上 下
152 / 351
第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第三十八幕 ライトとラッヘン

しおりを挟む


「よ、ようやく……一人になれた」
 あの後、和也はライラを宥めるがそれを見守っていたベイラントとイザベラにからかわれてしまいライラが拗ねるという展開が何度も繰り返されたため予定が大幅にずれてしまった。
 で、ようやく開放されたのが円卓会議が終了してから一時間が経過した後だった。
 憂鬱な気持ちを何とか払いのけ人気が無いところを探す和也。

「ここで良いか」
 目に付いた部屋の扉は他の扉とまったく同一の物。しかし中に入ってみるとまったく掃除されて居らず、埃塗れの部屋だった。

「なんだここは?」
 思わず口にする和也だが、すぐさま扉を閉める。
 カーテンも締め切られ真っ暗闇の一室に一つの明かりが灯る。

「ライト」
 短縮詠で呟かれた光属性初級魔法はLEDライトのように白く輝き真っ暗闇の一室を照らす。

「さて、それじゃ始めるとするか。解除」
 足元から突如出現した粒子は和也を包み込む。
 僅か数秒後、そこには和也の姿は無く、そこには千夜の姿があった。

「この姿も久しぶりだな」
 感触を確かめるように掌を開いたり閉じたりを繰り返す。

「出でよ、我が眷属、影の道化師スカー・クラウン
 千夜のスキルの一つ、魔物生成によって生み出された魔物、いや魔人と言うべき魔物は魔方陣も無く、その場に出現すると跪いていた。

「何なりとご命令を創造主様」
 魔人は笑みを浮かべ星が描かれた仮面を身につけていた。
影の道化師スカー・クラウン。お前に名を与える」
「有難き幸せ」
「お前の名前は『ラッヘン』これからはそう名乗れ」
「畏まりました。それで私は何をすれば良いのでしょうか創造主」
「お前は今すぐ誰にも気づかれること無くレイーゼ帝国帝都ニューザに向かい、俺の大切な妻達とオールリキュールで働く者たちを守ることだ。人手が足りないようなら、グレータースケルトンやスケアクロウたちを使っても構わない。それと出来るだけ戦闘は避けろ。判断しにくい時は念話で聞いて来い」
「畏まりました」
 千夜が閃いた対処法は己が持つスキル、魔物生成を使い影武者を帝都に送り込む事だった。

「それと、俺が許可するまで千夜の姿で行動しろ。いいな?」
「畏まりました」
 どこか最後の了承だけ弾んだ声をしていた気がする千夜であったが、気にすることなく影の中へと消えていくラッヘンを見送るのであった。

「さて、一応報告だけしておくか」
 懐から三枚の封筒を取り出した千夜は現在までの進行報告と間者が帝都に紛れ込んでいる事を書き綴り送るのだった。

「あとは神のみぞ知るって所か」
 最後の呟きとともに再び粒子が千夜を包み込む。
 数秒後、そこには和也の姿に戻っていた。

「持っていないスキルを使うとき一々元の姿に戻らないといけないのは面倒だな」
 魔法を解除した和也は人が居ない事を確認してから部屋を出ると、再び真っ暗闇の一室に戻り静寂が支配するのであった。
しおりを挟む
感想 694

あなたにおすすめの小説

新人神様のまったり天界生活

源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。 「異世界で勇者をやってほしい」 「お断りします」 「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」 「・・・え?」 神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!? 新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる! ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。 果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。 一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。 まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。 レベル、ステータス、その他もろもろ 最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。 彼の役目は異世界の危機を救うこと。 異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。 彼はそんな人生で何よりも 人との別れの連続が辛かった。 だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。 しかし、彼は自分の強さを強すぎる が故に、隠しきることができない。 そしてまた、この異世界でも、 服部隼人の強さが人々にばれていく のだった。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。