは癪ですけど」
「僕の分身の子供目から蛆虫が湧いてました」
「ま、これで盗賊の殲滅は一気に進むだろう」
「そうね」
「私たちの分身死体に殺される盗賊たちが少し不憫に感じますが仕方ないですよね」
「考えないようにするのじゃ」
「俺らも都市ルーセントに向かう。今日入れて4日の道のりになる。何が起きるか解らない。全員周囲警戒しつつ向かうとしよう」
千夜の言葉に全員が頷く。ウィルだけは未だに恐怖で震えていた。
別れ道の一つに入り千夜たちは都市ルーセントに向けて行動を再開した。
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