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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第十七幕 三日月の剣騎と魔族集団

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 一人の魔族は嬉しそうに破壊行為を続けていた。
 目の前に広がるのは蹂躙世界だった。
 家は粉々に破壊され、錆びた鉄の臭いが充満する。そんな光景を目にして魔族は笑みを深くする。

「最高だ………あれ?」
 突然景色が反転する。
 魔族は理解できないまま地面に倒れ死す。

「魔族を殲滅しろ!」
 凛々しき女騎士の甲高い号令が村中に響き渡る。
 突然の襲撃に驚きを隠せない魔族たち。まして村一つを襲う行為は魔族にとって戦いではなく遊び、蹂躙であった。そんな魔族たちはこの時ようやく命の危機に直面した。

「迎撃態勢をとれ!」
 指揮官的存在の魔族が即座に命令を発するが、突然の事に動きが鈍る。ましてや完全に遊んでいたため好き勝手に行動していたため魔族達はバラバラに散らばっていた。

「相手は動きが悪い。今のうちに殲滅せよ!」
「「「「「「おおおおおぉぉ!!」」」」」」
 雪崩の如き怒涛の勢いで突撃してくる三日月の剣騎。その先頭にはライラ、そのすぐ後ろにはラケムと和也がおり、全員が各々の武器を構えていた。

「まずい……」
 その光景を目にした一人の魔族は現在の状況を呟く。

「全員森まで後退したのち、態勢を立て直せ!」
 即座に命令を出すが、誰も動こうとしない。

「最悪だ……」
 相手の勢いに完全に呑み込まれた魔族たちは恐怖で動けない者が殆どだった。動けた者も後退という言葉ではなく逃亡と言ったほうがお似合いだった。
 それを目にした魔族は最後の命令を飛ばす。

「各自で対処せよ!」
 完全にまるなげである。しかし、この状況ではどうすることも出来はしない。
 ここから始まるのは、完全に最初と真逆。人間が喰らい、魔族が喰われる。それだけだ。
 そんな光景が始まろうとする上空で一匹の蝙蝠が見下ろしていた。



 一匹の蝙蝠が見下ろしていることなど知る由もないライラたちは、目の前の敵を怒りと憎しみを込めて斬り殺す。しかし、その負の感情に呑まれる事無く、冷静に状況判断をし、仲間との連携を欠かさない。

「大男の魔族は複数人で倒せ!」
 第四部隊隊長であるジャムの声が戦場を駆け巡る。

「「「「はっ!」」」」
 悲鳴や甲高い金属音の中でも部下達の耳には届き、軍隊蟻の如く統率の取れた動きで敵をこの世から葬り去っていく。
(ライラ様は無事なのか!?)
 己が所属する部隊長の心配をする。それが不必要な事だとわかっていたとしても、それが人の心というものであり、人間である証拠なのだ。

「美しい……」
 舞い踊るかのように流れる動きで何体もの魔族を斬り殺す姿に、ジャムは感嘆の念を覚える。
 しかし、視界の隅に入った一人の人物の姿に憤りを覚え、言葉にして吐き出す。

「あいつは何をしているんだ!」
 その人物は半壊した建物の柱に凭れかかり、どこから取り出した串焼きを食べていた。戦場のど真ん中で考えられない行動をとるその人物にジャムは周りに気を配りながら駆け寄る。

「おい! 何をしている今は大事な任務中だぞ!」
「分かってるよ」
「なら、なぜ戦わない!」
「温存してるだけだ」
「温存だと! 何をふざけた事を」
 ジャムはその男、和也の言葉に怒張する。

「おかしいとは思わなかったか?」
「何がだ!」
 苛立ちしか感じないジャムの口調は強くなる。

「敵はこの村を襲うことを計画していたはずだ」
「そんな分かりきったこと――」
「なら、なぜ奴らはあんなに驚き、隊列が崩れているんだ?」
「そ、それは……」
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