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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第百十一幕 お父さんとお母さん

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「これで俺たちの事は認めて貰えないか?」
「…………解った。完全に信用したわけじゃないわ」
「ああ、それで構わない」
 千夜は優しげな笑みを浮かべるのだった。
 イルマを含めた22人の奴隷たちを連れて外に出ようとした時だった。

「あるじ様」
「どうしたラム」
「あの木箱の中から声が聞こえる」
「なに?」
 ラムが指差した先には40センチ×70センチ×40センチの木箱がカウンターの上にあった。

「(タイガーもしかして)」
「(間違いないかと)」
「……奴隷商人」
 カウンターで金貨を見詰める奴隷商人に近づく千夜。

「は、はい何でしょうか!」
 慌てて金貨が入った袋を隠す奴隷商人。

「この木箱の中には何が入っているんだ?」
「これですか。これの中には大変珍しい動物子供が入っているのです」
「動物……まさか魔物の子供じゃないだろうな」
「そ、その通りです」
「もしも、その魔物の親が子供を見つけるためにここに来たらどうするつもりだったんだ」
「それに関しては大丈夫です。発見した際には既に親は死んでいたそうですので」
「そうか。で、中にはどんな魔物が入ってるんだ」
「………」
 千夜の問いに口篭る奴隷商人だったが、小声で千夜に伝える。

「『エンペラーウルフ』ウルフの子供です」
「なに!」
「センヤ様、お静かに」
「すまない。それは本当なのか?」
「はい、知り合いの鑑定士に見て貰いましたが間違いないかと」
「俺にも確かめさせて貰っていいか?」
「………解りました」
 本当は見せたくは無いのだろう。だが一番の顧客を失う事を考えた奴隷商人は渋々了承する。
 木箱の隅に設けられた餌入れを空けて中を覗き超解析を使う。

──────────────────────────────────

エンペラーウルフ
LV9
HP 16000
MP 12000
STR 8600
VIT 9200
DEX 7400
AGI 8900
INT 5200
LUC 60

スキル
威圧LV1
危機察知LV3
火属性耐性LV1
水属性耐性LV1
土属性耐性LV1
風属性耐性LV1
闇属性耐性LV1

属性
火、水、土、風、闇

──────────────────────────────────

「………」
「どうでしょうか?」
「本物だ」
(このレベルでこのステータス。本物のエンペラーウルフだ。流石はエレメントテイルに匹敵すSSSランクの魔物だけはある)
 姿は見えないがステータスでかでもこの中にいる魔物が危険だと解る。

「で、こいつをどうするつもりだ?」
「いえ、これから買い手を捜すところでして……」
「なら、俺が買う」
「え、良いのですか?」
「ああ、他の奴が買って大きくなってから暴走されては困るからな」
「確かに」
「で、幾らだ?」
「は、はい! そうですね希少な魔物と言う事もあり、金貨1500枚でどうでしょうか」
「解った。ほら」
 千夜は懐から出す振りをして、アイテムボックスから白金貨15枚入った皮袋を置く。

「あ、有難うございます」
「なら、貰っていくぞ」
「は、はい!」
 千夜は木箱を抱え、エルザ、タイガー、ラム、そして奴隷22人を引き連れて屋敷へと戻った。
 十数分かけて屋敷へと戻った千夜は、少しの間だけエリーゼ、ミレーネ、クロエ、セバスの四人に奴隷達を任せてエルザ、タイガー、ラムの四人は書斎に集まっていた。
 木箱の蓋を開けて中を覗く千夜たち。

「それで殿、どうみても子犬にしか見えないこれが……」
「ああ、エンペラーウルフだ。ラムが教えてくれなかったら面倒な事になっていたかもしれない。よくやったなラム」
「えへへ~」
 褒められたラムは嬉しそうに笑みを浮かべる。

「さて、問題はこの子をどうするかだが……」
「ねえねえ、あるじ様」
「どうしたラム」
「この子、お腹が空いたみたい」
「分かった……ハインドボアの生肉で良いか」
 フィリス聖王国から帰り道に討伐したハインドボアの肉をアイテムボックスから取り出し、エンペラーウルフに与えようとした時。

「私が上げも良い?」
「こらラム、そんな危険な事お前にさせれるわけがないだろう!」
「ごめんなさい……」
 タイガーの叱責に落ち込むラムだったが、

「本当にしたいのか?」
「殿!」
「え、いいの!?」
「但し覚悟はあるか。もしかしたら噛まれて指がなくなるかもしれないぞ。それでも良いのか?」
 鋭い視線を向ける千夜。けして幼女に向ける目ではない。それでも千夜は止めない。ラムも最初怯えていたが、千夜に覚悟を問われ、一瞬悩んだが直ぐに真剣な面持ちで頷いた。

「うん! 上げたい!」
「……良いだろう」
 千夜はハインドボアの生肉をラムに渡す。
 受け取ったラムはそれをそ~とエンペラーウルフに近づける。

「………」
 すると丸まっていたエンペラーウルフは生肉の臭いに気付いたのか、直ぐに立ち上がってラムが差し出す肉の臭いを嗅ぎ、数秒して食べ始めた。
 その光景にラムは満面の笑みを浮かべた。

「食べた!」
「ああ、そうだな」
「ふう、我輩寿命が少し縮みましたぞ」
「タイガーは大げさなのよ」
「なにぃ?」
「こら、喧嘩しない」
 睨み合うエルザとタイガーを宥める千夜。そんな3人に気も留めずエンペラーウルフに生肉を与えていく。
 そして数分した時だった。

「ゥワン!」
 可愛らしい泣き声を上げた。

「あるじ様」
「どうした?」
「この子、私事をお母さんだって」
「そうか」
 ラムには動物、魔物と会話が出来るという特殊な称号を持っている。そのためラムが発した言葉に驚きはしなかった。が、

「それであるじ様がお父さんだって」
「なに!」
 別の意味で驚かされる千夜であった。
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